今井一の発言 (日本国憲法に関する調査特別委員会)
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○参考人(今井一君) 私は、衆議院の方の憲法調査特別委員会には、参考人あるいは公述人として三回発言の機会を与えていただいております。今日参議院は初めてなものですから、本題について語る前に、最初に私の立場について、あるいは姿勢について若干お話をしてから本題に入りたいと思います。
まず、私たちは三年前、二〇〇四年の四月に、真っ当な国民投票のルールを作る会という市民グループを立ち上げました。ここには、九条でいえば、九条改憲派の人もいるし九条護憲派の人もいます。主に弁護士、地方議員、それから首長、ジャーナリスト、そういう方々で、どういうルール作りをするのが一番いいのかと、どういう内容がいいのかというのを議論を重ねてきました。具体的な名前を言えば、慶應大学の小林節さんとか、少し前に市長を辞められましたけれども、東京都国立市長の上原公子さんとか、そういう非常に著名な方々も含めて、名前だけじゃなくて実質的に参加して議論を重ねてきました。あるいは、スイスやフランスに行って、現地のルールについても調査をしてきました。
その上で、二年前の二月二十八日にいわゆる市民案というものを取りまとめて、ここにおられる関谷委員長あるいは衆議院の中山太郎委員長に、これを立法府に反映させてほしいということで要請を行いました。それからもう二年が過ぎたということです。今もその気持ちは変わっておりません。だから、今日こうやって直接発言する機会を与えていただいて大変光栄に思っております。
それから、二番目に行きます。陳述要旨の二番ですけれども、これは私個人の考え方ですけれども、会としてじゃなくて。憲法改正手続法の審議が行われているわけですけれども、この制定についてはこんなふうに考えています。
立法府、国会議員が公平かつ合理的な憲法改正手続法の制定を怠ったり阻んだりする行為は、国民の憲法改正権を侵害するものだと思っています。国会議員がなすべきことは、私たち主権者の憲法改正権の行使を具現化する法律の制定を阻むことではなく、公平で合理性に富んだルール作り、立法のために邪心なく幅広い合意形成に尽くすことであり、個人あるいは党としての改憲、護憲の姿勢や目先の選挙戦略等にとらわれる行為に終始してはならないと考えています。それは、ここにおられる議員の皆さん方全員がそういうふうにお考えになっていらっしゃると思います。
この間、衆議院から参議院に審議が移ってから、インターネットテレビでも今中継ずっと見ることができますので、参議院の審議の模様は、私はもうすべて自宅において見聞きさせていただいております。ライブラリーでももちろん見れるんですけど、結構白熱しているものですから、つまらないテレビ見るよりもよっぽどおもしろいので。前川さんが座っていらっしゃいますけれども、前川さんが野党議員であるにもかかわらず、民主党の議員なのにもかかわらず、憲法上疑義があるというのはどこなんだと、最低投票率、それを発議者に突っ込んで聞いたり、結構ガチンコでやっていますから、それも聞かせていただいています。つまり、皆さん方の真剣度の度合いを肌で感じていますし、今後も目先の選挙戦略とか党の、政局とか党利党略にとらわれずに審議を重ねていただきたいというふうに思っております。
それから、本題に入ります。
テレビ、ラジオのスポットCM規制についてですけれども、先ほど申し上げた真っ当な国民投票のルールを作る会が市民案を作るときに、もう最初に私たちは、テレビのCMについてはこれを法規制すべきだという案を作りました。それには理由があります。一つは、スイスに行って、その調査の結果に基づくものです。
スイスは、新聞、雑誌などに意見広告を出すのは全く自由です。私が現地である国民投票のときに取材をしたときも、これは高速道路の建設のことだったんですが、道路業界の人たちは毎日新聞に意見広告を載せていました。一方で、お金の余りない環境グループはほとんど載せられないという状況でした。しかし、CMの場合は一切流れていませんでした。理由を聞いてみたら、マインドコントロールに主権者を落とし込む余地があるからだ、可能性があるからだと、だから活字は許しても放送は許さないというのが当局の答えでした。あるいはメディア関係者の答えでした。
時間がありませんので、もう一つの理由は後で質疑応答のときに述べたいと思いますけれども、私自身が一九九三年の、先ごろ亡くなられましたけれども、エリツィン大統領が行った四つの項目に関する国民投票、エリツィンを支持するかどうかとか市場経済に持ち込むかどうかという、その現場に私がいて、私、当時モスクワのアパートに住んでいたんですけれども、ダー・ダー・ニエット・ダー、ダー・ダー・ニエット・ダーと、朝から晩まで国営放送を使ってダー・ダー・ニエット・ダー、今でもこびりついています。この前、共同通信の当時記者やっていた松島君に会ったら、松島君も頭から離れないと言っていました。それぐらいひどいものです。だから、そういうこともあって、やめた方がいいんじゃないかというふうに考えました。
ここにも書いていますけれども、理想的には、立法府が法規制をするんじゃなくて、メディアにかかわることは自主規制が望ましいと思っています。しかし、残念ながら、この間、民間放送連盟あるいは民放労連、この幹部の人たちと会ってみても、自主規制案を作る気配は全くないし、それに着手した気配もありません。自主規制案を提示して、立法府にこれでいってほしいと、だから法規制やめてくれと言うんならともかく、自主規制案を作っていない状態でやめろと言っても、これは筋が通らないんじゃないかというのが私の意見です。
ただし、いったんここで法規制した後、三年の経過期間中にだれもが納得できる自主規制案を労使が一体となって作れば、再度立法府で検討していただけないかというのが私の考えです。
それから、もどき、類似の内容を持ったCMについては、後ほど質疑応答のときに資料も提示して紹介したいと思っています。
公務員法制上の政治的行為の制限等に関する規定の適用除外ですが、これはちょっと難しい問題なので読ませていただきますが、国民投票運動と憲法に関する一般的な意見表明については、公務員の政治的行為の制限を適用除外とする、これは昨年末の時点での自民、公明、民主三党の合意事項でした。公務員が主権者として原則自由に国民投票運動に参加できることを、国民投票法制のみならず、様々な公務員法制においても明確に担保し、保障するための適用除外であったと私は認識しています。にもかかわらず、こうした合意形成を壊し、併合修正案が、私にとっては後退と映るんですが、後退を見せたことについてとても残念に思っています。私は、併合修正案の事前審査段階で削除された適用除外規定を参議院において復活させるべきだと考えています。
そうした意見は意見であるんですが、それとは別に、いわゆる労働組合や弁護士の方々が言っているこの問題についての意見についても私はちょっと一言申し上げたいことがあります。
それは、本来、この問題の抜本的解消というのは、国民投票法の中にどうするか、何を盛り込むかということではなくて、国家公務員法、地方公務員法を始めとする様々な法律に記されている政治的行為の制限を緩和あるいは撤廃する法改正によってなされるものだと考えています。国民投票運動における公務員の政治的行為の制限に異議を唱える市民や議員がその主張のみを繰り返すだけで、前述の法改正を現在強く主張したり、具体的かつ本格的な行動を起こさないことについては疑問を抱いています。
適用除外事項を盛り込めと言うんだったら、併せてそういった運動や主張を行うべきじゃないかと。国民にとってはそれが非常に分かりやすいことだと思います。先般、メーデーが行われましたけど、メーデーのときにこれを訴えている集会を見たことがありません。にもかかわらず、この中にそれを、適用除外だけを盛り込めというのはいささかおかしいんじゃないかと、そういう気がしております。
それから、五番、民による民への干渉にも目を向けるべし。
私は、一九九六年の八月四日に新潟県巻町で日本で最初に住民投票条例制定に基づく国民投票が行われて以来、様々な住民投票を現地取材しています。この十年間で住民投票は三百七十件行われています、すべて条例制定に基づくものですが。この中で、最近では少なくなってきましたけれども、本当にひどい、行政とかそういうところからの圧力じゃなくて、民同士がひどい圧力を掛けたりしていることが実際にあります。例えば、五〇%ルールが設定された徳島や岩国では投票に行かせないという、行かないようにしましょうというそういう優しいものじゃないんですよ、行ってはいけないと、これを無効にしてしまうんだと。だから、おれは投票所で見張っているからなと。おまえ来たら、おまえのところの飲み屋にはもう絶対行かないとか、おまえのスナックはもう使わないとか、本当にこういうことが実際に行われているということです。
それから、五〇%ルールが適用されていなかった巻町や、沖縄の県民投票や名護の市民投票でも同じようなことが民同士で行われました。例えば、ある銀行に勤めている若い女性銀行員が、今度投票に行こうねと自分の自由時間に同じ会社の仲間にメールを打っただけで上司から呼び出されてとんでもないとしかられたことがあるんですね。
私が言いたいのは、メディアを法でルールで縛るということだけじゃなくて、こういった民同士の脅しとか圧力とか、これが相当ひどい状態になったときにどんなふうにそれを抑制するのかということについても立法府の方でお考えいただけないかということです。
それはそれとして、しかしやっぱりそういったことをなくす一番のかぎを握っているのは、私はメディアだと思っています。報道者がそういった事実をきちっと伝えて、そういったことはいけないんだ、駄目なんだと、民主主義や市民自治を侵すんだ、損なうんだということを懸命に報道して国民に啓蒙する役割を果たさなければいけないと思っています。
そういった意味で、六番の報道者と国民による監視と批判が重要だということも話したいと思います。
先ほど、公務員法制の問題ありましたけれども、これ、いろいろ危惧をすれば、あるいはこういう可能性もあるんじゃないかといえばもう切りがないんですよね。結局は、国民投票法、憲法改正手続法の内容だけの問題じゃなくて、それを運用する政府、権力の性向の問題にもかかわってくると思うんです。これをごちゃ混ぜにして論議すると問題が見えてこないと思います。
私は、フランス政府が、最近もサルコジとロワイヤルの大統領選挙が行われましたけれども、〇五年の五月二十九日に行われた国民投票のときの話をちょっとしたいんですが、これ、ポスターは、舛添さんもよく御存じだと思いますけれども、フランスの場合は公共掲示板にしかこういうふうに張ってはいけないんですね。各政党ごとにこれは割り当てられているわけです。こういうものが、これはウイの方ですけれども、こういうふうに、まあこういうのが使われると。公共掲示板に張るというのは、要するにこういう形で張られるわけですね。指定の番号のところへ張るわけです。社会党は社会党、共産党は共産党と。ウイかノンかを張るわけですよね。公共掲示板以外のところに張ったら違法行為になるんです。
ところが、これをごらんになったら分かるように、銀行の壁だとか、それからカフェの壁だとか、大学の構内あるいは横とか、もうありとあらゆるところにウイとノンがべたべたべたと張ってあるわけですね。このことについて逮捕者が出たかといったら、出ていないわけなんですね。だから、同じ日本とフランスで、あるいはよその国も、全く同じルールを適用していても、政府によって逮捕したりしなかったりするわけです。だから、単にルールの問題じゃなくて、それを運用する政府の性格、性向の問題もかかわってくるんじゃないかというふうに考えています。
そういったことも含めて、後の質疑で詳細、細かいことについてはできたらお話をしたいというふうに思っています。
最後に、今日は直接関係ないかもしれませんけれども、ボイコット運動と最低投票率についても、インターネットで中継を見聞きさせていただきましたら、発議者の赤松さんの方とか質問者の仁比聡平さんの方から具体的に私の名前が出て、ボイコット運動について言っているのは今井一さんだけじゃないかというふうに言っていただいたこともありまして、もしそういう機会がありましたら、今日、本人が来ているものですから、何か私に質問があれば、最低投票率のことやボイコット運動のことで、どなたでも結構ですので、質問していただければ答えたいと思っています。
以上です。