出井直樹の発言 (経済産業委員会)

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○出井参考人 おはようございます。日本弁護士連合会の出井直樹でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、こういう機会を設けていただきまして、ありがとうございます。
 村上参考人から、今回の改正案それから独禁法全般についてかなり包括的なお話がございました。私は、日ごろ、企業あるいは消費者を代理して独禁法関係の実務を扱う弁護士の立場から、実務家の立場から、数点に絞ってお話を申し上げたいと思います。お配りしてありますレジュメに基本的に従ってお話しいたします。
 まず、独禁法についての考え方でございますが、ここを最初に押さえておきたいと思います。
 市場における事業者、これは中小事業者を当然含むわけでございますが、事業者の公正かつ自由な競争を促進し、それによって一般消費者の利益を確保することを目的とする、これが法律に書いてある独禁法の目的でございます。
 ここを押さえた上で、一九九〇年代以降ということになりますが、行政規制による競争政策、産業政策から、我が国は一般経済法、これは独占禁止法を経済憲法と言われておりますけれども、これを中心とする一般経済法による事後規制による競争政策へ大きく転換しているというふうに認識しております。したがって、独占禁止法の役割というのは、戦後長いスパンを見ますと、ここ十年あるいは十五年で大きく社会における地位、重要性を増しているという認識でございます。すなわち大きな独禁法へというのが基本的な認識です。
 私ども弁護士あるいは日本弁護士連合会といたしましても、そのような独禁法の役割を増す、それによって事業者あるいは消費者の利益に資するということについては基本的に賛成をしております。大きな独禁法、独禁法の執行力を強化するということは、これは追求すべき目的であるというふうに考えております。
 一方、そのように大きな独禁法、強い独禁法ということになりますと、やはり手続の適正、独禁法執行過程あるいは事実認定の過程における手続の適正ということを十分に考えていかなければいけない、このバランスである、これが私どもの基本的な認識でございます。
 今回提案されております独占禁止法改正案につきましては、先ほど村上参考人からお話がございましたように、課徴金の対象となる違反行為の拡大、これは私どもは規制対象を法律で明確にした上でということを申し上げておりましたが、それもかなりの程度取り入れられておりますし、それから、これも私どもが申し上げていたことですが、文書提出命令の特則の導入、それによって独禁法の執行力を強化するという側面がございますので、そのような導入がなされていること、そういうことで、部分的にではありますけれども、独禁法の執行の強化がなされている、また、国際標準に合わせて株式取得を事前届け出制とするなど、そのような措置もなされておりますので、全体的には評価できるものであるというふうに考えております。
 以下は、そのような評価、一般的な評価を前提にしまして、幾つか問題点を指摘したいと思います。今回の改正法自体についての問題点もございますし、また次の改正に向けた問題点の指摘もございます。
 第一点は、審判制度の見直しについてでございます。この点は、先ほど村上参考人がかなり詳しくお話しになりましたので、私の方は簡単に済ませたいと思います。
 基本的な認識としましては、村上参考人のお示しになった認識と共通でございます。摘発者である公正取引委員会がその判断の適否についてもう一度審判という形で判断をする、その後裁判所に持っていくといいましても、東京高等裁判所になってしまう。
 それから、裁判所で公正取引委員会の事実認定がなかなか覆りにくい証拠法則が独禁法上とられております。公正取引委員会の事実認定で実質的な証拠があると認められるものについては、裁判所はその判断に拘束されるという、一般の行政訴訟にはない特異なシステムがとられておりまして、私どもはやはりそこは一般の行政訴訟と同じような仕組みにすべきであるというふうに考えております。ということで、この点につきましては、先ほどの村上参考人と意見はほぼ同じです。
 ただ一点、若干違うのは、私どもは、いきなり現在の公正取引委員会の審判を全部なくして、それで取り消し訴訟一本にするということには、もしかしたらそこは慎重に考えなければいけないかもしれないということで、選択制というものを一つの案として出しております。すなわち、処分を受けた人が審判にも持っていけるし、取り消し訴訟にも、裁判所にも持っていける、どちらかを選べる、オプションを広げるということを提言しております。
 これに対しては、先ほど御指摘ありましたように、同一事件についてばらばらの判断が出たらどうするのかという問題があります。ただ、これは、こういう事件に限らず、裁判所でも違う裁判所に係属するときはそういう問題が起こりますし、最終的には最高裁判所で統一がされる、そういう仕組みになっておりますので、これは本質的な欠陥ではないというふうに考えております。
 ただ、問題は、取り消し訴訟と審判と両方になりますと、人的リソースの点で果たしてそれは効率的なのかどうかという問題の指摘もありまして、そのあたりを踏まえて、今後一年間ですか、審判制度をどうするのかということは国会でも検討をいただくことになりますし、私どももそのあたりはよく考えてみたいと思っております。
 以上が、審判制の見直しについて、これは次の改正に向けたお話でございます。
 次の問題ですけれども、適正手続の保障がまだ十分ではないのではないかということでございます。四点ほど、制度の面について指摘しております。
 第一は、公正取引委員会が事件について収集した証拠、これは他の事業者の営業秘密を除くことになりますが、そういう証拠をすべての被疑者、被審人に開示していただくということ、そういう制度を導入すべきであると考えております。これは、国際的にもそれがスタンダードになっていると思いますので、それに合わせていただきたいということです。
 第二、弁護士との相談内容の秘密性の確保。これは、弁護士守秘特権という、特権というのは余りいい言葉ではございませんが、やはり企業の方々が弁護士に相談することをちゅうちょさせるような、そういうシステムは基本的にまずいのではないか。特に、国際的には弁護士の守秘特権というのはスタンダードになっておりまして、日本でこれが破られてしまうと、外国でもやはり一たん出てしまったものはもう特権がないというふうにされておりますので、外国での守秘特権も全部一律に破られてしまうという非常な不都合が生じております。このあたりは早急に手当てをしていただくことが、国際的にも喫緊の課題かと思います。
 第三、調査、事情聴取への弁護士立ち会い権の確保。これも手続適正の観点から御検討いただきたいと思っております。
 第四ですけれども、今回の法律案に利害関係人による審判の事件記録謄写、閲覧等の制限の規定がございます。要件としては第三者の利益を害するおそれという要件で、これを制限するという規定が入っておりますが、これにつきましては、やはり民事訴訟法と同一の要件、すなわち個人の生活上の秘密や営業秘密が記載されている場合に限るという規定にすべきではなかったかと思っておりまして、そこらあたりは今後法改正、あるいは、少なくとも運用につきましてはそのような運用をお願いしたいというふうに考えております。
 以上が制度問題ですけれども、もう一つ、これは法改正自体、法律自体の問題ではございませんが、やはり公正取引委員会での調査手続、さらに審判制度が存続する場合には審判手続、これも審判官だけではなく、そこの部門の事務局に法曹資格者を入れていただく。これはいろいろな機会にお願いしていることですけれども、やはり準司法手続ですので、そこは法曹資格者を登用していただくということをお考えいただければと思っております。
 最後でございますが、これまで公正取引委員会、すなわち行政を通じた独禁法執行ということを私も申し上げてまいりました。村上参考人からもそういうお話がございました。ただ、もう一つ考えていただきたいのは、行政による法執行だけではなく、私人による法執行ということも両輪のもう一つの輪として考えていただきたいということでございます。公正取引委員会等の行政によるエンフォースメントと、民事訴訟を通じた私人によるエンフォースメントの両輪の強化が必要である、これも大きな独禁法の一つの側面でございます。
 具体的には、独占禁止法二十四条、差しとめ請求権がございますが、この対象を拡大していただく、それから、要件をもう少し差しとめが認められやすい要件に変えていただくということが必要であるということを申し上げているところです。
 それから、二番目ですけれども、独占禁止法違反の損害賠償請求訴訟を行いやすくするための措置を御検討いただきたいということで、消費者団体訴訟の導入であるとか、損害額推定規定の検討を、これまで意見を述べてきたところでございます。ただ、この点につきましては、別のところで議論されている消費者庁の設置法の関係で今後検討されるということでございますので、そちらの方の御検討にゆだねることになるかと思います。
 最後に、これは独占禁止法関係の訴訟のことを問題にしているわけですが、独占禁止法に関係する訴訟というのは、別に独禁法上の訴訟だけではありません。一般の不法行為あるいは契約違反の訴訟でも、独占禁止法違反が問題になることは多々あります。したがって、民事訴訟一般をやりやすくする方策というのを考えていただきたいということでございます。
 具体的には、提訴手数料の見直しですとか、文書提出命令、今回、独禁法について手当てがなされましたけれども、文書提出命令のルールを民事訴訟一般について考え直す必要があるのではないか。さらに、損害賠償制度一般についても御検討いただく必要があるのではないかということです。
 今、幾つか述べましたけれども、そういう総合的な施策を、今後、大きな独禁法かつ手続の適正を確保した独禁法ということを国の大きな政策として、今後立法でもお考えいただければと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 出井直樹

speaker_id: 24044

日付: 2009-04-24

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会