寺島実郎の発言 (国際問題に関する調査会)
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○参考人(寺島実郎君) 寺島でございます。
三十分程度の話ですので、集中して私の意見を述べさせていただきたいと思います。
お手元に世界潮流と日本の進路を考える基本資料というのを配っていただいております。これはレジュメとかではありません。私の話の、数字の裏付けのある話をということでお配りしている資料集のようなもので、必要と思われるところをさっと見ていただければと存じます。
まず、世界経済についてという一ページのところを見ながらお話をお聞きいただきたいんですけれども、申し上げたい論点は、世界同時好況の持続と潜在する不安ということについて、私の視点を申し上げたいと思います。
二十一世紀に入って六年が早くも経過して、最初に世界GDP実質成長率推移というメモがありますけれども、これは地球全体のGDPが実質どう動いたのかということがメモで書いてあります。九・一一の事件が起こった二〇〇一年、前年比一・八だったものがすうっと上がってきて、我々が生きてきたこの三年間ですね、二〇〇四年から三%台の実質成長を続ける世界という姿がそこに見えてくると思います。
世界全体が三%台の実質成長をするなんということは実は途方もない高いレベルの数字でして、二十世紀はアメリカの世紀だという表現がよくありますけれども、二十世紀、覇権国に近い状態にのし上がったアメリカが実現した年平均の実質成長率が二・一程度だったろうと推定されていますから、地球全体が前年比三%台の成長をするなんということは、過熱とも言えるような成長軌道の中を今世界は走っていると。
ジャーナリスティックな表現を好むエコノミストの中には、こういう表現をする人が出てきています。今世界は人類の歴史始まって以来の高成長の同時化というサイクルの中にあると。人類の歴史始まって以来と言うとえらい誇張した表現のように思えますが、あながち誇張とも言えないですね。三十年ぐらい前に、瞬間風速三%台ということもあったんです。ところが、アメリカとか日本が引っ張っているという状態の三%台だったんですけれども、現在、今我々が生きている状態というのは、ここで言う異様なまでの高成長の同時化という、つまりマイナス成長ゾーンがないという不思議な状況になっています。
BRICsの台頭によるすそ野の拡大と書いてありますけれども、要するに、ブラジル、ロシア、インド、チャイナの頭文字であるということは御存じのとおりなわけですけれども、牽引力が非常に多角化していてすそ野が拡大していると。最近、最後のSは複数のSではなくてサウスアフリカのSだなんということを言う人もいるぐらいで、とにかく世界おしなべてマイナス成長ゾーンがないと、そういう状況になっています。
そういう中で、その上に二〇〇七年に減速するのかというメモがありますけれども、今年世界経済どうなるのかということに関してコンセンサスの予測は三・三%というメモがあると思いますけど、コンセンサスというのは世界のエコノミストの平均的な予測値を毎月毎月国別に発表している機関です。つまり、大方のエコノミストこう見ていますよという数字だと考えればいいんですけれども、それが今年について今現在三・三%ぐらいの成長をするだろうという予測値を出してきています。去年が三・九で今年三・三というわけですから、世界経済減速するのかと。特にこの間、上海株式市場を引き金にして同時株安なんということが起こり掛けたときに、いよいよ同時好況の構造が反転して同時不況になるんじゃないかということを言う人もいたわけですけれども、今年三・三という数字をどういうふうにとらえるのかというのは非常に微妙なところであります。
同時不況に反転していく前兆だというふうにとらえるのか、あるいは巡航速度にソフトランディングしていく方向としてとらえるのか。世界経済の巡航速度、大体二・五から二%ぐらい台というのが大方の見方だと思いますけれども、三・三だって高過ぎるんだという議論があるわけです。このメモでいうと下から二段目のパラグラフに問われる三つのEなんという表現がありますけど、これは国際会議なんか出るとやたら出てくる表現で、三つのEのバランスが大切ですというある種の建前論なんですけれども、エコノミー、経済のEと、エンバイロンメント、環境のEと、エナジーですね、エネルギーのEはバランスが取れていなければいけませんという、ごもっともという話なんですが、その環境とエネルギーに配慮したら三%だって高過ぎるんだよという議論が一方にあって、巡航速度にソフトランディングしていくことが望ましいんだという考え方が存在します。
そういう中で世界経済、ここで確認しておきたいのは過熱とも言えるほどの成長の持続という局面にあるわけですけれども、なぜか非常に不安感を潜在させています。それはもちろん、後でも議論になるポリティカルな要素というものもあるわけですけれども。一つ確認したい数字が、一ページの真ん中ぐらいの米印になっているところに実体経済、つまり世界の実質GDPは今世紀に入って年率三・五%で成長しているという数字がそこに書いてありますけれども、物流ですね、世界貿易、物の流れは年率七%平均で世界貿易は拡大しています。
ところが、非常に興味深い数字だと僕は思って調べ直したわけですけれども、金融経済、これは世界のあらゆる株式市場の時価総額です。東京も上海もニューヨークもロンドンも合わせた時価総額、年率今世紀に入って一四%で時価総額は拡大しています。非常に興味深いというのは、ちょうど倍、倍、倍なんですね。実体経済は三・五%で伸びている、物流は七%で伸びていると、金融経済を象徴しているということなんですけれども、株式時価総額は年率一四%で拡大しているといいますから。この背景にある構造は何だということなんですね。つまり、一言で言うと実体経済をはるかに上回る金融経済の肥大化というやつが潜在する不安の大きな要素になっているということを私は申し上げておきたいわけです。
特にそのことが、今株で僕申し上げましたけれども、象徴的な形で展開しているのがこのエネルギー価格の高騰です。ここの問われる三つのEの②にエネルギー価格高騰の構造って書いてあるところがありますが、その中に先物原油価格バーレル六十ドルから七十ドル水準の怪って、怪しいっていう言葉をあえて使ってありますけれども、需給関係だけでは説明できない投機的な要素の顕在化という表現がここに書いてあると思います。
次のページの一番上に日本への原油入着価格というメモがありまして、これは日本の経済を議論するときのイロハのイとも言える数字でして、つまり、日本の港に幾らで石油がたどり着いているのかということを示す数字です。その円建てとドル建ての両方の数字がそこに書いてあります。
例えば、一九九九年、十七・二ドルバーレルという意味なんですけれども、一バーレル十七ドル二十セント払って日本の港に石油がたどり着いていたと。その年の円ドルレートで換算すると、日本経済は千九百二十八円払って一バーレルの石油を入手していたということになるわけですけれども、それが、直近のこれ二月の数字が書いてありますけれども、いっときほど、去年のピークのときほど高くはないけれども、バーレル五十五ドル二十二セント、円建てでは六千六百五十三円払って一バーレルという数字になっていますけど、まあざっくり言って九九年から比べて三倍に石油価格は高くなったということがそれで見て取れると思います。では、どうして石油価格は三倍にもなったんだという話なんですね、申し上げたいのは。
当然のことながら、この分野の専門家は、例えば中国に代表されるBRICsの石油需要の拡大とか、需要側の要因としてですね、それから供給側の要因として中東の地政学的不安、イラク戦争だとかサウジアラビアの潜在不安だとかというようなことを指摘しますけれども、実は需給関係だけでは説明できないようなエネルギー価格の動きになっています。その象徴が、申し上げたいのは、ここにWTIなる指標に内在する危うさという、WTIというものを説明すれば私の申し上げたい問題意識が伝わると思うんです。
これはニューヨークの石油市場、連日幾らになっているのかという先物指標として報道され続けていますけれども、必ずWTIでは六十何ドルとか、WTIでは五十ドル台に落ちたとかという報道が続いています。WTIのWTは言うまでもなくウエスト・テキサスの頭文字なんですね。つまり、ウエスト・テキサスとはヒューストンのことなんです。ヒューストン地域の石油価格というローカルな指標なんです。ところが、このローカルな指標だったはずのWTIなるものが、ニューヨークの商品市場に上場されてから話が変わってくるんですね。IT革命のパラドックスもあって、オンライントレードで物すごい勢いで石油の取引が拡大していきます。
三つの数字申し上げればお分かりいただけると思いますけど、WTIの実需、ヒューストン地域の石油の実際の需要は一日七十万バーレルです。世界の石油生産、昨年、OPEC、非OPECかかわらず、この世に生み出されたすべての石油は八千六百万バーレル・パー・デーです。一日当たり八千六百万バーレル。ところが、WTIという名前の下に取引されている石油は一日二億五千万バーレルから三億バーレルです。で、不思議だなという素朴な疑問というのが芽生えてきます。何で実需七十万のWTIが二億五千万から三億バーレルの取引を一日当たり行うのか。
分かりやすく言うと、オンライントレードという言葉ありますけれども、コンピューターの中を短期の資金が駆け巡る形で石油というものの商品の性格が変わったといいますか、要するに需要と供給の関係で価格が決まるなんという話ではなくて、マネーゲームの対象としての石油取引みたいなものが一気に拡大してきたというのがこの十年間ぐらいの大きな変化なんです。
そういう意味で、さっきは株式市場の話が、年平均一四%で拡大しているというお話ししましたけれども、今申し上げた石油の価格についても、世界の同時好況と言われる局面の中で何か不安定な、不安感を覚えざるを得ないというその構造の背景には、今申し上げた実体経済をはるかに上回る金融経済の肥大化というのがこの冷戦後のグローバル資本主義の一つの大きな特色になってきています。この辺りの制御という問題が、我々の一つの時代のテーマとして存在してきているということはまず間違いないということをまず最初の国際経済に関する視点として触れておきたいと、こういうことでございます。
それから二番目、話がぽんと飛ぶんですけれども、日本の貿易構造の変化と国土軸へのインパクトという話を申し上げたいと思います。
見ていただきたいのは五ページです。五ページの日本の貿易構造の変化というメモが、表のようなものがそこに書いてあるんです。
これは日本の輸出入の相手先をシンボリックに表にしたものなんですけれども、三、四年前まで日本人の常識とも言われた構図が大きく変わってきています。日本は通商国家であると、貿易で飯食っているんだと、貿易の相手先のナンバーワンは輸出も輸入もアメリカなんだというのが三、四年前まで常識だったんですね。ところが、それが一気に変わったと。一番まず大事な数字は、その表の一番下にア、イ、ウと小さい字で書いてあるところなんですけれども、日本の貿易総額、輸出入を足し合わせた貿易総額に占める対米貿易の比重、アメリカとの貿易の比重は、一番下のア、イ、ウなんですが、昨年の貿易統計が発表になりまして、一七・五%ということで、日本の貿易のわずか一七・五%を占めるにすぎないという構造に大きく変わってきています。
では、一体日本はどこと貿易して飯を食っているんだという話になるわけですけれども、そこに大中華圏、アジア、中東というメモが書いてありますが、大中華圏というのは、語れば切りがないんですけれども、中国を本土単体の中国と考えないと。一種のバーチャルな世界の視点なんですけれども、連結の中国といいますか、要するに中国と香港、それに人口の七六%が中華系、華僑系の人によって占められているシンガポールとそれから台湾を、政治体制、イデオロギー体制の壁はあるけれども産業論的には有機的連携性を深めている一つのゾーンだと考えるという考え方が、英語で言うとグレーターチャイナ、大中華圏という視点でとらえられる概念なわけです。これは必ずしも便宜的な議論でもなく、足し算の議論でもありません。産業実態がそうなっています。
例えば、台湾問題が二十一世紀のアジアの大変大きな課題になってくるということは大いに予想されるわけですけれども、今、広域上海に台湾人という人が百万人移住して住んでいると言われています。何のためにというと、台湾企業が海外で受注したものを実際には上海付近に工場を立地して生産しているなんというパターンがもう当たり前のようになっています。したがって、中国のエレクトロニクス産業の輸出という統計のうち約半分は、実態は台湾企業が本土の中国に進出していった工場から世界に向けて輸出されているということが確認されています。
ということは、政治体制の壁というネックの問題と産業論的連携という問題が同時に進行しているというふうに考える必要があると思いますが、それが、グローバルに言えば海の中国と陸の中国の連携というやつで、つまり本土、陸の中国と華僑圏の中国、シンガポールも香港も台湾も海の中国なんですね、島なんです。そこには歴史的背景があって、大英帝国、インドで懲りて、マレー半島の領有に当たって、本土側にヘッドクオーターを置かずに突先の島にヘッドクオーターを置いたと。暴動が起こってもマネジメントしやすいように。そこに華僑という人たちが流れ込んで独特の経済文化圏をつくったと。
そういう流れの中で、今までは本土の中国と華僑圏の中国というのはせいぜい親類縁者に送金をするという程度の関係だったんですけれども、ここのところへ来て本土の中国の一〇%成長、改革・開放、華僑圏にとってもおいしい素材になり始めたと。本土の中国も、持続的発展のためには華僑圏をジャンプボードとして活用していった方がいいという視点が出てきて、海と陸の中国のシンクロナイゼーションというのが進んでいるんですね。そのために、大中華圏というのが絵そらごとではなくなってきていると。
事実、私が欧米を動いていて、日本についての質問よりも中国についての質問を受けることが大変最近多いわけですけれども、先週中国人がやってきたと、こういうビジネスモデルを提案していったけれども、あなたはどう思いますなんて意見聞かれることがあります。だれが訪ねてきたんだと聞き返すと、本土の中国の人が来たなんという例はまれで、専らシンガポール華僑とか香港華僑とか台湾企業がやってきて、本土の中国の企業を巻き込んでこういうビジネスをやりませんかという提案に来たということが圧倒的に多い。つまり、海と陸の連携という中で中国が必要以上に大きく見えるというのが、国際社会で中国の台頭ということが言われている大変大きな視点だろうと思います。
その大中華圏に日本の貿易の約三割が依存する時代が今来ています。アジアには四五・七ということで、五割にアジアとの貿易比重が迫っていると。一昨年よりもアジア大中華圏との貿易比重が少し下がった数字になっていますけれども、それはエネルギー価格の高騰を背景にして中東との貿易比重が高まったことのしわ寄せを受けてなっているわけですけれども、我々の頭の中に今置いとかなきゃいけないのは、対米貿易が二割を割ってもう一七・五まで来ていると。アジアとの貿易が五割に迫ってきているということは一つの事実認識として大変重いと、こう思っております。
それを背景にして、六ページのメモになりますけれども、貿易構造のアジアシフトに伴う物流の変化というメモがそこに書いてありますけれども、この太平洋側港湾の空洞化というところをごらんになりながら、問題意識をお伝えしたいわけですけれども、いっときの常識からすれば本当なのかと問い返したくなるぐらいなんですけれども、神戸の世界の港湾ランキングは三十二位まで落ちたというのがそこにメモに書いてありますけれども、横浜、神戸は通商国家日本のシンボルだったんですね。ところが、横浜二十七位、神戸三十二位というところまで世界ランキングで落ちてきたと。いっとき神戸は二位だったんですね、世界ランキングで。
今上位を占めているのはどういうところなんだということをごらんになっていただいたら、一位シンガポール、香港、上海、深セン、釜山、高雄と、私が先ほど大中華圏という言葉を使った地域の港が上位六位のうち五つを占めているんだということがお分かりになると思います。これは何も港だけが突出しているんではなくて、背景に大きな産業構造の変化が進行しているということを象徴しているわけです。
日本の神戸、横浜がかくも無残に後退している理由というのは、実は第五位の釜山に押されていまして、釜山トランシップというやつなんですね。つまり、例えば東北の仙台港の物流分析、四国の今治、松山なんかの物流分析見ても、今までは内航船で神戸につなぐだとか、東京湾内の港につなぐだとか、そこで基幹航路に乗せるという物流だったんですけれども、内航船のコストが高いと。港湾の効率が悪い、金が掛かる、時間が掛かるというんで釜山につなぐというのがどんどんどんどん太くなってきているんですね。それが釜山トランシップというやつで、釜山がハブ化し、自信付けた韓国は、釜山新港の開発を終え、釜山の西二百キロのところに光陽という新しい釜山の三倍のコンテナターミナルヤードの建設を終えて日本企業の誘致に動いてきています。したがいまして、この世界港湾ランキングの動きというのが象徴しているように、日本の、特に太平洋側の港湾が一気に空洞化してきたと。
②に書いてあることがより重要なんですけれども、日本海物流ということを申し上げたいんですが、日本の貿易構造だけが変わっているわけじゃないわけで、アメリカにとっても対日貿易よりも中国あるいは大中華圏との貿易の方が圧倒するようになったというのはもう事実なわけですけれども、日本人は、北米大陸と大中華圏の貿易がばんばん増えているということをイメージしたときに、鹿児島と上海の緯度がほぼ一緒ですから、鹿児島の南の太平洋を船が行き来しているんだろうというイメージ取りがちですけれども、違うんですね。今主力物流は日本海に入ってきているんです。函館と青森の間の津軽海峡を抜けていっているんですね、基幹航路の物流が。どうしてというと、地球儀をごらんになれば分かりますが、その方が二日早いんです。今、日本海はそういう意味では基幹航路のラッシュなんです。我々が気が付かないうちに日本の国土軸にも大きなインパクトが起こっています。
日本海港湾への物流のシフト、これは国土交通省が調べてくれた数字ですけれども、平成七年から十七年までの外貿のコンテナ貨物の年平均伸び率、全国平均四・六なのに日本海側沿海の十一港は一二・六だという勢いで伸びているということになっていますけれども、日本海側の十一港ってどこのことなのというと、例えば秋田、それから山形酒田、新潟、北陸三県の港、伏木富山、敦賀、金沢、京都舞鶴、それから境港というのは、日本海側の港湾というのは、スーパー中枢港湾一港もなく港湾の施設としては甚だ劣勢であるにもかかわらず、いつの間にか日本海物流に吸い出されるように、日本海側港湾への物流のシフトというのは日本の国内でも起こってきています。
事ほどさように、つまり日本の貿易構造の変化というのが日本の国土形成計画にまで大きな影響を与えるような時代が来ているということを確認しなければいけないと。安倍内閣もアジア・ゲートウエーというキーワードを使っておられますけれども、正に総合交通体系というものをアジアとの連携という視点で大きく考え直す必要があると。
特に、例えばこの③が書いてあるんで話題として触れておきますと、コンテナ船の超大型化というのが今進んでいまして、八千TEUを超す超大型タンカーの登場と書いてます。これは八千個のコンテナが積める大型タンカーという意味なんですけれども、八千個のコンテナが積める超大型タンカーというのは、郵船が登場させてきた飛鳥Ⅱという豪華客船がありますけれども、あれがほぼ戦艦大和と同じ五万トン級というんですけれども、その倍ですね。
十万トン級の超大型タンカーが二〇一一年までに二百八十六隻建造予定ということになっていますけれども、二〇〇三年に、ついこの間、初めて最初の船が登場してきたんですけれども、あっという間に国際物流を変えてきています。水深十六メートルが必要ということで、日本の港でこの八千TEU以上のコンテナ船が泊まれる港というのは現在の能力をもってしては二つしかないと、こう言われています。
それぐらい大きく国際物流が、アジアのダイナミズムに押し上げられるように大きく変わってきていると。それに対して、総合交通体系というものを組み立て直して向き合わなければいけないという状況に来ているということをこの二点目の論点として申し上げたいと。
それから三番目、アジア連携の必要性と必然性ということを話題にしておきたいわけですけれども、今アジアのGDPが世界GDPに占めるシェアは日本も含めて約二五%と、四分の一がアジアということに昨年の統計をベースにするとなっております。これが二〇五〇年までに世界GDPの五割をアジアが占める時代に向かって我々は生きていくというイマジネーションが大変重要だろうと思います。
実はこれ、一八二〇年ごろの推計というコンピューターシミュレーションの面白い数字があるんですけれども、今から二百年ぐらい前ですね。世界GDPの五割をアジアが占めていたという推計値が出てきます。インドと中国と日本をベースにして、世界GDPの五割をアジアが占めていた時代というのが二百年前に存在したと。
ところが、この二百年間、つまり産業革命以降の世界史の中で我々は西優位の歴史の中を生きてきたわけですけれども、これからの正に四十五年間でアジアのGDPが再び世界GDPの五割を占める時代に向かって変わっていくという時代を併走することになるだろうというのが、まずベーシックな問題意識です。となると、アジアの連携は得ですという、だから必要ですという文脈だけじゃなくて、様々な意味合いにおいてアジアとの連携というものについての視点、思想が必要になってくると、こう思います。
必要性と必然性ということをいうと、今申し上げたように、アジア連携、経済的に日本にとっても大変重要なインパクトを与えるだろうという意味で考えなきゃいけない部分とともに、もう一つ実は強調しておきたいのは、少子高齢化していく日本の社会、アジアのダイナミズムを吸収して日本をバイタライズするといいますか、活性化するという視点が物すごく重要になっています。
六ページに日本の人口構造の急速な成熟化というメモが一番下に書いてありますけど、これは、もう私が言うまでもなく、昨年十二月に厚生労働省が発表してきた最近の長期人口予測の数字がそこにメモで書いてありますけど、二〇四六年に一億人を割ると、日本の人口は。その前の予測では二〇五〇年と書いてあったんですけど、四年前倒しになったんですね。二一〇〇年には四千七百七十一万人に日本の人口はなるだろうというのを厚生労働省が中位予測、比較的楽観的な予測値として出してきています。
今から百年前、一九〇〇年ごろの、つまり二十世紀初頭の日本というのは四千四百万人だったんですね。したがって、百年前、四千四百万人の人口が、おととしピークアウトして、これから百年後に四千七百万人というわけですから、元のもくあみというのはこのためにある言葉みたいな話なんですけれども。
しかも、日本の人口には六十五歳人口比重というやつが、高齢化というのが絡み付いてくると。百年前、五%にすぎなかった六十五歳以上人口比重がおととし二割を超えたと。これから我々の団塊の世代というやつなんですけれども、十年以内に続々と六十五歳になってきて、二〇五〇年には三九・六%、つまり四割になっていると。つまり、今までの五十年は人口が五千万人増えたということを前提に成り立った様々なビジネスモデルも行政も、これは、これからの四十五年で人口が二千八百万人減るということを視界に入れる必要があると。しかも、人口に占める六十五歳人口が四割になるという、そういうことを視界に入れたときに、人口が減るからといって衰亡するわけではないけれども、高齢化するからといって衰亡するわけではないけれども、人口というのはやっぱり民族の勢いのメルクマールみたいな部分もありまして、アジアのダイナミズムとの連携の中でこの国をバイタライズさせていくという視点が大変重要になるだろうということと、それから、もう一点触れておきたいのは、環境問題はボーダレスということなんですけれども、環日本海の生態系だとかということを視界に入れたときに、日本だけが京都議定書をクリアすれば環境問題が解決するなんという話では当然ないわけで、中国の環境問題を何とかしなきゃいけないと。中国の一次エネルギー供給の七割がまだ石炭です。このことが酸性雨となって日本に襲い掛かっていると。中国の化学工場で事故が起これば、アムール川、ロシアを汚染し、雪解けとともにオホーツク海に迫ってきたなんということになって、中国の環境問題とエネルギー問題に向き合うということが、環境問題は特にボーダレス、シームレスですから大変重要になってくると。そういう意味合いにおいて、我々の腹の中に、アジア連携は必要でありかつ必然なんだという問題意識が大変重要だろうというふうに私は思っています。
そういう中で、私の申し上げたい四点目の論点は、時間が迫っていますので一言申し上げると、二十一世紀の日本外交の構想力ということを触れたかったわけですが、後でまた質疑の中で触れさしていただくことになると思いますけれども、世界潮流は全員参加型秩序に向かって変わってきていると。二極の冷戦の時代でもなく、確実に脱九・一一といいますか、九月十一日からの五年間の世界史の潮流から変化が起こってきていると。私は、日本外交のこれからの要件として二つの要件があるというふうに思っています。
一つは、同盟国であるアメリカをアジアから孤立させない役割、例えば欧州におけるイギリスが果たしているような、欧州の本土とアメリカとをつなぐ役割といいますか。それと二つ目には、中国を国際社会のルールに参画させる役割と。つまり、じりじりするようなゲームに付き合わされることになると思いますけれども、WTOに中国を加盟させたことはやはり日本にとってプラスだったんですね。今後も、知的所有権だとか環境問題において、中国を国際ルールに引き込んでいくということが、腹をくくって引き込んでいくということが国益であって、粘り強く中国を国際社会の建設的な参画者に引き寄せていく役割が日本の役割なんだというある種の覚悟が必要だろうというふうに思います。
以上、時間が参りましたので、私の申し上げたい論点をざっと申し上げたということで話を終わりたいと思います。
どうもありがとうございました。