森本敏の発言 (外務委員会)

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○森本参考人 本日、在沖縄米海兵隊のグアム移転に関する日米協定に関し、参考人として招致され、若干の個人的所見を述べる機会が与えられたことは、大変光栄に存じます。
 しかし、冒頭、西原参考人が御説明いただいた内容に全く私は賛同するもので、したがって、つけ加える点についてのみ強調したいと思います。つまり、重複を避けて、同じ説明をここで繰り返すということになるべくしないように、三点に要点を絞って所見を述べたいと思います。
 そもそも、米軍再編というプロセスは、アメリカ国防省が冷戦後のグローバルな戦略体制の中で、特に前方展開戦略として欧州並びに東アジアに主として展開していた米軍のあり方を見直した作業であり、作業そのものは一九九七年ごろから始まったものであります。
 当時の状態は、ヨーロッパにおいて特にドイツから、アジアにおいては韓国から、米軍をどのように撤退するかということが大きなねらいであったわけですが、二〇〇二年の末から、この米軍再編のプロセスの中に在日米軍を含めてアメリカが交渉に提案をしてきた。
 この機会をとらえて、我が方は、冒頭、西原参考人のお話のように、抑止力を維持しながら、主として沖縄の負担を軽減するということを基本的な方針として、米軍再編を我が国の国益に最も合致するよう、どのような形にすれば望ましいのかということを考えて、この交渉に臨んできたわけであると思います。
 結果としては、二〇〇五年の二月に共通の戦略目標が決まり、二〇〇五年の十月に中間報告、そして翌二〇〇六年の五月に最終報告がロードマップという形で出たことは御承知のとおりであります。
 この全体のプロセスの中で、第一に申し上げたい点は、沖縄にいた海兵隊、現在も展開している海兵隊をどうしてグアムに一部であれ移転することになったのかという、海兵隊の持っておる基本的な背景要因について要約をして申し述べてみたいと思います。
 そもそも、海兵隊であれ、海軍であれ、陸軍であれ、冷戦後の米軍の戦略というのは、フォースプロバイダーとフォースユーザーというものが別々に概念されており、海外に展開している部隊がそのまま部隊として戦闘集団になるというのではなく、主としてフォースプロバイダーとして兵力を特別任務部隊の指揮官に提出し、提出された兵員を使って任務を遂行し、部隊はその任務が終わったらまたもとへ戻る、そういう部隊の運用を繰り返しているわけです。
 この観点から、現在の第三海兵機動展開部隊、すなわち3MEFと言われるいわゆる師団級の部隊は、司令部と、そして戦闘部隊である海兵連隊並びにこれを支援する航空部隊及びすべての部隊に対する後方支援部隊という性格の異なる部隊を全体として一体化して運用するということになっているわけであります。この場合、訓練を行い、部隊の態勢を整え、即応態勢を高度に維持するためには、物理的に、ある一定機関の中に部隊を置かないと、部隊としての任務を効率的に遂行することができないわけで、例えば海兵連隊と航空部隊と後方支援部隊を全く別々の場所に置いて部隊が運用できるかというと、必ずしもそういうふうにはなっていないわけであります。
 海兵隊としては、したがって、全体として、ある一定の箇所の中で運用したいと考えていたわけですが、日本側の強い要請もあって、どの部隊を外に出せるのかということを検討した結果、実動部隊である、つまり海兵連隊と航空部隊並びにこれを支援する部隊を切り離すことはできそうにないと考え、最も抑止力を低減させないように海兵隊の部隊の一部を展開するためには司令部機能を外に出すという以外にないと考え、アメリカは、西太平洋のグローバルな戦略体制を見直した結果、我々が今知っているとおり、そして今回、日米協定に署名されたとおり、兵員とその家族合計一万七千名を二〇一四年までにグアム基地に移転させるということを内部的に決め、日米交渉の場に持ち込まれて、日米間でこれが合意されたものであります。
 実は、日本政府は、この移転計画の中で最も懸念したのは、これによって海兵隊の全体の機能が低減し、日本に対する抑止力というものが減るのではないかというふうに考えていたわけでありますが、アメリカは、幾つものシミュレーションを行った結果、司令部の要員の一部を動かしても部隊全体の戦闘能力に変わりはないという結果を得たので、日米は、このグアムに沖縄の海兵隊の一部の司令部要員を中心に移転することを日米で合意したという経緯があります。
 その際、移転するにしても、グアムには、移っていく海兵隊の住宅その他関連施設等が全く余裕がないという状態であったので、これに必要な経費、すなわち、移転する部隊の兵員の隊舎及び家族住宅並びにこれに伴う各種の施設を建設整備するに必要な経費のうち、我が方が合理的に判断をして、まさに沖縄から移る兵員及び家族の住宅及び関連施設に係る経費を日本として財政支援する必要があると考えて、今回、日米協定の中に具体的な経費の分担を入れたわけであります。
 今回、この協定が国会で御承認いただくことになり、計画どおりに進めば、二〇一二年には移転が開始され、二〇一四年に移転を完了するという全体計画が実行されたとしても、海兵隊が持っている本来の機能である抑止力はほとんど変わることがないというふうに考えられるので、したがって、沖縄の負担が軽減されると考えられるこの在沖縄海兵隊のグアム移転に私は基本的に賛同するものです。これが第一の点です。
 第二は、しかしながら、このグアムというのが実際どうなっているかということ、私も個人として非常に気になり、昨年は、アメリカ側の協力を得て、数回にわたっていろいろな有識者がグアム基地の現状を見てまいりました。昨年、私も、グアムの基地の中に、説明を国防省から受けつつ、この基地を見てきたわけです。
 私が冷戦時代に考えていた、つまり、冷戦時代に外務省に勤務していたころ、グアムというのは、正直申し上げて、入れる基地ではありませんでした。当時、安全保障課に勤務して、グアムに行こうとしたのですが、基地の中に入って、一般的なといいますか、基地を見学するというクリアランスはとれても、基地の中にある、米軍の実際に展開している部隊の中に入り込むということは現実にはできないぐらいグアムというのは当時、当時というのはベトナム戦争前後から冷戦が終わるまで、非常にグアムというのは西太平洋全体の戦略を担う部隊として、部隊及びそれを駐留させる基地として特殊な役割を果たしていたと思います。
 久しぶりに昨年この基地に入ってみて気がついたのは、冷戦構造の中でグアムが置かれていた目的が相当変化し、かつその時点にあった施設が数十年たって老朽化し、ほとんどそのままの施設の状態では使用に耐えられないという状態であることに気がつきました。アメリカもこの基地を今どうしようとしているかということについては、アメリカの一方的な説明を我々はそのまま受けとめることはできませんけれども、しかし、現在あそこにある部隊は、御承知のとおり、主として、海軍については第七艦隊の隷下の部隊、兵員四千五百名ぐらいと、それからアメリカ空軍、これはフィリピンにいた第十三空軍がハワイに移ったわけですが、その後、太平洋空軍直轄隷下の第三十六航空団が兵員二千名を擁してここに現在駐留しています。
 この部隊に、さらにアメリカは、これから西太平洋全域における長距離のパワープロジェクション能力を向上させるため、この基地を新しく主としてインフラ整備をしようと考えていて、したがって、沖縄から来る海兵隊だけではなく、陸軍及びその他の部隊を受け入れ、非常にトータルな戦略基地として新しく生まれ変わる基地としてグアムに新たな役割を与えようとして、現在インフラ施設の整備計画をつくっていると考えます。
 したがって、二〇一四年以降は、恐らく空母が時々は駐留することもでき、戦略潜水艦あるいはB2などの爆撃機、そして第五世代の最新鋭の戦闘機であるF22など、アメリカが太平洋に持っている最新鋭の兵器体系がここを本拠地にして西太平洋に向かって必要な態勢をとる非常に重要な戦略基地として恐らく位置づけられているのではないかと思います。海兵隊の部隊をそこに入れるということを契機にこの基地をそのような形にしようとしているのは、これはアメリカが西太平洋というものをどのように考えているかということを知る一端でありますが、そのことは我が国にとっても決して悪い話ではなく、西太平洋、東太平洋における今後の紛争事態や、現在、北東アジアに見られるような非常に深刻な不安定要因を考えてみると、アメリカが、どちらかというと、グアムというものを、アメリカの本土から見た一番西側にある最重要拠点として新しい役割を付加しようとしていることは、アジア太平洋の安定全体にとって意味があるというふうに考えられる次第です。
 最後に、第三点。
 グアムの移転の経費を日本が支出する背景、理由については、西原参考人がるる御説明になったので繰り返しを避けますけれども、しかしながら、日米は、米軍再編のプロセスの中で、抑止力を維持するということに努めつつも、沖縄の負担を軽減するためにどのようにして兵員と基地の削減を図るかということを鋭意アメリカ側と交渉した結果、グアムに海兵隊の一部を移すということになったわけで、この問題は、単にグアム基地の問題だけではなく、普天間の基地問題や、あるいは嘉手納飛行場以南の六つの施設の返還と深く連係する問題でもあり、米軍再編は、日米間で三年にわたる話し合いを通じて既に結論が得られているわけで、今後は、この日米間で合意された内容をいかにして遵守し、日米同盟の信頼性を確保しつつ、将来についての協議を続け得るかということが今後の政策課題であると思います。
 言うまでもなく、両国間で約束したことを実行するということが今我々の前に差し迫った大きな課題であり、約束したことを実行できずに次の問題を話しても意味がないわけであります。したがって、これからの日米同盟を強化するために、グアムの基地移転、そして、その次に控えている普天間の基地の返還及びその他の関連施設の返還及び米軍再編全体のロードマップを最も効率的に実行することが、これからの日米安全保障協力にとって不可欠の課題であるということを強調したいと思います。
 以上でございます。委員長、ありがとうございます。(拍手)

発言情報

speech_id: 117103968X00720090408_006

発言者: 森本敏

speaker_id: 34495

日付: 2009-04-08

院: 衆議院

会議名: 外務委員会