坂本福子の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(坂本福子君) 私は、ちょうど弁護士になったのが一九六〇年、そして女性差別の裁判が起こり出したのが六〇年代半ばからなんですね。その意味で、ずっとそういう差別事件にかかわってきました。やっぱり裁判を起こすというのは、職場でそういう差別があったからこそ起こってきているんだと思います。
今回、均等法の見直しの中で、建議の中で、男女雇用機会均等の確保を徹底するために必要な法的整備の時期に来ているとの基本的考え方を確認したところであると。建議で政府がこう言っているんだから、今度こそ本当にこの均等法は徹底した男女の均等を守ってくれると、いや、そういう法律ができていいはずだということを大いに期待していました。しかし、その中身の具体的条項を読んだときに、私たちは本当にがっかりしたんです。
時間もないことなんで、四つの点について申し上げたいと思います。
第一に、基本的理念の中の仕事と家庭の両立、少なくとも女性が平等に働いていける、先ほど連合の方がやはり長時間労働の男性の問題を言っておりました。そうであれば、やっぱり女性はそのような職場の中で働き続けられることが、そして結婚して子供を持った場合にそうして働き続けられるんだろうか、そのことを疑問に思ったときに、やはり基本的には仕事と家庭の、職場の平等、双方とも平等ということが言えると思います。既にILOでは、百五十六号条約、百六十五号勧告でもって一九八一年に家庭責任を持つ男女労働者の平等の問題ということで採択しております。
ちなみに、これだけ申し上げておきますと、実に二〇〇一年の総務省の統計基本調査、政府調査ですけれども、家事労働の時間について、共働きの妻は三時間三十一分、夫はわずか九分なんですね。その前の九六年の、五年間の前の調査が、これ全部共働きです、妻は三時間三十五分、夫七分という、これ政府資料から出ております。五年間に夫は二分家事労働が増え、妻は四分縮まったと。
やはり仕事と職場、そういう中で本当に日本の少子化の問題も消えていくんじゃないか。そこがなければ、やはり男女の平等というものは来ないんだと思います。
〔委員長退席、理事岸宏一君着席〕
第二に、間接差別の問題です。
法案では、先ほどからずっと出ておりますように、三つに省令で限定しました。しかし私は、差別は、直接差別であれ間接差別であれ、差別というものは絶対に許されないと思います。平等は人間の基本的人権です。にもかかわらず、なぜこの三つに限定したのか。既にEUでは、一九七六年に男女均等待遇指令、これを出しまして、直接あるいは間接、いずれの差別も禁じております。そのため、EU各国では間接差別をほとんど禁止しているということが言えると思います。
今、山田先生の方もおっしゃいましたけれども、政策研究会が間接差別で七つ、これは例示です、いわゆる省令による七つの限定列挙ではありません。間接差別が何が分かりにくいかということをいったときに、政策研究会の中では七つの例を挙げているということになってきております。例示列挙であれば、それに当てはまらなくても、これが一つの例示だよということになって次々と拡大するので十分です。しかし、省令でもって限定してしまって、法律上、厚生労働省の定める省令によるということになってくれば、その三つに限定されるわけです。
果たしてこれが、じゃ、その三つ以外の問題について間接差別として訴訟ができるんだろうか。建議の方では、判例が確立したときというような、判例でもって考えられるときというふうに言っております。しかし、判例というのは本当に各裁判官にもよりますし、分からないものだと思います。
私は、その判例を例として、大変均等法のための苦汁を自らかかわった事件で二つなめました。一つは、岡谷鋼機という商社の事件です。それから一つは、兼松という商社の事件です。いずれも商社で、コース別雇用になりました、均等法の前後に合わせて。そして、その判決は約十年後に出ました。
〔理事岸宏一君退席、委員長着席〕
そこで何を言われたか。少なくともそういう男女差別の配置、昇進について言うならば、これは西村さんの言われた住友電工と一緒ですけれども、憲法十四条の趣旨に反するけれども、当時の均等法は要するに努力義務規定だったと、禁止規定になったのは定年解雇だけであったと、だから公序に反しないと。まさしく憲法があって何なのと言いたいところなんですね。
その九十条に反しないという言い方として、これまた均等法を即使っています。というのは、九七年に改正された均等法は努力義務規定であったと。その後、禁止規定になったと。九七年の禁止規定は九九年から施行になったと。したがって、九九年の四月一日以降は違法である、しかし九九年の三月三十一日までは使用者側の差別は違法じゃないという言い方なんです。たった一日で何で公序がそんなに変わるのかということを私は物すごく怒ったというか、そんなばかな話があるかということを言ったんですけれども、判決はそういうふうに出てきた。
要するに禁止規定だから、でも、率直に言いますが、一九八五年の均等法が成立するときに、これは八四年の百一国会で赤松婦人局長と、当時の、それから、当時、亡くなられましたけれども、坂本労働大臣、これは国会で答弁していることは、今まで何にも禁止規定の法律がなかった、男女差別を禁止する法律がなかった、しかし、判例としては、男女の定年差別、それはもう最高裁で八一年に確立しているじゃないかと、それは公序できているんだ、その公序が悪くなることはないということを答弁しまして、何回も繰り返して答弁しまして、ところが、見事、私がもらった判決は、実に二〇〇〇年、二〇〇二年と、そういうような形の判決が出されたんです。ここまでやっぱり禁止規定と努力義務規定と違うのかと。そんなばかな、一日で違うなんてこと、しかし、法律はさかのぼらないということなんですね。だから、建議がこう言ったって、いつ本当にそれができるのと。やっぱり限定列挙については、これは絶対に通していただいては困るというふうに思っています。
例えば、それから、もう一つ言うならば、非常に非正規の労働者が増えています。御存じのように、政府統計であっても、今男性の正規社員は八二・三%に比べ、女性の正規は四七・六%、既に半数を割っているんですね。だから、非正規が、いわゆるパート、派遣、それらを含めて半分以上ということになっております。
EUで言っているのは、例えばパートが非常に女性が多いという場合には、いわゆる女性だけがそういう低賃金の労働条件、その他の労働条件の不利益を受けているということについては、これは間接差別に当たるということを言われています。というならば、私はこの国でもやはり間接差別に当たる例が結構出てくるんではないだろうか。それで、女性たちがその間接差別を直していけるケースが結構あるんではないだろうか、そんなふうに期待しております。
それからもう一つ、これはどなたの参考人もおっしゃらなかったけれども、弁護士の場合の立場で言えば、いわゆる挙証責任の転換です。仮に間接差別が規定されたとしても、今回の法案では、三つに限定したものでは確かに挙証責任の転換を規定しています。要するに、使用者側が、こうこうこういう合理性があるんだよと言うことの責任転換です。しかし、すべての差別については、やはり差別を争うときには資料はこれは使用者側が握っているんですね。それを使用者側から引き出せるというのは大変なことです。EUを引きますけれども、EUは九七年に挙証責任の転換指令ということを出しております。日本でも、この挙証責任の転換はきちっと既に判例では出ております。
したがって、直接、これは既に、最初に出されたというか、一九九六年の八月に広島にある石崎本店、これは男女の賃金差別を争った事件ですけれども、ここで、要するに、男女差別があるという資料を出せば、使用者側においてそれが男女差別でないという立証をしなければならないと、その資料を提起しなければならないということを出され、その後、二〇〇一年の五月に岡山地裁で内山工業事件、そして二〇〇四年の十月に、これまた岡山の高裁でもって、同じくそういう挙証責任を認めた判決を出しております。
やはり、これは裁判を起こせばそういうことが非常に身近に感じるのかといえば、決してそうではないと思います。職場の交渉でも、組合が交渉するときに、やっぱり挙証責任の転換ということがきちっと規定されれば、法律でこうなっているよ、だから資料は見せなさいという、この交渉が組めるんだと思います。したがって、私はやはり、この挙証責任の転換ということはきちっと入れていただきたいというふうに思っております。
それから、三番目に行きますと、やはりポジティブアクションの問題。これは、私どもは前から義務規定にしてくれと。少なくとも附帯決議でも、ポジティブアクションは附帯決議の中にもきちっとうたわれております。それから、CEDAWのこれは最終コメントからの中でも、やっぱり我が国のそのときの報告、二〇〇三年ですか、のその前、それに出した報告の中で、いろいろ均等法を作って男女平等は進んできていると、しかしまだいろいろと残っていると、それを推進するためにはポジティブアクションの強化ということをはっきり言っているんですね。にもかかわらず、今回こそは、私は努力義務規定はなくなって禁止規定になるかというふうに思っておりましたのに、残念ながら、それがどうしてと言いたいんですけれども、ポジティブアクションすら努力義務規定に収まりました。やっぱり裁判でやっていくときには、それは努力義務規定と禁止規定ともうはっきり違うんだということを、それは私は身にしみて感じております。
第四番目に、やっぱり一つ言いたいのは、雇用ステージ、これはどういうわけか、要するに均等法、今回もそうですけれども、賃金差別の禁止はありません。政府に問いただすと、これは労基法四条があるということなんですね。確かに労基法四条では、女子であることを理由にして差別してはならないという規定になっております。
しかし、後でごらんになっていただければ、御存じと思いますけれども、まず今日資料をお渡ししました、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する日弁連の意見書がございます。これは二〇〇五年、これが出される前なんですけれども、現在の国会から法案が出される、六月に日弁連として私どもが、差別をなくす、いわゆる基本的人権を守っていくためには職場でどういう法律があったらいいか、それを討議して日弁連として意見書として出し、これに基づいてのシンポもやりました。
その中でも言われているのは、やはり労基法四条があったとしても、今、性による差別、それが最も表面的に現れるのは、何だかんだといろいろ言われますけれども、やっぱり賃金なんですね。そのときに均等法に賃金が入らないということはおかしいと。性による賃金差別はきちっとこの均等法に禁止すべきだ。と同時に、労基法四条で、これは同一価値労働同一賃金を明記すべきだというふうに書かれております。というのは、やはり非正規が非常に多くなってきているんです。
御存じだと思いますけれども、長野県の丸子警報機の中では、いわゆる女性のパートが女性社員と比較した場合に、これは労基法四条は使われませんでした。なぜかといったら、労基法四条は、同一価値労働同一賃金なのかもしれぬけれども、女子であることを理由にというか、女性同士の要するに差別賃金についてはこれは、この規定は用いられないということだったんですね。だから公序良俗違反というふうに来ました。したがって、やはり均等法に賃金差別の禁止を入れるとともに、そして労基法四条は同一価値労働同一賃金、この規定をきちっと規定してもらいたいということが私どもの日弁連の意見書にも書かれております。
もう時間もありませんけれども、私は最後に一言お願いしたいのは、法律は国会で作られます。今、政府案から出されている法律について、私は、やっぱり何十年かの女性労働者の人たちと付き合い、その職場の実態を知り、そしてどんなに差別を受ける者が苦しいものかということを身にしみて感じてきました。先ほど挙げた岡谷は既に十年目、やっと解決いたしました。でも、あの均等法の一日の差で、二人の原告のうち一人は結局完全に敗訴になったわけですよね。今もう一つ挙げた商社兼松は、十年たってまだ裁判は続いております。
女性が裁判を起こすまでに、それは弁護士ですから裁判裁判と言うかもしれませんけれども、どんなに悩み、苦しみ、そしてそれを裁判を起こして十年間、どんな苦しみがあったか。やっとこぎ着けたときに、どんな判決だったか。そのことを思うと、本当にいい法律があったら、それは私たち女子の三十歳定年制の差別事件を争ったときからの、労働者たちのいい法律があったらねというのが、それが合い言葉でした。
だから、今回の、いわゆるこの法案を是非とも、一つでも二つでもいいから、やっぱり女性差別がなくなるように変えていただきたいということが最後のお願いです。
以上です。