宇惠一郎の発言 (北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会)
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○宇惠参考人 貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。私、記者なりのこの問題に関する見解を述べさせていただきたいと思います。
全般の情勢については、ただいま伊豆見教授の方からるる説明がありましたけれども、若干敷衍して説明させていただきますと、まず、米朝協議の進展については、結果的には妥協の方向へ大きく動いているという見解については伊豆見先生と意見を異にするものではありません。
結局、細かな内容についてはまだ表には出ていませんけれども、昨日、北京においてヒル米国務次官補が記者団に対して語ったところによると、進展はあった、ただし、まだ、第二段階を終えるのにやるべきことは残っているという見解。そして、昨日夜になりまして、北朝鮮の外務省が出している、外務省のスポークスマンの見解でありますけれども、それは、今回の協議において、政治的補償措置と申告の問題について米国との間で見解の一致を見たということをうたっております。それで、こうした米朝協議、二国間の協議のあり方が非常に効果的であるということを示したものだと勝ち誇ったような言い方をしているわけですけれども。
両者の意見を総合しますと、やはり、妥協に向けてアメリカが譲った部分について北朝鮮は受け入れる、すなわち、具体的に言いますと、問題になっているウランの濃縮の問題と、シリアとの核協力、すなわち核拡散の問題に関しては別文書の形で切り離して、いわゆるプルトニウム型の核開発の申告の問題と一定程度の切り離しを行うということについては合意を見たと見て間違いないんだろうと思います。
あと、問題は、ヒル次官補も、要するに時間、タイムのことをきのうのブリーフィングでもしつこく言っているわけですけれども、アメリカにとっても、十一月の大統領選挙を踏まえると、もう残された時間というのは余りない。片や、北朝鮮にとってみれば、米国内では、もうブッシュ政権を相手にしないという態度に出ているんじゃないかという見解もこの間流されたわけですけれども、結果的には、九月九日に建国六十周年という記念日を迎える、正月の共同社説でも強くその重要性を訴えておりますので、そこでやはり外交的な成果というのを彼らなりに国内外的に示したい。そういう意味では、およそ、逆算していくとそろそろ今月、妥協するなら妥協の時期に入ったと見るのが妥当だろうと思います。
そして、朝鮮半島をめぐります情勢でもう一点重要な動きというのは、昨日の韓国の総選挙において、ことし二月に政権が発足しました李明博大統領、与党のハンナラ党が辛うじて過半数を確保した。これまで第二党の位置にありましたので、これはやはり新政権の安定に向けては大きな要素になると思うんですね。
それで、これまでの盧武鉉の政権は、ともすれば米韓及び日韓の間で摩擦を、特に対北朝鮮政策についてあったわけですけれども、およそ、なべて言いますと、日本と余り大差のない物の考え方で対北政策を展開してくるだろうということで、今後、近くあります大統領の訪米、そしてその帰途、日韓の首脳会談もあります。その際にどういうすり合わせをして、それが六カ国協議での日米韓の連携にどうつながってくるかということで、非常に重要な動きだろうと思われます。
さて、それで、日本が北朝鮮にとっています制裁措置の問題についてでありますけれども、これはやはり原点に戻って、制裁のまず目的、そしてその制裁の効果について冷静な判断というのが必要になってくるんだろうと思います。
恐らくあすの閣議でその三度目の延長ということは、これは拉致問題の進展及び国民感情ということを政府は言っていますけれども、それを考えると、やはり大きな進展がない中ではその延長というのは当然のことだろうと思いますが、ここで注意すべきは、制裁のための制裁ではなくて、少なくとも、拉致問題の進展、さらに、初回、二〇〇六年の十月の核実験を北朝鮮が実施したことに対する制裁の措置としてとられている、その前にはミサイルへの措置で一次措置はあるんですけれども、ミサイル、核の問題でとられているという原点からすると、やはりこれは、六カ国協議で一定の進展を見た場合にこのままでいいのかという議論が、当然、国内だけではなくて、六カ国協議の場も含めて問われてくる事態が近々に生じるだろうということを念頭に置く必要があると思います。
そうすると、制裁措置が、まさに北朝鮮の国際協議の場への復帰及び核問題での真摯な態度というものを引き出す一つの目的があったとすると、それとこれをどう連携させるのか。そして、日本人としては看過することのできない拉致問題との関係で、この問題を、どの時点でどういう形で北が対応をとれば、どこまで段階的に解除していくことができるのかという道筋を北側にきちっと示す必要があるんだろうと思います。
いわゆる核、ミサイル、拉致の包括的解決を目指している日本としては、そのすべてが片づかないとだめということになると、これは恐らく、要するに、彼らを対話の場に引き出すという目的よりも、まさに制裁のための制裁になってしまう。まさに拉致問題の進展をさせるためにも、道筋というのをきちっと示す必要があるんだろうと思います。
さて、それで、北朝鮮が日本に対してこの間非常にかたくなな態度を崩していないわけですけれども、今後どう動くかということを考えてみますと、一つは、米朝協議を受けて、六カ国協議で第二段階の終了に向けて、恐らく、数日ということはないでしょうけれども、数週間の間には大きな動きがあるんだろうと思われます。
その際に、では、北がそれに連動して、今強めています対日批判及び対韓国批判を控えて全面的対話の道に出るのかというと、どうもそうは思われない。逆に言うと、六カ国協議でのそごを来している原因というのは一つは日本にあるんだという物言いをしてくるんだろう。もう一つは、南が、二〇〇〇年の六月の南北共同宣言及び昨年十月の共同宣言に盛り込まれている、南北の和解及び具体的には経済協力の問題について前向きな態度をとるべきだということで、今回の総選挙の結果も踏まえて揺さぶりをかけてくるんだろうと思われます。
さて、それでは、そうした北朝鮮の態度が日本にとって不利なのかというと、そうではなくて、彼らは、米朝を動かすだけではなくて、やはり日朝の問題を動かさない限り最終的な解決には至らないという認識は持っているんだろう。ちょうど二〇〇六年の七月のミサイル発射の際に私はたまたま別件で平壌におったんですけれども、そのときに、日朝交渉大使の宋日昊氏は、一定程度、あの時点でのミサイル発射ということについては日朝にそごを来すという若干の混乱を見せていた感じがします。彼らにしても、やはり日朝は動かしたいけれども、動かす理屈が今のところないということなんだろうと思います。
それで、それを考えるに、お手元にお配りしてあります各種の文書、表裏ありますけれども、六カ国協議に関する二〇〇五年の九月以降の三つの文書の中で、日朝問題については、いずれも日朝平壌宣言に基づきという表現で盛り込まれていて、やはり日朝を動かすには平壌宣言の重要性ということをもう一度認識する必要があるんだろう。
裏側にその平壌宣言の全文を書いておりますけれども、その中でもやはり、拉致の問題について、微妙な言い方ではありますけれども、「今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。」まあ、「今後」についてはそうですけれども、過去に現実に拉致された人間、及びそれを一部死んだと言って死んだ確認がなされていないという現状について、やはり日本側は強く北朝鮮側の対応を促す必要があるんだろうと思います。
その具体的な方法については、では、進展がないから一切の交渉ができないという立場ではやはり何も動かないわけでして、やはり日朝平壌宣言に基づいて日朝が協議を再開するという方向に北朝鮮を追い込んでいく必要があるんだろうと思います。
当然のことながら、彼らにしてみれば、経済的な利得を得るためにも、日朝平壌宣言の前段に書いてあることというのは彼らは無視するわけにいかないわけで、恐らくそこのところにこだわっても日朝の再開ということを彼らは期待してくるんだろうと思われます。
それで、先ほど伊豆見先生から指摘がありましたように、私も、この日朝平壌宣言を再度見直してみますと、その最終段にありますミサイル発射のモラトリアムのくだりというのがやはり一つ重要な問題だろうと思います。
これは、ミサイル発射を二〇〇六年七月に行って以降、日本の制裁措置というのは強化されてくるわけですけれども、現実に、彼らは平壌宣言に違背する行為をあの段階で行ったことは間違いないわけで、そのことについて、彼らの説明は、宋日昊大使の説明によりますと、日本側が敵対行為をするからだという。これは理屈にもなっていないわけで、やはり入り口のところで日本が要求する行為としては、まず、ここに盛り込まれているミサイル発射のモラトリアムについて再度確認させ、現実にしないと約束をもう一度させる。
それから、もう一つ重要な点は、拉致の再発防止の確認もいいんですけれども、現実に、死んだと彼らが言っている、あるいはそのほかにも隠されている部分があるんだろうと思われる部分について、これは、出せと言っても彼らはないと言う。これだけではしようがないので、やはり、ひとつ再調査を日本側で行うということについて北朝鮮に強く訴えかけながら、現実に日朝で動きが出れば、その後には、彼らが期待する、彼らが補償措置と言っている戦後の清算の問題について日本側は話し合う余地があるということをインセンティブとして強く訴える必要があるんだろうと思います。
以上、私の見解を述べさせていただきました。(拍手)