姜博久の発言 (文部科学委員会)

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○姜参考人 おはようございます。
 本日は、意見陳述の機会を与えていただき、大変感謝をいたします。私はDPI日本会議という障害者団体に属しております。
 DPIと申しますのは、一九八一年に、当事者の方々が、専門家による自分たちの人生決定を改めて、自分たちの人生を自分たちで決定していくという前提に基づいて世界で組織されたものであります。日本では、一九八六年に日本会議が結成されております。その後ずっと、障害者の権利擁護活動に取り組んでまいりました。そして、四年前には日本の札幌で世界会議も開催させていただきました。今DPIの役割としては、国連で検討されております障害者の権利条約について主導的な役割をもって国連の場で発言をしております。きょうは、そういった立場から、今回の学校教育法の改定について意見を述べさせていただきたいと思います。
 私自身は、今大阪の地域で、障害を持たれた方の地域での生活を支えるという仕事もしておりますけれども、その中でも障害を持つ子供たちを抱えた親御さんからの相談も多数受けたりしております。きょうは、そういった経験も交えながらお話をさせていただきたいと思います。
 まず、私自身の教育歴といいますか、そういったことを少し述べさせていただきたいと思います。
 私自身は、大阪の結構古い養護学校で学童期を過ごしました。小中とその学校で過ごしまして、高校になってようやく地域の公立高校へ入学をいたしました。今から思えば、養護学校時代の九年間というのは非常に平和な日々でありました。しかし、その平和な日々が、実は私自身にとって、いろいろな力を奪っていたのではないかと今振り返って思うことがございます。それは地域社会と途絶した中で学校に通わなければならなかったということであります。本来なら、地域の同年齢の子供たちといろいろなところへ出かけ、いろいろな遊びを工夫しながらおつき合いをすべきところを、私が外へ出れば、まずさらされるのは、そういった同年齢の子供たちからの好奇の目です。変な歩き方をしている、何かおもしろい歩き方をしている、そういった中で過ごしてまいりました。そして高校に入って、次に経験したのは、私自身が障害を持たない人たちとどうつき合っていいのかわからないという経験でした。
 その経験を踏まえて、今考えますと、やはり地域から途絶した学校に障害を持つ子供たちが行くのは間違いだと思っております。やはり地域の学校で、先生たちや周りの親御さんも協力する中で、いかに同年齢の子供たちと一緒に過ごすのかということが、私たち障害者にとっては後々の人生を大きく左右するものだと考えております。
 そこで、今回の学校教育法の改正の案に対する意見ですけれども、まず、評価できることとして、支援を必要とする子供たちの枠組みが確かに広がったこと、軽度発達障害と言われる人たちがようやく注目され、学校でのきちっとした支援を受けなければならないというふうにされたことはまことによいことだと思っております。
 ただしかし、私自身の目から見ると、今回の改正案の中、特に現在の、原則的に養護学校へ行く人たちを一部に決める、そして軽度の障害であれば通常の学校に受け入れる、そういった枠組みを残したまま制度改正がなされることは非常に残念でなりません。
 今、世界では、インクルージョンということで、どんな障害を持っていようとも、どんなニーズを必要としていようとも、できるだけ通常学校の中で教育を受けることによって社会をつくっていくんだということが進められようとしております。障害者の権利条約でも、今案が示されておりますけれども、その方向で検討が進んでおります。そういった中で、日本の障害教育をめぐる動きは、依然としてこれまでの構造をそのまま残しているということについては非常に残念でなりません。
 きょうお示しした資料を見ていただければわかりますけれども、私たちが本当に必要としている部分は、地域の中でいかに過ごすかということです。きょうお示しした資料、世田谷の方で、最近、地域の学校に障害を持つお子さんを入学させたお母さんの手記であります。中には学校に対する不安感を述べられた部分がありますけれども、特に太字にした部分を読んでいただけばおわかりのように、周りの子供たちと保育所で一緒に過ごしたことがその子にとって、またお母さんにとっていかによかったのかということが書かれてあります。そして、学校に入った後も、学校側の工夫や先生たちの意識によって、いかにその子供が有意義に毎日学校生活を送ることができているかを述べたものであります。ぜひとも皆さんも目を通していただいて、そこにこそ学校教育の本質があるのだということをわかっていただきたいと思います。
 しかし、現実はまだまだそう簡単ではありません。お手元にお配りした資料の四ページ以降に示してありますけれども、これは私がいつも関係しておる、障害児を普通学校へ全国連絡会というところでつくっていただいた資料です。相談の中に、通常の学校へ行くという意思を示したときに、いかに地域の教育委員会といろいろな話し合いを重ね、あるいは拒否され、学校側とも話し合いを重ね、そういった親の努力の積み重ねなしに障害児が普通学校へ入れる状況にはまだないわけです。私どもの生活しております大阪などでは、一応、親御さんあるいは本人の方が望めば、原則として地域の学校で受け入れるという体制はとられておりますけれども、やはり現場現場で、学校学校で問題がないわけではない。
 そこの問題点はどこにあるかというと、原則的に、地域の学校へ障害児は入ることができるという原則がまだ打ち立てられていないからだと思います。やはり先生たちあるいは教育関係者の方々が、障害を持つ子供に対しては何が一番大切なのかといった場合、障害に、先ほど上野先生や参考人の方がおっしゃったように、ディスオーダーに注目したまま就学先を振り分けてしまっている。
 でも、私たちは、自分たちの体が動かないことで生きているわけではありません。障害は社会との関係で変わっていくものです。そういった中で考えていけば、地域の学校で生き、周りの友達をつくり、その力をかりながら生きる、あるいは自分たちの、障害を持つ子供自身の存在が周りの子供たちの心を変え、意識を変えていくということができるものだと信じております。
 実際に、私ども大阪の一地域であります豊中市では、長年、地域での障害児の受け入れということをやってまいりました。その結果、今どういう状況になっているかと申しますと、障害児とともに過ごした、今青年になった方々が学校の教員として大阪府下で活躍されている場合もあります。そういった方々が豊中以外の地域へ行ったときに何に戸惑うのか。子供のときに自分たちは周りに障害児がいることは当たり前だったのに、それが当たり前になっていないことに戸惑われるわけです。いかに長年の教育の成果が周りの障害を持たない人たちの意識を変えてきたかということの一つの例示だと思います。私自身は、こういったことは全国で実践できるものと信じております。
 きょういただいた今回の関連資料の中に、サラマンカ宣言という資料が入っていると思いますけれども、そこに、こういった一節があります。インクルーシブ教育は何のためにあるのか、差別的な態度と闘い、それをなくしていく社会を建設するために一番有効な手段なんだということをうたっております。私はこの言葉が大好きです。私たちが目指すべき社会はどういう社会なのか、それはやはり障害を持っていてもこの社会から排除されない状況をつくり出すことだと思います。そのためには、学校教育こそ一番の近道だと思っております。
 ここにお集まりの先生方もノーマライゼーションという言葉をお聞きになったことがあると思います。ノーマライゼーションの標語の一つに、一部の者を締め出す社会は弱くてもろい社会だという言葉があります。そういう点からすると、まだまだ学校教育の現場は弱くてもろい社会づくりをしているのではないかと危惧されます。
 ぜひとも、弱くない、もろくない、障害児も含めた本当に強い社会をつくっていただくために就学基準をもう一度見直していただき、根本的に、原則として障害を持っていても地域の学校へ行ける状況を法制的に整備していただきたいと思います。そうすることがやはり私たちが望む本当の意味でのノーマライゼーション社会の実現になると思いますし、インクルーシブ教育はそのための大変有効な武器になると思います。そして、その中で育った子供たちが将来大人になったときに、本当の意味でこの日本の社会を強くしていってくれるんだと思います。
 今回の改正案で、一応、教員免許状の話も改正の方向で出ておりますけれども、私たちは、今の段階で専門家の方々が不足していることはある意味認識しております。しかし、そういった部分を一部の人たちに限ることはないのではないでしょうか。将来的には通常の学校で、どんな子が入学してきてもそれに対応できる人材は普通学校の先生方によってもなされるべきだと思います。したがって、通常学校の先生方にも障害児教育に対する認識を深めていただくことを枠組みとしてつくってもいただきたいし、そういったことがインクルーシブ教育を進める上で非常に助けになるのではないかと思っています。
 ぜひとも、今回の改正、少しでもインクルーシブ教育を充実させる方向、また私たちが目指す社会をつくるための障害児教育の体制をとっていただきたく思います。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 116405124X01920060613_006

発言者: 姜博久

speaker_id: 29298

日付: 2006-06-13

院: 衆議院

会議名: 文部科学委員会