川本裕康の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(川本裕康君) ただいま御紹介いただきました日本経済団体連合会で労働政策本部長を務めております川本と申します。
 本日は、男女雇用機会均等法の改正並びに労働基準法の一部改正の審議に当たりまして、私どもの意見を聞いていただく機会をいただきましたことに改めて御礼申し上げたいと思います。
 それでは、早速ではございますが、私どもの考え方、意見を述べさせていただきたいと存じます。
 まず初めに、今回の見直しにつきましては、公益委員、労働側委員、使用者側委員の三者構成によります労働政策審議会雇用均等分科会におきまして、一昨年の秋、二〇〇四年九月からでございますが、より審議が始められ、真摯かつ活発な議論が重ねられました。その結果、昨年の年末、十二月二十七日でございましたが、三者の合意に達し、報告書が取りまとめられ、そして労働政策審議会より厚生労働大臣に建議され、さらに今年に入りまして、二月七日でございましたが、建議の趣旨に沿った法律案要綱につき諮問と答申が行われたことであることをまず申し上げておきたいと存じます。
 次に、審議に際しての私どもの検討の視点、観点について四点ほど述べさせていただきたいと思います。
 その第一は、社会情勢の変化や理論、理屈に合ったものであるかどうかという視点でございます。第二は、企業経営や企業の活力を阻害せず、整合性の取れたものであるということであります。第三は、それぞれの職場、現場において対応が可能であり、誤解や混乱を来さないという視点でございます。第四は、男女雇用機会均等法は、結果の平等を求めるものではなく、機会の均等を図るものであって、その趣旨に合致しているということでございます。
 このような四つの観点から、また審議会におきましては、公益委員や労働側委員の御意見も踏まえ、私どもでは、企業の方々との会合を重ね、検討をしまして、審議会で使用者側委員を通じて意見を申し上げ、今回の結論をぎりぎりのものとして受け入れることを英断した次第でございます。
 さて、男女雇用機会均等法が施行されまして二十年たったわけでございます。この間、男女の雇用機会の均等の重要性の意識は社会に広く浸透したと思っております。また、企業におきましても男女雇用機会均等法にのっとった雇用管理が行われております。また、女性をめぐる雇用環境も変化しつつございます。私ども日本経団連も、会員企業を始め、広く法の遵守について周知に努めているところでございます。
 このような中で、審議の結果取りまとめられました今回の改正法案には、多くの項目がございます。時間も限られておりますので、大きな見直しポイントと思われる点につきまして考えを申し述べさせていただきたいと存じます。
 まず第一が、現行の女性に対する差別禁止から男女双方に対する差別の禁止に改める法案となっていることであります。これにつきましては、本来あるべき姿は男女双方の差別の禁止であろうと存じますが、その場合に、女性に対する差別の例外を規定する均等法第九条の特例措置、いわゆるポジティブアクションの規定でございますが、これにつきまして男女双方について同様の規定を設けるか否かなどが均等分科会におきましても議論となったわけでございます。
 私どもは、企業の自主的な取組を尊重しているポジティブアクションの現行規定を変えないこと、当面、女性に対する特例措置のみを保持することを適切と考え、これを前提として男女双方に対する差別禁止への見直しを行うことが適当であるとしたわけでございます。いずれにいたしましても、男女双方に対する差別禁止とすることは、今回の改正案の中でも実は大きなポイントであろうというふうに認識しております。
 なお、審議の過程におきまして、労働側委員より、均等法の目的、理念に、仕事と家庭の調和というものを盛り込むべきという御意見がございました。これに対しましては、使用者側委員は、働き方の多様化が進展している中にあって、様々な働き方が認められるべきであり、本来の性差別の問題以外の要素を均等法に入れるべきではないということで、強く反対を表明した次第であります。均等分科会での審議の結果、仕事と家庭の調和につきましては、分科会の取りまとめた報告、労働政策審議会の建議並びに法案に盛り込まれなかったということを付言しておきたいと存じます。
 第二は、限定列挙によります間接差別概念の導入が盛り込まれたことであります。
 間接差別につきましては、平成九年の男女雇用機会均等法の改正時にその検討の必要性が国会の附帯決議で示されるとともに、国連等からも指摘がなされていたわけでございますが、大変分かりにくいという概念であることから、雇用均等分科会におきましても最も議論となったところというふうに思っております。
 御承知のとおり、間接差別は、外見上は性中立的な基準等であっても、他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度不利益を与える基準等について職務との関連性がないなど、合理性、正当性がない場合をいうわけでございます。
 使用者側としては、このような間接差別の概念が一般的にはまだ浸透していないこと、合理性、正当性の有無の判断に幅があること、性中立的なものであればおよそどのような要件でも俎上に上り得る、つまり対象が無制限に広がりかねないということで、職場や現場が混乱するということなどからその導入に対し強く反対をしたわけであります。しかしながら、公益委員より予測可能性を高めるべく限定列挙の方式が示されたことから、私ども内部で改めて検討を行いまして、ぎりぎりの決断といたしまして今回の三項目の限定列挙とすることで受け入れた次第でございます。
 この点につきまして、もう少し具体的にお話をしておきたいと存じます。
 今回限定列挙として取り上げられました三項目は、一つ目が、募集、採用における身長・体重・体力要件であります。二つ目が、コース別雇用管理制度におきます総合職の募集、採用における全国転勤要件であります。そして三つ目が、昇進における転勤経験要件ということでございます。この内容につきましても実は非常に分かりにくいという部分もあることから、均等分科会におきましては議論を通して内容のポイントというところを明確にして取りまとめたわけでございます。
 例えば、募集、採用における身長・体重・体力要件であれば、例えば身長百七十センチ以上を要件とするときに、その身長が業務遂行上必要であれば何ら問題はないわけでございますが、業務上の関連性、必要性がない場合はこの百七十センチ以上の要件というのは合理性を欠くという基準となるわけでございます。これは比較的分かりやすい項目でございます。
 ところが、コース別雇用管理制度におきます総合職の募集、採用における全国転勤要件につきましては、コース別雇用管理自体が間接差別に当たるんですかとか、あるいは全国転勤要件そのものが間接差別に当たるのかとか、どういう場合に間接差別に当たるのか、どういう可能性があるのかよく分からないと、こういった懸念の声が私どもにたくさん寄せられておるわけでございます。これは、やっぱり間接差別の概念が分かりにくいこと、一般的にまだ浸透していないことの表れであろうかと思っている次第であります。
 そこで、均等分科会におきましては、具体的なポイントを盛り込んで取りまとめられたわけであります。具体的に申し上げますと、支店や支社がなかったり、又はその計画等がないにもかかわらず、総合職の採用基準に全国転勤要件を掲げることは合理的な基準とは考えられないということがこの報告書、建議の中に明記されたわけであります。したがいまして、コース別雇用管理制度や全国転勤要件そのものが問題とされるわけではないということを明確にしたわけであります。
 いずれにいたしましても、今回の三項目の限定列挙によって、無用なトラブルや懸念を生じさせず、間接差別の概念を浸透させていくことがまず何よりも重要であると考えております。
 第三は、男性に対しますセクシュアルハラスメントも禁止の対象とすること、調停の対象にセクシュアルハラスメントに係る紛争を加えることなどを盛り込んだ案となっていることであります。
 また、今回の法案が成立すれば、労働政策審議会の議論を経まして事業主の講ずべき措置についての指針を定めることとなろうかと存じます。昨年十二月の審議会でまとめられました建議におきましては、セクシュアルハラスメントの事後の対応措置につきまして、一つが事実関係を確認をし、事実関係が確認できたときにはあらかじめ定められたルールにのっとり対応すべきこと。二つ目が、セクシュアルハラスメントに係る紛争を調停に付すことも事後措置の一つとなることを指針において示すことが適当とされたことであります。
 セクシュアルハラスメントにつきましては、事実や経緯について、実は被害者とか加害者と思われる当事者間でしか分からない場合が多いわけでございます。したがって、企業がどこまで深くかかわれるのか、非常に困難な場合が多い。また、事後の対応措置につきましても、どのような権限を持って対処し得るのか、企業にとっては大変難しい問題であるわけでございます。したがいまして、今回の法案が実際に企業で対応し得る最大限の内容であるというふうに考えております。
 第四は、女性の坑内労働について、女性技術者が坑内の管理・監督業務等に従事することを可能とする法案となっていることであります。女性技術者の坑内労働につきましては、私どもに対しまして、業界よりの要請だけではなく女性の技術者の方々からも直接御要望がありましたことから、日本経団連として規制改革の要望をさせていただいていたものでございます。これによりまして、女性技術者の方々にとりまして大きな前進につながるものというふうに考えております。
 ちょうど時間でございます。私からは以上でございます。

発言情報

speech_id: 116414260X01620060426_002

発言者: 川本裕康

speaker_id: 25663

日付: 2006-04-26

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会