島田晴雄の発言 (予算委員会公聴会)

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○島田公述人 島田でございます。公述をさせていただきます。
 二〇〇七年度予算は、八十二・九兆ということで案がつくられておりますが、これは今年度、大変景気が向上いたしまして、七・六兆円の税の増収があったわけですね。その増収はありましたけれども、歳出は今年度に比べて〇・六兆増ということで、一口で言えば財政再建型の予算ということが言えると思います。大変手がたいお仕事をなさったというふうに思います。
 そのおかげで、二〇一一年度の黒字化目標、いろいろなシミュレーションがありますけれども、楽観ケースでは、増税なしでも実現できるのではないかということも視野に入ってきたということで、健全な予算設定だと思います。
 それから、安倍政権は幾つか特徴的な政策を打ち出しておられますが、教育、これは学力調査とか学校評価、わずかですけれどもつけておられる。また、再チャレンジ、子育て支援といったところでめり張りをつけておられますが、額は小さいんですけれども、それぞれやっておられるということだと思います。
 社会保障については、自然増六千億円ということはそのまま認めておられますけれども、ただ、雇用保険の国庫負担分の削減というのを思い切ってなさったので緊縮予算ですね。中小企業対策、科学技術、情報化、控え目な額でもって質を高めようということで、一口で言えば、大変手がたい財政再建型の予算ではないかというふうに思います。
 ただ、きょう、私はせっかくの時間をいただきましたので、これからの日本経済の長期の展望をいたしました場合に、非常に大きな課題が我々の眼前にある。それは何かというと、人口が減っていく、高齢化していく、経済社会は成熟化していく、そういう中で、新しい活力、繁栄の手がかりをどうつかむかということですね。このままでは労働力が非常に不足していって高コスト経済になってしまう、そういうおそれが強いわけですね。
 私は、今こそ労働の側面に大いに注力すべきだというふうに思います。上げ潮戦略ということを言っておられますし、成長力の底上げということを強調されておられるのは大変適切だと思いますが、この成長力を底上げする基盤というのは何をおいても人材資源でございますから、そこらについて一言申し上げたいと思います。
 キーワードは、労働の質を高めることも重要なんですが、それより雇用の質を高めるということがはるかに重要だ、私は、これは先生方にぜひ念頭に置いていただきたいと思うんですね。つまり、同じ労働者でも、雇用の質、つまり資本設備とか働き方とか市場環境とかが整いますと、何割も生産性を高めることができる。わかりやすく言えば、自転車で通勤しなさいというのに対して、車を一台与えるから頑張りなさいと言ったら、全然生産性が上がるわけですね。ですから、むしろ、労働の質そのものも大切だけれども、もっと大切なのは雇用の質だ。同じ労働者がもっと生産性を上げて、もっと楽しく暮らせるという工夫があるので、その点について申し上げたいと思います。
 これのキーワードになるのは生産性なんですね。生産性ということで考えますと、日本の経済構造は三重構造になっていると思います。一つは、大変頑張っている国際級の企業ですね、トヨタとかソニーとかありますが、これはスポーツでいえば金メダルがとれるような企業ですね。それから、ほとんどの物づくり、製造業というのは頑張っていて、そこそこ国際級なんですね。ところが、大変恐縮なんですけれども、それ以外の第三次産業とか第一次産業の大部分は、まことに恐縮なんですが、物すごく生産性が低いんですね。この部分の生産性を上げる、雇用の質を高めることによって生産性を上げるということで、日本経済の高齢成熟化・人口縮小社会に十分対応していけるということをきょうは申し上げたいと思います。
 ちょっと御参考のために数字を申し上げますが、日本では、全就業者が約六千四百万人おられるわけですが、サービス業が二千百七十万人、卸売、小売が千八十万人、建設、建築が五百五十九万人、農林水産が三百三十四万人で、合わせると四千百万人ぐらい、この部分の大部分が大変生産性が低いんですね。なぜ生産性が低いかというと、原因は構造的な要因です。幾つか申し上げますが、これらの業界では、業界の競争体質が極めて弱い、非競争体質ですね。情報が不透明だ、それから政府の保護があちこちに入っている、そして効率経営が不在だということです。
 例えば建築、建設の分野なんかをとりますと、実は大変生産性が低くて、欧米諸国に比べると、同じような家でも値段が随分高いんですね。資材価格というのは一、二割しかございませんので、ソフトのところが非常に生産性が低いということです。その結果何が起きているかというと、価格がばらばらなんですね。
 例えば、リフォームをするときに、幾つかの業者に相みつをとってみたらすぐわかりますけれども、百万円でいいというのと三百万円でいいというのがばらばらに分布します。何でこんなことがまかり通るのかというと、情報開示が不十分で、競争が不十分なために、三百万の業者が平気で生存するということなんですね。競争が行き渡ってきますと、全部百万円のところへ収れんします。ということは、生産性が上がる、そして勤労者の所得が上がる可能性が出てくるわけで、そういうことが必要なんですね。これは、農業でも医療などのようなサービス業でも、同じようなことが見られます。
 ですから、そうしたら、どういうことをすればいいのかというと、規制の改革ですけれども、規制は競争を促進すると同時に、ただ、競争を促進するといろいろなことが起きてくるわけですね。ですから、厳正な評価、厳正な監査というのは同時にやらなきゃいけない、とかくそこが手抜きになるものですから、規制改革の効果が生きないんですけれども。
 建設の談合禁止は当たり前のことですけれども、建築でコンストラクションマネジメントというような業種が日本にはないんですけれども、そういうこともしなきゃいけませんし、流通でいうと、卸売が多段階過ぎる、小売がいかにも生産性が低過ぎる、零細企業が多過ぎる、それから情報化、Eコマース、ああいうものをもっと徹底する必要がある。農業でいいますと、土地の集約化、流動化、土地利用の改革。例えば、何十年前に線引きした市街化調整区域に手が入らないなんということが今でもあるわけですね。
 それから、農業は本来は知識集約型産業なので、効率化と技術革新をもっと進めていけば輸出農業も可能になる、こういうことでございます。大いにそのあたりを政策的に取り組んでいってもらいたいと思うんですね。それから、株式会社のような企業の参入、あるいは人材のもっと徹底的な教育ということでやっていく必要がある。
 サービス業は、雑多な、いろいろな業種がありますけれども、大きい分野でいうと医療が非常に大きな分野だと思うんですね。これは、三時間待って三分医療とか、全国の一万の病院の大部分が破綻に近いとか、ユーザーもお医者様も政府もみんな困っているわけですね。
 何がいけないかというと、これは仕組みが悪いんです。基本的に言うと、幾つかありますけれども、一番大きいのがやはり診療報酬だと思いますね。診療報酬が出来高払いになっているということが生産性を低くしている大きな理由で、ベッド数が多いのもその理由ですね。本当は包括標準日払いのようなものを入れなければいけないんですが、このためには、医療の膨大なデータベースを分析するという基本的なインフラが必要ですね。しかも、的確な評価をするというようなインフラがないとできませんが、そういうことをすれば、相当効率的で質の高い医療というのが可能になる。あるいは、レセプトの電子化、総合デジタル化、これはなかなか雇用問題も絡んで難しいんですけれども、こういうことを断行すればさま変わりになる。
 医療の経営も大変問題があって、一万ぐらいある病院の八割ぐらいが破綻に近いんですけれども、実はそのうちの七割が公立病院なんですね。ですから、この辺は病院管理が徹底していない。いろいろなことがあります。一つの例を申し上げましたけれども、サービス業はこういうことが多いわけですね。
 医療というのは、本来は成長産業なんですね。日本はほとんどが公的でカバーされておりますけれども、実は、民間部門を大きくすることによって、高齢社会のいいサービスをすることによって経済が成長する、そういうことができる。そのためには、自由診療、混合診療を大いに認めていくというようなことが必要ですし、先端医療あるいは健康づくり医療というようなことがございまして、実は、我々の目前に高齢成熟社会を控えて、やるべきことは非常にあるわけですね。ぜひ、この予算をキックオフにして、本格的に突っ込んでいただきたいな。
 予算の額じゃないんですね。今私が申し上げているような物の考え方、要するに、同じ人々でも生産性が上げられるんだ、そのためには仕組みをよくするんだ、徹底的な改革をして、監査もし、情報開示もさせる、こういう取り組みをしていただきたいと思います。
 それから二番目のポイントですけれども、格差縮小と再チャレンジ支援ということなんです。
 格差論がいろいろ言われておりますけれども、基本的には、これはもう古今東西あらゆるデータを私も専門ですからずっと見ているんですけれども、成長期には格差が縮小します、不況期、停滞期には格差が拡大します。つまり、成長期には底上げが起きていく、停滞すると底が下がりますので格差が広がる。これは、短期でも長期でも法則と言っていいと思います。
 小泉改革が格差を拡大したというのは、全くこれは逆のことなんですね。小泉改革は成長のために徹底的な構造改革をして成長路線に乗せたというのは何人も否定できないことだと思いますが、それが格差を縮める最大の戦略なんですね。ですから、小泉改革が格差を拡大したというのは的外れの批判でございます。
 中長期的な傾向値でいいますと、長期的な格差拡大の背景というのは、実は高齢化なんですね。高齢者というのは、長い人生の間、格差が自分の世代内で広がりますから、そういう方々がふえていくということが格差を拡大させる。短期的に実は今、格差が拡大、ジニ係数その他で見られるんですけれども、これはある種のラグ効果だと思います。バブル崩壊後の経済低迷の効果が遅行指標で残っているものですから、今、短期的に格差が拡大するということは部分的にあります。
 ということで、改革と成長こそが格差を縮める王道だということはぜひ念頭に置いていただきたいと思うんですが、ただ、そうはいいながらも、経済機会に恵まれないでこぼれていく人がいらっしゃるんですね。ここは我々、徹底的に支援する、あるいは救済するということだと思います。一般的な格差論ではないんですね、本当に恵まれない方々がいらっしゃいますから。
 ところが、先生方にぜひこれはお願いしたいんですけれども、経済機会に恵まれないというのは、雇用機会に恵まれない、教育訓練機会に恵まれない、そういう方々がどこに、どれだけ、どういう形で分布しているかというのを掌握していないんですね、この国は。私も一生懸命やりましたけれども、ぜひ先生方にお願いしたいのは、例えば、今失業者は二百四十四万人いるということが労働力調査で出ているわけですけれども、雇用保険事業統計で、職業安定所が雇用保険を出している人、受給者は六十一万人しかいないんですね。あとの百八十万人はどうなっているんですか。金の切れ目が縁の切れ目で、業務統計で押さえられていない人はどこへ行っているかわからないんですよ。ですから、この中にフリーターがいたりニートがいたりというようですけれども、実はわかっていません。
 私は、これは専門ですから徹底的にやったんだけれども、ではどうすればできるかというと、具体的には、例えば労働力調査に雇用保険に関する項目が入っておりません。ですから、今もらっているんですか、先月までもらっていたんですか、最初からもらっていないんですかというような質問とか、今どういう所得をもらっているんですかというような質問、だれから仕送りを受けているんですかというような質問を入れておけば、これはつながる。そんなこともしないで、余り言いませんけれども、何が再チャレンジかということなんですよ。基本的に、実態をしっかり掌握してから政策を立てていただきたいと思う。
 つい最近も、その実態掌握のことはやらないとどなたかおっしゃったというのが新聞記事に出ていて仰天したんですけれども、やはり問題だと思います。短期でやらなければならないことはあるんです。しかし、中長期で腰を据えてしっかり横綱相撲をとらなきゃいかぬ。そうしなければ、先進国の中でこれはみっともない姿ですね。
 それから、フリーターと俗に言っていますけれども、内閣府が数年前に四百十七万いる、厚生労働省は、いや、そうじゃないんだ、二百一万なんだと。何を言っているんですか。国民はわからないですよ、こんなこと言われたら。それから、ニートが内閣府は八十五万という、厚生労働省は六十四万、それは家事手伝いの女の人を入れなかったからと。これは多少理由がありますけれども、こういうことはもっとしっかり、何がニートで何がフリーターなのか。
 それから、生活保護ですけれども、今百四十七万人おられるんですが、これは働くと生活保護給付が削減されますから、それでは全くインセンティブにならない。一体どういう人が何を望んでいて、どんな生活をしたいのか、そういう特別調査、緊急調査を幾つかやりつつ、再チャレンジに挑んでいただきたいと思います。
 それから、フリーターがふえているから正規雇用を義務化した方がいいというような議論もあれこれ聞かれるんですけれども、私は、はっきり申し上げますが、これは逆効果になると思います。
 なぜかというと、そもそも、表面単価は派遣や請負は高いんですよ。しかし、トータルコストの企業負担は正規雇用の方が高いんですね。国際競争の中でやむにやまれず雇用の多様化を図ってきているわけです。また、短時間就労の方がいいという人も若干はいらっしゃいますけれども、そういう状況があるのはいいとは言いませんけれども、そこで例えば正規雇用を義務化するというようなことをしますと、雇用が海外に逃げますね。元も子もなくなる。ですから、これは大いに研究する必要があって、答えは、雇用を多様化するということの中から、人々の実力相応の給料を払うという仕掛けをつくっていかなければいかぬと思います。
 それから、最後に一つ申し上げたいのは、人口が極端に減ってまいります。今一億二千八百万ほど人口がありますけれども、四十三年後、つまり二〇五〇年、働く人の一世代ですよね、一世代のうちに、昨年の人口推計ですと、中位推計で九千五百万人、下位推計で八千九百万人になるというのが発表されていますね。今まで二十五年間、中位推計というのは当たったためしがないので、下位推計の方へ近づくのかなという嫌な予感がいたしますけれども、そうしますと、三千三百万人から三千八百万人の人口がこの日本列島から消えるわけですね、一世代内で。どこで消えるかというと、東京とか横浜とか滋賀や沖縄は消えないと言われていますが、ほかは激減するわけです。
 そうすると、地方は機能不全に陥るんですね。地方というのは人材と食料の供給源ですから、地方が疲弊すれば大都会も成り立たないわけでございまして、人口そのものが減っていくことは構わないんですけれども、いい分布で、健全な分布で減っていくということをしなければいけない。
 ところが、日本は共産主義国じゃありませんから、それをどう図るかというと、人々が本当は実現したいことがあるんですね。それは、高齢成熟社会ですから、皆さん健康な生活をしたい。健康の最大の条件は何かというと、きれいな空気ときれいな水とストレスがないということです。ということは、地方にその条件が十分あるんですね。大都会には余りないんですね。ただ、それだけじゃ人は来ません。ですから、観光とか生活産業サービスとか、きめの細かいサービスをしていただくということで人を集めることができるんですね。
 実は、新聞記事を一つ書きましたが、きょう先生方のお手元に新聞記事を届けてございますけれども、「地方の活路 熟年移住に」、二枚目ですけれども、これは全国でいろいろな自治体が頑張っています、人を誘致しようとして。ただ、ばらばらにやっているので国民的な流れになっていないということで、最後に一つ申し上げたいのは、ばらばらにやらないで、大きな流れにするような工夫を官民こぞってやる必要があるんじゃないかというふうに思います。
 例えば、官でいいますと、国土交通省は二地域居住と言っていますし、農林水産省はグリーンツーリズム、就農支援、経産省は集客交流、総務省も調査に入りました。ばらばらにやっているんですけれども、そういうことですよというのを各県の県庁や自治体が受けとめるとどういうことになるかというと、余りにばらばらに来て、何をやっているかわからないんですね。非常に対応に困っています。
 ですから、これはやはり官邸の役割だと思うんですね。官邸が、そういう時代になったんだと。戦後数十年間、東京に行こう、東京に行こうといって人が集まって、経済発展して、そしてアメリカに輸出をして、その上がりをもらって、それを全国各地に交付金でまいて発展するというのが戦後の発展モデルです。その時代が終わって、世界の工場は中国になりつつある、日本には高付加価値の物づくりが残る。しかし、人々は働いたので相当の貯蓄を持っているけれども、高齢化していて健康が非常に心配だというときに、地方に行くとすばらしい健康のできる環境がありますよ、建物はもう四分の一、五分の一、生活費も半額ぐらいでできますよ、老後の生活のめどが立ちますよというような情報がまだ伝わっていない。
 これを伝えるのは企業だと私は思うんですね。つまり、戦後ずっと人々が都会に集中したのは、企業が人が欲しくて、金のわらじを履いて全国各地へ、集まって東京へ行けばいいんだよと言ったので、人々が集まってきたわけですね。今はそうではなくて、みんな働いて多少お疲れになっているわけですから、地方に行くとこんないいチャンスがありますよというのを企業がどんどん言う。そうすると人が動きます。動けば企業は必ずもうかります、旅行社も交通も自動車も何もかも。
 ですから、企業、社会が寄ってたかってそういう動きをする、ネットをつくる、情報を流す。それを官邸が中心になって、これが次の時代の戦略なんですよというふうにしていただきますと、人々が健康を求めて人口配分が健全になりますから、日本はいい循環に動くようになるんですね。
 そういうことでございまして、私が今申し上げているのは、ほとんど予算のかからない話ばかりです。私は、予算さえつければ仕事は終わるという考え方は余り賛成じゃなくて、予算をつけて仕事が終わるという考え方は麻薬ですよね。補助金は毒薬だと思っていますので、そういうことをしない。
 物の考え方を政府はしっかり言って、民の動きを支援する。しかし、しっかりと情報の開示、監督管理はするということで、日本を健全な国にしてもらいたい。今、そういうところへ一歩確実に踏み出すときが来ている。
 まず人材を大切にする。人に、ただただ働けとか訓練しろとか言うことじゃなくて、雇用の質を高める時代に入ったんだというふうに思います。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 島田晴雄

speaker_id: 15326

日付: 2007-02-21

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会