田村耕太郎の発言 (国際問題に関する調査会)
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○田村耕太郎君 まず、皆さんに感謝の気持ちを伝えさせていただきたいと思います。
皆様の熱心な、そして積極的で建設的な参考人の皆さんとの意見交換から大変多くのことを学ばせていただきました。今日は、全くつたない私見ですが、少しだけ私の意見を披露させていただきたいと思います。
まず私は、日米関係を中心に、望ましい外交、これつくっていくための考え方について、私の意見と提言を述べさせていただきたいと思います。
もう外交だけに限らず、まあすべてのビジネスでも言えることですが、やはりまず最初には、相手と自分に対してできるだけ正しい認識を持つ、こういうことがなかなか難しいんですが、この原点に立ち返るべきではないかということから申し述べさせていただきたいと思います。
私は、ほぼすべての、まあ日米関係、日中関係、日韓関係に限らず、ほぼすべての外交政策に対する批判、こういうものは、この批判の源泉というのは二つの過剰な期待からくると思っております。
一つは、相手の外交姿勢に対する過剰な期待。日米関係でいえば、アメリカはもっとこうすべきだ、アメリカはこう言えばこうしてくれるだろう、そういうような過剰な期待ですね。もう一つは、自ら、日米関係に例えれば、日本の外交能力、特に交渉力に対する過剰な期待、こういうものが外交政策の批判の源泉にあるのではないかと思います。日本がもっとこう言えばアメリカはもっとこうするんではないか、日本はこういう毅然とした物の言い方をすべきだ、こういうような過剰な期待、この二つについてお話をさせていただきたいと思います。
このお互いの国力、お互いの立場というのをまずしっかり認識すること、そのためには一歩進んで、もし自分が相手の立場だったらどうなのか、自らがアメリカだったらどうなのか、自らがアメリカだった場合、日本はどう見られているのか、こういうものをシミュレーションすべきではないかと思います。
では、まずアメリカの国力に関して、アメリカがどういう立場にあるのかに関してちょっと見ていきたいと思います。
アメリカというのは今の世界人口の五%にすぎない国であります。もちろん二億人を超える人口を抱えていますが、世界全体の人口規模から見るとそれは五%にすぎない。しかし、世界のGDPの合計の三分の一以上を占め、二位の日本から六位の中国までの合計を上回ります。また、世界貿易に占める割合も、輸出で一二・三%、輸入で一九%と、二位のドイツの倍以上にあります。ちなみに、今台頭がよく言われている中国は、世界貿易に占める割合、まだ四%にすぎません。特許件数でも世界の約三割がアメリカのもの、そして世界の売上げ上位五百社のうち百九十二社がアメリカ企業、株式時価総額上位千社のうち四百八十八社がアメリカ企業です。
経済力が非常に優れているわけですが、また国民の活力の源泉という若さ、二〇五〇年の人口の中央値はアメリカが三十六・二歳、ヨーロッパは五十二・七歳になってしまいます。
ハードパワーの源泉であります軍事力、これについて見てみますと、アメリカの軍事費というのは今大体四千三百億ドル、これは世界全体の軍事費の四五%を占めます。これは軍事支出二位から十一位までの合計より巨大な軍事費支出になっています。つまり、ハードパワー、富、こういうもので世界でずば抜けている。
それだけではなくて、よく言われる、最近特に言われますソフトパワーで見てみますと、インターネット情報のうち英語が八五%、ハリウッド映画の割合は世界映画全体の八五%、二〇〇二年度のハリウッド映画の売上げは約五百十億ドルで、延べ観客数は二十六億人と言われます。マクドナルド、アメリカ文化の典型的なものと言われるマクドナルドは世界百か国以上に延べ三万店以上の店舗を抱えています。
先ほどの軍事費なんですが、軍事費が大きなだけではなくて、RMA、軍事技術革命、軍事技術のもう最先端度を示す、そういう研究開発費に至っては英独仏総計の倍以上を掛けています。
これだけずば抜けた大国、まあローマ帝国やモンゴル帝国など、歴史上大きな大国はあったんですが、こういう国と比較するのはなかなか難しいんですが、やはり総合的な国力では人類史上最高の一つに入るんじゃないかと思います。
これだけ世界で突出した力と富と文化的影響力を持つわけです。もし、我々日本が今のアメリカと同じぐらいの国力を持つ立場だったら、よく今アメリカは横暴でわがままで独り善がりと言われるんですが、もし我々がアメリカだった場合、アメリカ並みの国力、力と富と文化的影響力を持ったら、今のアメリカよりも寛大で謙虚で国際協調的と言えるでしょうか。やはり、これだけの国力があれば、ある程度あのように横暴でわがままで独り善がりになるのは仕方がないのではないかと私は思います。もっと言えば、過去の巨大帝国、ローマ帝国やモンゴル帝国などと比べて、もちろん国際情勢や時代の違いがありますが、極端に傲慢で国際協調無視と言えるかどうか、それはちょっとなかなかいかがなものかなと思います。
逆に、我が国の国力を見ていきたいと思います。
日本はどうかといえば、経済力に注目すれば世界で第二位ですし、しかしその人口規模とその若さを失いつつあり、経済規模でも中国やインドに今世紀中に追い越される可能性が高いと言われています。
翻って、ハードパワーと言われる政治力や軍事力について見てみますと、アジアの時代、アジアの盟主候補と言われながら、隣国との関係も行き詰まったままです。また、軍事力に関しましては、軍事支出は確かに多いんですが、ほとんどが人件費などで、軍備に使われるのはそのうちの約三割、アメリカから突出した対潜哨戒能力、防空能力ばかりを求められていますので、そのための高額兵器、イージス艦とか哨戒機とかパトリオット、そのものの購入を求められてきましたので、そのほかの兵器購入に回せるお金がほとんどなく、自立できない軍事力であることは言うまでもありません。
また、一次エネルギーの自給率は二割に満たず、カロリーベースの自給率、食料自給率ですが、これは四割ほど。やはり、アメリカに比べて、悲観するという意味ではないんですが、冷静な現状認識を持てば、アメリカに物を申して、アメリカにこっちの言うことを聞けよという立場ではなかなかないんじゃないかというのが私の認識です。
これぐらいの彼我の国力の差があるわけです。だからといって、指をくわえていればいいとは思いません。これだけの力の差があるんですから、やはりかなりの交渉技術とネットワークづくり、これをやっていかない限り、なかなかアメリカの外交政策に影響を与えるのは難しいと思います。
まず第一に、やはり、この委員会でも指摘されましたが、正確な対米理解が第一だと思います。
アメリカは、さきの選挙で分断されたアメリカとよく言われましたが、元々、歴史的に振り返ってみれば、アメリカの外交戦略は大体四つの歴史的な潮流に分かれていると言われます。時間の関係で詳しくは申し上げませんが、ハミルトニアン、ジェファソニアン、ウィルソニアン、ジャクソニアンほど、この四つぐらいに分断されています。
歴史的に見て、国際情勢によって、この四つがぶつかり合いながらも、国際情勢によって外交政策が振り回されてきた。言わば、一時期はかたくなに見えますが、結構、外交政策は時代によって変わる国であるというように私は思います。実際、イラクの現状などから、国際協調なしにはやっていけないとの反省的な認識も高まりつつあります。チャーチルがこう言っています。アメリカは常に正しいことをする、ただしすべての代案を試みた後にだという名言を残しました。
長い目で見れば、分断された世論や政策がぶつかり合いながら、失敗しながら、最後は世界にとって望ましい政策を取ってくる傾向が今まで強かったわけです。しかしながら、過去に比べて影響力がけた外れに大きなため、試行錯誤の過程で多大な迷惑をたくさんの国に掛けているというのが現状ではないかと思うんです。ただ、アメリカの外交は常に変化するという認識を我々は更に持たなければならないと思います。
それに対応するためには、この調査会でも出たとおり、議員や官僚の間で更なるアメリカ研究、それとアメリカの要人たちとのネットワークづくりが不可欠ではないかと思います。
アメリカの議員たちは、これは私の私見で、私のつたない経験からなんですが、余り他国に関心がないように思います。パスポートを持っていない議員も少なくないと言われます。自分たちが行かなくても、用があればあちらから来るという態度、これがよく見られるように思います。ですから、これから、今偉い人はもちろん大事なんですが、日本の姿勢としては、これから伸びそうな人物に日本とのパイプというカードを渡して持たせるために近づくというやり方も大事になってくるのではないかと思います。
また、この調査会にもアメリカ留学した議員が増えていますし、官僚もアメリカ留学経験者がたくさん出てきています。アメリカは、私は学閥意識は日本以上だと思います。そのネットワークを生かす、こういうことが大切ではないかと思います。
参議院は六年の任期があります。フランスや南米では、議員を議員のステータスのままアメリカの大学院に派遣して滞在させ、そのステータスを利用して人脈づくりをさせている国もあります。より任期が長い参議院こそ、長期的視野が不可欠な外交をやがては担うべきだと私は思っています。超党派でアメリカに一定期間、国としてネットワークづくりのために議員を派遣する、こういうこともいいのではないかと思いますが、皆さん、いかがでしょうか。
どこにどのように働き掛けるかが重要であると思います。そしてまた、交渉技術を使って、アメリカの国益にかなうと相手が納得するように説得しなければならないと思います。また、人脈、ネットワークを使ってアメリカを交渉技術によって説得するだけではなく、日本も国力を更に強めて、もちろん国力の制約も認識しながらですが、やはり物申せる、そういう関係に持っていく必要もあると思います。
まずは、隣国である日中、日韓の課題をできる限りスムーズに解決して、アジア経済のためのFTAや更なる経済統合の中核となって、成長するアジアの利益を代表してアメリカに物申せるようにしていくべきだと思います。
こういうような国力の認識という点から見ると、ハードパワー、経済力、ソフトパワー、この観点から見ますと、対中国、時間の関係で長くは申せませんが、私はまだ日本が優位にあると思います。特に、中国が難題として抱えているその難題を解決するために必要とする技術、農業技術、エネルギー効率の向上のための技術、環境対策の技術、これらは日本が世界で最も優れた能力を持ち、中国のこの難題を救える能力があると思います。カードを持っているわけです。より余裕を持って、中国を助けるぐらいの覚悟で日中関係取り組むべきではないかと思います。
最後に、アメリカとの関係ですが、アメリカから見て、やっぱり強いカードとして使えるのは、日本が戦略的にアメリカの安全保障上の根拠地である、あり続けるであろうという私の見方です。地球の半分、ハワイから喜望峰まで、インド洋のすべてと太平洋の三分の二、この米軍を支えられる戦略的な拠点は地理的にも日本だけだと思います。また現在、アメリカの装備のサポートのためにはアメリカと同等の工業力、技術力がないと無理だと思います。言わば、アメリカの方が日本による同盟解消をずっと恐れてきた、そういう歴史があると思います。アメリカの安全保障戦略上、日本は必要不可欠、こういうカードもうまく使っていくべきだと思います。
最後に、福沢諭吉先生の言葉を使って、これ昔の言い方なんで、なかなか難しいんで、簡単に私が現代風に言い直してみたんですけど、それを紹介して私の意見を締めたいと思います。
外交を論じるときは、自分一人の気持ちではなく、外務大臣になったつもりでいろいろな要素を考えなくてはならない、そうすると、すかっとしたことは言えない、こういう言葉があります。私の意見もすかっとしていませんが、そういうことだとごしんしゃくいただき、私のつたない意見を紹介させていただきたいと思います。
ありがとうございました。