藤原直哉の発言 (財務金融委員会)
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○藤原参考人 皆様、おはようございます。経済アナリストの藤原直哉でございます。本日はお招きいただきまして、まことにありがとうございます。
私は、経済アナリストという立場から、大きな視点で、財政その他、国家の金融等の運営に関しますお話をさせていただきたいというふうに思っております。
まず、私の基本的な認識といたしましては、今の経済の状況は、やはり未曾有の経済危機と言ってよろしいと思います。百年に一度という言葉もございますが、それは、ただ単に不況だということを超えまして、構造的に今までの経済システムが成り立たない部分が出てきたというような意味におきまして、かなり深刻な問題だと私は受けとめております。
レジュメのところに三点ほど要点を書いてございますが、私は、まず直接的には、金融あるいは貿易が日本の経済を主導する時代は終わったのではないかなと思っております。
どういうことかと申しますと、皆様御案内のとおり、二年前にアメリカでサブプライム危機が発覚いたしまして、株の暴落あるいは金融機関の破綻その他がその後相次いでおります。それと同時に、昨年ぐらいから、製造業を中心といたしまして極めて深刻な需要の不足、すなわち、もう工場が動かない、仕事が余りにも少ないという状況が発生しているわけであります。
なぜ金融と輸出産業にかくも重大な変化が起きたのか、ここに今何が起きているかのすべての答えがあるわけでございますが、皆様御案内のとおり、これは震源地がアメリカでございますけれども、アメリカは約三十年ほど前から実は産業界の衰退というものが目に見えてきておりまして、今経営危機と言われております自動車産業は、もう三十年ぐらい前から実は経営が大変でございました。そこでアメリカ政府は、基本的には産業の立て直しをある意味ではあきらめたというふうに私は見ております。産業を立て直すよりも、中国、日本、ヨーロッパから物は輸入すればいいという経済体制にしまして、その分、金融を充実させまして、世界じゅうから資金を集めて国家を回す。だから、輸入大国、金融大国の道を選んだのが三十年前のアメリカだったと思います。
しかしそうやって、いい仕事がない、産業を衰退させますと、どうしても働いている人が十分な給与を得られません。そのため、この三十年間のアメリカ人の言ってみれば庶民の生活というのは、だんだん生活が追い詰められてまいりまして、いつ首になるかわからない、株を買ってもよく下がる。十年ぐらい前から、もう何かアメリカの庶民たちも本当に困りまして、いわゆる住宅バブルに乗っていったわけであります。
アメリカでは住宅の値段が右肩上がりで上がり続けるというのは余り前例がなかったことだと思いますが、十年ぐらい前から、とにかく住宅の値段が上がっていった。住宅さえ持っていれば、値上がりするから生活できるという、ある意味で非常に悲惨な方程式がアメリカの経済全体に広がっていたと思います。しかし、それが限界に達しまして、ついに住宅の値段の下落が始まり、限界的な借り手から破綻が始まったわけであります。
そうすると、アメリカはこの三十年ぐらい、借金をして、国も借金、庶民も借金、企業も借金をして投資をする、消費をするという体制を整えておりましたために、巨大な不良債権が発生したために、もう市場がお金を貸さない、銀行がお金を貸さないという状況になりまして、企業も庶民もお金を借りられなくなったわけであります。そのために、家と車、経済を支えております二本柱、これは全部ローンで普通買いますが、こういう買い物がばたりととまったわけでございます。そういたしますと、アメリカに物を輸出しております日本、ヨーロッパ、中国など、こういう国にもばったりと注文が入らなくなったわけでございます。
したがいまして、アメリカ人が借金できなくなった途端にアメリカで物が売れなくなって、アメリカに物を輸出している国の産業もとまってしまった。現状を簡単に申し上げれば、こんな状況ではないかなと思うんですね。
事の本質を掘り下げてみれば、三十年ぐらい前からアメリカがとにかく借金に借金を重ねて不均衡の上に巨大な需要を成り立たせていた部分、これが崩壊したわけでありますから、私は、アメリカを中心にとにかく金融を発展させ、輸入大国を続ければいいというアメリカの国策は事実上破綻したんじゃないかなというふうに思っております。
金融の問題等も、今回アメリカで金融破綻が起きておりますが、私は、見ていて非常に気がつきますことは、八十年前の世界大恐慌のときアメリカ政府は、もっと果敢に問題の本質追求をやっていたように思います。
委員の皆様御案内のとおり、八十年前の世界大恐慌のときにアメリカの上院でペコラ委員会という委員会ができまして、なぜこんな金融破綻が起きたのかという構造分析と、それからその後の対処を非常に積極的にスピーディーにやってまいりました。しかし、今のアメリカを見ておりますと、そういう本格的な金融、経済再建のための制度の見直しについての議論がなかなか進んでおりません。ああいうのを見ておりますと、随分衰退したなと私は思っている次第でございます。
こうなりますと、我々日本といたしましても、アメリカにお金の運用を任せればうまくいくというようなことはもう通用しないと思います。さらに、アメリカ型金融システムをそのまま導入してくればうまくいくということはもうないと思います。アメリカであれだけシステム的な問題が起きたわけでございますから、もう一回我々も考え直さなければならない。
さらに、特に貿易、これは非常に重大な問題でございます。委員の皆様御案内のとおり、つい昨年ぐらいまで我が国は、非常に長期にわたる景気回復を統計上していたわけでございます。しかし、それは輸出産業を中心とした景気回復であったことは否めなかったと思います。
したがいまして、輸出がとまった途端に、我が国のGDP成長率は先進国の中でも最も大きな落ち込み幅を示しております。世の中を見ておりましても、輸出産業の一部は調子がよかった、しかし、内需関連、サービス業その他は大変厳しい経済状況であったというのが、この五、六年の状況であったと思います。
日本経済は、昔から輸出依存体制が強過ぎるから、もっと内需中心の経済にしなければならないと言い続けられてきたわけでございますが、結果的にこの十年ほどの間、我が国は輸出産業に極めて偏重し、そして金融産業に極めて偏重した国家づくりになってしまっていたんだと思います。
それが今回、このようなアメリカ発の危機に陥りましてこんな状態になったわけでございますから、例えば税収一つとりましても、輸出産業頼みの税収では国家が回らないと思います、金融頼みの税収では回らないと思います。税金を国民の皆さんに払ってもらうためには、まず景気がよくなって、お金を稼いでもらわなければならないわけで、今回ばかりは小手先の対策ではどうにもならない。みんなが本当に、国民がお金を稼げる体制に国家としてもう一回システムをつくり直さない限り、これはもとに状況が戻るということはないんだろうというふうに私は思っております。
そして、政府というものの行動を考えた場合、私は二点あると思います。政府は、基本的に、当面の対策と抜本的政策という二つがやはり必要だと思います。
当面の対策というのは、絶望の回避と私はあえて言いたいと思います。
本当に、民間経済人はリスクがあるとは申しますけれども、それにいたしましても、この金融の物すごい混乱、さらには輸出産業の物すごい落ち込みは、多くの人の想像あるいは多くの経営者の実力を超えたものがあります。少なくともことし、来年ぐらいは何か政府が突っかい棒を入れてつぶれるものをとめないと、将来の産業の種火が消えてしまいかねない、それぐらいの状況でございます。
ですから、二年ぐらいは突っかい棒を入れて、とりあえず絶望を回避して、その間に、先ほど申しました、もう金融依存、輸出依存の体制が続けられないということであれば、やはり新しい国家ビジョンをつくるしかないんだろうというふうに思います。
委員の皆様も御案内のとおり、アメリカのオバマ政権は、グリーンインフラストラクチャーというような言葉を使いまして、新しい社会基盤をつくり直そうというようなことを言っております。私は、今国民が求めておりますのは、細かい部分の手直しではなくて、大きな、五十年先まで見通せるような国家ビジョンだと思います。
民間の企業でもそうなんですが、こういう厳しいときに小手先の対策を打っております会社はまずうまくいっておりません。やはり大きなビジョンのもとに積極的なリーダーシップを発揮するということが必要でございまして、これはもう、ここまで来ますと、経団連のような輸出系を中心としました会社の経営者に任せておきましても、なかなか物事ははかどらないと思います。あるいは、中小企業の経営者の自助努力だけでも問題ははかどらないと思います。やはり国家の指導者が、それはただ一人のだれかという意味ではなくて、政治全体がもう少し、こっちの方向に行くから皆さんついてきてくださいということをはっきり言ってほしいんだと思います。
それは海外も同じではないかなと思います。例えばアジア諸国は、今回の金融危機、経済危機、日本以上に厳しい状況になっているところもございます。日本なんかまだ余裕がある方でございます。したがいまして、世界各国からも日本のリーダーシップを皆さん求めているんだと思うんです。
やはり内需主体に、金融ももう少し、投機的な金融、ばくち型金融ではなくて、産業と金融が一体になったような形でこれはつくり直すべきなんだと思うんです。私は、アメリカが三十年ぐらい前から経済をゆがめていったということは、逆に言えば、三十年ぐらい前までの姿を少し思い起こしてみると答えは出やすいと思います。
例えば、今、貿易赤字が急速にふえております。貿易赤字がふえておるということは、今までのように、この三十年間のように、一方的な黒字がたまるということはないということでございます。一方的な黒字がたまるということでないということは、日本は金満大国の看板をいよいよおろさなければならないということであります。お金も、下手をすれば赤字になってしまう。黒字と赤字を行ったり来たりで必死になって金を国全体で稼ぐという、三十年前までの我々の先輩が直面していた現実に我々はいや応なく戻るんだと思います。
私は、最近の日本を見ておりまして、どうも現状認識が甘いような気がいたします。何か、怖い話をあえてしないような感じがいたします。それは、怖い話に遭遇して怖いことに直面しなくても、何となく豊かさがあるからやっていける、そんな感覚が官にも民にもみんな何かしみ渡ってしまったような感じがするんです。私は、それは大変危険なことではないかなと思うんです。
今、金融なんかに関しましても、年金の運用、退職金の運用、皆さん、貯蓄から投資へということで運用しておられます。しかし、もうかっている人というのはほとんど見ることがございません。やはりこれだけ厳しい世の中で老後の資産がなくなってしまったということは大変なことでございまして、ですから、これはその損失の責任という話もあるでしょうけれども、しかしそれ以上に、では、これから少子高齢化社会を生き抜く元手はどう確保するか、これはやはりもう一回、国の中で考え直さなければなりません。アメリカ頼みというわけにはもういかないわけでございます。それから、少子高齢化の中で人の数も減ってまいります。
したがいまして、我々は、過去十年間のとにかく引き締めに次ぐ引き締めをしていたこの時代をよく反省いたしまして、市場原理主義ではもうだめなわけでありますから、私は政治家の皆様に方針を変えるとはっきり言っていただきたいと思うんです。やはり、方針を変えると政治家の方に言っていただきませんと、民間企業も何となく昔の、グローバリゼーションだとか市場に任せておけばいいという頭から抜けられないわけでございます。それが民間の実情だと私は思っております。
そして、私は、この二年間ぐらいの間に新しい金融システムをぜひ政治主導で立て直していただきたいと思います。もう民間の金融機関だけでは未来をつくる大規模な投資ができないと思います。私は、こういうときこそ、十年、二十年、三十年のスパンで何十兆、何百兆円という投資を政治主導で行っていただきませんと、我が国の新しい形はできないと思います。
要するに、もう貸し渋り、貸しはがしがひどくて、これでは経済は縮小する一方なんです。そこに一歩勇気を持って、国民のお金をもう一回集めて、それは税金という形ではなくて、私は政策金融がよろしいと思っているわけでございますが、もう一回、こういう方向で国づくりをするからお金を出してくださいと言って、預金でも債券でもいいですから集めて、ぜひ大々的な投資をしていただきたいと思います。
とにかく、国がここは積極的な投資に動くということをしませんと難しい。それが日本版のいわゆるニューディール政策になるんだろうというふうに私は思っておりまして、短い時間ではございましたが、私の思ったところを述べさせていただいた次第でございます。
委員の皆様のますますの御活躍を御祈念申し上げて、お話とかえさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)