澤雄二の発言 (国際問題に関する調査会)

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○澤雄二君 公明党の澤雄二でございます。
 この国際問題調査会で一年半にわたって質疑、討議をさせていただきまして、そのことを踏まえまして、自分の今考えておりますことの一端を述べさせていただきたいと思います。
 今のアジアでの日本の外交・安全保障政策を一言で言うならば、日米同盟は強化されたけれどもアジアでの日本の影響力は低下をし続けています。そうした中で、日米同盟を基軸にしつつ東アジア政策でバランスを取っていく、その具体的方法として東アジア共同体構想が浮上して、その是非を問うのが当調査会の目的の一つでもあります。
 今日、東アジア地域で客観的情勢を眺めてみますと、経済的側面が顕著でございます。東アジア域内の貿易額は五〇%を超えました。EUに次ぐ数字です。もちろん国別の格差はあります。これは、東アジア各国が投資先を北米やEUから域内へシフトしつつあるからであります。経済の側面では、東アジアでは既に現実的に経済統合が進んでいます。EUが政治主導で進んだのに対して、東アジア地域では民間企業の自由な統合が今進んでいます。
 東アジア共同体の構想については、疑問、疑念の声ももちろんあります。今、日本には共同体構想にちゅうちょする理由は私はないと考えます。積極的にこの構築に取り組み、日本外交の幅を広げ、この地域の平和と繁栄に寄与すべきであると考えます。
 東アジア共同体構想を考える場合に、その性格をどうするかというのは大きなテーマの一つです。目指すべき目標として、平和や民主主義や人権などの価値を掲げる価値共同体を目指すのか、そのような価値を掲げずに、市場経済や自由貿易というルールの中で経済的利益を追求する機能共同体を目指すのか、又は集団的安全保障などを目的とするのかなどに分かれます。
 アジア各国の政治・経済体制は非常に多様でございます。共産主義国家もあれば全体主義国家もある、分断国家もあります。文化、宗教も多様です。宗教は、EUではキリスト教に統一されていますが、東アジアでは仏教、儒教、イスラム教、キリスト教等々であります。このように多様性に富む東アジアでは各国がビジョンと価値を共有することは容易ではありません。ゆえに、民主主義や平和、人権という共通の価値に基づく共同体を目指すのは今は現実的ではないと言えます。まず、貿易やエネルギー、金融、経済協力といった地域の発展に必要な機能を中心とした経済共同体を目指すべきです。
 次に、共同体の範囲ですが、基本的にはASEANプラス3が中心となりますが、EUが六か国から二十五か国体制に拡大したように、また、キリスト教国家でないトルコの加盟についても交渉を始めたように、東アジア共同体も、地域的枠組みが重層的に機能することの方が望ましいとも言えるので、インドや豪州その他の加盟なども柔軟に対応すべきと考えます。
 経済を基盤とする機能共同体を目指すといっても、この東アジア地域は多様性の克服や不安定な安全保障関係、中国の台頭や高い対米依存度、さらに環境汚染、テロ、感染症など国境を越えた問題、格差の拡大、雇用、貧困、非民主的制度など課題はたくさんあります。
 一九二三年にクーデンホーフ・カレルギーがパン・ヨーロッパを提案してからEU発足まで七十年掛かっています。第二次大戦後、欧州石炭鉄鋼共同体、ECSCが発足してからEU誕生まで四十二年間掛かっています。
 東アジア共同体構築への阻害要因は多くあります。EUが政治主導であったとはいえ第二次大戦も乗り越えました。障害を一つ一つ克服していく過程にも将来の共同体の結び付きを強くしていく要因が生まれます。参加しようとする各国がすべて納得できるルールとビジョンを明確に示すこと、そしてその共同体意識を醸成していく強い意思を持つことができるかどうか、その方法を見付けることができるかどうか、それが共同体構築で重要な要素となります。
 次に、この東アジア共同体の構築を考える上で日本の外交政策で重要な問題があります。それは、日本と中国、アメリカの三か国の関係の問題です。特に大事なことは、東アジア共同体が現実のものとなってきたときに、アメリカが志向する懸念の問題です。いわく、この地域には米国の優位が揺らぐことはないのか、この地域における米国の優位が揺らぐことはないのか、そのことによってアメリカは政策の柔軟性を奪われるのではないか、また、アメリカが目指す民主主義への転換や人権の尊重が進展しなくなるのではないか等々であります。
 日本の外交・安全保障政策の基軸はもちろん日米同盟であります。とすると、東アジア共同体の構築を進める前にこのアメリカの懸念を取り除いておく必要があります。このアメリカの懸念の源は、源流はどこにあるかを考える場合、私はよくアメリカの外交の国家利益を考えます。
 アメリカの東アジアでの国家利益の第一優先順位は何か、ファーストプライオリティーであります。それは伝統的に不変であります。今も変わりません。それは、一国若しくは複数国によるこの地域の支配を認めないというものがアメリカの東アジアでの国家利益の第一優先順位であります。日本若しくは中国が東アジアを支配することは認めませんし、日本と中国が手を結んで支配することも認められないのであります。
 このことを理解する最も分かりやすい例えが、一九七一年に発覚しましたアメリカのキッシンジャー補佐官の日本の頭越しに行われた中国接近の忍者外交又は隠密外交であります。アメリカは、一九六九年の十一月から七〇年の三月にかけて中国接近の小さなカードを毎日送り続けます。例えば、アメリカへ入国する中国の卓球選手が今回は特別にビザは要らないよと言ったりとか、中国への輸出を禁止されていた商品、例えば化粧品であるとか、そういうものの輸出を認めるとか、本当に小さなカードでありますが、連日、中国へ向かって送り続けたことがあります。これが実は忍者外交の端緒だったのであります。
 このときアメリカのニクソン大統領は、ベトナムを停戦させること、アジアからの撤退を考えていました。これを実現するためにどうしても必要だったのが、北ベトナムの背後にいた中国の脅威を取り除いておくことでありました。
 一方で、アメリカは中国と日本が手を結ぶことも警戒する必要がありました。それは、複数国の連合による東アジア支配もアメリカは国益から認めるわけにいかなかったからであります。
 一九六九年、ワシントンでの日米首脳会談後の共同声明とその後の記者会見で、当時の佐藤総理は中国批判の会見をします。当然のように、中国は厳しい日本批判をその後連日繰り広げました。日本と中国の対立であります。アメリカの対中国接近のカードは、実にこの会見直後から開始されたのです。そして、その後間もなく、当時のキッシンジャー補佐官が中国に飛んだのであります。
 日本が東アジア共同体を進めるときに、このことが実は最も重要だとも言えると思います。アメリカに対して一〇〇%隷属はあり得ません。東アジア共同体や中国との接近によってアメリカに対してバーゲニングパワーを得ようとするときに、必ずアメリカの国益を念頭に置いて微妙なバランスを日本は見失わないようにする必要があるのです。東アジア共同体を論ずるときに、必ずアメリカにも門戸を開くべきだとの論があるのはこのことを意味しています。
 最後にもう一つ、東アジアの共同体の構築では大事なことがあります。それは、日本がリーダーシップを発揮してイニシアチブを取っていくことであります。もはや、ODAだけでは日本はイニシアチブを取ることはできません。もっと根源的な方法はないか。私は、それを平和と安心、安全の確立とその方法だと思います。
 EUは、人々の不戦への強い願いが不戦共同体としてのEUをつくり上げていきました。アジアにもその平和への思いは強いものがあります。また、貧富の格差、テロ、麻薬、人身売買、海賊、環境汚染等々多くの問題を、先ほども言いましたが、抱えています。
 日本の強力なリーダーシップによってこの地域に平和と安心、安全を確立するための方法として、最後に一つの提案をしたいと思います。
 それは、国連の新たな地域拠点として国連アジア太平洋本部を東京若しくは沖縄に設置してはどうかという提案であります。この本部の目的は、人間の安全保障政策として脅威が生じにくい世界の構築を目指す活動の拠点であります。脅威とは正に平和そして安心と安全を脅かすすべてのことが対象となります。
 今、国連はジュネーブとウィーンに事務局が、ナイロビに事務所が置かれています。ジュネーブでは人権や軍縮、ウィーンでは犯罪防止や国際貿易、ナイロビでは環境や居住問題というように分野を分けて国連活動の拠点となってきました。また、間もなくソウルに国連のITセンターが設置をされます。これは韓国がスポンサーになるものでございます。
 日本外交の中心の一つは日米同盟、そしてもう一つは国際協調です。国際協調の中心政策が人間の安全保障ですから、日本の外交方針としてふさわしいとも言えます。アジアだけではなく太平洋地域に広げたのは、カナダは人間の安全保障を政策として積極的に取り入れてきました。オーストラリアも国連の活動に積極的だからです。日本がイニシアチブを取るのですから、本部はもちろん日本です。
 そのほかにも理由があります。それは、国連のシンクタンクの機能を担う国連大学の本部が東京にあります。近年は、平和とガバナンス、環境と持続可能な開発の二つに集約した研究がここで行われています。地理的にも人材的にも、資本もインフラも、そしてシンクタンクも備えているわけであります。国連中心の有機的な活動を推進するのには最適の場所とも言えます。
 自国及び地域の平和と繁栄を実現したいと、その意思があれば、その意思が共同体づくりへの強い動機付けになります。国連アジア太平洋本部の実現へ向けて、政治家として今後とも活動を進めたいと考えています。
 以上でございます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 澤雄二

speaker_id: 8699

日付: 2006-04-19

院: 参議院

会議名: 国際問題に関する調査会