伊豆見元の発言 (北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会)
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○伊豆見参考人 静岡県立大学の伊豆見でございます。本日は、貴重な機会を与えていただきまして、感謝申し上げております。
お時間も限られておりますので、今後の動きの中で注目される点といいますか、少し先のお話で、二点ほど申し上げたいというふうに思っております。
最初は、いわゆる北朝鮮の非核化を目指すための六者会合のプロセスが、進んでいるといいますか、今停滞している状況でございますが、第二段階の措置という中での、とりわけ北朝鮮の核計画の申告という問題をめぐって、もう既に三カ月以上、最初に決定された十月四日の合意からしますと三カ月ほどおくれが出ておりますが、そろそろ、この第二段階をめぐる、すなわち北朝鮮の核計画の申告をめぐる問題が決着をし、第三段階に移るという可能性が今見えてきたかと思います。
御案内のように、四月八日にシンガポールで、米朝のそれぞれの六者会合首席代表による協議が開催されました。アメリカはクリストファー・ヒル国務次官補、北朝鮮は金桂冠外務次官がそれぞれ首席代表を務めておりますが、二人が協議をいたしまして、今回の協議はそれなりの進展があったかということが伝えられております。
実は、今回の四月八日の米朝協議というのは、二月十九日の北京、そして三月十三日のジュネーブにおける米朝協議に続く、ことしに入りまして三回目に当たる協議でございますが、ようやく北朝鮮がいわゆる妥協モードに入ってきたかということがうかがわれるかというふうに思います。
二月十九日の北京における米朝協議では、双方全く立場を変えず、何ら進展がないというような状況でございました。その後、三月十三日のジュネーブにおける協議では、アメリカが最大限の柔軟性というものを北朝鮮に対して提示をいたしましたので、それを受けて、今回、四月八日に協議が持たれたわけでありますが、アメリカの方からの最大限の柔軟性、言いかえれば譲歩という、その幅がもう既に提示された後でもありますので、いよいよ北朝鮮側も、自分も譲歩をするということを考えつつ、妥協できる点というものを探って動き始めたということだろうと思います。
したがいまして、この申告の問題は、かなり技術的に複雑なことがたくさんございますけれども、いずれ近いうちに妥協が米朝間で成立し、その後六者会合が開かれて、第二段階を終え、第三段階の、北朝鮮のいわば非核化のための措置という段階に進む可能性というものが今見えてきたと思います。早ければ、四月十五日だったと思いますが、韓国の李明博大統領が訪米いたします、訪米の後、日本にも立ち寄られるわけでありますが、その李明博訪米の前に、米朝間の申告問題についての妥協というものが成立するという可能性も排除できない状況になってきたと考えております。
問題は、申告の問題が一応、妥協するといいますか、一たん片がつくということになりますと、アメリカはそれに対する見返りの措置をとるということでありますが、これはテロ国家指定、そこから、指定から除外することがありますし、もう一つは、敵性国貿易法、TWEAといいますけれども、その適用を終了させるという措置をアメリカはとる約束をいたしておりますけれども、それが、今回の北朝鮮側の申告の問題が片づくとほぼ時を同じくして実施されるんであろうというふうに考えられるということでございます。
テロ国家指定に関しましては、以前、かつてアメリカは相当強く北朝鮮に対して、少なくともよど号の関係者あるいは犯人を日本側に引き渡すこと及び拉致問題に関する再調査というものを要求いたしておりましたが、この二つが実現しないままに恐らくアメリカはテロ国家指定というものを解除するという方向に動くものと現在では予想されます。
しかし、この点で我々いま一度確認をしておかなければいけないと思いますのは、この拉致問題について大きな進展等がないままにアメリカがテロ国家指定から北朝鮮を除外することが拉致問題に相当大きなマイナスになるということは、私は基本的にはないというふうに考えております。
まず第一に、アメリカが、このテロ国家指定の一つの理由として、日本の拉致問題の進展がないということを明確にいたしましたのはたしか二〇〇三年以降であったかと思いますが、そのように、アメリカがテロ指定国家の問題と拉致問題をきちっとリンクさせるということをやった後、そのことによって拉致問題が進展したということは基本的には何も認められない。逆に言いますと、したがって、今回アメリカがテロ国家指定から北朝鮮を除外するとしても、それによって拉致問題にマイナスということにはならないであろうと考えられることが第一点であります。
それと第二点に、アメリカが常に、これは、ヒルが金桂冠と会うときには必ず提起しておりますのは、日本の拉致問題を必ず提起し、日本側の立場に立って、日本側の関心、要求にこたえるように北朝鮮に対して常々訴えかける、主張するということをアメリカはこれまでもしてまいりましたし、今後もそれを続けるということが考えられるということでございます。
これは、報道が継続されているわけではありませんので余り知られていないことなんだろうと思いますけれども、しかし、アメリカ側はこの問題を常に提起し、常に日本の立場を北朝鮮側に対して主張している。このようなことをやっている国は世界じゅうにアメリカ以外どこもございませんので、アメリカのそういう形の協力は今後も引き続き我々は受けていくといいますか、その協力を得られるということがございますので、テロ国家指定から北朝鮮が除外されても、それによって特に拉致問題が後退するということにはならないのであろうと思います。
いま一つの話は、日本のいわば独自の経済制裁でございますが、もうこれは、恐らく明日閣議決定があり、四月十三日からのまた六カ月間の延長ということが決められるのであろうかと思いますが、これは当然ということになろうかと思います。
この経済制裁は、二〇〇六年七月の北朝鮮のミサイル発射を受けてまず第一次の制裁が始まり、そして、十月の核実験を受けて第二次の全面的な制裁ということが発動されて現在に至っておりますが、そこでは、我が国政府は、諸般の情勢を勘案して経済制裁を北朝鮮に発動するということをうたっております。
この諸般の情勢の中にはもちろん、ミサイル、核そして拉致という主要な問題、三つ、大きな問題がございます。この三つの問題について特に目に見える進展がないという現状下では、これは延長ということになるのは当然だと思いますが、しかし、この制裁の目的ということを考えてみますと、やはり、日本側が問題にしている点について明確な進展、あるいは明確な北朝鮮の姿勢の変化というものを求める必要があるというのも当然だと思います。
核問題につきましては、六者会合のプロセスの中で日本側の立場も明らかにしておりますし、進展ということが何であるかということも我々は理解できるわけであります。
ただ、問題は、一つはミサイルでありまして、北朝鮮は確かに二〇〇六年の七月五日以降ミサイル発射をいたしておりませんが、しかし、ミサイル発射をしないというモラトリアムを再び宣言したわけではありません。二〇〇二年九月の日朝平壌宣言の中にも、北朝鮮はミサイル発射のモラトリアムというものを約束しておりましたので、これを、きちっと北朝鮮からモラトリアムという約束を取りつけるということが一つ、経済制裁を解除といいますか、経済制裁の一つの目的を達成するという意味で必要であろうか。しかし、この点が今等閑視されているということは私は非常に遺憾だと思います。
さらにもう一つ、拉致問題につきましても、どのような進展が必要とされるのかということも明確にすることがやはりこれからは重要になってくるのであろうというふうに考えられます。
もちろん、制裁は延長いたしますと六カ月間の期間でありますが、その制裁の目的というものが達成されればそれを解除することはいつでもできることでありますので、やはり制裁の目的というものをより明確にし、その目的が達成されたときに解除をするという方向に動くべきであろうかと思います。
そして、この点につきましてもう一点だけ申し上げさせていただきたいと思いますが、制裁はそのまま維持しつつも、私は、その中の一部の項目でありますが、渡航自粛というものは解除すべきではないかというふうに考えております。これは、やはり日本から人が行き、日本の立場、日本の考え方というのを北朝鮮に正確に伝えるということが必要でありますし、また、北朝鮮側の考え方というものを聴取して戻ってくるということも必要であろう。
現在、御案内のように、アメリカではそういう動きが相当たくさん頻繁にございますし、アメリカのモートン・アブラモウィッツという大使経験者を団長とする訪朝団が、本日から十二日までまた平壌を訪れるということもございます。こういうものを通じて、アメリカ側は、アメリカの立場、主張というものを北朝鮮に伝え、そして北朝鮮の考え方を聴取するということをやっておりまして、それがやはり北朝鮮との交渉には不可欠、あるいは非常に有効なものだと私は考えておりますので、日本にもそういうことが求められるのではないか。
そういう点では、経済制裁を維持しつつも、その中の一部、国民の渡航自粛というものだけを解除しまして、我々の主張をきちっと北朝鮮に伝え、北朝鮮の考え方もきちっと踏まえるというような方向に持っていくことが必要ではないかと考えております。
お時間になりましたので以上とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)