高橋伸彰の発言 (少子高齢社会に関する調査会)

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○参考人(高橋伸彰君) ただいま御紹介にあずかりました立命館大学の高橋でございます。今日はお招きにあずかりまして、ありがとうございます。
 本来であれば、先週も日野原先生が立ったままお話しされたということなんで、四十歳も若い私は立ったまま話すべきなんですが、先週ちょっと腰を痛めまして、ちょっと、二度と座れなくなるかもしれないので今のうちに着席させて報告させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 本日は、ほかの参考人のお二人がパワーポイントという大変IT化に富んだ報告ツールで御報告されるんですが、私はいまだにローテクで、授業アンケートを学生から取っても、情報化が後れているというところにいつも丸を付けられている立場なものですから、ちょっとレジュメの方で報告をさせていただければというふうに思います。
 本日、報告をさせていただきたいテーマは大きく分けて三つございます。最初に各テーマごとの結論を一通り簡単に申し上げた上で、改めてその次に、その結論の論拠となる数字と背景について、大変ちょっと細かなレジュメで恐縮なんですが、数字と背景について説明をさせていただければというふうに思います。
 報告をさせていただきたいテーマの第一点は、レジュメの第一にあります人口構造から見た高齢者の現状と見通しということであります。それから、第二点目がレジュメの二ページ目にあります高齢者の生活の現状と問題点、第三点目がレジュメの三ページ目の後半に少し書かせていただきました今後の高齢者への対応ということで、三点報告をさせていただきたいというふうに思います。
 まず最初に、第一点目の人口構造から見た高齢者の現状と見通しということでございますが、昨年十二月に公表された国立社会保障・人口問題研究所の予測によりますと、日本の総人口に占める六十五歳以上の比率、すなわち人口統計上は高齢者比率ということになりますが、この数字は二〇〇五年で既に二〇%を超え、将来的には、二〇三〇年に三〇%、二〇五五年には四〇%を超えるという見込みであります。
 本日、まず第一に私が強調しておきたいのは、この予測に示されている数字、この数字は大変急激な高齢化が進展するように見えますけれども、この数字以上に日本における高齢化の進展は深刻だという点であります。
 先に結論を申し上げれば、これまでの日本では、高齢者の中でも比較的若い六十五から七十四歳と言われる前期高齢者を中心に高齢化が進展してきたというわけですけれども、今後、二十一世紀に入って進む高齢化というのは、七十五歳以上の高齢者、すなわち後期高齢者と呼ばれている方が増えていく、そういう形で高齢化が進展していくということでありますので、その結果、実は日本全体の人口構造がいわゆる逆ピラミッド化していくというのはよく言われているわけですけれども、日本全体の人口構造だけではなくて、高齢者の中でもより年齢の高い高齢者が増えていくということで、高齢者だけ取った人口構造も逆ピラミッド化していくと、そういう現象が起きていくということでありますので、いわゆる人口構造の面から見れば、まだ日本の人口構造は、二割を超えて大変だというふうに言われていますけれども、実質的な問題を考えればまだほんの入口の段階にあって、正に高齢化問題というのはこれから本格化していくということであります。
 それから、第二点目のテーマは、二ページ目にある高齢者の生活の現状と問題点ということでありますが、これも先に結論を簡単に紹介さしていただければ、日本の高齢者はよく、一人当たりの平均所得であるとかあるいは高齢者世帯当たりの平均貯蓄率で見ると必ずしも弱者ではないというふうにこう言われておりますが、それはあくまでも平均の話ということであります。この平均というのは統計上の計算値にすぎません。つまり、高齢者一人一人の現実の生活を示す数字じゃないわけであります。改めて高齢者一人一人の生活の現状を見れば、それはほとんどの人が平均以上か平均以下で生活しているのであり、正に統計に表れる平均で生活しているという人は、実は人数を数えてみればほとんど皆無に近い、ゼロに近いというのが現状であります。
 そこで、私どもが関心を持たなければいけないのは、この平均以下で暮らしている方の高齢者の生活の現状ということでありますが、その状況というのは、やはり他の世代と比較してかなり相対的な貧困者の割合が高い。相対的な貧困者というのは、後ほどもう一度説明をさせていただきますが、生存していく、生きていくというだけでは支障はないけれども社会に参加していくという上で支障が出てくる、つまり社会参加が十分にできない、そういうふうな状況に置かれている高齢者の割合が非常に高いということであります。しかも、加えて健康面、特に介護などの面、あるいは家族との接触、さらには住宅だとか交通のインフラの整備の面でも非常に日本は立ち後れており、この面で高齢者の生活は非常に厳しい状況に置かれているというふうに考えられるわけであります。
 この問題は、先ほど指摘さしていただきましたように、今後、後期高齢者、つまり日本の高齢者の人口ピラミッドが逆三角形化していく、逆ピラミッド化していくという過程でこの問題もますます深刻化していくというおそれがあります。
 第三のテーマは、いわゆるそれでは今後本格化する高齢社会の到来に備えてどのように対応するべきなのかということでありますが、私の結論を申し上げれば、やや逆説的のように聞こえるかもしれませんが、もはや高齢者対策の時代ではないというふうに私は考えております。既に五人に一人が六十五歳以上の高齢者、二十五年後には三人に一人、さらに四十五年後には五人に二人が六十五歳以上になるわけでありますから、つまり、もはや高齢者というのは特別な存在ではないというふうに考えられるわけであります。私どもの勤めている大学でも、大学の進学率が五割近くになれば、大学生は別に特別な存在ではなくて普通の学力しか持たない存在になるんだというのとほぼ同じような状況かというふうに思いますが、これだけ高齢者が増えてくれば、高齢者というのは特別な存在ではないと。
 すなわち、そう考えるなら、高齢者だけではなくて、障害者であるとか子供も含めてすべての人が毎日の生活を安全にそして安心して送ることができるような環境を整備すること、それが結果的には高齢者にとっても暮らしやすい社会をつくるというふうになるわけであります。逆に言えば、高齢者だけを対象にした対策とか政策というのはむしろ社会的な合意が得にくくなる可能性があるということでありまして、むしろ、あえて高齢者対策というのではなくて、すべての人が普通に暮らせる環境をつくっていく、それが結果的には高齢者対策になるだろうというのが私の今日申し上げたい論点の、テーマの結論であります。
 街頭の演説であればこれで話は終わるということでもよろしいかと思うんですが、本日は参考人として呼ばれておりますので、ただいま申し上げました結論の背景にある数字や実態について改めてレジュメに立ち戻って多少、少し詳しく残りの十分間で説明をさせていただきたいというふうに思います。
 ちょっとしつこいようでありますが、第一の論点から復習も兼ねてお話をさせていただきたいというふうに思います。しつこいのはちょっとへび年の性格であります。家内もへび年ですし、息子も性格で、蛇がとぐろを巻いて家にいるもんですから、申し訳ございません、大変しつこくなります。
 一ページ目でありますけれども、最初のレジュメに戻りますが、日本の人口構造が急速に高齢化した背景には二つの要因があるというふうに考えられます。
 一つは、この(1)に示しました絶対的な高齢化という現象でありまして、簡単に申し上げれば長生きする人が増えてきたということであります。それぞれどういうふうに増えてきたかということに関しましては、平均寿命、六十五歳の平均余命、六十五歳から、になればあと何年平均して生きられるのか、それから六十五歳までの生存率、おぎゃあと生まれた赤ん坊が六十五歳まで生きれる生存的な確率は何%かと、そういったものを、それぞれ各数字を見ても、戦後日本の高齢者、日本の人たちが、より多くの人たちがより長生きできる状況が生まれてきたということは、各統計を見ても明らかなとおりであります。
 この中で特に注目をしていただきたいのは、真ん中ほどのところにちょっと書かれていることでありますが、より長く生きる人がより多くなる。それは数字で見るとどういう現象かといいますと、二〇〇五年から二〇三〇年、ただいまから約二十五年後、この二十五年間の間に六十五歳以上と言われている高齢者の人は、ややちょっと数字が細かくて恐縮なんですが、この二十五年間の間に二千五百七十六万人から三千六百六十七万人という形で千九十一万人増えるというふうに予測をされております。
 しかし、その中で特に八十歳以上の人がどういう形で増えていくかというのを見ると、六百二十一万人から千四百十八万人に約八百万人増えるわけであります。高齢者の方が一千百万人増える中で、うち八百万人は八十歳以上である。つまり、これからの二十五年間、高齢化は進んでいくんだけれども、その中で増えていく高齢者のうち四人に三人は八十歳以上の人であるというところが、いわゆる絶対的高齢化がこれから進んでいく上で非常にまず注目しておくべき点かというふうに思います。
 それから、第二の高齢化の要因というのは相対的な高齢化ということでありまして、これは簡単に言えば、少子化による人口減少、それが結果的に総人口に占める高齢者の割合を上げていくんだということでありまして、それによる高齢化が実はこれからどんどん進展していくということであります。
 総人口の予測、それからそこで用いられている合計特殊出生率等の数字についてはレジュメでお示ししたとおりでありますが、ここで一つだけ申し上げておきたい点は、合計特殊出生率という、一人の女性が将来何人の子供を産むかということを統計的に推計した値でありますが、この推計値が下がることによって、将来的な社会保障のビジョンの中でいわゆる一人当たりの将来世代の負担額が非常に増えていくということであります。
 例えば、この十年間に合計特殊出生率は推計値で一・六一から一・二六に長期的に下がるというふうに見込まれていますが、こうした形で出生率が下がることによって、もしこれまでと同様の社会保障を提供していこうとすれば、一人当たりの負担額は将来世代三〇%増えざるを得ないということになりますので、三〇%をそのまま増やせというのは非常に無理な話でありますから、こうした増える分をどのように調整していくかというのが一つの課題になってくるということであります。
 ですから、出生率を上げようというふうに私は申し上げるつもりは全くございませんで、出生率が高いか低いかということが問題ではなくて、子供を産み育てる上で障害が今の日本の経済社会の中にあるかどうかということが問題であります。その障害を取り除くということが課題であって、出生率がどうなるかということはその結果として出てくる問題であるということでありますので、この低下の背景にどういった問題があるのかということは改めて綿密に議論をしておく必要があるだろうというふうに思われます。
 こうした結果として、いわゆる絶対的な高齢化と相対的な高齢化と組み合わされた形で、今後、実は日本の高齢化というのは正に本格的な高齢社会を迎えるようになってくるわけであります。
 そうなると、ここで一点強調しておきたいのは、これまでの高齢者対策というと、どちらかといえば、日本の人口構造に占める高齢者も比較的若い高齢者が多かったものでありますから、六十五から七十四歳の比較的健康で就業率も高く、いわゆる高齢者は必ずしも弱者ではないと言われるような、そうした高齢者を対象に様々な高齢者対策が立てられてきたというふうに思うわけですけれども、これからはそうした発想を転換しなければいけない。やや過激なことを申し上げれば、これまでの対策はすべて白紙に戻した上で、どう高齢者対策を再設計していくのかということが、私は高齢者の今後の生活を考えていく上で非常に重要な課題になるんではないかというふうに思います。
 それから、第二点目の高齢者の生活ということでありますが、ここもちょっとやや細かい数字を並べてしまって恐縮なんでありますが、二ページ目のレジュメのところで、よく言われている、高齢者は平均的に見れば必ずしも弱者ではないというのは、例えば高齢者の世帯の一人当たりの所得を見たときであるとか、あるいは高齢者の一世帯当たりの貯蓄金額を見たときとか、そういうふうに平均のいわゆる経済状況で見れば、このレジュメの真ん中ほどに書かせていただきましたが、確かに平均的に見れば高齢者は弱者ではありません。
 しかし、すべての高齢者が裕福なわけでもないということも我々としてはしっかりと見詰めておく必要があるというふうに思います。特に、先ほど申し上げましたように、平均以下の高齢者というのは、非常に相対的に貧しい、つまり社会的な参加が難しい、周囲の人たちと同じように行動できないという人たちが非常に多くて、その世帯の割合は約三割というふうに推計されまして、全世帯の二割よりも大きいわけでありますから、その面で高齢者の方が全世帯の平均と比べて相対的に貧しい世帯が多いというふうに確認できるかというふうに思います。
 よく、高齢者ほど経済格差が大きいのは当然であり、それは若いころの努力の成果であるとか、そういうものが累積的に反映されて、高齢者の間では経済格差が若い世代、現役世代よりも拡大するのは当然のように言われておりますが、実は欧米の先進諸国の状況を見ると、むしろ高齢者になるほど経済格差というのは縮小する傾向にあります。なぜなら、高齢者の間には平等な、比較的公平な年金制度だとか、そういうものがしかれておりますので、むしろ日本の高齢者の間で格差が拡大していくということには、単に若いころの格差だけではなくて、高齢者になってからの格差も非常に影響しているんではないかという点を一つ注目しておく必要があるんではないかというふうに思われます。つまり、高齢者になってからの格差というのは、正に年金の制度間の格差であり、いわゆる就業機会がある高齢者と就業機会がない高齢者といった、正に高齢者になってからの格差がこうした日本における高齢者の経済的格差に影響しているんではないかという点は一つ、一点注目しておく必要があるんだろうというふうに思われます。
 ただ、経済的なことだけが高齢者の生活ではないわけでありまして、お金があっても不幸な人はたくさんおります。お金がなくても幸せな人は余りいないと思いますが、お金があっても不幸な人はたくさんいるわけで、その不幸と思われる一つの大きな要因はやはり健康問題だというふうに思われます。
 この健康問題についても、今後の高齢化の中で一番懸念されるのは、当然医療の問題もそうなんでありますが、それ以上に懸念されるのはやはり介護の問題であります。なぜ介護の問題がいわゆる懸念されるかというと、在宅要介護者、つまり介護を要する人は実は高齢者になってからも、年を取るほど介護の割合が増えていくということであります。一般のいわゆる病気の場合には、高齢者になった時点でいわゆる体の不調を訴える人が急に増えるわけですけど、介護の場合には高齢者になった後も、実は七十五歳、八十歳、八十五歳と年齢を重ねていくに従ってこの割合が増えていくということで、いわゆる介護の問題が極めて深刻であるということであります。しかも、現状は、随分介護保険の普及によって介護サービスは行き届くようになりましたけれども、なお女性の負担というのが大変大きいという点は懸念されるところであります。
 ちょっともう時間が参りましたので、あと二、三分で終わらせていただきます。
 次に、その高齢者と家族の状況とか高齢者の暮らしということを少しレジュメで書かせていただいたんですが、これは私が申し上げるまでもなく、高齢者と家族の問題については、最近、高齢者の夫婦のみ、あるいは高齢者の独り暮らしという、そうした家族形態が増えているわけですが、この中で特に今後我々が注視しなければいけないのは、これまでは単身の高齢者の世帯というのは女性が多かったんですけれども、今後は、団塊の世代というのは、年上も年下も人口が少なかったものですから、友達結婚によっていわゆる夫婦間の年齢格差が非常に小さくなったということで、いわゆる妻に先立たれる夫がこれからどんどんどんどん増えていくということで、正に今後は、男性高齢者の単身世帯が足下でも非常に増えております。今後は更に増えていくということになると、いわゆる男性高齢者の単身世帯をどうするかということがこれからの高齢者の暮らしの中で重要になってくるのではないかというふうに思われます。
 さらに、高齢者の暮らしを支えるインフラも日本では非常に立ち後れておりまして、住宅の設備も非常に貧弱でありますし、交通機関を見ても非常に高齢者が使いやすいような状況にはなっておりませんし、さらに、日常生活を考えれば、必ずしも高齢者が使いやすいような通信機器あるいは情報機器が少ない、つまり若い世代と高齢者の間でデジタルデバイドが生じている、情報格差が生じているということも今後の課題になってくるというふうに思います。
 ただ、私は、高齢者が必ずしもこうした最新の情報機器を使いこなせないんではない、つまり使いこなせる能力は高齢者も十分あるんだというふうに思います。ただ、先ほど申し上げましたような家族形態の変化において、身近にこうした新しい通信機器、情報機器を使い方を教えてくれる人たちがいなくなったことによっていわゆる高齢者と若い世代のデジタルデバイドが広がっているというふうに考えられますので、そうした面での対応策ということも今後高齢者の暮らしを支える上で大変重要な課題になってくるだろうというふうに思われます。
 最後に、高齢者の対策でありますけれども、先ほど申し上げましたように、正にその高齢者が普通に生活できる国づくりというのが最大の私は課題になってくるというふうに思います。
 何回も申し上げますが、これほど人口の中に割合が増えた高齢者はもはや特別ではないわけでありますから、年齢を理由にしたような定年等の差別であるとか、あるいは社会保障面での優遇策は基本的には廃止すべきであろうと、改めて高齢者の年齢を再定義すべきであろうというふうに考えられます。私は、当面は七十歳、長期的には七十五歳以上にいわゆる高齢者の定義を再定義した上で年齢による優遇策を講じるのであれば、そうした年齢以上の高齢者に対策を講ずべきではないかというふうに思うわけであります。
 あと、各論についてはそこに書いたとおりでありまして、一点だけ申し上げれば、これからは当然高齢社会を迎えて負担増ということが重要な課題になってきますが、最初に負担ありきという形でビジョンをつくっても国民には納得されないというふうに思います。そういう意味で、負担増を納得できるような信頼あるビジョンづくりというものが、これからの高齢者の生活あるいは政策を考えていく上で重要な課題になるんではないかというふうに思うわけであります。
 以上、若干時間をオーバーして恐縮でございましたが、取りあえず私の報告を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

発言情報

speech_id: 116614534X00220070214_002

発言者: 高橋伸彰

speaker_id: 9877

日付: 2007-02-14

院: 参議院

会議名: 少子高齢社会に関する調査会