渡辺興二郎の発言 (日本国憲法に関する調査特別委員会)

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○参考人(渡辺興二郎君) 本日は、発言の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。
 私は、日本民間放送連盟で報道小委員長を務めておりますテレビ朝日の渡辺と申します。よろしくお願いいたします。
 我々民放連では、昨年の四月以降なんですが、何度かにわたりまして衆議院の憲法調査特別委員会に出席させていただきました。その中で、国民投票法案とメディアとの関連につきまして意見を申し述べてきた経緯がございます。本日も、その憲法改正の手続を定める国民投票法案の今回の修正法案について、放送メディアの立場から意見を申し上げたいと存じます。
 民放連が昨年の四月に意見を申し述べたときは、報道に対する規制を法案に盛り込むべきか否かというところが我々にとって大きな論点となっておりまして、そのことに対しては反対という立場で申し上げました。その折も何回か申し上げたことなんですけれども、憲法改正のための国民投票が行われる場合には、国民が何の束縛も受けずに自由に議論して、できるだけすべての人がその内容を十分理解して投票することが不可欠であろうと考えております。テレビや新聞、雑誌で憲法を変えるということについて連日のように報道が行われて、それこそあらゆる家庭や職場で多くの議論が闘わせる中で国民がその判断を下すときに初めて真の国民主権が実現するということになると考えております。
 こうしたことから見ますと、報道規制はあるべきではないということは言うまでもありません。その意味でも、いま一度我々は報道機関としまして、憲法改正という国の骨格を定める重要な問題につきまして、国民一人一人が熟慮して討議するために必要かつ十分な情報や論評を伝えることが不可欠であるという立場に立ちまして、憲法改正手続を考える際には、何よりも国民主権の原点に立ちまして自由な討議を通じて浮かび上がってきます国民の良識を信頼することが基本であろうと、そうした状況下において報道機関に対する一切の規制は不要だというのが我々の基本的な立場であるということをこの場で改めて申し上げたいと思います。
 そうしたことを踏まえますと、昨年来、国会の場で皆様方の真摯な御議論を経て、このたび衆議院で可決されました国民投票法案の併合修正案には、我々放送メディアとしては看過できない点が散見されますので、以下、具体的に意見を述べさせていただきたいと存じます。
 まず最初に、今回の案文で新たに加わった第百四条についてでございます。
 ここでは一般放送事業者等、これは民間放送のことを言いますが、一般放送事業者等に対して、「国民投票に関する放送については、放送法第三条の二第一項の規定の趣旨に留意するものとする。」という条項が新たに加わっております。この条項につきましては、これまでの国会審議の中でも、また昨年十二月に与党、野党の双方から示されました修正方針の中でも集中的な議論や具体的な論議があったものではないというふうに記憶しております。我々にとりましては余りに唐突であり、違和感を否めないというのが正直なところでございます。
 昨年の国会審議の中で既に何度も申し上げましたけれども、放送事業者は放送法に基づいて既に自律的な取組を行っており、新たな規定を設ける必要は全くなく、たとえそれと同じことが国民投票法案に盛り込まれるとしても、それは看過できないということを申し上げたいと思う次第でございます。
 改めて申し上げるまでもございませんけれども、この放送法の三条二の一の規定というのは、一般的には番組編集準則と呼ばれているものでございます。四項目ございます。公安及び善良な風俗を害しない、公序良俗ですね、それから政治的に公平である、報道は事実を曲げない、それから最後に、意見が対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにせよ、これは多角的論点の提示でございます。これに基づいて、我々放送事業者は、放送法三条の三に規定されます番組基準をそれぞれが自主的に定めて公表しまして、常に番組の適正化を図ることによって、自律することが保障され、かつ求められているというふうに受け止めております。
 国民が憲法改正の是非を自由に議論する雰囲気をつくり上げるためにも、一方に偏らない放送を心掛けていくということは、放送法の規定をまたずとも、我々放送事業者には当然のことでございます。したがいまして、あえて国民投票法案の中に、たとえそれと同じ趣旨の条項が盛り込まれることについても、それは不要であろうというふうに考えております。
 これにつきまして、発議者の一人である衆議院の船田先生ですが、今月十七日の特別委員会におきまして、新たに規制をするということではない、現行法にのっとった上でそれを遵守してほしいという正に留意事項である、新たな法規制を設けたものではないとおっしゃっております。であるならば、設ける必要は逆にないのではないか。私どもは、既に放送法によって、国民投票に関する放送だけではございません、あらゆる事象について留意しておりまして、国民投票に関する放送についてあえてこのような規定を設ける必要はないということを繰り返し申し上げておきたいと思います。
 また、法案にございます趣旨に留意するという文言につきましても、どのような意味なのかと。例えば、法案で想定されております国民投票広報協議会が放送の内容について何らかのチェックを行うようなことがあるのかないのか、また現行の放送法との関係等々、さらに、放送番組の内容について公権力が介入して判断を下すことに問題はないかなど、様々な側面で危惧を抱かざるを得ないというのが正直なところでございます。
 さらにもう一点付け加えますれば、この規定が一般放送事業者、つまり私ども民間放送事業者だけに限定されているということにつきましても違和感がございます。放送法第三条の趣旨は、御案内のように、民放、NHKを問わず、あらゆる放送事業者に共通する考え方でございます。この条文によって民放だけにこの規定を留意せよというのは、やはり我々としては、番組編集の自由の観点から看過できない問題だというふうに考えております。NHKに対してと同様に、我々民放に対してもこのような規定を適用すべきではないと考えております。
 我々放送メディアの使命と申しますのは、一つ一つの社会事象に対して多様な多角的な論点から考えるための材料を分かりやすく伝えるということにあると思います。一方、我々のメディアは、放送法によりまして自律することが保障され、自主的に番組基準を策定して、自浄努力をもって運用しております。NHKとともにBPOという第三者機関も設置しております。番組の内容に関する日常的なチェックなどの業務も様々留意、配慮をしながら実際の放送に結実させているところでございます。もちろんこれは完璧とは言えず、これまでも様々なおしかり、御批判をいただくことは決して少なくございませんでした。しかし、そうした我々の努力に今後とも御理解をいただきたいとお願い申し上げる次第でございます。
 したがいまして、憲法改正に関する放送、報道活動全般につきましては、放送法によって既に完備されている放送事業者の自主自律による番組編集の自由と、これまでの放送の長い歴史の中で培われたノウハウにゆだねていただきたいということを改めて強く申し上げたいと思います。百四条を盛り込むことにつきましては、是非とも慎重な御審議を重ねていただきたいと思います。
 もう一点、国民投票運動のための広告放送の制限に関する条項について意見を述べさせていただきます。
 昨年の国会審議の段階では、国民投票運動のための広告放送を投票日前の七日間は禁止するとされておりました。これについては、昨年六月の衆議院での特別委員会、十一月での小委員会でも私ども民放連が申し上げましたとおり、投票日直前の期間における広告放送であっても法律によって禁止する規定を国民投票法案に盛り込むことについてはやはり反対させていただきました。
 その際の我々の主張のポイントなんですが、放送メディアの使命、役割を考えると、広告放送であっても報道と同様に法律で規制されるべきではない、民放各社は番組基準を定めて視聴者保護の観点から広告の品質管理を自主的に行っている、さらに、憲法改正の賛否に関する意見広告の場合に、出稿されるCM全体の中でバランスを図ることになりますけれども、公平公正の確保への配慮は放送の自律に任せるべきであるというものでありました。
 しかしながら、今回の法案では、百五条で広告放送の禁止期間が二週間、十四日に拡大されております。我々は、時間の長短というよりも、このような規制が盛り込まれること自体、反対との立場は変わっておりません。
 その理由は、投票直前は憲法改正に関する議論が最も活発になされるべきであって、主権者たる国民の関心も最も高まる時期であること、さらに、テレビやラジオが国民の情報取得の大きな手段であることを考えたときに、これを利用した広報活動の一切を禁止するということは主権者たる国民の正しい判断の道を著しく損ねることになりかねないからであります。その意味で、この条項が削除の方向で検討されるのではなくて逆に期間が延ばされたということにつきましては、率直に申し上げて残念でなりません。
 取りあえず、民放連からはこのように見解を表明させていただきます。

発言情報

speech_id: 116614968X00820070427_009

発言者: 渡辺興二郎

speaker_id: 10755

日付: 2007-04-27

院: 参議院

会議名: 日本国憲法に関する調査特別委員会