高倉翔の発言 (教育基本法に関する特別委員会)

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○参考人(高倉翔君) おはようございます。高倉でございます。
 私は、教育基本法の改正につきまして、大きく二つの柱でお話をさせていただきたいと思います。最初には、基本法改正に関する基本的な考え方、全体的な考え方について、二つ目は、政府原案及び民主党案における教育行政の条文というものをめぐりまして意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、前半の教育基本法の改正に関する基本的な考え、全体的な考えでございます。
 現行の教育基本法は、日本国憲法の精神にのっとり教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本の確立を目指した優れた内容を有していると考えます。この教育基本法が公布された昭和二十二年三月、私は旧制中学校二年生のときでございました。その公布の時期からちょっと時間が過ぎましたけれども、教頭先生が朝礼の時間のときに教育の機会均等についてということで、教育基本法から引用してお話をしてくださったということが鮮明に記憶としてよみがえってまいります。
 我が国が戦後復興を遂げ、豊かで民主的な社会を築き上げ、国際的にも一定の地位を確立する過程で教育が果たした役割について否定する者はいないというように確信しております。その意味で、教育の基本理念を定め、あらゆる教育制度の根本となってきた教育基本法の意義は十分に評価されなければならないと思っております。
 ところで、一方では、教育基本法が制定されて以来今日までの間に、私どもを取り巻く社会状況が大きく変化してまいりました。よく言われるように、東西冷戦の終結によって国際関係が変化した、グローバル化や情報化の進展、地球環境問題の深刻化など、現行法制定の時期にはだれも予想だにしなかった変化が生じております。また、個人と個人との関係、個人と家族、あるいは個人と地域などの関係も大きく変化し、人間関係の希薄化や地域コミュニティーの弱体化が進行しております。
 こうした変化の中で、教育においても、陰湿で執拗ないじめの問題、校内や家庭内での暴力の問題、学ぶ意欲の低下、学習離れなどと言われておりますけれども、こういった問題、あるいは、いわゆる格差の問題も教育の中に入り込むというように、現在、教育はたくさんの課題を抱えるようになっております。
 また、非常に大きな流れといたしましては、生涯学習ということが大きく叫ばれて、よく言われるように、フロントエンドモデル、前のところでもって終わってしまうというような教育のモデルからリカレントモデル、何遍も何遍も教育学習の場へ流れ戻ってくるというようなモデルへ教育のモデルが変換しているということが言われます。あるいは、これもよく知識基盤社会の進展ということが言われると。あるいは、教育の機会均等ということについて、これまでの障害の除去というような事柄から更に前進いたしまして、障害の補償と、コンペンセーション、こういったことが大きな課題として言われるようになっているというふうに思います。
 このような様々な課題に対応しながら、新しい時代を切り開く若い世代を育てていくためには教育の抜本的な改革が必要であり、その根本を定める教育基本法についても、現行の普遍的な理念を生かしながら、これからの時代に求められる内容を盛り込んだものへと改正することが必要であり、政府提出の教育基本法案に賛成をさせていただきたいと思います。
 具体的にちょっと申し上げますと、互いに支え合い協力し合いながら地域の形成に主体的に参画する公共の精神が前文と教育の目標にうたわれていること、あるいは我が国と郷土を愛するとともに、他の国、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度が教育目標に掲げられるなど特筆すべき内容となっております。ただ、言葉には意味と同時に意識と感情を伴うために、国と郷土を愛するという文言がかつての愛国心と二重写しになるなど、一部に反発が見られることは残念なことでございます。
 若干、あと中身について触れさせていただきますと、先ほど申しましたように、第三条に生涯学習の理念ということが新しく設けられたということは、正に今日的な課題に対応したものだというふうに思っております。
 あと二つ、三つのところを、教育行政にかかわる規定の新設などと関連させて、新しく設けたことなどと関連して若干の意見を述べさせていただきたいと思います。
 第四条の教育の機会均等、先ほども申し上げさせていただきましたけれども、その第二項に「国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。」と、こういったことが新しく規定されました。
 このことにつきましては、私、昨年の十二月に中教審の特別支援教育特別委員会の委員長といたしまして特別支援教育の答申をまとめたというような、そういった立場にございますので、非常にこの新しい文言の書き込みというものに対して感謝の意を表しております。と同時に、これは教育行政の責務というものを積極的に規定したものであるというように理解しております。
 第五条の義務教育の目的と国及び地方公共団体の責務、つまり行政責任が明文規定されたと、このことも、単に義務教育の規定だけではなくて、教育行政における国、地方公共団体の責務と関連した書き込みがなされていること。
 そして、第七条、大学と、あるいは第八条、私立学校。私、私立大学に移りまして十年たつということですっかり私立学校人になっておりますが、この私立学校が、あるいは私立学校の持つ公共性というものが大きくうたわれていると。しかも、国及び地方公共団体が私立学校にどういうふうな役割を果たすかということにかかわりまして、その努力義務が新たに設けられている、これも非常にうれしく思います。
 第十条の家庭教育、第十一条の幼児教育、ともに国及び地方公共団体の努力義務、行政の努力義務が書き込まれていると、これも同じでございます。
 第十六条の教育行政の二項から四項、これにつきましては新しく設けられたものでございまして、国と地方公共団体の行政的な責務というものが書き込まれ、特にその財政措置というふうなことにまで積極的に明記されているということに対して敬意を表しているところでございます。
 最後に、第十七条の教育振興基本計画については、これは当然、政府と地方公共団体の責務あるいは努力義務ということが明文規定されておりまして、これらはすべて教育行政にかかわる条文に成長したと申しますか、なってきていると。これまでの基本法では、それぞれのねらいなどが書かれているということでございましたけれども、それが国や地方公共団体の責務という形で、行政的な責務ということで明確な表現でそれが示されているということに本当に敬意を表しております。
 次、少し急ぎますけれども、政府原案及び民主党案における教育行政の条文についてでございます。
 政府の改正案の第十六条は、先ほど申しましたように、現行法第十条と比べて充実した、つまり行政責任ということまで書き込んだという意味で充実した内容になっているという感想を強く持っております。先ほど申したとおりでございます。
 やや繰り返しになりますけれども、一つには、国と地方公共団体の役割分担について基本的な考え方が示されている。国は全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を担い、地方はその地域の実情に応じて施策を実施するということが規定されております。
 また、第五条三項には、これもまた先ほど申しましたけれども、国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下にその実施に責任を負うと、これもまた行政的な責務が規定されております。
 もう一つ、財政上の措置が明記されていることといたしまして、いろいろとトータルで考えてみますと、教育再生を掲げておられる安倍政権において、未来への先行投資である教育に対し優先的な予算措置がなされるということを期待しております。
 次に、民主党案第十八条についてでございます。
 これについて見ますと、財政措置については非常に積極的な書き込みがなされている、あるいは学校理事会制度の導入を明記するなど、非常に意欲的な内容であるというように感じ取っております。しかし、若干疑問を感じる点もございます。
 それは、民主党案では教育委員会制度が否定されていると、それ、否定されているということでございます。自ら学校を設置し、その教育内容や教員の人事に責任を持っている地方公共団体においては、政治的中立の確保が強く求められていると思います。首長の地方公共団体における権限は大統領的と言われるように非常に強いものであり、首長が、教育だけに教育行政をゆだねることにはいささか疑問を感じざるを得ません。
 さらに、昭和二十三年ですか、地方教育行政法が成立して以来、一貫して教育委員会制度の根幹的な理念として、教育行政の中立性、とりわけ政治的な中立性というものの理念がずっと続いてまいりましたけれども、それがここで放棄されるというような感じを強く持ち、やはり一つの何と申しますか、感慨無量のものが、感慨無量と申しますか、どうしてもそのことには素直に納得できないものを感ずるわけでございます。
 以上、教育基本法改正に際しまして、教育行政の在り方を中心にお話を申し上げました。教育はあらゆる社会システムの基盤になるものであると考えます。教育基本法の早期成立と、それを踏まえた教育基本計画の策定、あるいは、何度も申しましたけれども、教育予算の一層の充実というものを期待させていただいております。
 まだちょっとあるようですので、最後ちょっと蛇足になりますが、今後の教育委員会制度、一体どういうふうにその在り方を考えたらいいのかと。なかなか難しいところがあろうかと思いますが、まず第一点は縦の関係で、国と地方の役割分担を一層明確にし、そしてどのように連携を強化するかということをもっともっと考えていかなきゃならないんではないかと。
 それから、第二番目は横の線でございますけれども、首長部局と教育委員会の役割分担の明確化と、その連携協力というものを更に推し進めていくというようなことではないかと思います。
 それから、最後になりましたけれども、教育改革国民会議の十七の提案のうちの一つにもうたわれておりますように、どうも教育委員会は組織マネジメントというような発想が弱いんではないか、こういうものを取り入れてはいかがかというような提言がございます。このことは、言ってみれば、あの臨教審当時に、教育委員会の活性化、若しくは教育委員会が形骸化してしまっているというような提言あるいは問題指摘をいただきまして、私、その後、教育委員会の活性化のための協力者会議のメンバーで作業をし、報告書をまとめた経験がございますけれども、そういったことを考えますと、今申し上げたような三つの考え方あるいは柱、そういったものを基にいたしまして、教育委員会をより活性化し、その強固な姿というものをつくり上げていくための努力というものをここで国民一丸となってしていくというようなことが求められるんではなかろうかと思います。
 失礼いたしました。二十四分になりました。以上でございます。

発言情報

speech_id: 116514048X00920061207_005

発言者: 高倉翔

speaker_id: 33439

日付: 2006-12-07

院: 参議院

会議名: 教育基本法に関する特別委員会