井堀利宏の発言 (行政改革に関する特別委員会)

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○井堀参考人 おはようございます。東京大学の井堀です。よろしくお願いします。
 私のきょうお話しするテーマは、事務局の方から特別会計改革についてというテーマで何かしゃべれと言われていましたので、その点に限定してお話しさせていただきたいと思います。それで、皆様のお手元に簡単なレジュメがあると思いますが、それに従って始めます。
 特別会計、御存じのように、基本的に三つの分類が行われているわけですけれども、国が行う特定の事業を経理する会計、これは社会保険とか公共事業関係の特別会計ですね。それから、特定の資金の管理運用の会計、これは財政融資あるいは外国為替の会計等です。それから三番目が、特定の収支を区分して経理する会計、これは交付税の会計とか、それから国債整理基金のようなものです。
 幾つか性格が分かれているわけですが、特別会計の改革が、今度の政府案でも、それから民主党の方でも法案を出されたようですけれども、問題になっているのは、一般的に予算の議論というのが一般会計を中心に行われていて、歳出の効率化の圧力が特別会計に向けられていないのではないか、そういう疑問とか、あるいは、特別会計であるがゆえに、固有の財源で、必ずしも必要でない事業が自己増殖的に行われているのではないか、そういう懸念があるんだろうと思います。
 そこで、そもそも特別会計に本来どういうメリット、意義があるのかという点からお話しさせていただきたいと思います。
 一般会計とのこれは比較になるわけです。つまり、特別会計に何らかの問題点があったとしても、それを、特別会計をやめてすべて一般会計にしてしまうと完全に問題が解決するかというと、では、一般会計が、国民の選好、国民のニーズを完璧に的確に反映した一〇〇%十分な予算が常にできているかというと必ずしもそうでない面がありますので、これは、どちらの会計を用いることが相対的に有利かどうかという問題だろうと思います。
 それで、すべての経費を一般会計でまとめて計上すると、経費の性質によっては、効率性の面から見ても、あるいは情報開示の面から見ても有益でないものもあるので、その場合には特別会計を使って別勘定で計上する方が資金の流れがより明確に開示されて、結果として国民にもプラスになる。
 その一つの大きな点というのは、予算の中で、税金や、保険料あるいはその他の使用料等の料金などの収入と、それから実際の歳出活動あるいは政府の公共的な活動との間に一定の対応関係、リンクが実際にある場合には、それを会計情報として開示する方が、国民にとっては、こういった形の負担が直接こういった形のサービスに使われている、そういうことが実際に行われている場合には、それを会計情報として開示する方が望ましい。
 これは特定財源等の場合も出てくるわけですし、あるいは社会保険のように、保険料は社会保険として一定のサービスに充てるという場合には特別会計としてやる方が一般会計でやるよりは資金の流れはより明確になる。その結果として受益と負担の関係がより国民に明確に開示されるので、国民としてもそれが納得いくものかどうかに関して監視が働きやすくなって、結果として、効率的な運営をする圧力としてうまく機能するということです。
 それから、国債整理基金とかそれ以外の会計にしても、別勘定で資金の流れを明確に開示することができるとすれば、それによって予算の中身が国民にとってより明確になれば、それがどういう形で行われるべきかに関する監視も強くなる。その意味では、ある程度受益と負担に一定のリンクがあるのか、あるいは、資金としてそれなりの性質を持っているものについては特別会計でした方がいいんじゃないか、こういう議論はそれなりに意味があるんだろうと思うんですね。
 特に、最後ですけれども、一つ例として道路特定財源を挙げていますけれども、仮に一般会計にしないであえて特別会計なら、受益と負担のリンクで縛るということは、逆に言いますと、政策の選択の幅をあらかじめ縛っているわけですね。要するに、ガソリン税で上がってきたものは必ず道路の整備にしか上げないということですから、道路以外のものに使えないということで選択の幅を縛っているわけですけれども、縛るということはそれだけ自由度が狭くなりますから、完全に一般会計で最適に予算編成ができるというのが一つの反対側の基準とすれば、それに比べればセカンドベストにならざるを得ないので問題なんですけれども。
 問題は、特別会計をやめて一般会計にして完全に自由に財源を使えるときに、道路整備よりももっと国民にとって望ましくないサービスにも使われる可能性はあるわけですね。自由度があるということは、逆に言うと悪い方に使われる可能性もあるので、そこはどの程度政治がきちんと一般会計で予算をコントロールできるか、そこにかかってきているので、そこに対する有権者なり納税者の不信感がある程度ある場合には、特定財源というのはそれなりに有権者から見ると安心できる。逆に、政治の場が、一般財源でも予算を編成してちゃんとやっています、社会経済環境が変わったときにきちんと既得権にかかわる見直しができていますということであれば、これは一般財源にした方がいい。程度問題だろうと思います。その後どうしたらいいかというのはケース・バイ・ケースだと思います。
 その意味では、特別会計の問題点、特に最近これが出てきたというのは、やはり特別会計の数が、過去の経緯もあってたくさん設置されてきたことで、予算全体の仕組みが複雑でわかりにくくなった。会計が分立することで全体の効率性が損なわれるではないか、そういう点があるのだろうと思います。
 特に、特別会計で、一般会計とは違って受益と負担の関係にリンクをつけたとすると、問題は、道路でいいますと、ガソリン税の税率が高どまっているとか、あるいは保険料なり料金収入がある程度あって、ところが歳出の方は、社会的な需要が落ちて減ってしまって剰余金が出てしまった。その場合は、収入があるから特別会計をつくらざるを得ないという形で、結果として無駄なものもできやすいわけですね。そのときに、当然、特別会計なり特定財源の場合であっても、それに対応する税率を下げたり保険料を下げたりしていけばそれで対応ができるんですけれども、そこがなかなか難しいときにはそういう問題が起きる。
 その意味では、特別会計で政府の行動がどのぐらいまで効率的になるかというのは、ある程度社会経済環境が変化したときにどの程度見直しを柔軟にできるのかという、そこの問題になると思うんです。
 ただ、従来は、硬直的な予算編成が、特に特別会計の場合は、一般会計に比べるとそこを見直すのが難しい、各省庁の既得権益化の一つの温床になっている、こういう問題がありますので、その意味では、特別会計というのを抜本的に見直すいい機会だろうと思います。
 それで、政府案ですけれども、特別会計の数を、富田参考人の方からも御紹介ありましたけれども、二分の一から三分の一程度に削減するということ、それから、今後五年間において合計二十兆程度、これは一般会計の方へ財政健全化の貢献を目指す、それから、十八年度予算においては一三・八兆円活用するという点で、小さいのがいいのかどうかは別にして、確かに、無駄を省いて効率的な政府を目指すという意味での第一歩としては評価できる案だと思います。
 ただ、これで十分かどうかというのは、もちろん今後の課題です。大胆に特別会計の問題点を見直すところは見直す必要はあるんだろうと思います。
 特に、剰余金等が出ているということは見直しをする場合のシグナルとしては意味があって、剰余金が発生しているということは、今まで特別会計が想定したことが、社会経済環境が変わってうまくそれが処理し切れていないということですね。そういうシグナルを出しているわけですから、それがどういうものかというのを精査して、必要なものだけを取り込む。
 特に歳出の削減に関して言いますと、特別会計を一般会計化することが歳出の削減に特効薬になるかどうかというのは、それぞれの性質によって必ずしも明確ではないと思いますが、一般会計にするにしても特別会計でやるにしても、いずれにしても、政府がどこまで本来の公的なサービスにきちんとコミットするのか、民間なり政府との役割分担をまず明確にするということが必要で、そのもとで、特別会計で仮にやるとした場合にどういった形でやるのがよりその事業の効率化に必要かという観点から見直しを今後とも進めていただきたいと思います。
 最後ですけれども、今後の課題として三つほど私見を入れておきましたが、一つは交付税特別会計、御存じのように、五十兆の借入金を抱えています。これは今は多少落ちついているわけですけれども、要するに、特別会計で借金がじゃんじゃんできてしまった、こういうシステムは非常に問題が多いと思います。今後も特別会計で借金をできるということになりますと、ややソフトな予算制約の問題が出てきますので、ここは見直していただきたい。
 それから、社会保険関係は国庫補助という形で税金を入れているわけですけれども、御存じのように、基礎年金の国庫補助が三分の一から二分の一に上がるわけですが、本当に社会保険関係に税金をどんどんつぎ込むのがいいのかどうかという問題です。
 保険料で給付を賄うというのが社会保険の基本的な性質ですので、このようにじゃんじゃん税金を入れるというのは、ある意味では、税金を入れるといいながら、一般会計では結果として財政赤字で対応しているわけですから、これは先送りの不安があり得ると思います。
 それから、最後ですけれども、剰余金、積立金は常に一般会計に活用するのが望ましいかというと、これは必ずしもそうではないだろう。原則としては、剰余金なり積立金が余っていれば、特別会計に入る収入を抑えて特別会計自体をスリム化するのが本筋だろうと思うんですね。要するに、特別会計の剰余金というのは一般会計の財源調達としてそもそも設立したわけじゃないですから、財源調達は基幹税でやるのが筋であって、もちろん、余ってどこにも使い道がないんだったら国債の償還に充てるのが今はいいと思いますけれども、本筋は、やはり特別会計自体も業務をスリム化して、それに見合って収入サイドをきちんと見直すというのが必要だろうと思います。
 そういった形で、財政への貢献というのは、本当に中長期的に特別会計の中でお金が余って、ほかに使い道がないという場合に限定されるときも、一時的なギフトとして考えるぐらいにしておいた方が望ましいのかなと思います。
 時間が来ましたので、以上で私の説明を終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 井堀利宏

speaker_id: 34508

日付: 2006-04-17

院: 衆議院

会議名: 行政改革に関する特別委員会