西原正の発言 (外務委員会)
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○西原参考人 西原でございます。
私は、このたびのグアム移転協定を強く支持する立場をとっておりまして、日本では、とかくこの問題に関しましては、経済的観点、民生的観点から議論する傾向にございます。その重要性は十分わかりますけれども、私は日本の安全保障の観点からも議論をしておくべきだと考えております。
最初に、アメリカの対アジア太平洋戦略と日米同盟との関連について述べまして、次に、協定賛成の理由を、安全保障上の利点及び経済、民生的利点とに分けて述べたいと思っております。そして最後に、私の考えとしまして、日本の今なすべきことに関しまして一言述べたいというふうに思っております。
まず最初に、アメリカのアジア太平洋戦略と日米同盟の点でございますけれども、米国は冷戦後、ソ連の脅威は消滅したとしまして、冷戦時代の封じ込め態勢から、予期せざる場所で起こる紛争に迅速かつ柔軟に対処できるような態勢へと移行してまいりました。前線基地に大変大きな兵力を張りつけて仮想敵国を抑止するというのではなくて、地域ごとに中核となるハブ基地を設け、そこに即応戦力を配備し、有事の際にはそれらが緊急展開して対処する態勢に移行しております。
しかし、東アジアにおきましては、現在まだ予測可能な紛争地点がございます。朝鮮半島や台湾海峡のようなものでございます。したがって、米国は兵力を一方で削減しながらも、他方で同時に抑止力の維持をすることを考えてまいりました。
その具体的なあらわれが沖縄の海兵隊の一部グアム移転です。これによって、兵力は削減しますけれども、同時に、米国はグアム基地の強化をし、そして太平洋から中東に広がる広大な地域における部隊の展開を効率的に行う計画を進めてきております。これを一言で言えば、米軍の再編という形になります。八千人近い海兵隊と九千名の家族をグアムに移動することで、この海兵隊は東南アジア、南アジア、中東地域により迅速な兵隊の展開をすることができますが、同時に、有事には日本に戻り、沖縄に残る海兵隊とともに、日本の防衛と北東アジアの敵性国への抑止力を維持することができます。
したがって、日本は、こうした米国による効率的な戦力の配備と抑止力維持を追求する計画は自国の安全にも必要であると判断し、これを支持し、他の幾つかのことをアメリカと協議して、そして実施してまいりました。例えば、横田基地に航空自衛隊航空総隊司令部を移動させ、在日米軍との連携を強化することにしました。また、在日米陸軍司令部のあるキャンプ座間に陸上自衛隊の中央即応集団を移転させ、そして司令部の連携を強化することにしております。
こうした点を考えますと、日米同盟とアメリカのアジア太平洋戦略とのつながりがはっきりしていると思います。ここでのキーポイントは、柔軟かつ迅速な配備と抑止力を同時に維持するということであろうと思います。
次に、安全保障上の利点につきまして、四点まとめて申し上げたいと思います。
まず第一点は、こうして米国がグアムの基地機能を強化し、アジア南部から中東に続く不安定の弧の周辺海域に沿って延びる長いシーレーンの安全を確保することは、地域の安定に役立つばかりか、日本のエネルギーの安定的確保にとっても極めて有利となります。
二番目の利点。沖縄に残る海兵隊の兵力は六千名から一万名となりますけれども、司令部、陸上、航空、戦闘支援及び基地支援能力は残ることになります。グアムに移転するのは主として司令部機能でありまして、即応性の高い強力な実戦部隊は沖縄にとどまることになります。その面で、有事のときにはグアムの海兵隊が日本防衛の支援にも増派されることになります。海兵隊のグアム移転で日本の安全が危ぶまれることはないと考えております。
第三番目の利点としまして、在日米軍の再編によって、在日米軍と自衛隊との司令部連携が進み、日米同盟はより強化されることになると判断します。グアム移転はこの意味で日米同盟を強化することになると考えております。
第四番目の利点。グアムの基地が強化されることで、日本が攻撃を受けた際の米軍の反撃能力が高まることが期待できます。グアムには、北朝鮮や中国などの地域諸国のミサイルや戦闘機の大半が届きません。したがって、グアムの米軍はむしろ安全地帯にいるために、先制攻撃や報復を余り恐れないで必要な反撃を行うことができるというふうに思います。
したがって、ここでのキーワードは、アメリカの太平洋での部隊の展開が柔軟になるということ、それから日米同盟が強化されるということであります。
次に、経済的、民生的利点につきまして申し上げたいと思います。ここでも四点、利点を申し上げたいと思います。
お手元にあります一枚の表をごらんいただければと思います。この移転のために日本が負担することになっておりますいわゆる真水の財政資金は二十八億米ドルです。これを一ドル百十円として換算いたしますと三千八十億円になります。今後、二〇一四年までの六年間に年平均五百十三億三千万を防衛予算に計上することになります。これは平均でございます。この額は、例えば平成二十一年度の国防予算四兆八千四百四十九億のわずか一・〇六%にしかなりません。そういう面で、大きな負担になるというわけではございません。
二番目の利点。さらに、グアムの工事を請け負っている日本企業がつくる、司令部庁舎、教場、隊舎、学校等の生活関連施設、家族住宅、インフラというような点は、いずれも維持、更新、修理、補修が今後必要になります。したがって、日本の企業は、この協定にありますように、企業参入の公平の原則に従ってそうした工事に今後もつくことができるわけですから、長期にわたって日本企業に仕事が残ることになります。
第三点。海兵隊のグアム移転によって普天間飛行場などが全面返還されるということは、嘉手納飛行場以南の人口が集中している地域にある相当規模の土地が沖縄県民に戻ることを意味します。地元関係者の試算でも、返還による経済効果は八千七百億になると言われています。日本政府がグアム移転に拠出する真水の三千八十億円の二・七倍になります。その上、住宅街の騒音や航空機事故がなくなるという一大利点がございます。
最後に第四点。アメリカ海兵隊のグアム移転に伴いまして全面返還されるのは、普天間飛行場、陸軍貯油施設、キャンプ桑江、牧港補給地区、那覇港湾施設でありまして、これにキャンプ瑞慶覧の部分返還があります。これらの返還される土地を合計しますと、ここの表にございますように、九百七十八ヘクタールになります。これは、現在の沖縄の米軍施設全体で見ますと四・二%にしかすぎません。非常に少ないと思われるかもしれませんが、しかし、この返還面積が那覇市面積の四分の一に相当することを考えれば、普天間飛行場の移設の意義がより明確になると存じます。人口密集地である地域の返還の意義は極めて大きいと考えるわけでございます。
最後に一言。日米両政府は、八千名の海兵隊員をグアムに移すことによって、沖縄県民の基地負担をできるだけ緩和する姿勢を示してきました。一九九六年の橋本・クリントン首脳会談で沖縄県民の基地負担を軽減するという合意がなされて以来、大きな懸案が部分的にしろこの協定によって解決されることは、何といっても日本にとって喜ばしいことだと考えます。これで地元住民の対基地感情の改善を期待することはできます。このことが日米同盟への支持基盤の強化につながると思います。すべて完全な解決ということは考えられませんが、こうした形で日米の間で妥協し、さらに一歩進むということは非常に重要であると考えております。
このような利点があることを認識しまして、国会は速やかにこのグアム協定を批准すべきだと考えております。一九九六年の日米首脳会談以来、既に十三年が経過しております。米国側は移設の大幅な遅延に失望をこれまで表明してきました。ロードマップで合意されました二〇一四年までの移設・返還計画がおくれるようなことになれば、米国の対日不信がさらに強くなる心配がございます。さらに、沖縄県民や日本国民全体から日米同盟に対する支持低下を生むことになるかもしれません。こうしたことを考慮して我々は対応していくべきだというふうに考えております。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)