逢見直人の発言 (予算委員会公聴会)
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○逢見公述人 九〇年代のバブル崩壊以降、グローバル競争と厳しいコスト削減競争の中で、企業が生き残りをかけて戦略を立てなければならなかった、これは事実としてあると思います。
ただ、私は、競争には二つあると思っております。一つは、持続可能性ということを考えながら、そしてその中で人とかいろいろな資源配分のバランスを考えながら、長期的視野を忘れずに、しかし、もちろん企業ですから利益を追求していかなきゃいけません。そういう競争ルールの中でやっていく競争と、それからもう一つは、コスト削減のためにはそのほかの部分は無視していいんだ、安全も無視していいんだ、そして人件費を削減するということの手段は選ぶ必要がないんだという形でいく。これは奈落の底に向かっていく競争であって、その結末のどちらがいいかということは明らかだと思います。そういう意味で、市場競争の厳しさはありますけれども、そこに当然守らなきゃいけないルールというのがあって、それをつくることが政府の役割だというふうに思っております。
そういう点でいうと、私が懸念するのは、今、そうした奈落の底に向かっていく競争になりはしないかと。そのことに対して、やはり経営者の中にも問題意識を持つ人たちが出てきていると思います。ことしの日本経団連の経営労働委員会報告、通称経労委報告と呼んでおりますけれども、そこで、日本的経営をもう一回見直そうということが言われております。
今までの経営パラダイムの変化といった中で、もう日本的経営の時代は終わって、アメリカ型のルールに向かっていかなきゃいけないんだということが議論の主流になった時期もありますけれども、そこで起こってきた問題は現場力の低下ということであって、いろいろな大事故が起きた中で、職場できちんとした技能の伝承、技術の継承ということが人を通じて行われていないのではないかということが問題視された。
それから、短期的な利益追求の中で成果主義賃金ということが言われましたけれども、この成果主義というのは、端的に言いますと、頑張った人にはたくさん払います、しかし、普通の人や頑張らなかった人についてはそこそこか、あるいは、頑張らなかった人は下がりますという賃金制度なわけですね。
頑張った人には報いるという賃金システムにしたことによって、実は、大部分は普通の人なんです。黙々と、きちんとした仕事をこなしていく、チームプレーの中で決して自分が目立ったことをしないで、きちんとその仕事が行われていくことを誇りにしている、そういう人たちによって実は日本の職場集団というのは守られているわけですが、成果主義になると、そういう普通の人たちが日の当たるところに行かない、どうも目立つ人だけが成果をかすめ取ってしまうということがあって、そこで経労委報告では、ことしは普通の人がちゃんと報われる賃金制度にしなければいけないんじゃないかという提起が出て、これもまさに的を射た問題指摘だと思っております。そういう意味で、経営者サイドの中でも心ある人たちは、今までのようなものではなくて、もう一度日本の強さを見直して、そういう経営をしていくべきだというところに立ち返っているわけです。
私は、雇用の多様化そのものは否定しませんが、しかし、それが格差の拡大や固定化につながるような処遇ではなくて、働きに応じて適正に公正に配分できる仕組みというものをつくっていく、そして政府に対しては、人への投資ということについて、それは長期的に考えれば日本の国力、活力を高めることにつながるということを申し上げておきたいと思います。