荒谷信子の発言 (教育再生に関する特別委員会)
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○荒谷参考人 皆様、おはようございます。広島県の東広島市から参りました荒谷信子と申します。
本日は、教育再生に関する特別委員会において参考人として意見を述べさせていただきますことを、大変光栄に思っております。
私は、平成十八年六月末まで四年間、東広島市の教育委員会の教育長をしておりましたことから、主として、東広島市の取り組みと現場から見た教育行政の課題、そしてそれを踏まえて、今回の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案についての意見を述べさせていただきたいと思います。
最初は、東広島市の取り組みと現場から見た教育行政の課題について申し上げます。
東広島市は平成十七年二月に一市五町が合併をいたしました。それを機に町づくりの将来像は、「未来にはばたく国際学術研究都市」となりました。人口は十八万人ですが、広島県内一の人口増加率、都市の成長力は全国十二位という数字を示しております。
その中で、教育委員会では、新しい町の人づくりを担い、学校教育改革と生涯学習の推進を車の両輪とした、新しい時代にふさわしい教育改革を進めてまいりました。定例教育委員会は月一回の開催ですが、必要に応じて臨時教育委員会を開催いたします。
市の中心市街地はマンション建設ラッシュです。中学校がマンモス化しておりますので、分離新設するか通学区域を見直すかで夜間や土日にたびたび臨時教育委員会を開催し、審議をいたしました。その結果、分離新設がよいという結論をもって市長と協議をいたしました。このような重要案件、大きな予算が伴うものについては、委員がそろって市長に要望をしましたり協議をいたします。
近隣五町と合併しましてからは、五町を持ち回って開催しておりまして、午前中は教育施設を訪問し、お昼は子供たちと学校で学校給食を試食し、午後からは教育委員会を開催いたします。
教育委員は五名です。産業界一名、他町教育長経験者一名、幼児教育・スポーツ関係者一名、芸術文化関係者一名、そして教育長という構成です。教育委員は、人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し識見を有するもののうちから任命されますので、年齢が高くなりがちです。
東広島市の場合、会議は大変活発で、委員の方々も御自分で参考資料を作成しましたり、よい情報を資料として提供されておりまして、議論は白熱しております。教育長も、委員という立場からと事務局を指揮監督するという両方の立場から発言しております。ただ、教育委員会の責任体制はといいますと、必ずしも明確になっていないという課題はございます。
教育委員会は公開で、教科書採択時など市民の関心事には多くの傍聴がございます。教育委員会の取り組みにつきましては、広報誌を年二回発行し、保護者に配付いたしますとともに、教育機関等で自由にお持ち帰りいただくことにしております。第一回は七月に出し、一年間の方針や具体的な施策を市民の皆さんにお知らせし、第二回は三月に出して、成果と課題をお示ししております。しかしながら、教育委員会の事務の管理、執行状況の点検、評価をし、公表するというところまでには至っておりません。
教育予算につきましては、教育委員会が策定しております学校教育プランと生涯大学システムアクションプラン、これは生涯学習推進のプランでございますが、この年次計画に沿ったものと緊急に取り組まなければならないものをまとめて、事業調整という形で市長に提示、協議します。
限られた予算の中ですから、市長の理解と議会の応援を得なければなりません。そのためには、平素より、市長や議会に対してタイムリーに情報提供をしたり相談しておくことが大切と思っておりました。市長や議会の協力のもと、市教育委員会として、国の基本的な教育制度の枠組みと県の方針は踏まえつつ、東広島市の独自性を出した施策は十分に行うことができたと考えております。他の市や町も同じだろうと思います。
広島県では、広域合併により八十六の市町村が二十三の市町になった現在、各市町教育委員会はこれまで以上に切磋琢磨し、特色ある取り組みが行われており、加速しているようにも思われます。
次に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
戦後、我が国の教育は、教育委員会制度のもとで、政治的中立性の確保、継続性、安定性の確保、地域住民の意向の反映を求めて成果を上げてきました。国民からの教育委員会への安心感や信頼感は非常に大きいものがあると思います。その一方で、教育委員会に対して指摘されている問題も多くあり、制度そのものを廃止するとか任意に設置するなどの意見もございます。
これらの意見がある中、「新しい時代の義務教育を創造する」という中央教育審議会答申では、教育委員会制度の今後のあり方については、すべての地方自治体に設置することなど現在の基本的な枠組みを維持しつつ、制度をできるだけ弾力化するとともに、機能の強化、首長との連携の強化、教育委員会の役割の明確化のための改善を図ることが適当であるとしております。
文部科学省では、地方教育行政の弾力化と地方分権化を推し進めるべく、地方教育行政制度の改正を数次にわたって行い、努力をされてきております。今回の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案もその一環であり、これまでのあいまいであった点をより一層明確にしようというものであると高く評価しております。
また、地方分権が進む中、市町村は広域合併で規模が拡大しております。したがって、首長は、広範な事務処理に加えて多くの課題を抱えることになりました。教育の分野においても、教職員人事や学級編制など、市区町村の権限と責任が拡大することも考えられ、教育の専門機関としての教育委員会制度という仕組みはこれまで以上に必要かつ重要になってきますので、その機能の強化が求められます。
法律案を具体的に見ていきますと、法律改正により、教育委員会の事務の管理、執行状況の点検、評価の制度化を図るなど教育委員会の責任体制が明確になることは、学校に対して点検、評価を求める教育委員会としては必要なことであり、また、教育委員の一層の自覚の喚起と市民に教育委員会というものをより理解していただくためには、不可欠であると思っております。
県費負担教職員の同一市町村内の転任については、最もその町の事情に精通しております市町村教育委員会の内申を重視すべきだと考えておりまして、待ち望んでいたことであります。
教育委員に保護者を含めることにつきましては、保護者の立場から見た児童生徒の様子がわかりやすくなりますし、任命に当たる市長も選任しやすくなるのではないかと思います。
市町村教育委員会の事務局に指導主事を置くように努めることにつきましては、社会教育法第九条の二には、「都道府県及び市町村の教育委員会の事務局に、社会教育主事を置く。」と必置規定があるのと同じように、指導主事を置くの方がよいと考えます。
教育委員会の法令違反や怠りにより生徒等の教育を受ける権利が明白に侵害されている場合、もしくは緊急に生徒等の生命身体を保護する必要が生じ、他の措置によってはその是正を図ることが困難な場合、文部科学大臣は当該教育委員会に対して是正の要求を行うものとするという今回の改正案は、当然のことだと思っております。
平成十年から三年間、広島県教育委員会は、当時の文部省から全国で初めての是正指導を受けました。法令にのっとらず、不適切な取り組みに対する是正であり、教育内容に関すること七項目、学校管理運営に関すること六項目の計十三項目について指導を受けることになりました。
その結果として、一つには、不適切な教職員の勤務実態が是正され、教育公務員としての自覚が見られるようになりましたこと、二つには、法令にのっとって実施する公教育の確立に向け、市町村教育委員会と校長等が一体となって取り組む体制づくりが進み、学習指導要領に基づいた教育実践及び研究が活性化するようになりましたこと、三つには、校長権限が確保されるようになり、多くの校長がリーダーシップを発揮するとともに、主任等の働きが活性化し、組織的な校務運営が行われるようになってきました。是正指導を機に、県を挙げて新たな「教育県ひろしま」の創造に向けて動き始めたのです。
私は是正指導後に市の教育長に就任しましたが、是正指導のおかげで教育現場は大変伸びやかになっており、広島県が、いち早く学校評価、人事評価も導入し、開かれた学校づくりが進んでいることを強く実感いたしました。
地方分権時代に国からの是正の要求や指示というものはいかがなものかとの意見もあると思います。これらを受けることは、教育委員会として恥ずべきことであって、あってはならないことであります。しかしながら、是正の要求や指示は、法令違反や児童生徒の生命にかかわるような場合に、義務教育に責任を負う国としての責務であると思います。
教育委員会の責任体制の明確化や体制の充実、教育行政における地方分権の推進と国の責任の果たし方について提出されております地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案の早期成立を望み、私の意見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)