市川宏伸の発言 (文部科学委員会)
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○市川参考人 きょうは、このような場にお招きいただきまして、ありがとうございます。私は、ふだん子供の精神科の医療に携わっている者として、本日お話を少しさせていただきたいと思います。
私たちの分野というのは、必ずしも医療だけで解決する分野ではございませんので、他分野、特に教育等についても常に連携を図らなきゃいけないという立場でございます。私がふだん勤務している病院の中にも学校がございますし、あるいは、教育関係の方に連携ということで呼ばれることも多いという立場でございます。
皆さんのところにございますレジュメに従ってお話しさせていただきたいと思います。
今回の特別支援教育と法令の改正につきまして、私が中教審の専門委員としてお手伝いさせていただいた立場等から考えてみますと、やはり大きく分けると三点、もう少し細かく言いますと四点あるのだろうと思います。
一点は、盲・聾・養護学校を特別支援学校に変えまして、小中学校等に助言、援助をするということでございます。それから、現在ございます特殊学級を特別支援学級としまして、小中学校等におけるLD、ADHD、高機能自閉症等を含めた障害のある児童生徒に適切な教育を行うということ。それから、教育職員免許状の一部改正ということで、これは大学で修得するべき単位数の変更も含まれているというふうに理解しております。もう一つは、久里浜にございます研究所を国立特別支援教育総合研究所と変える、こういうことと理解しております。
この学校教育法改正の背景にあるものは、我々の分野とも関係しますが、やはり軽度発達障害と言われる方の増加ということが一つ大きくございます。LD、ADHD、高機能自閉症というふうに一括されておりますが、多くの方々の場合は、知的水準は高いのに友達関係をつくりにくい、あるいは知的水準は高いのに学校の成績がそれに伴わない、あるいは周りから見ますと理解できない行動上の問題があるというようなことがあるのではないかと思います。それから、この長い歴史の中で、障害種別の増加あるいは減少ということがあるようですし、あるいは、これらの中の重複、合併ということがあるように思います。これはもちろん、教育にとどまらないことでございますが、医療についても全く同じですが、やはりこういう変化に対応して専門性を向上させていく必要があるというふうに感じております。
特別支援教育につきましては、特別支援教育の流れがなぜできてきたかと考えますと、私どもがふだん専門にしております知的障害あるいは発達障害の方を念頭に考えますと、やはり従来は知的障害の程度で分けていたのではないかと思います。私も就学相談等で少しお手伝いさせていただくこともございますが、プリントにございます三つの分け方、知的障害が重い場合は養護学校、軽い場合は特殊学級、知的障害に問題がない場合は通常学級という大きなくくりがあったのではないかと思います。もちろん、細かい点におきましては、単純にこれだけの問題では決まっておりませんが。
しかしながら、通常学級にいらっしゃる子供さんの中で、対人関係ほかに困難を示す子供さんがふえてきているということを教育現場の先生方は非常に感じていらっしゃったのではないかと思いますし、そういうことで医療の方に御相談にいらっしゃる方も随分いらっしゃったわけです。これについて、どういう対応がよいかということで特別支援教育ということが始まったのだろうと私は考えております。
してみますと、知的な問題は抱えていないと考えられる通常学級にいる特別な指導の必要な子供さんがどれくらいいるのか、これについては、印象はございましたが、それまではきちっとした数字的裏づけはなかったわけでございます。そのために、教育の場はどういうふうにしていったらよいか、対応はどうしていったらよいか、あるいは、それについてのモデル事業をどういうふうに実施していったらよいかというようなことが考えられていったのだろうと思います。
この大きな流れの中で、私が医療の立場から見ておりますと、やはり以前は教育の場は教育の専門家だけで対応していたのではないかと思いますが、七、八年ぐらい前にスクールカウンセラーの導入等、ここに書いておきましたが、心理、医療、福祉、労働などとの連携の必要性ということが言われておりますし、今回の特別支援教育の中でも、専門的な知識を持っている方を対象にした専門家チームを組んで対応していこうということが含まれておりまして、私は、これは非常に賛同するところでございます。
二〇〇二年の十月に文部科学省が行った、軽度の発達上の障害があり学校場面で不適応を示す子供さんたちへの教育の対象者の調査というのがございまして、これはあくまでも担任の先生がごらんになってそういうふうに判断したということでございますので、別にそういう方の数を調べたとか、そういうことではございませんが、全国調査が四万数千人を対象に行われまして、ここに掲げてありますような、学習障害的な面で著しい困難を示す方が四・五%、行動面で著しい困難を示す方が二・五%、対人関係面で著しい困難を示す方が〇・八%という数字が出ておるということは先生方も御存じのところだと思います。その後も、国以外の、都道府県でも幾つか調査が行われているようで、これより低い数字が出たところもあると伺っておりますが、逆に、一〇%ぐらいという高い数字の出た県もあるというふうに伺っております。
してみますと、特別支援教育を推進するための制度のあり方をどうしていくかということで、中教審の特別支援教育の特別部会等で検討が行われたわけでございますが、一つは、通常学級にいらっしゃる特別支援教育対象者と考えられる方々、これに、従来の特殊教育の対象の方が一・数%いらっしゃるということでございますと、足しますと七・五%前後という数字が出てくるのではないかと思いますが、そのことが一つの問題だと思います。それから、盲・聾・養護学校制度の見直しということが一つ、それから、初めに申し上げたような教員免許制度の見直し問題がございます。
特別支援教育の背景にあるものとしましては、先ほど申し上げました、増加ということがございます。これは教育だけではございませんで、医療現場でも感じているところでございます。障害種別的に申し上げますと、盲学校は、数の上でいくと、ほぼ現状維持かと言われておりますが、聾学校の生徒さんは減少傾向、あるいは肢体不自由の養護学校に通っていらっしゃる方はやや増加、それから知的障害の養護学校に通っている方は著明な増加というような全国的な傾向がございます。
さらに、障害という分け方をしたとしても、合併重複障害ということが言われておりまして、例えば、肢体不自由の養護学校に通っている方につきましては、文科省の統計では、七〇%以上が合併重複障害を持っていらっしゃる。逆に言いますと、三〇%ぐらいの方は肢体不自由の問題だけを抱えていらっしゃるということかもしれません。この七〇%のうちの五〇%ぐらいは知的障害との合併だという報告も伺っております。してみますと、当然のことながら、一つの種別だけではなくいろいろな種別に対応できる専門性ある教員の養成あるいは増加が必要だということになってきていると思います。
それからもう一つ、やはり軽度発達障害という子供さんは、通常学級にふだんはいらっしゃいますけれども、何らかの援助が必要だということになりますと、これは私見でもございますけれども、通常教育と特別支援教育の連携が恐らく必要になったきたのではないかと思います。
これにつきましては、これまでの私の印象では、通常学級の先生方のお考えと特殊学級の先生の考え方はちょっと別ではなかったか、あるいは連携が不十分なところがあったのではないかなというふうに考えておりまして、こういうようなことでより連携が深められていくということはすばらしいことだというふうに思っております。
この後は、やはり医療の面からのお話を若干させていただきますが、発達障害といいますと、ここに書いてあるようなきちんとした定義はないんですが、これは私がちょっと抜粋してきた定義でございますが、発達期に生じて、一生を通じて治療やケアの必要があるという考え方で、その代表例は、ここに書いてあるようなものではなかったかと思います。
近年言われております軽度の発達障害につきましては、この定義につきましては若干問題があるという説もございますが、知的障害はほとんどないか、あっても軽い、発達期に明らかになるが、対応によっては援助が不必要になることもあるし、逆に、思春期以降、社会生活が困難になる場合もある。逆に言いますと、適切な教育が受けられるということが大きくその予後を左右するということになるかもしれません。
してみますと、これは私見でございますが、障害というものをやはり連続体と考えるべきではないか。つまり、障害があるかないかではなくて、障害の中で丸もあれば、障害でないバツもある、そうすると、真ん中に三角がいっぱいあるというふうに思いますし、特に軽度発達障害と言われる方の中には、その中で移動もあるというふうに考えられるのではないかと思います。ある意味でいいますと、障害を固定的ではない、多少動きのあるものと考えていってよいのではないかと思います。
してみますと、その子供さんへの援助というものもやはり状況に応じたものでなければいけませんし、変化に対応したものでなければならないのではないかと思います。
それからもう一つ、若干混乱を来しているなと思いますのは、障害と疾患名ということで書いておきましたが、医療の方では、最近、疾患名を、ディスオーダーという英語を日本語で障害と訳すことがございます。広汎性発達障害あるいは注意欠陥多動性障害というときの障害は、これは疾患名でございます。一方で、知的障害あるいは視覚障害、聴覚障害というときの障害は、多分英語にしますと、ハンディキャップでございます。それから、神経心理学が用いております学習障害の場合は、これは英語はディスアビリティーでございます。日本語にしますと全部これは障害という言葉になっておりまして、どうもその障害の中に固定的なイメージがあるものと、それから変動的なイメージがあるものがあるということを頭に入れておいた方がいいのではないかと思います。
それから、軽度発達障害の増加ということで書いておきましたが、これは医療現場で見ております。私どもが持っている数字としましては、実数として、受診者そのものが二・五倍ぐらいになっておりますが、その中に広汎性発達障害と考えられる方々、広い意味の自閉症の方々と考えていいと思いますが、特に知的おくれを伴わない方は、比率としても四倍ぐらいに十年間でふえております。逆に、知的おくれのある方も若干ふえております。注意欠陥多動性障害という診断をされる方も十年間で二倍前後の増加でございます。
私が最後に申し上げたいのは、やはり障害といっても非常に幅が広い、従来の概念と若干変わってきているのではないかというふうに考えていただいて、これへの柔軟な対応が非常に期待される。そのためには、通常教育と特別支援教育の連携ということももちろんでございますし、教育以外の他職種の関与も必要ではないかと思います。障害者の側から見ますと、全日的な対応あるいは全生涯的な対応、きめ細かい援助をお願いしなければいけないと思います。
予後はどうなるかということでございますが、やはり低年齢のときの対応は非常に重要でございまして、自己有能感を持って大人になれば、きっとすばらしい発想で、偉大な業績を残す研究者や芸術家を中心にいらっしゃると考えられておりますし、対人関係のスキルがうまく獲得できませんと、社会生活に困難を来すようなことがあるのではないかと思います。
最後に、特別支援教育、この法律の改正も含めまして期待するものとしては、申し上げましたように、障害を連続体としてとらえていただけないか。低学年を中心とした対応、これはもちろん御家庭及び教育になると思いますが、これが非常にその後を左右するのではないかと考えております。また、重複障害への柔軟な対応もぜひやっていただければありがたいなと思っております。
以上をもって、私の意見にかえさせていただきたいと思います。(拍手)