渡辺興二郎の発言 (内閣委員会)
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○参考人(渡辺興二郎君) 渡辺でございます。本日はよろしくお願いいたします。座って失礼いたします。
本日は、発言の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。冒頭、御礼を申し上げたいと思います。
私からは、この法案に盛り込まれた規定について民放連として危惧する事柄、それから言論報道機関である放送界として懸念される事項について、いただいた時間の範囲内で御説明を申し上げたいというふうに考えております。
先生方御案内のとおり、私ども民放連は、今月に入りまして二回ですけれども、この法案について民放連としての意見というものを表明させていただいております。放送メディアとしましても、だれもが簡単にアクセスできるインターネット上に一部青少年に好ましくない情報が掲載されているという状況は非常に憂慮すべき事態であると強く認識し、危機感を持っております。そうした違法であったり言わば悪意を持った情報によって児童が犯罪に巻き込まれる、青少年がいじめに遭う、そして挙げ句の果てに自殺してしまうという悲惨な被害が絶えないことは、同じ情報伝達メディアとして大変残念でありまして、自らが視聴者に伝える情報内容の選択、それから伝える際の配慮や留意について現場でも常に議論を深めているところでございます。
現在、インターネット上に青少年の有害情報が掲載されて、これに青少年が安易にアクセスできる、そして影響されているという事態は、これは決して看過できない、放置してはいけないというふうに考えております。
そして、先生方に同時に是非とも御理解いただきたい点は、情報内容の制限とか規制というのは、やはり憲法二十一条の保障します言論、表現の自由に深くかかわる問題でございまして、いわゆる有害情報の基準の策定とか判断に、たとえ間接的ではあれ国が関与すべきではないのではないか。どのような形であれ、たとえ例示という形であっても、有害か否かの判断を法令で示すことになれば、それは表現内容への公権力介入の道を開くことになって、我々放送を含むすべてのメディアに対するコンテンツ規制の初めの一歩につながりかねないと、そのような強い危惧を我々は感じているところでございます。
今回のインターネット上の青少年有害情報規制に関するこの法律案提出に至る経緯につきましては、与野党の間で五、六年前から議論をされていると認識しております。おととし十一月ですか、開催されましたこの貴内閣委員会での審議概要も承知しておるつもりでございます。また、ここ数か月ほどは、与野党あるいは与野党間で法案作成に向けた精力的な御議論がございましたので、民放連は新聞協会と連携して数回にわたり意見交換をさせていただきました。
そうした中で、今回の法案が、三条の三項、それから六条、これは先ほど中村参考人がるるお述べになったところと同じでありますけれども、大事なことですので、繰り返させていただきたいと存じます。
基本理念においては、この法案では、環境整備に関する施策の推進は、自由な表現活動の重要性及び多様な主体が世界に向けて多様な表現活動を行うことができるインターネットの特性に配慮して、民間における自主的かつ主体的な取組が大きな役割を担って、国及び地方公共団体はこれを尊重することと規定しているのが三条の三項と認識しております。さらに、保護者の責任を六条で明記したこともございます。
こういった国会における御配慮、御判断というのは、我々は最大限評価したいと思っておるところでございます。であればこそ、我々といたしましては、青少年のためにインターネット上の情報内容について何らかの対策がやはり必要ではありますけれども、その方策として法令による規制を選択してしまっては、言論、表現の自由を守って健全な民主主義を発展させるという憲法の理念、そして、世界が求める言わば社会のありように照らして、必ずや将来に禍根を残すもとになるのではないかと考えております。
我々はやはり、同じ情報伝達メディアといたしまして、インターネット上の有害情報から青少年を守るその方策は、あくまでも民間によります自主的な、自律的な対応にゆだねられてしかるべきではないか、ここ数年の様々な議論の中で、携帯、インターネット業界が、開発や整備やそういったものを強化しつつある、自主的な方策というものを最大限尊重すべきであろうと私は考えております。
ここで、既に民放連の意見として公表している内容でございますが、私どもが今回の法案に関して強く懸念している主な点を改めて具体的に申し述べさせていただきたいと存じます。
まず、法案の第二条四項にございます青少年有害情報の例示でございます。これは、先生方は様々な方面に御配慮されて御苦心された上での例示であるともちろん理解しております。しかし、我々言論表現に携わる者の側から拝見しますと、ここに青少年有害情報として例示された「著しく残虐な内容」と、例えばそういった文言が独り歩きして法律の運用面で拡大解釈されることがあれば、放送メディアだけではない、活字メディアにとっても影響が出てくるのではないかとの懸念と危惧が生じてくるわけでございます。
最近は、自殺、それから悲惨な事件、事故、最近の秋葉原も含めまして目立ちます。報道機関、我々が事件、事故を報じる目的、そして使命というものは、やはり、その出来事の背景などを探って、関連する様々な情報を社会のみんなで共有するんだと、そのことによって市民の皆さん方の不安が多少でも解消されて、多少なりとも再発防止を図ることに寄与できるならばそれにこしたことはないというのが犯罪報道の目的の一つでございます。被害者への配慮を十分に考えながらも、場合によっては事件、事故の残虐な内容も、報道の使命として配慮しつつも伝えなければならないケースが出てくることも考えられるわけでございます。こうしたほかのメディアの言論、表現規制の拡大につながる、そのことを危惧するものでございます。
次に、第八条でございます。内閣総理大臣、官房長官、関係閣僚等で構成する、インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議の所掌事務の範囲拡大に関する懸念でございます。この会議では、法案によれば基本計画を策定する、施策に関する重要事項を審議すると規定されておりますが、これにつきましても我々の立場から申し上げますと、法案の文案はともかく、法律の運用次第では青少年有害情報の判断基準策定が重要な施策の一つとして盛り込まれることになりはしないかという懸念が生じるわけでございます。万一そのような事態になれば、国等が言論、表現に介入できるきっかけになるわけでございまして、これは放送だけではない、すべてのメディアが危惧を表明しているところでございます。
もう一つ付け加えさせていただきますと、これは法案の二十四条から三十条にるる書かれているところでございます、青少年有害情報を実質的に判断するとも受け取られるフィルタリングの推進機構に関する懸念でございます。この法案では、フィルタリング推進業務を行う者は総務大臣及び経済産業大臣の登録を受けることができる、登録を受けたフィルタリング推進機関に対して大臣は資料の提出を求めることができて、国及び地方公共団体は必要な支援に努めるというふうになっております。
この規定も、法案成立後の例えば政令の策定、それから法律の運用次第では、国がそして行政が、間接的にではあれ、言論、表現に介入、関与するとともに、実際にフィルタリングソフトをどのように開発するのかなど、フィルタリング推進業務の方向性にも関与することにもなりかねないという危惧を持つ次第でございます。支援というものを通じて国や地方公共団体が一定の影響力を持つという、我々としては懸念を持たざるを得ないわけでございます。
ところで、我々民放連は、この間一貫しまして、言論、表現の自由、報道の自由、そして健全な民主主義の発展等の観点から、表現、情報内容への国や行政による関与は非常に問題が多いとその都度反対してまいりました。我々は、放送番組の適正化を図ることは放送界全体の責務であると、社会的な責任であると考えまして、それぞれの放送局で番組基準に基づく考査は当然行っておりますが、それだけではなく、第三者機関、BPOを設置して、放送界全体で放送倫理確立に向けた取組を随時行っているところでございます。
先生方御案内のように、BPOというのは放送倫理・番組向上機構と申しまして、NHKと我々民放連が共同して、放送界が自主的に自浄機能、自律機能を確立することによって、放送による言論、報道の自由を守る、それを唯一の目的に、今から五年前に組織を統合して新たに設立した機構でございます。
BPOの中に設置した第三者委員会は、放送された番組の放送倫理上の問題、あるいは人権と権利が侵害された場合について厳正な審理を行って、勧告なり見解なりを出します。それを受けた放送局は、なぜこのような事案が起こったのかということを自主的に精査して、再発の防止策や放送倫理向上策を委員会に報告する義務を負っております。
こうした放送界は、放送倫理の確立を第一義的に考えまして、真剣にBPOの機能向上を図って自主自律を一つ一つ実践しているところでございます。BPOなど放送界が独自につくったシステム、取組がもし参考になるのであるならば、我々は積極的に携帯やインターネットに関係する業界に情報提供、お手伝いをすることを考えておりまして、そうしたことも含めまして当該業界による自主自律の対応に期待したいと思っているところでございます。
先ほどの参考人の御意見の中にも出ましたが、例えば映画界における映倫、それから今申し述べました放送界のBPO、これは共に自主自律の精神で自らが築いた第三者機関でありまして、法律で設置を求められたり、国への登録制度の下に設立した組織ではございません。
確かに急激に成長して、今や私たちの生活に深く浸透して、今後も今まで以上に我々の生活を豊かにする情報を提供すると期待されておりますインターネット上に、これまで申し述べてきましたように、青少年にとって決して好ましくない情報が掲載されている状況は看過できない、誠に憂慮すべき状態であります。
実は、我々放送界も苦慮しているところがございます。一部のインターネットサイトに投稿サイトなどと称して番組が無断で掲載されて流されている状況があるわけでございます。これに対して我々放送界は、NHKも含めまして、その都度その都度毅然とした態度で削除してくれということを要請してきています。もし我々がきちんと要請をすれば、その後はそうした無法な状態は、現在、相当程度緩和されて効果が出てきていると私どもは理解しております。
冒頭で申し上げましたように、情報内容の規制は言論、表現にかかわる問題でいわゆる有害情報の基準策定、これに国が関与したり、間接的ではあれ、主務大臣が行政指導権を持つようなスキームには我々は残念ながら反対をせざるを得ないわけでございます。私どもは、こうした表現内容への公的介入の道を開く可能性が払拭できない限り、やはり強い危惧を重ねて改めて表明させていただきたいと思います。
最後に、民放連としましては、青少年のためにインターネット上の情報内容について何らかの対策が当然必要なわけでありますが、これは先ほども出ました。青少年を有害情報から守るための方策は、例えばEMAなどがやっておりますこの間の急速な動き、こうした極めて前向きで自主自律的な施策は、この数か月、半年間、相当程度活発化しているということがございます。さらに、言論、表現の自由にかかわるテーマについては、拙速に規制強化に走るのではなくて、新聞、放送など他のメディアの考え方を改めてヒアリングしていただくなど、広範かつ慎重な検討が必要であろうと考えます。私どもは、この問題は民主主義社会を支えるインフラの問題であると基本的に認識しております。こうした立法化の動きが、もしかしたらかえって自主的な取組をつぶしてしまわないだろうかと危惧するところであります。法的な規制が適切であるかどうかを含めて、先生方には時間を掛けて十分な審議を更に続けていただきたいことを改めて要望をさせていただきたいと存じます。
以上、るる申し述べましたが、私ども民放連の意見が杞憂に終わることを祈りつつ、お時間をいただきました。
御清聴ありがとうございました。