中里実の発言 (財務金融委員会)

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○中里参考人 本日は、意見陳述の機会をいただきまして、ありがとうございます。そこに簡単なレジュメをお配りいたしましたけれども、その順番でお話をいたします。
 ちょっとテクニカルになりますけれども、まず、改正案全体に対する所見でございます。
 現下の我が国の経済は、明らかに景気後退局面に入っておりまして、今後、下降局面が長期化、深刻化するおそれが、先ほどのお話にもありましたように指摘されているわけです。こうした危機的な経済状況から脱するためには、もちろん、持てる政策手段を総動員して、景気回復に向けて取り組む必要があることは言うまでもございません。
 しかし、他方、少子高齢化やグローバル化といった経済社会の構造変化の中で、我が国の直面するさまざまな課題を解決するために、税制の抜本改革を行うことが緊急の課題であるということも忘れるわけにはまいりません。とりわけ、社会保障の安定財源の確保は、国民の安心を確保するために、決して避けて通ることのできない問題でございます。
 こうした中、今回、本委員会において審議が行われております平成二十一年度税制改正案においては、私がざっと見ただけでも、過去最大規模の住宅ローン減税や省エネ等に関する投資促進税制など、随分と思い切った政策税制が盛り込まれております。また、これらのほか、外国子会社からの配当を益金不算入とする制度の導入など、これまでの政府税制調査会における議論等を踏まえた税制改正も盛り込まれているわけでございます。
 そして、何よりも重要な点として、本年の改正税法の附則におきまして、今後の税制抜本改革に関する道筋が示されている、この点が注目に値するわけです。これは、一昨年における政府税制調査会の答申「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」を踏まえたものでございまして、私、これを画期的なものとして高く評価している次第でございます。本年度の税制改革に盛り込まれた種々の政策税制とあわせまして、こうした将来の税制改正のあり方を一体的に示すことは、国庫を預かる政府といたしまして、その責任を示すものではないかと考えております。
 この中で、私は、国際課税に関する改正、さらに消費税を含む税制の抜本的な改革について所見を述べたいと思います。
 まず、国際課税に関する改正でございますが、今般の法案に盛り込まれております外国子会社に関する外国税額控除制度の見直しについて触れたいと思います。
 進展するグローバル化や事業形態の複雑化、多様化のもとで、クロスボーダーの経済活動に対する課税については、我が国の適切な課税権の確保と経済活動に配慮いたしまして、日本の経済の活性化とのバランスを保つ必要がございます。この観点を踏まえ、本法案におきましては、国際的な二重課税排除の制度について、外国税額控除制度の大枠を維持しつつ、親会社が外国子会社から受ける配当を益金不算入とする制度を導入する改正が盛り込まれました。
 配当還流につきましては、一定の分野に使途を制限するといった政策税制的な観点ではなく、企業の判断によって配当を戻すタイミングや使途をみずから選べるということ、すなわち、企業の配当政策に対する税制の中立性という観点が重要でございます。また、間接外国税額控除制度につきましては、これは法科大学院等で講義していると頭が痛くなるほど制度が複雑でございますし、また実務的にも書類提出の煩雑さが言われておりましたが、この制度が導入された結果として制度を大幅に簡素化できるということで、望ましい改革ではなかったかというふうに思っております。
 次に、消費税を含む税制の抜本的な改革の道筋についてでございますけれども、この法案で最も注目される附則第百四条に規定された消費税を含む税制の抜本的な改革に関し所見を申し述べます。
 税制の抜本改革の必要性については、私も特別委員として参加しております政府税制調査会において、一昨年、集中的な議論が行われました。ここで指摘されたのは、我が国における経済社会の全般にわたる激しい構造変化、すなわち、主要先進国の中で例を見ないほどの速さで急速に進行している少子高齢化と、経済のグローバル化の急速な進展という疑いもできない事実でございます。
 少子高齢化は、年金、医療、介護などの社会保障給付の増大を必然的に招いているわけでございますが、これを賄う財源のうち、公費負担につきましては、現在、その約三分の一程度を将来世代へのツケ回しということで、それに依存している状況です。国、地方の債務残高は、二〇〇九年度では対GDP比一五〇%を超えることが見込まれておりまして、こうした状況が続くならば、社会保障制度の持続可能性に対する国民の不安感、これを惹起するばかりか、国際的にも我が国経済への信認を損ないかねません。
 他方、経済のグローバル化の進展やバブル経済崩壊後の我が国の経済停滞と軌を一にして、都市と地方、大企業と中小企業、あるいは正規雇用と非正規雇用といった、さまざまな側面で格差の問題が指摘されるようになったことも重大な変化でございます。
 こうした問題意識から、政府税制調査会におきまして、一昨年の十一月に税制の抜本改革に関する網羅的な答申を取りまとめまして、政府に対しては、適切な時期にこれを実施していただくよう求めてまいりました。また、昨年十一月の答申においては、さらに一歩進みまして、当時、政府において議論が進められていた中期プログラムにつきまして、政府税制調査会の提言内容が同プログラムに十分に反映されるとともに、その実施時期が明示されるよう強く求めていたところでございます。
 今回の改正税法附則の内容は、中期プログラムを踏まえまして、抜本改革の実施時期及び基本的な考え方を明示したものであると理解しております。具体的には、消費税を含む税制の抜本的な改革について、経済状況の好転を前提として、税制抜本改革が遅滞なく実施できるよう、必要な法制上の措置を二〇一一年までに講ずることとされておりまして、こうした道筋が法制上明確化されたことは実に大きな進歩ではないかと考える次第でございます。
 次に、税制抜本改革の基本的な考え方でございますが、今般の附則第百四条の第三項におきまして、消費税を含む税制の抜本的な改革を行うに当たって、具体的にどのような基本的方向性で各税目の改正を行うのかといった具体的な論点が実は掲げられております。
 まず、個人所得課税につきましては、所得再分配機能の回復の観点から、高所得者の税負担の引き上げと、中低所得者世帯の負担の軽減の検討が述べられております。政府税制調査会における議論でも、我が国の所得税は、これまで幾たびかにわたる税制改正によって、勤労意欲や事業意欲を阻害しないようにとの観点から所得税の累進緩和が行われてきた結果、その財源調達機能や所得再分配機能が低下しているとの認識でございまして、私も、社会保障制度とともに所得再分配を担う存在として、所得税の役割を適切に発揮させていくことは重要な課題であると考えている次第でございます。
 なお、附則で、給付つき税額控除を今後検討することとされている点について一言所見を述べさせていただきます。
 いろいろお考えはあるでしょうけれども、この制度は、税金を支払った者に税金をお返しするというのみならず、支払っていない方々についても給付を行うというものでございます。仮にこれを我が国で実施する場合には、特に執行面で相当大きな壁を乗り越える必要があるものと考えます。
 端的に言いますと、税務署は、お金持ちについての情報は持っていますが、そうでない方に対する情報は余り持っていないということでございます。適正な給付を行うためには、現在所得税を納めていない者も含めて、所得を正確に捕捉する必要がございますが、我が国において、徴収の大部分を源泉徴収に頼っており、また納税者番号制度も整備されておりません。今般の附則においても、「歳出面も合わせた総合的な取組の中で」ということにされておりますけれども、少なくとも実行可能な制度が仕組まれるよう、今後、幅広い観点からの検討が行われる必要があると考えております。
 法人課税につきましては、政府税制調査会の議論においては、経済のグローバル化の進展に伴い、国境を越えた経済活動が活発に行われるようになってきている中で、企業の税負担面での国際的なイコールフッティングを図るべきであり、法人課税の国際的な動向に照らすならば、法人実効税率の引き下げが必要であるとの意見が強かったかと記憶しております。
 他方で、課税ベースや社会保険料負担を考慮した企業負担を考えてみますと、これは国際的に見て日本は必ずしも高い水準にあるわけではないとの試算も行われました。こうした中で、今後の検討に当たっては、厳しい財政事情も踏まえまして、今般の附則にもあるように、課税ベースの拡大といったものについて検討が行われるべきなのではないかというふうに思うわけです。
 消費税についてですが、政府税調におきましても、経済の動向や人口構成の変化に左右されにくく、世代間の公平の確保に資するといった観点から、税制における社会保障財源の中核を担うにふさわしいとの認識でこれは一致しております。
 消費税につきましては、低所得者の負担が相対的に大きいとの指摘があるわけでございますが、再分配政策を語る上では、一つの税目の負担のみに着目するというのは誤りでございまして、ほかの税目や社会保険料を含む負担全体、さらには社会保障給付等における受益全体をも考慮に入れた議論が行われる必要があると考えます。
 仮に、消費税収のすべてを社会保障給付として還元するのであれば、当然のことでございますけれども、社会保障の所得再分配効果が結果として高まるということになります。したがいまして、社会保障の受益は一般的に低所得者で大きいということがあるわけですから、逆進性の議論についても、受益と負担を通じて考えればさほど重要な問題とはならないという指摘も理論的には可能でございます。
 附則におきましては、複数税率の検討についても述べられておりますが、この点に関し、政府税調におきましては、再分配効果や制度の簡素化、中立性、事業者の事務負担、執行コスト等を考慮すれば、極力単一税率が望ましいとの結論でございます。また、社会保障の安定財源として一定規模の税収確保が必要となることを考えますと、軽減税率による減収分だけ標準税率を高くせざるを得なくなるというような心配もあるということに留意する必要があります。
 附則では、また、複数税率の検討について、「歳出面も合わせた視点に立って」「総合的な取組を行うことにより低所得者への配慮について検討する」という形で、非常に注意深い規定ぶりとなっておりますが、これはこれまで私が申し上げたような視点を踏まえたものと解しております。
 相続税につきましては、所得税と同じく、最高税率の引き下げを含む税率構造の見直しが行われてきたことに加え、基礎控除の水準が引き上げられてきた結果、年間死亡者数のうち相続税の課税が発生する割合が四%程度まで減少するということで、資産の再分配機能が低下しているという議論が税調では行われました。
 こうした状況に加え、相続税をめぐる今日的な課題として、格差の固定化の防止や老後扶養の社会化の進展への対処が挙げられます。つまり、相続を機会に高齢者世代内の資産格差が次世代へ引き継がれる可能性が増してきているのではないかといった点や、公的な社会保障制度が充実し、老後の扶養を社会的に支えていることを踏まえ、被相続人世代が生涯にわたり社会から受けた給付の一部を相続税という形で社会に還元することを求めることができないかといった議論がなされているところでございます。
 以上のような点も踏まえ、今後、相続税の税率構造や課税ベースを見直していくことが必要であると思います。
 以上、平成二十一年度改正税法に関する所見を述べてまいりましたが、今般の税制改正には現下の危機的な経済状況に対し政策的な処方せんを示したものが非常に多く含まれておりまして、これが所期の効果を発揮するためには、平成二十一年度予算とあわせて年度内に法律として成立し施行される必要がどうしてもございます。もたもたしている暇はございません。
 将来行われる税制改正の検討の基本的方向性をこのように法律の形で具体的に示すというのは、恐らく初めての試みなのではないかと思います。その意味で、今回示された基本的な方向性は、政府税制調査会が一昨年に示しました答申であります「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」と軌を一にするものであって、この答申の取りまとめに参加した一員として、ぜひ今後こうした方向性で議論が先生方により熱心に進められることを強く希望するものでございます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 中里実

speaker_id: 10125

日付: 2009-02-26

院: 衆議院

会議名: 財務金融委員会