保岡興治の発言 (日本国憲法に関する調査特別委員会)
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○衆議院議員(保岡興治君) ただいまの御質問に対して答弁させていただく前に、まず私の方から、理事会での御協議、御指示に従って、去る二十五日の大久保委員からの御質疑に関連して問題となりました本法第百九条第二号の組織的多数人利害誘導罪につきまして補充の答弁をさせていただきたいと存じます。
本条項について大久保委員から御指摘があったのは、組織的多数人利害誘導罪の趣旨及びそこで用いられている小作という文言に関して、現在、小作など存在するのかという二点であったかと存じます。
また、これに関連して、理事会等におきまして簗瀬理事から、そもそも本条項の文章構造はどうなっているのか、特に報酬としてという文言はどこに掛かるのかとの御指摘もいただいていると伺っておりますので、以上三点について整理した形で改めて御答弁を申し上げる次第でございます。
まず、百九条第二号の利害誘導罪の趣旨でございますが、本法案においては、まず、金銭若しくは物品等による投票勧誘行為は投票の公正さを害する好ましくないものであるとの観点から、要件を限定した上でありますけれども、第一号に買収罪の規定を置いております。そして、利害誘導罪を定めた第二号は、投票人との間の特殊の直接利害関係を利用した投票勧誘行為もまた第一号の金銭若しくは物品等による投票勧誘行為と同視すべきであって、これと同様に規制する必要があるという趣旨で規定したものでございます。
そこで言う特殊の直接利害関係を利用した投票勧誘行為については、まず利害関係の及ぶ相手方、客体と利害関係の内容、手段とをどのように要件として記述するかが問題となるわけでありますが、本条項では、まず客体については投票人だけではなく投票人との関係あるものまで含むとして寺社、学校、会社、組合、市町村などをその例示として掲げております。また、手段についても特殊の直接利害関係の例示として用水、小作、債権、寄附などを掲げております。ちなみに、これらはあくまでも例示であって、例えば道路の改修、上下水道の施設事業による利便の供与、提供等もこれに該当するものと考えられます。なお、これらの例示は、法的安定性の観点から、同種の法分野である公職選挙法上の利害誘導罪の判例解釈を踏まえた運用がなされるよう同じ表現ぶりを用いているところです。
次に、百九条二号において述べられている小作の定義でございますが、これについては農地法第二条第二項において、小作地とは所有権以外の利用権、例えば賃借権、地上権等に基づいて事業に供している農地と明快に規定されている法令用語でございます。このような小作地の現状については、例えば平成十六年度の小作権の総設定件数は二十三万二千件、その総面積は約十二万五千ヘクタールのデータが公表されております。したがって、このような小作地を耕作している場合において、例えば小作料の引下げ等の小作条件に関する権原を利用して投票勧誘をするようなときは本条に該当し得るものと考えられます。
最後に、百九条第二号の文章構造についてでございますが、本条項はかなり長文の規定であり、御指摘のように一読してすぐに理解できるような文章になっていないかもしれません。しかしながら、今から申し述べますように、本条項は適用対象を限定すべく要件を重ねたことにより長文となったものでございますが、これを要件ごとに分解して丁寧に読めばその論理構造は明らかなものでございます。
まず、本条項は、その構成要件の観点から大きく五つの要件に分解することができると思います。すなわち、第一は組織によりという要件。第二に、多数の投票人に対してという要件。第三は、憲法改正案に対する賛成又は反対の投票をし又はしないようにその旨を明示して勧誘してという要件。第四は、その投票をし又はしないことの報酬としてから、特殊の直接利害関係を利用してまでの要件で、この部分はかなり長文になっております。最後は、憲法改正に対する賛成又は反対の投票をし又はしないことに影響を与えるに足る誘導をしたときという要件の五つでございます。
そして、ただいま述べました第一から第四までの要件は、すべて最後に述べました誘導をしたときという要件を限定する修飾語となっているものでございます。すなわち、組織により誘導したとき、あるいは多数の投票人に対して誘導したとき、さらには賛否を明示して勧誘して誘導したときといった具合でございます。このように、第一の要件から第三の要件のかかわり具合はすぐに理解できるところだと存じます。
問題は特に長文となっている第四の要件でございますが、まさしく御指摘の報酬としての文言を含む部分でございますが、そこで、ここは更に分かりやすくするためにこの部分を更に細かく三つの文字列に分けて御説明を申し上げます。
すなわち、第一は、報酬としてという対価性を規定する部分。第二は、その報酬が一定のものに対すること、言わば客体を規定する部分。第三は、その報酬が一定の関係を利用したものであること、言わば手段を規定した部分の三つでございます。
そして、一見複雑そうに見えるのは、今述べた第二の客体及び第三の手段について規定している部分が細かな例示を掲げているからだと存じます。したがって、この例示を飛ばして文章の骨格だけをたどれば、その構造自体は明らかなものになると思います。すなわち、投票行動の報酬として、その者又はその者と一定の関係のある者に対する一定の特殊の直接利害関係を利用してという構文になっているわけでございまして、これが最終的に誘導をしたときに掛かっていくわけでございます。
したがって、報酬としてはどこに掛かるのかというお尋ねに対しては、直接には利用してに掛かり、その構文全体が誘導をしたときに最終的に掛かっているとお答えすることとなると存じます。
以上のように、百九条第二号は要件を限定し子細に規定したことにより長文となったものでございますが、その論理構造は明確で、罪刑法定主義に照らしても問題がないと考えているところでございます。(発言する者あり)