寺島実郎の発言 (国際問題に関する調査会)

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○参考人(寺島実郎君) それじゃ、私の方から。
 アジアの連携、金融、エネルギー、食料というお話を今いただきましたけれども、まず、若干さっき言い忘れたことで確認しておきたいのが、八ページにユーラシアダイナミズムと書いてあるメモの一番最初にロシアの大ロシア主義への回帰と書いたところに、どうしてもこれからの議論に確認したい数字がございます。
 これは、要するにロシアの石油生産のことが、先ほどの高橋さんのカムバックというやつの裏付けの数字なんですけれども、昨年のロシアの石油生産の速報値が出てきて、九百七十二万BDと。これはIEAが発表した数字のベースですけれども、分かりやすく言うと、サウジアラビアを追い抜いてロシアが世界一の産油国になったということなんですね。それから、もっとすごいのは、その下の米印なんですけど、天然ガスを石油換算した数字と原油の生産量を合わせたランキングで、もう二〇〇五年の段階で既にロシアが世界断トツの化石燃料の供給力を持つ国になってしまった。しかも、追い風のようにエネルギー価格が先ほどの話題のように高いと。ロシアが俄然、エネルギーをてこにエネルギー帝国主義という言葉が使われるぐらいよみがえるロシアというのを演出してきています、昨年のサンクトのサミットが象徴しているようにですね。
 したがいまして、私、十日ほど前に極東ロシア、ウラジオストクに行ってきたんですけど、新潟からわずか一時間半のところにウラジオストクありますが、様変わりしてきています。いわゆるエネルギーモノカルチャーでもあるわけですけれども、新たないわゆる極東にまでお金を回す余裕が出てきたロシアという姿があそこに見えてきています。環日本海とかアジアとの連携とかと言うときに、実は極東ロシアというのが実はブラックボックスでして、中国だ、韓国だ、東南アジアだ、インドだというところが非常に大きな成長ゾーンとして意識されてきていたわけですけれども、二〇一二年のウラジオストクAPEC総会を想定して、極東ロシアに日本円で五千億円のプーチンはインフラ投資をするということを発表しまして、ここのところへ来て、やけに勢い付いてきています。
 そういう意味合いでエネルギーというものにおけるアジアの連携ということを考えるときに、ロシアという視点を一つ加えておかなければいけないということを付言しておきたいと思います。
 よくアジアの連携と言うときに、東アジア共同体と、小泉政権も東アジア共同体なんという言葉をよく使っていたんですけれども、これを絵そらごとにしないためにも、個別の課題ごとの段階的接近法というのが私大事だと思っていまして、つまり実利にかなった連携の具体的なテーマをきちっと明らかにしていくと。それが今、田中先生がおっしゃった正に金融、エネルギー、食料なんというのが一つの具体的なあれかと思いますが、例えば宮澤構想と言われたチェンマイ・イニシアチブ。おととしの春、中国であれだけ反日デモが吹き荒れていた直後の五月にイスタンブールでASEANプラス3の財務大臣会議というのが行われて、いわゆるチェンマイ・イニシアチブを四百億ドルから八百億ドルに拠出金を増やして、アジアの金融不安というものに対して立ち向かっていこうという、つまり通貨不安に立ち向かっていこうという通貨交換協定の充実というのが行われています。それには言うまでもなく中国も韓国も参加してですね。
 したがって、私のメモの中にも書いてございますけれども、中国、韓国、日本で今外貨準備が合わせて二兆ドルを超すと言われています。アメリカの外貨準備、わずかに六百五十億ドルで、けたが違うよという状況になっているんですけど、アメリカは基軸通貨国ですから、外貨準備がなくても国家の信認に動揺はないとは言えますけれども、二兆ドルの外貨準備のうち仮に五%でもアジアの共同の目的のために使われるなんという仕組みができたならば、例えばアジア開発銀行なんかを窓口にして、アジアの広域連携のためにアジアの資金が環流するなんということがもし推進できたならば、省エネルギーのためとかあるいはアジアの広域連携のためにメコン川のデルタ開発だとか、あるいは中東から来ている石油の七割が日中韓に今来ていると言われていますけれども、みんなマラッカ海峡を通っているわけですけれども、例えばマレー半島横断運河のような大型のインフラのプロジェクトなんかにアジアの資金が回るなんという仕組みが出てきたら、アジア連携というのはより実態のあるものだというふうに認識される局面が来るんじゃないかと。
 それから、当然のことながらこの二十一世紀の中国の食料という問題がアジアにとって大変重要な問題なわけで、中国をだれが食わせるのかなんて本まで出ていますけれども、食料の分野における連携、特に日本は、農業の技術においては寒冷地に米が取れるような技術をこれずっと開発してきて蓄積があります。そういうものをもってアジアの食料問題に向き合っていくなんということは大変重要だろうと思います。
 その文脈で、先ほど高橋さんが情報ということを言っていましたけれども、非常に僕は参考になると思っているんですけど、フランスに、パリにアラブ世界研究所というのがあります。七三年の石油危機の翌年、構想を発表して二十年掛けてパリにアラブ世界研究所というのをフランスはつくったわけですけれども、六割フランスが金出して、四割、アラブ二十二か国に根回しして、我々が中東とかアラブとかエネルギーとか石油の情報を取ろうと思ったらどうしてもパリに行かざるを得ないという情報の磁場をつくっちゃったと。もちろんIEAの本部があることはありますけれども。そういう情報の磁場、磁力線の磁場ですね、その磁場を一体この国はどこまで持っているんだろうかということを考えたら、東アジアに関する情報さえ、例えばアメリカの情報に依存して生きていくような構図になっているというのは、私自身も情報の世界生きてきていますから痛感します。そういう中で、やはり粘り強くアジア太平洋の情報の集積力というものに向けてシンクタンクのようなものをしっかり育てるということも必要になってくるだろうと思います。
 私自身、今、大阪でのアジア太平洋研究所構想というやつに、北ヤード開発に絡んだ構想に参画していますけれども、そういうたぐいのものを、やっぱり腰低くしてきちっとアジアの理解と協力を得て実現していくなんていうことが、日本にアジア太平洋の情報の磁場をつくるということが長い意味での国益につながるだろうというふうに思っております。
 以上です。

発言情報

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発言者: 寺島実郎

speaker_id: 12372

日付: 2007-04-25

院: 参議院

会議名: 国際問題に関する調査会