山内康一の発言 (厚生労働委員会)
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○衆議院議員(山内康一君) ただいま議題となりました臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。
現行の臓器の移植に関する法律は、平成九年十月に施行され、十一年余りがたち、これまでの間に、脳死下における臓器移植は八十一件が実施され、多くの命が救われるという実績を上げることはできましたが、年間症例数においては欧米諸国の数十分の一にも満たない状態が続いております。例えば、日本とアメリカにおける心臓移植の実施件数では、平成二十年の一年間で、日本が十一例であるのに対し、アメリカでは二千百六十三例と、約二百倍もの開きが生じております。
一方、移植医療をめぐっては、病気腎移植の問題や臓器売買事件が明るみになりましたが、これらの問題の背景には、臓器移植を希望する患者の数に対して移植術に使用される臓器の圧倒的な不足がございます。このため、健康な体にメスを入れ、家族から臓器を取り出すという生体間の臓器移植が年々増加し、死体からの臓器移植の件数を大幅に上回る結果になっております。健康な体にメスを入れるような移植医療は、本来避けるべき医療であります。
また、国内での臓器移植が期待できないとしまして、海外で臓器移植を受ける方も増えております。移植術に使用する臓器の不足は諸外国においても同様であり、一部の国では外国人への臓器提供に門戸を閉ざす措置を講ずるようになりました。
昨年五月に開かれた国際移植学会では、イスタンブール宣言として、臓器売買、渡航移植の原則禁止を決定しました。この宣言では、自国民の移植は自国内で行うべきとし、移植ツーリズムを防止すべく自国内での臓器提供を推進するよう各国に要請しています。また、世界保健機関においても同様の方向で検討されています。国際世論の一部からは、日本は現在、大人、子供を問わず臓器移植が受けられない状態であり、その結果、他国に渡航し他国人の臓器を移植しており、たとえその国のルールに従った渡航移植であっても移植ツーリズムとみなさざるを得ないとも言われております。
現行法では、本人の書面による意思表示が臓器移植に必要であるため、十二年にわたり意思表示カードの普及に努めてまいりましたが、内閣府の世論調査で示されるとおり、提供意思を記入したカードを常時所持していると答えた人は数%にとどまっており、臓器提供をしたい意思が反映されていないのが現状です。
他方、一日千秋の思いで臓器の提供を待たれている多くの患者がおられます。これらの患者は、臓器を移植する機会があれば、普通の生活に戻れるほどの回復が可能であります。にもかかわらず、我が国の臓器移植に係る要件によって、諸外国のような臓器の提供を受ける機会が奪われ、命を落とされる患者が多く存在しているのは、真に国会における不作為の結果と言っても過言ではありません。
現行法を改正するに当たり、国民に対し平等に、臓器を提供する権利と提供しない権利、移植を受ける権利と受けない権利をそれぞれひとしく保障することが必要であります。
脳死につきましては、日本以外の先進国では脳死は人の死とされております。臨時脳死及び臓器移植調査会は、平成四年に脳死を人の死とすることについてはおおむね社会的に受容されていると答申しています。また、最近の世論調査では、脳死を人の死と回答する割合が約六割に達しております。しかし、日本では脳死は人の死であることに対しいまだ様々な考え方があり、脳死を受け入れられない方々が脳死判定を拒否できるように、本案では脳死判定をするかどうかを家族の判断にゆだねることとしています。
脳死判定には、頭部外傷などの重症脳障害の患者の予後不良を診断するための脳波計などを用いて行う臨床的脳死判定と、脳死後の臓器提供を行う際のみに行われる法的脳死判定がありますが、これらをきっちりと区別する必要があります。臓器提供に係る法的脳死判定では、脳幹反射の消失や無呼吸テストなどの法的脳死判定基準に従い、主治医とは異なる二名の専門医が一度判定を行い、六時間後に二度目の法的脳死判定を下した場合のみを脳死を人の死としています。すなわち、脳死が人の死であるのは、本案の場合も現行法と同じく臓器移植に関する場合だけに適用されるものであり、一般の医療現場で一律に脳死を人の死にするものではありません。
今回、本案においては、臓器移植法における本人の生前の意思を尊重する理念を生かしつつ、臓器の提供が認められる要件について、新たに本人の意思が不明の場合にも年齢を問わず家族が書面により臓器の提供を承諾した場合を加え、諸外国と同様に臓器移植が認められる要件をそろえようとするものであります。
本案の概要につきまして御説明申し上げますと、第一に、臓器を提供できる要件について、本人が生前に書面によって臓器の提供意思を表示している場合に加え、本人が臓器の提供を拒否する意思を表示している以外の場合で、遺族が書面により承諾している場合とすることとしております。
これにより成人の移植機会が増加するとともに、小児にも臓器移植を受ける機会が生まれるものと考えます。
同時に、家族が法的脳死判定後にも臓器提供をしたくないときには、その権利は保障され、そのような場合に臓器提供されることはなく、その後の医療保険の適用も保障されています。
第二に、本人が臓器提供の意思を表示する場合において、親族に対して優先的に臓器を提供する意思を表示することができることとしております。
第三に、虐待を受けた児童から臓器が提供されることがないよう、適切な方策を検討し、必要な措置を講ずることとしております。
第四に、国及び地方公共団体は、移植医療に関する啓発及び知識の普及に必要な施策を講ずることとしております。
なお、この法律は、一部を除き、公布の日から一年を経過した日から施行することとしております。
以上が、本案の提案理由及びその内容であります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。