梶井功の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(梶井功君) 梶井でございますが、委員長、最初のごあいさつで忌憚のない意見をということでございましたので遠慮のないところをしゃべらせていただきますが、特に私は、この農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、これに的を絞って意見を申し上げたいと思っております。
 といいますのは、この今回の法案の非常に大きな特徴は、経営安定施策を一定規模階層以上の経営に限定してやっていくんだと、それで構造改革を加速させるんだと、こういう趣旨になっておりますけれども、私は一定規模階層以上、例えばこれ、示されているところですと例えば四ヘクタール、都府県で四ヘクタール以上とかなっておりますけれども、施策対象を一定規模階層以上に絞った形でもって経営安定施策を講ずるということは、構造改革の加速になるんではなくて、私はかえって減速になるんじゃなかろうかというふうに思っております。その点を中心にお話ししたいと思うんですけれども。
 お手元に今日、五ヘクタール以上農家の階層変動という表をお配りいただいたかと思うんですけれども、これは都府県の数字でございますが、この数字は、これは一九九〇年から一九九五年、九五年から二〇〇〇年と、こうなっておりますけれども、いずれもセンサスの数字の比較であります。
 この農業構造動態統計というのは、先生方も御存じだと思いますけれども、ただ、九〇年のセンサスのときの個票と九五年のセンサスの個票で比べて、九〇年のときに例えば五ヘクタールだった農家が九五年には幾らになっているかということを一々突き合わせた上でもって集計している非常に特徴のある統計なんですね。世界でもこういう統計を作っているのは非常に珍しくて、大変統計情報部、苦労して作っている統計だと思うんですけれども。
 それで、見てください。九〇年から九五年のこの五年間でもって、期首戸数といいますのは、九〇年に五ヘクタール以上の農家は都府県で二万六千四百十八戸でした。これがこの五年間、九五年までの間の五年間でもって、規模が変わらなかったのは一万九千七百六十一戸。この五年間に五ヘクタール以下へ規模縮小してしまったと、この規模縮小の中には、これ便宜上離農も含めてありますけれども、六千六百五十七戸あった。五ヘクタール以下へ五年間で規模縮小してしまったんですね。
 当然、二万六千四百十八戸は、六千六百五十七戸、五年間の間に減っちゃうわけですけれども、逆にこの五年間の間に五ヘクタール以下の階層から規模拡大して五ヘクタール以上になったという農家が一万五千九百十五戸ありました。つまり、五ヘクタール以下に規模縮小する方よりも、五ヘクタール以下の方々でもって意欲を持って、おれは頑張ろうということで意欲を持って規模拡大した方が一万五千九百十五戸。三倍近くいたということなんですね。
 それで、結果として、九五年の期末戸数は三万五千六百七十六戸というふうに増えました。増えたわけです。つまり、二万六千四百十八戸の中から六千六百五十七戸、二〇%以上は規模縮小しておっこちてしまうけれども、おっこちてしまう以上に五ヘクタール以下の方々から規模拡大して上がってくる方がいたからこの五年間でもって五ヘクタール以上の農家が増えたわけですね。
 同じことは九五年から二〇〇〇年の間でも見れます。数字を見てください。期首戸数は三万五千六百七十六戸、その中で二割ぐらい、二割以上の七千七百六十二戸は五ヘクタール以下に規模縮小してしまいました。しかし、その倍ですね、一万五千九百二十戸が五ヘクタール以下のところから新たに規模拡大して五ヘクタール以上になったと。それで、結果として四万三千四百三十八戸に増えましたと、こういう形なんですね。
 この九〇年から九五年、九五年から二〇〇〇年、この間の農産物価格の状況というのは、諸先生方御存じだと思いますが、九〇年から九五年まではそんなに悪くないですよね。それから、決定的に悪くなりますのは私は九九年からだと思いますけれども、九五年から二〇〇〇年の間もまあまあ良かった時期なんです。そういう時期でも、五ヘクタール以上の農家の方々でもって、せっかく五ヘクタール以上になったにもかかわらず、何らかの事情でもって二割以上は規模縮小せざるを得ないような状況に置かれる。これは、これだけ何万戸もいればいろんな事情が働くわけですね。働き手が病気になったとか、あるいは家族がけがしたとか、そういう形でもって規模縮小せざるを得ない、そういう条件が働いて、二割以上、下へおっこっちゃった。
 しかし、この条件、農産物価格が良かったという条件の中では、五ヘクタール以下の方々の中から、よし、おれはこの状況の中で頑張って規模拡大してやっていこうじゃないかと、営農意欲を燃やして規模拡大やった方々が規模縮小する方々よりも多かったと。これが多かったから、九〇年から九五年、九五年から二〇〇〇年というふうに五ヘクタール以上農家の増という形でもって、言わば構造改善は進んだわけですよね、進んだわけです。
 私、先ほど九〇年から九五年、九五年から二〇〇〇年は農産物価格条件がまだ良かった時期だと、こう申し上げました。そういう時期でもこうなんです、そういう時期でも。だからそうなるんですね。
 それが、この数字は、これは構造動態統計取ってごらんになればすぐ分かりますけれども、ただ、三ヘクタール以上という形で取ってもほとんど同じ数字になります。三ヘクタール以上取りましても、ほとんど同じような構造になります。一定数はどうしても、幾らいい条件の中でも何らかの事情でもって規模縮小せざるを得ない農家は出てくる。しかし、反面で、農産物の市場条件が良ければ、営農意欲を燃やして上がってくる方がいると。そういう構造がある中でもって、そういうメカニズムが働いている中でもって構造改善は進むんだと、こういうことですね。
 今度の新しい経営所得安定政策でもって一定規模階層以上に施策を絞る、その施策対象にならない人は、今後、これから見通されるのは、農産物価格は一層低下するぞという見通しの中でもって裸で放り出されるということになったら一体どういうことになるだろうかと。
 施策対象になる一定規模階層以上の方でも、この五年間の間に五ヘクタール以上は二〇%以上が規模縮小せざるを得なくなったということが示しておりますように、私は、やっぱり二〇%とは言わないまでも、一〇%とか、必ず規模縮小せざるを得ないような状況に置かれる方はかなり出てくると思うんですね。今後は絶対そういうことがないよという保証は何もないわけです。当然、下へおっこちるという可能性は出てくるんだということを前提にしていろいろ考えなきゃいけないんです。
 しかも、なおかつ、あんたはもう施策対象外よということでもって低農産物価格の状況の中に放り出されるというときには、その状況の中でもって、おれは意欲を持って規模拡大やっていこうという方が出てくるでしょうか。私は出てこないと思うんですね。出てこないと思う。
 これは、もう四年前のあれになりますか、三年前のあの〇二年の農業白書の中でもって、これは新潟県の農林水産部の調査を引用した形でもって農業白書は紹介していましたが、例えば、十年ぐらい前は規模拡大にとっての障害は農地の出し手がいないということだったと。しかし、今やそうじゃなくて、価格条件が非常に悪い、悪い上に生産調整の重荷がかぶさってくると、そういうことでもって拡大意欲をなくしているというのが農業白書でもって引用をしておりまして、それで構造改善の見通しは非常に暗いということを白書は結論しておりました。
 そういう状況に私は、これからは、特定規模階層に絞った形でもって施策を講ずるというふうなことをやったら、この数字が示しておりますように、もう下から、つまりこの施策対象よりその下が、四ヘクタールなら四ヘクタール以下の方々から、意欲を燃やしておれ頑張ろうというふうな意欲を取っちゃうわけですね。取っちゃうわけです。上昇してくるということを期待できない。しかし、片や、施策対象にしている人たちの中からは、確実に何%かは私は下へおっこちてしまうだろう。下から上がってくる方をいなくさせておいて、おっこちる方はこれはもう防ぎようがないということからすれば、これは構造改革の加速になるんじゃなくて、構造改革の減速になるんじゃなかろうかというふうに、こう思っております。その点が一つ。
 それからもう一つ、この施策対象を絞るということに関しまして、私、大変危惧を持っておりますのは、これは施策対象外の方々が今現実にどれだけの耕地面積をカバーしているのかと、そういう問題なんですよね。
 これも数字申し上げるまでもないかと思うんですけれども、都府県でいいますと、三ヘクタール以下の方々のところに耕地面積の七〇%は耕作しているわけです、現実に。それが急速に担い手のところに動いていくという条件がそんなにあるわけじゃない。これから長期の中でもって構造改善進むかもしれませんけれども、七〇%は現に耕作しているわけです。その七〇%の方々がこれは施策対象外よというふうな形でもって放り出されるということになったときに、一体本当に食料自給率の方は大丈夫なんだろうかと、これが大変気になります。
 特に問題になりますのは、今回の新しい基本計画の中では、自給率四五%、これ達成していくために何が必要であるかということで、いろんな主要作物の作付面積はみんな減になっておりますよね。減になっているやつを埋めるために、各作物はみんな単収を上げる計画になっているわけです。全生産者が生産意欲をうんと燃やして生産増強に努めてもらわなければ単収は上がっていかないわけです。それが大前提になって自給率の問題というのは計画されている。それに響いてしまうんじゃなかろうか。ここのところが大変気になるところなんです。その点は当然、営農意欲をなくしますと耕作放棄地というふうなものも増える可能性というのは多分にある。農地は動かないで、増える可能性がある。
 そうしますと、これ、四百五十万ヘクタールの耕地確保というのが、これは我々の生存権が懸かった数字として今度の基本計画でも、これは頑張っていくんだという数字が出されている。その四百五十万ヘクタール確保のところまで響いちゃうんじゃなかろうか。そういう点でいいますと、これからの国民食料の安定確保という点について非常な問題が出てくるんじゃなかろうかということを、この法案に関して私はそういう心配を持っております。
 以上です。

発言情報

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発言者: 梶井功

speaker_id: 20492

日付: 2006-06-08

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会