2007-12-11
衆議院
寺岡慧
厚生労働委員会臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案審査小委員会
寺岡慧の発言 (厚生労働委員会臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案審査小委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○寺岡参考人 ただいま御紹介にあずかりました日本移植学会の寺岡慧と申します。
本日は、このような機会を与えていただき、深く感謝いたしております。
一九九七年十月、臓器の移植に関する法律が施行されて以来、十年間余りの期間に六十二件の脳死ドナーからの臓器提供があり、四十九件の心臓移植、三十八件の肺移植、四十五件の肝臓移植、四十二件の膵臓移植、百七件の腎臓移植、そして三件の小腸移植が実施されました。これらの移植の成績は大変すぐれたものでありまして、欧米の成績と比較してまさるとも劣らないものです。六十二件の臓器提供につきましては、脳死下での臓器提供事例に係る検証会議による各事例ごとの厳正な検証の結果、適正に実施されたとされています。
しかし、この十年間に実施された移植数は余りにも少なく、移植を待ち望んでおられた多くの患者さんが亡くなられております。お手元の資料六にお示ししますように、心臓では移植を受けられた方の二倍強、肺では三倍強、肝臓では五倍強の方々が移植を待ち望みながら亡くなられております。
私ども日本移植学会としましては、他の医学会、日本医師会、患者団体の方々とともに、臓器の移植に関する法律の改正、すなわちA案への改正を強く要望してまいりました。お手元に配付させていただきました要望書は、A4の二枚刷りの紙でございます、二十四医学会と日本医師会で構成される臓器移植関連学会協議会からの法改正についての要望書で、さきに議員の皆様方に郵送させていただいたものでありますが、本日改めてお手元にお届けさせていただく次第です。
法改正が必要である根拠としましては、まず第一に、多くの方々が移植を待ち望みながら亡くなられていることです。現状ですと、少数の方のみが移植の恩恵を受けて健康を取り戻される一方、他方で多くの方々が移植を待ち望みながら亡くなられているのが実情です。潜在的には、心臓移植を必要とされる患者さんは少なく見積もっても年間四、五百人、肝臓移植を必要とされる患者さんは年間二千二百人とされ、このままではさらに多くの患者さんが亡くなってしまうものと危惧されます。
第二に、重症心疾患の小さな子供さんは、現状では国内で心臓移植を受けることができません。重症心疾患の小さな子供さんたちにとって、生きる唯一の方法は海外での心臓移植であり、このため、海外での移植を求めて渡航される患者さんが後を絶ちません。
お手元の資料十にありますように、海外での移植は、患者さんとその御家族にとって、精神的、経済的また身体的にも大変な負担を強いることになり、ごく限られた方のみしか移植の恩恵を受けることができません。また、海外での移植は、その国の患者さんとの間に一種のあつれきを生じ、多くの批判がなされています。世界保健機関、WHOからも、我が国に対して厳しい批判がなされております。
このような事情を背景に、今後は海外の移植がさらに困難になってくるものと予想されます。このままでは、重症の心疾患に罹患した小さな子供さんたちにとって唯一の助かる望みである心臓移植の道は完全に閉ざされてしまいます。
第三に、法施行以来、少数とはいえ、脳死ドナーからの臓器提供並びに臓器移植が適正に実施され、移植を受けられた方の多くが健康を取り戻されたことによって、臓器移植に対する理解が徐々に社会に浸透しつつあります。
お手元の資料十四から十六にありますように、昨年十一月の内閣府の意識調査によりますと、臓器を提供したいが四一・六%に増加し、提供したくないが二七・五%に減少しております。また、本人に生前の意思表示がない場合の臓器提供について、家族の判断にゆだねる、提供を認めてもよいが合わせて五七・五%、提供を認めるべきでないが三五・七%となっており、また十五歳未満の臓器提供については、できるようにすべきが六八%、できないのはやむを得ないが一九・五%となっています。さらに、本人の意思表示がある場合の取り扱いにつきましては、脳死での臓器提供を認めるべきが五二・九%、意思表示がない場合でも何らかの手段により提供意思を確認できる場合認めるべきが一九・五%、拒否の意思があっても家族の承諾があれば認めるべきが一七・〇%で、実に八九・四%が脳死下での臓器提供について肯定的な意見を示しています。これらの調査結果は、脳死臓器移植への理解が徐々に社会に定着しつつあることを示しています。
第四に、WHOのガイディングプリンシプルでは、本人の意思がある場合はそれを尊重し、本人の意思が不明の場合は家族の書面による承諾により臓器の提供は可能とされており、今やこれはグローバルスタンダードとなっています。A案はほぼこれに沿っており、さらに脳死判定に対する家族の拒否権を付与することにより、脳死を認めない人並びに臓器を提供したくない方々の権利にも十分に配慮されたものと理解しております。
第五に、我が国における臓器の提供が極めて限られていることから、海外での違法な移植、非倫理的な移植が増加しつつあります。これらについては国際的にも大きな批判を呼んでおり、WHOからも強い批判を受けております。国内でも、先般、病腎移植が大きな問題となったことは、皆様御記憶のことと存じます。
さらに、臓器の移植に関する法律附則第二条一項に「この法律による臓器の移植については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況を勘案し、その全般について検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとする。」とされています。法施行以来既に十年が経過しており、臓器移植以外に救命の方法がなく、またそのために移植を待ち望んでおられる多くの患者さんのために、少しでも早く法律の改正をお願い申し上げる次第でございます。
我が国で脳死で死亡される患者さんの数は年間約七千人と推定されていますが、このうち、脳死下で臓器の提供が可能な十五歳以上の患者さんの数は、少なく見積もっても年間約五千人とされています。先ほど御紹介した内閣府の意識調査によりますと、臓器提供をしたいが四一・六%、あるいは本人の意思表示がある場合は臓器提供を認めるべきが五二・九%であり、このパーセンテージを乗じますと、潜在的には年間二千八十から二千六百四十五人の方々が脳死下で臓器の提供を希望しつつ亡くなられていると推定されます。
お手元の資料三にお示ししましたように、法施行から二〇〇六年末までに、意思表示カードあるいはシールによる日本臓器移植ネットワークへの連絡が千二百四件ありましたが、そのうち、脳死下での臓器提供の意思を表示された事例が七百三十七件でした。これは年平均で約八十二件になります。この数と、脳死下で臓器の提供を希望しつつ亡くなられている二千八十から二千六百四十五人という数の間には余りにも大きな乖離があり、現在の法律ないしその運用では、これらの方々のとうとい提供の意思をくみ上げることは難しいことを示しています。
さらに、脳死下での臓器提供の意思を表示した七百三十七件のドナー情報のうち、脳死下での臓器の提供に至った事例は昨年末の時点でわずかに四十七件、六・四%であり、現行法とその運用のもとでは本人のとうとい意思が生かされていないことが示されています。臓器の移植に関する法律第二条一項には「死亡した者が生存中に有していた自己の臓器の移植術に使用されるための提供に関する意思は、尊重されなければならない。」と明記されていますが、この法の精神は残念ながら生かされているとは申せないのが現状です。
現行法の成立の時点では、社会の御理解を得るために配慮された点もあったかと存じますが、施行以来十年を経過し、現行法と運用規則等を遵守しつつ適正に臓器提供並びに臓器移植が実施され、移植を受けた患者さんの多くが健康を取り戻され、社会の御理解が得られつつある現時点におきましては、意識調査に示された多くの脳死下での臓器提供の意思を尊重すべく、法の改正をお願い申し上げる次第です。移植によってしか救命できない、そして移植に唯一の生きる望みを託し、移植を待ち望んでおられる多くの患者さんのために、A案への法の改正を重ねてお願い申し上げます。
御清聴いただき、ありがとうございました。(拍手)