湯元健治の発言 (予算委員会公聴会)

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○湯元公述人 日本総研の湯元でございます。
 本日、このような場で意見発表の機会をちょうだいいたしましたことをまことに光栄に存じております。
 私の方からは、民間エコノミストの立場から、平成十九年度の予算をどう評価しているかという点に加えまして、中長期的な観点から見た財政健全化の課題を中心に申し述べたいと存じます。
 お手元の資料をお開きいただければと思います。
 まず、平成十九年度予算の評価ということですが、政府の財政健全化目標、二〇一一年度までにいわゆるプライマリーバランスを黒字化させるという目標がございます。この目標に向けまして、初年度、それなりに好調なスタートを切ったのではないかというふうに思います。
 十九年度の新規国債発行額、このグラフにございますとおり二十五兆四千億ということで、前年度比四兆五千億、過去最大の減額幅を実現しました。それから、実はこれに交付税特別会計の償還費というのを含めてみますと、実質的には六兆三千億の財政健全化が実現されたという形になっております。また、国債依存度も三〇・七%ということで、三年連続の低下を記録しております。
 それから、目標となっておりますプライマリーバランスでございますけれども、国のプライマリーバランス、十九年度予算でマイナスの四兆四千億の赤字でございます。これは、前年度が十一兆二千億の赤字でございますので、これと比べますとプラス六・八兆円、七兆円近いプライマリーバランスの改善が実現しておるということでございます。
 そして、この最大の要因は何かということで見てまいりますと、先ほど御指摘もございましたが、大幅な税収の増加、これが七兆六千億あるということでありまして、内訳は書いてございませんが、定率減税の半減等がございましたので、増収が一兆二千億程度ありますけれども、その他大半は、景気の回復あるいは企業業績の回復に伴います所得税、法人税収の増加というものが寄与している、所得税が三兆八千億、それから法人税が三兆三千億の増加になっておるということでございます。ちなみに、所得税の方は、雇用、賃金の回復が緩やかなもとで増加をしている理由というのは、株価の上昇等に伴いますキャピタルゲインや配当の増加、こういったものがかなりの程度寄与しているというふうに考えております。
 それから一方、歳出の方でございますけれども、これは次の三ページのところをごらんいただければと思います。
 税収の増加がプライマリーバランス赤字の、かなりの部分を占めるということでありますが、歳出削減の方も、基本的に、昨年六月に決定しました骨太方針二〇〇六、これに沿って歳出の抑制、削減が進められてきているというふうに認識をしております。
 この骨太方針二〇〇六では、御案内のとおりかと思いますが、向こう五年間の名目経済成長率を平均三%、それから税収の経済成長に対する弾性値を一・一、こういう前提を置きまして計算をした場合に、社会保障や公務員人件費、公共事業、こういったものを中心に、総額で十一兆四千億から十四兆三千億の歳出削減を実施する、これが中期的な方針であったわけでございます。ただ、この中で示されましたのは、現実に不足する財源、これは要対応額という形で示されておりますが、これが十六兆五千億ございまして、この対比で見ますと、これだけの歳出削減を行いましても、なお二兆二千億円から五兆一千億円、消費税率換算で申し上げますと一%から二%に相当する財源が不足する、こういった試算が示されたわけであります。
 この十九年度予算で、この骨太方針とあわせて、各分野ごとの歳出削減がどうなったかということを見てまいりますと、公共事業関係費では三・五%の削減ということで、これは骨太方針、マイナス一からマイナス三という方針でしたが、これを上回る削減率になっております。それから、社会保障、これは骨太方針で一兆六千億、五年間で一兆六千億ですから、年平均にしますと二千二百億ということで、ちょうど年平均ペースで抑えている。それから、公務員人件費につきましては、これも地方で四千億の削減、国家公務員についても削減の方向性が示されているということで、骨太方針に沿った動きだろうと思います。その他、ODA、防衛費等ございますけれども、これもおおむね骨太方針に沿う削減内容になっているかと思います。
 一般会計以外のところでも、特別会計の改革によりまして剰余金一兆八千億を一般会計に繰り入れるという、一般会計の税収増の一因にもなっておるわけであります。それから、特別会計の歳出削減が七千億という形で、特別会計の改革の効果も出ております。それから、道路特定財源につきましては、一般財源化が千八百億強、強化されたということで、十八年度補正も入れますと三千億円強の国債減額が実現する形になっております。それから、地方交付税は、一般会計の入り口ベースでは四千億の増加という形になっておりますが、実際地方が受け取る出口ベースでは七千億の減少になっているということであります。それから、地方財政計画の方も、一般歳出で八千億の削減、それから投資的経費でも三%の削減というものを実現しております。それから、財政投融資計画でも五・六%、規模的にはもうピークの三五%の水準になってきているということでございまして、これまで政府が目指してきました小さく効率的な政府の実現に向けて少しずつ前に歩を進めている状況かというふうに考えております。
 そういう中で、歳出面、予算措置として重点配分措置三千十億円、それから税制改正関係で四千八十億円の各種減税措置も盛り込まれるということで、トータルで七千億強、成長力強化に向けた予算配分が行われているというふうに考えております。ある意味では、税制改正を含めまして、財政健全化ということと成長力強化というのは車の両輪としてやっていかないといけない課題でございますけれども、それに対してこういう形での配分がなされたということであります。
 実際、税収がここまで好調ですと、私ども民間の立場から見てまいりますと、かなり歳出増加圧力が増していくのではないかという懸念を持っていたわけでございますけれども、現実的には、いわゆるばらまき予算ということには陥らず、財政規律をしっかりときかせた予算になったのではないかなというふうに見ております。
 十九年度というのは、景気も回復してきて税収増加も見込めるということで、非常に今の局面がいい局面に当たっているということもあるかと思います。しかしながら、中長期的に見ました場合に、このような動きがずっと持続するかどうかということについては、私は余り過度に楽観的に見ることはできないのではないかと思います。
 十九年度予算の姿だけを見ますと、このまま順調にいきますと、二〇一一年度プライマリーバランス黒字化というのは一年やそこら前倒し、あるいは、不足する財源であります部分、消費税を引き上げないといけないのではないかというようなことも言われておりましたけれども、これは引き上げなしでできるのではないか、こういう見方も強まってきたわけでありますけれども、もう少し現実を見てまいりますと、それほど簡単に達成できるような状況ではないかというふうに考えておるわけであります。
 ちなみに、内閣府が参考試算として出しております「日本経済の進路と戦略」という中で、二つの成長のシナリオ、そして、それぞれの成長につきまして二つの歳出削減シナリオを組み合わせた四つのシナリオを提示しているわけでありますけれども、この中で一番目指している最も望ましいケースというのが、新成長経済移行ケースの中の歳出削減Aというものであります。
 この新成長経済移行ケースというのは、いわゆる生産性の引き上げ、それから女性や高齢者も含めた労働力率、働く人の割合を引き上げる、こういったことによりまして、日本経済の持っている潜在的な成長力を二〇一一年度にかけまして大幅に引き上げるということ、これを前提としておるわけであります。
 実際に、このままこういった政策が実現しませんと、潜在成長力は、人口減少、少子高齢化の影響によりまして、二〇一一年度には一%程度まで下がっていく。足元は一・六%という水準でございますけれども、〇・五%程度下がっていってしまう。これをさまざまな政策努力によって二・四%に引き上げる、こういう前提であり、あるいは目標が設定されておるわけであります。
 そして、歳出削減の方も、ケースAと申しますのは、骨太方針の中で、より大幅な歳出削減、十四兆三千億という金額の削減を実現していく。こういうこと両方ができて初めて、この基礎的財政収支の対名目GDP比が黒字になるという試算結果になっておるわけであります。歳出削減が少しでも少なくなる、あるいは成長シナリオが実現しないということになりますと、二〇一一年度でも基礎的財政収支、プライマリーバランスの黒字は実現が難しい、こういう形になっておるわけであります。
 この目標とします新成長経済移行ケース、ここは、下に少し詳しく年度別の前提値、経済予測の前提値等を入れておりますけれども、名目経済成長率でごらんいただきますと、二〇〇六年度のところ、ちょっと資料で二・二というふうに書いてありまして、間違えておりまして恐縮でございます、一・五%、実績見込みでありますけれども。この一・五%の名目成長率を二〇一一年度にかけまして徐々に高めていく、そして一一年度には三・九%、四%近い名目成長率を達成していくということが前提となっておるわけであります。実際に実質成長率も、二〇〇六年度の一・九から二〇一一年度二・五ということで、〇・五%ポイント程度高目。それから、いわゆる物価でございます。消費者物価やGDPデフレーターのところをごらんいただきましても、足元ゼロないし若干マイナスというところから、二〇一一年度には消費者物価で一・九、GDPデフレーターで一・三ということで、かなりの上昇を見込むような経済に持っていく、これが基本的な前提になっているかと思います。
 こういう高い経済成長自体が本当に、少子高齢化、人口減少が続く中で実現可能かということで、いろいろな面から疑問視されている部分もあろうかと思います。恐らく、これを実現するためには、先ほどの前提にもございましたとおり、生産性を飛躍的に引き上げるということが必要になってくるわけでありまして、その意味で、イノベーションというものをどんどん促進していく、さらには、アジアの高成長を取り込んでいくオープンという政策、この二つで高成長を追求していくという戦略を今政府はとろうとしているのかと思いますけれども、これは私も極めて重要な課題であろうかと思います。これが実現できませんと、財政の健全化というのもかなり難しいということになるわけであります。しかも、これは、それほど簡単に実現できる課題でもないという意味では、非常にチャレンジングな課題でありまして、さまざまな方策を追求していく必要があろうかと思っております。
 財政面に話を戻させていただきますと、さらに二〇〇九年度からは基礎年金の国庫負担の引き上げというものがあるわけでございまして、このための財源不足額は、消費税換算で申しますと約一%強の財源が不足してくるという事態がこの途中にございます。それから、プライマリーバランスの改善、黒字化というのはある意味では財政健全化の第一歩の目標にすぎないということで、プライマリーバランスの次に改善していく次の目標というのは、増大していきます政府債務残高の対GDP比、日本では一五〇%という水準で、先進国の中で突出して高い水準にあるわけでございますけれども、この比率を安定的に引き下げていくということが次の目標として視野に入ってきつつあるわけであります。
 そして、この目標を実現するためにはどの程度の努力が必要かということを申し上げますと、結論からいいますと、プライマリーバランス、小幅の黒字ではまだ足りないということでありまして、GDP対比で見ました黒字幅というのは二%近い規模に持っていかないと難しいということであります。
 実は、この二%という根拠自体は、いろいろな経済前提、経済成長率と名目の長期金利の水準というのをどう考えるかによって変わってくるものでありますから、必ずしも固定的、確定的に考えるということはできませんけれども、日本の過去の経済成長率と金利の関係から見ますと、一%強、長期金利の方が高いという状況が出てきておりまして、それを前提に今の足元の債務残高のレベルを勘案しますと、二%近い黒字が必要という結論になるわけでございます。
 ちなみに、このGDP比二%というのは、五百兆の二%で十兆円、現在価格で十兆円ということでございますから、消費税換算をしますと四%レベルの、追加的な、二〇一一年度にプライマリーバランス黒字を達成した後も、さらに消費税換算で四%規模に相当する財政改善が必要になってくるというような状況にあるわけであります。
 そういう意味で、どういった形で財源を図るかというのはこれからいろいろな御議論をしていただくことになる重要なテーマだろうと思いますが、私自身は、将来的に消費税の引き上げというものを含めました、特に社会保障の安定財源の確保というのはもう避けることのできない重要な課題ではないかというふうに考えております。
 そして、その点で、最後の五ページ目でございますけれども、消費税の引き上げに関しまして私の考えておることを申し述べたいと思います。
 まず、増税というのは非常に国民からアレルギーの強い、特に消費税などは逆進性が強くて、反対、批判も根強いということでございますけれども、私は、一口に増税と申しましても、今の大きな財政赤字を減らしていくために増税が必要だというロジックと、それから社会保障が、これから少子高齢化、特に団塊世代は二〇一二年以降、六十五歳以降に入っていくということがございますので、それ以降の財政状況は非常に社会保障の財源が不足してくるわけでございますけれども、これを賄うための増税、この二つは本来峻別して考えるべきではないかというふうに考えております。
 と申しますのは、何のために増税をするのかといったときに、国民の理解あるいは納得度というのが違うであろう。それから、経済へのインパクトも、これはなかなか理論的、実証的に分析することは難しいんですが、異なってくる可能性があるのではないかなと思うわけであります。
 特に、財政赤字が大きいので増税をするというのは、無駄な歳出、非効率な歳出がまだ残っている中で、あるいは税制も含めまして不公平な部分が残っている、そういったものがある中で増税に踏み切るということは、国民の反発が非常に大きくなるおそれがあります。それから、景気へのインパクトという点でも、基本的に、財政赤字削減のための増税というのは、家計部門から政府部門が所得を吸収するという形になりますので、せっかくふえた雇用者所得のかなりの部分が政府部門に吸収される。これは、それなりのインパクトが出るわけであります。
 他方、社会保障のための増税というのは、当然、国民の理解、納得度、それは相対的に高いと思います。この経済広報センターの行ったアンケート調査でも、消費税を活用した間接税方式に移行すべきであるという回答が過半を占めている形になっているわけであります。そして、景気へのインパクトという面でも、実際には家計部門に対して社会保障給付という形で、取った分が還元されているということでありまして、付加価値税が一五%から二〇%という高い水準にあるヨーロッパ諸国で経済ががたがたになっているというようなことではないわけでありまして、水準自体が影響を与えているわけではなくて、それを何に使うかということが非常に大事なポイントではないかと思います。
 そういう意味で、私は、この消費税というものを社会保障目的に充当するということがこれから重要な課題になってくるのではないかと思っております。もちろん、社会保障で目的税化するということについて、メリットだけではなくデメリット等もあるかと思います。どんどん安定財源が確保されて社会保障が膨張して財政が硬直化をしていく、あるいは、既得権益化が進んで社会保障の抑制や効率化のインセンティブが働かなくなってくる、こういうデメリットもあるわけでございますから、このデメリットを最小化する形でメリットを最大限に生かしていく、そういった工夫が必要なんだろうと思います。
 私は個人的に、消費税を将来的に引き上げるための条件として三つ考えておりますけれども、一つは、やはり歳出の無駄、非効率、これを徹底的に排除していかないといけないだろう。予算の問題で申し上げますと、例えば、予算の金額だけが前年度の予算と対比で比較をされて、次の予算を決める要因になっているわけでありますけれども、実は、決算とか補正後予算との対比でやはり見ていく、それで次の年度の予算を決めていくということが必要なのではないかと思います。
 例えばで申しますと、社会保障という分野でも自然増を抑制すべく毎年度予算の抑制が行われておりますけれども、実際に決算ベースで見ますと、過去五年間の累計で四兆六千億、予算ベースを上回っているような形、年平均で九千億ということですので、実際にはなかなか抑えたことになっていないといったような姿もあるわけでございます。
 それから、二番目として、クロヨン、益税に代表されます不公平税制の是正、これが大事かと思います。
 そして、三番目。先ほど言いましたデメリットを最小化しつつメリットを生かす方策として、これは一案でございますけれども、社会保障のスリム化、効率化と消費税率というものをセットで議論していただいて、消費税そのものは将来的に上限というものを、ある程度法定するのか、ただ明示するだけにとどめるか、いろいろな考え方がありますけれども、消費税の上限を定めて、その上限を超えそうな状況になる場合には、社会保障制度の改革を行って、抑制、スリム化をしていく、こういった制度設計をビルトインすることが非常に重要なのではないかと思う次第でございます。
 ぜひ、各党、国会におかれましても、こういった点に関しまして精力的な議論をしていただくことをお願いして、私の説明を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 116605262X00120070221_006

発言者: 湯元健治

speaker_id: 18883

日付: 2007-02-21

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会