2007-12-11
衆議院
清野佳紀
厚生労働委員会臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案審査小委員会
清野佳紀の発言 (厚生労働委員会臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案審査小委員会)
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○清野参考人 日本小児科学会の清野でございます。
お手元にA4版の小児科学会の考え方が配付してありますので、参考になさってください。
臓器移植関連法案改正についての日本小児科学会の考え方を述べたいと思います。
臓器移植関連法案改正については、日本小児科学会として、その考え方をたびたび表明してきたところですが、改正案が国会へ再提出されておりますので、改めてその問題点を指摘し、当会の考え方を表明いたします。
我々は、二〇〇三年に表明した提言「小児脳死臓器移植はどうあるべきか」において述べたとおり、小児脳死臓器移植を積極的に評価し、我が国においても小児脳死臓器移植が適切に進められることを望むものであります。
現行臓器移植法は、脳死を死であると考えて、脳死状態に至ったなら臓器を他人に提供したいと思う者の意思、すなわち自己決定は尊重されるべきだという理念に基づいて制定されています。したがって、小児脳死臓器移植の際には、小児の意見表明権の尊重が重要であると考え、適正な小児の臓器移植のあり方について検討を続けてまいりました。
日本小児科学会の臓器移植の考え方は、現時点ではB案に近いものです。もしいきなりA案に沿って、年齢制限も設けず小児脳死臓器移植が行われる場合は、ほとんどの病院で基盤整備が行われていない現状においては、現場で混乱が起こるのは必至であります。したがって、数年間の期限つきでB案を施行する中で、その間に基盤整備をすることが望ましいと考えます。そして、基盤整備ができた後に、より低年齢の小児にも臓器移植が行われるような法案整備を進めるべきであると考えます。
なお、この基盤整備については後で説明いたします。
なお、今回の法案に盛り込まれている親族への優先項目については、公正性から疑問があります。むしろ、小児科学会員に対するアンケート調査によれば、小児ドナーの臓器は小児レシピエントに公平に優先的に移植されるべきであると答えた医師が七三%います。
先ほど申しました、整備されていない基盤整備について説明いたします。
一、被虐待児からの臓器摘出防止に関する基盤整備。
被虐待児からの臓器摘出防止に関する基盤整備は全く行われておりません。近年、児童虐待が増加しているのは周知の事実であり、小児科医にとっても当該傷害が虐待によるものか事故によるものかの判別が容易につかないケースが多くなっています。子供の死因の第一位は事故死でありますが、虐待死が事故死の中のかなりの割合を占めていると言われています。例えば、田中らのアンケート調査によれば、事故死の一ないし三割が虐待死と言われています。
小児科学会員に対する調査によれば、小児ドナー候補者が被虐待児であるかどうかの診断が臨床の場で適正に行えると思う医師は一二・五%しかいません。三四・二%が行えないとしています。また、虐待の診断までに数日から数カ月の時間を要しています。
虐待死の場合、虐待を行った親自身が、当該小児がドナーとなることを希望していたと説明したり、当該小児の臓器摘出に同意あるいは承諾するという事態が生ずることも予想されます。したがって、第三者組織によるドナーの適切性の判断システムを構築することが不可欠であります。
この第三者組織による適切性の判断については、少なくとも小児科の専門医が立ち会い、小児ドナー候補者の身体的チェックを行うことなどが求められます。このために、病院内に虐待検討委員会のようなものが必要でありますが、小児科学会員に対する調査によれば、これに類する委員会が設置されている病院は、回答者の一二%が所属する病院にすぎませんでした。
二、小児の脳死の判定基準の検証並びに再検討。
二〇〇四年には、小児科学会では全国小児脳死症例について調査を行ったところ、十五歳未満の小児脳死症例数は年間少なくとも四十あるいは五十例あると推測されましたが、その中で判定基準に沿った臨床的脳死診断はわずか十三例にすぎませんでした。
このように、現行脳死判定基準による小児脳死診断例は極めて少なく、今後の検証には診断基準に沿った症例の蓄積が大切であります。小児脳死診断をした十三例のうち四例が長期脳死例でありました。いわゆる超重症心身障害児の中には長期脳死例がかなり含まれており、今後問題になると思われます。
さらに、小児科学会員に対するアンケート調査で、新生児を含む小児の脳死診断は医学的に可能だと思いますかと問うたところ、はいと答えた人は三二・二%、いいえと答えた人は一五・九%、わからないと答えた人は四八・八%でありました。この結果からも、現場の小児科医が現在の脳死診断の基準をそのまま小児に当てはめることへの不安が感じ取られます。
三、小児の意見表明権の確保に関する基盤整備。
仮にA案の場合、子供の意見表明権は十分に確保されなければなりません。我々は、小児医療現場の経験から、十五歳未満はもとより、十二歳未満の未成年者であっても、適切な情報提供を行うことにより、みずからの状況を正確に理解し、意見を表明することが可能であると考えます。小児科学会員に対する調査でも、十五歳以上が八五%、十二歳以上十五歳未満が七〇%、十歳以上十二歳未満では四六・六%が、子供の意思表示のみ、もしくは本人の意思と親の了解があれば臓器提供はできると回答しています。
また、我が国が一九九四年に批准した子どもの権利条約第十二条に示されている意見表明権にかんがみれば、十二歳未満の未成年者についても意見を表明する権利が認められているのであって、その意見をどのように尊重するかについては、今後も検討を続けていくべきと考えます。
現行法の取り扱いが、脳死段階での臓器提供の自己決定をなし得る者を十五歳以上であると画一的に判断している点については、再検討するべきであると考えます。疾病を有したり、友人の死に接するなどして生命について考える機会を得た小児は、十五歳未満であっても死については正確な理解があり、また、臓器を他者に提供することの意義や脳死についても真摯に考えている場合が多いです。他方、十五歳以上の者であれば、未成年者であっても常に当該問題について十分自己決定をなし得るという考え方はフィクションであり、脳死、臓器移植に対する理解の程度は人によってさまざまであります。
それゆえ、我々は、脳死や臓器移植についての理解を図るため、学校内外での教育を行い、ドナーカードへの署名の前の講習や当該小児の自由意思を確認する必要があると考えます。それらが満たされるのであれば、臓器提供を決定できる年齢を十五歳以上とする必要はなく、少なくとも、中学校に入学した後の児童、十二歳以上が意見を表明した場合には、その意思を尊重しなければならないと考えます。
万が一、生前に子供が脳死移植を拒否した場合には、親が承諾したとしても、その意思を尊重しなければ明らかな子どもの権利条約違反になるでしょう。このようなことから、現時点では、日本小児科学会の見解はほぼB案に近いものと考えます。
以上です。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)