今田幸子の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(今田幸子君) 長年労働に関しての調査とか研究に携わってきた者として、また今度の審議会の議論に参加させていただいたという者として、公益の委員として参加した者として今日意見を述べさせていただきます。よろしくお願いします。
 今回の均等法改正の議論は、この法律の制定時、それからその改正という前回、前々回の審議のときと比べて、争点というものが非常に見えにくいというか、とらえ難いような、そういう印象を私は持ちました。
 今日、女性は雇用者の中で四割以上を占めて確固たる地位を築いている。だが一方、男女の格差というようなものは、賃金格差に見られるように、縮まるどころか格差が拡大をしているというようなそういう実態があるんですけれども、一方でまた、人口減少社会というふうな呼ばれているようなそういう局面に日本は立ち至っていて、女性の、働く人たちが、男女ともに働き、その能力を発揮するというようなことが非常に重要なことになっている。
 にもかかわらず、そういう状況であっても、何か今回の改正の争点というようなものが、もちろん前回、要するに法律の制定時というのはもちろん国を挙げての非常な関心と議論があったわけで、その改正というのも劣らぬ、そういう意味では国民の関心、争点というようなものが私たちの目の前にあって、それに対する関心が喚起されたという状況があった。それに比べるとということですが、ということが私のこの問題にかかわったときの印象でした。
 その理由としては幾つか考えられると思うんですけれども、まず指摘しなきゃいけないのは、均等法が二十年経過したわけで、そういう実績というものがあるということは理解しなきゃいけない。今、川本さんから御説明にあったように、企業の中でかなり男女の均等確保の必要性というのは周知されていると、そういう定着を見ているという、そういう状況は指摘しなきゃいけないだろうと思いますけれども、さらにさっき言いましたように、制定時にいろんな問題があって積み残して、課題として残されたものが改正均等法によってかなり整理されたと、法律としての整備というものがかなり進んだという、そういうこともその課題、今回へ向けての期待というようなものとしては余り大きなものではないというような、整理されたという状況があったんじゃないかと思いますし、さらにこの二十年、さらにこの十年、雇用における大きな変化があったわけで、雇用の多様化、非正規の拡大というようなそうした大きな雇用の変化がこの十年とりわけ進行したということがあって、それは多様化は、非正規の多様化だけじゃなくて、正規の雇用の多様化をも巻き込んだ大きな多様化現象が進行したということがあると思いますし、さらに出生率の急激な低下というようなことがあって、少子化対策ということが国民の関心の非常に大きなものになっているというような、そうした環境の状況を前提にして様々な要因が重なって、恐らくそういうこと、我々としては、今回の改正の争点というのはどうなのか、均等法は今後どっちへ向けて、どういう方向へ向けて改正されていくのかということについてなかなかこの争点というものが、私だけなのかもしれませんけれども見えにくい、あくまでも前回、前々回との比較ということでしょうけれども。そういうことで均等法改正という作業がスタートしたというふうに私は理解しております。
 その結果、事務局を中心として研究会での基礎準備、それから審議会でのかなり熱心な議論というようなものがあって、今回の案、原案というようなものが到達したというふうに理解しておりまして、この間、労使の非常に真摯な議論、それから様々な局面での苦渋の決断等があって今回の案にどうにかたどり着いたという、そういうことで、私自身はこの議論に参加させていただいたということもあるわけですけれども、今回の案には及第点を差し上げたいと、差し上げるというか付けたいと、そういうようなスタンスで今日は話しております。
 それで、いろいろありますけれども、一応三点ばかりに絞ってちょっと意見を述べたいんですが、大きな問題としての間接差別ということなんですけれども、この間接差別が今回の改正で明記されたということは非常に高く評価されていいと私は思います。非常に、今言いましたように、雇用の大きな変化の中で多様化も進み、複雑化が増してきている、そういう状況の中で、いろんな、何といいますか、差別だとか格差というようなものもとらえ難い、かつてのような労働市場の状況とは違ってとらえ難い、そういう状況の中で、今回そういう間接差別という一つの法律のルールというようなものがこの均等法の中で明記されたということの意義は非常に高いというふうに考えます。
 間接差別の定義とか云々は、今川本さんがおっしゃったので重複しませんが、この間接差別に関しては、前回からの積み残しということもあって、非常に差別法理として大きな期待が掛けられたということは確かだと思うんですね。特に働いている人たちからの観点に立った場合に、新たな間接法理をてこにしながらそうした差別を是正して平等実現という、そういう方向性というのは非常にしっかりしたものであっただろうし、期待を託したという、そういうのはあるわけですけれども、一方では、この間接差別というのが、定義はまあ明らかですけれども、現実に雇用の現場の中でといった場合には川本さんがおっしゃるようなのもうなずけるわけで、かなりの現場における混乱というようなものがある。それを避けたいという企業サイドの意見というのはある意味では説得力があると。この激突の中で、この二つの意見の激突があったわけで、この中で限定列記というような、法案に間接差別という考え方を明記して限定列記という形が取られた。そのことは、双方にとってかなり、法案の原案を作るまでとしては、厳しい労使双方かなりの努力があったんだろうと思います。そういうことでこの案が生まれたという、繰り返しますが、そういう意味で非常に意義が大きい。今後、この法案、この限定列記をして明記した、これをどうつなげていくのかということをこれからアイデアとして考えなきゃいけないだろうと。
 裁判過程において、そういういろんなこれから、これが一つの基準とはなるでしょうけれども、そういうものを大きく、間接差別法理というようなものが設定されたわけですから、現実的には直接差別しか扱えなかった状況とは大きく変わるわけで、基準ができ、それを基準にしながら裁判過程でこれが、無限定に広がると企業サイドは問題なんでしょうけれども、恐らく裁判過程でそういう拡大をしていくということが期待されるわけですし、さらに、もう少し、裁判過程だけで任せるというのではなくて、そうした職場、現場においていろいろな間接差別的な雇用ルールというようなものがあって、それを労使の中で情報として集約して、さらにそれを、何か次のステップへ行けるような何かそういう、行政が行うなり労働組合なり、そういう工夫が必要なんだろう。外国のようにそういう裁判とかいろんな過程で間接差別ということが蓄積されていっているという状況では日本ではないわけですから、これからそういう工夫というものが、これで、列記で終わりというわけではない。労働側が心配するように、列記されたことによって間接差別というものがかえって歯止めが掛けられる、これ以外はオーケーなんだというような、そういうことではない、この法律の趣旨ではないわけで、そういうことが重要なんじゃないかというふうに思います。
 時間がないので、もう一つ。第二の点で、妊娠、出産等に不利益取扱いということは禁止された。これは、非常にこの今回の改正の中では特筆すべき大きな成果であったと。当然といえば当然のような、もう遅きに失したという感じの感想もあるかと思いますが、今、均等法以降、育児休業制度が整備されて、働く女性が出産をして子育てしながらの制度が整ってきているわけですけれども、私たちのように実際に調査やっている者からいいますと、現実に仕事をしていらっしゃる方が子供を、妊娠し出産して、継続というまでサバイバルで、そこまで行き着かないで辞める人が非常に多いということなんですね。データで見てみますと、均等法前と均等法以後で大きく変わってないか、むしろ継続する比率が減っているという現実があるわけです。
 一方では、出産した人の育児休業制度、それ取得する率はかなり上がっていますし、育児休業制度の定着というものは確かに進んでいるわけですけれども、他方で育児休業制度にあずかる前に辞めてしまっているという女性は相変わらず多くて、これは若年者の非正規雇用が増えてその人たちが辞めるというだけじゃなくて、正規の人たちの中においても、要するに妊娠、出産で辞めるという、そういう人たちというのは相変わらず。
 これが継続というものの比率を高めないということと、さらに問題は出生率の低下ということにも大きく結び付いている。つまり、そういう妊娠、出産して継続するというそういう道か、妊娠して辞めるという、こういう二者択一の状況に置かれているという、そういう状況下で継続したい女性は結婚もしないし妊娠もしない、子供もつくらないというような選択をせざるを得ない、そういう傾向になると。
 そういう意味で、今回、妊娠、出産による不利益取扱いというのを明記してこの規定が置かれたということは余り関心を、あれですが、当たり前のように扱っていますが、非常に大きな点、これもっと評価して、今後この規定を企業が守ってもらえるような、そういうものが必要だというふうに思って、あと少し時間。
 そういう意味で第三点は仕事と生活の調和ということですが、結論としましては、これ非常に重要なことで、差別の禁止ということと併せて、その調和というものの両輪を持たなければ男女の真の平等というようなこの実現はないと。そういう意味では非常に重要であり、是非この均等の枠組みの中に仕事と生活の調和というのは入れたいと個人的には思ったわけですけれども。
 ただし、この均等法の枠、法律の枠組みというのがあるわけで、成立当初、皆さんも御存じのように、そういう福祉法から出発した時点においては、そうした両立というような視点というようなものは持っていたけれども、改正法の中で明確に禁止法としての性格として整理されたというようなことから、さらにまたそういうこの間、調和というような論点をこの法律の枠の中に持ち込むということは非常に法理論的に難しいというような、そういう判断があった。私は法律家じゃないんで、その辺り非常に自信持って言えないんですが、そうだと言われればそうなのかなということで。
 そういう意味で、この仕事と生活の調和というような課題は非常に重要であるとして、この問題に関しては均等法だけではなくて様々なアプローチというようなものが必要で、元々仕事と生活の調和って非常に広い課題を抱える問題ですから、近年様々な労働関係だけでも、均等法とか次世代育成法だけじゃなしに、労働関係だけでも労働時間法制とか労働契約法制とか、その他のいろんな安全衛生法とか、そういう改正の中でこの観点が取り入れられて非常に多様なアプローチが行われて、そうした状況でそういうものを総合的にこの問題へとアプローチしていくという、そういうスタンスも現状においては取らざるを得ないのかなという、そういう意味で今回のこれを見事に、非常に、排除されたということで問題は残したとは思いますけれども、次へ向けての課題として、さらに結論としてはこれはそうした様々なアプローチで問題にするよりも、やはり何かまとめた、両立支援という、仕事と生活の調和両立支援促進法みたいな、支援対策法というような形の、何かやっぱり総合的な支援というようなものが今後議論として必要なんじゃないかと、そういうふうに思っております。
 そういうことで、結論としては、間接差別というものが明記されて、今回の原案ということで落ち着いたということは妥当であろうと。ただし、それをもう少し、それで裁判過程とかにゆだねるというだけではやはり不十分なんじゃないか。何らかの、それを情報集約してそれを消化していくような、そういう手だてというのが何らかの形で考えられはしまいかという、そういうこと。
 それから、生活の調和というのは、この法律の中ではらち外として排除されたけれども、これはこの法律としては致し方ない。ただし、この法律に関しては、新たに両立あるいは調和促進法、支援促進法というような何かそうした方向付けをもう検討すべき状況にあるんではないかということが私のこの法律改正に当たっての考えであります。
 以上です、時間が来ましたので。

発言情報

speech_id: 116414260X01620060426_004

発言者: 今田幸子

speaker_id: 11844

日付: 2006-04-26

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会