齋藤憲道の発言 (経済産業委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○齋藤参考人 おはようございます。日本経団連の競争法部会長代行を務めております齋藤憲道です。
 本日は、このような意見陳述の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 私からは、独占禁止法改正案につきまして、経団連の考え方を述べさせていただきます。
 初めに、今回、国会に提出されております政府の独禁法改正案につきましては、経団連としては基本的に賛成であるということを申し上げておきます。今回の法案には、課徴金の対象範囲の拡大や刑事罰強化などが盛り込まれております。これらを含めて、経団連として異論はございません。
 しかし、今後、法律を実際に運用されるに当たってお願いしたいこと、それからさらに、今回の法案に十分に盛り込まれていない事項について、今後の検討をお願いしたい点がございますので、ここで述べさせていただきます。
 第一は、法律の運用基準の明確化のお願いです。
 今回の改正が実現しますと、これまで課徴金の対象ではなかった排除型私的独占を初め、不当廉売、差別対価、共同の取引拒絶、それから再販売価格の拘束、優越的地位の濫用などの不公正な取引方法に対しても課徴金が新たに課されます。
 ところが、これらの行為は、日常のビジネスの中で、どこまでが適法で、どこからが違法になるのかという境界が必ずしも明らかというわけではありません。
 改正法案の関係条文を見ましても、正当な理由がないのに、あるいは不当に、さらには正常な商慣行に照らして不当になどと規定されておりまして、どの一線を超えたら違法になるのかがよくわかりません。
 独禁法違反を犯して課徴金を課されることになれば、公共入札の指名停止や株主代表訴訟などが問題として付随的に発生します。本当に今重要なことであります。
 もちろん、悪質な行為は何としても排除しなければなりません。ただ、適法と違法の境界線がよく見えないために、真っ当な事業活動が無用に萎縮したり、取引がいたずらに混乱することにならないよう、ガイドラインなどで構成要件を明確にしていただきたいと思います。どのような行為が課徴金の対象になるのか、現場で実務を行っているだれもがわかるようにしていただきたいのです。
 予測可能性や法的安定性を確保することは、健全な市場を形成するための必要条件であります。
 第二に、今回の法案で具体的に取り上げられていない審判制度の見直しと審査の適正化のお願いであります。
 まず、審判制度の見直しにつきましては、現行の公正取引委員会の審判制度を廃止し、公正取引委員会の処分に対する不服申し立てを、直接、地方裁判所に対して行うようにすることが必要であると考えております。
 現在の審査、審判の手続は、まず、公正取引委員会が、カルテルなどの独禁法違反の疑いのある企業を調査し、違反していると判断すると、排除措置命令や課徴金納付命令などの処分を下します。
 その処分に納得のできない企業は、公正取引委員会の中にある審判手続で、公取の判断に対する不服を申し立てることになります。
 この仕組みは、いわば検事と裁判官とを同じ公正取引委員会が兼ねる状態で、著しく不公平かつ中立性を欠いております。
 国内の他の行政審判を見ても、処分をする主体と不服審判をする主体が全く同一である機関はほかにありません。外国にもこのような制度はありません。海外の企業の方から、これが日本で活動することをちゅうちょする要因の一つになると聞くこともあります。
 そこで、私どもでは、公正取引委員会の審判制度を廃止し、不服申し立てについては、取り消し訴訟として、直接、地方裁判所に訴える制度にすべきだと考えております。
 この点について、政府の法案の附則に、「審判手続に係る規定について、全面にわたって見直すものとし、平成二十一年度中に検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」と規定されております。
 ぜひとも、審判制度を廃止するという私どもの考えをお酌みいただき、早期に、この方向での法改正を検討され、実現されるようにお願いいたします。
 もう一つは、国際水準にかなう新たな審査制度の構築です。
 現在の公正取引委員会の審査では、欧米では当たり前になっている、審査を受ける側の基本的な権利が認められておりません。
 例えば、自己負罪拒否特権というのがあります。これは、自己に不利益な供述を強要されない権利のことで、日本国憲法第三十八条に規定があります。ただ、これは刑事事件の場合だけだそうで、独禁法違反のような行政事件についてこれを保障する規定はないということです。
 公正取引委員会の取り調べは、通常、任意で行われます。しかし、任意の調査であることが明らかにされていない、あるいは、取り調べが公取の密室の中で長時間にわたる、さらには、弁護士の同席は認められないなどのために、防御権を行使できないという体験談を幾つも聞きます。
 その上、取り調べを受けた者は、そこで作成された供述調書のコピーを持ち帰って確認することもできません。
 現在、警察における犯罪者の取り調べですら、可視化が進められています。まして、任意の手続において許されるべきではないと思います。
 日米欧の競争法当局による取り調べを経験した企業が、欧米の弁護士から、日本では適正手続、デュープロセスが確保されていないと知って驚いた、どのように弁護すればいいか迷っているということを言われております。
 欧米で当たり前とされている程度の適正手続の確保をお願いいたします。
 以上、法律の運用基準の明確化、それから審判制度の抜本的な見直し、適正手続の確保の三つを申し上げました。ぜひ、具体的に進展いたしますようにお願いいたします。
 以上で私からの説明を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 117104080X01020090424_006

発言者: 齋藤憲道

speaker_id: 21143

日付: 2009-04-24

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会