湯浅誠の発言 (予算委員会公聴会)
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○公述人(湯浅誠君) おはようございます。よろしくお願いします。
レジュメを、タイトルが、派遣村から見た日本社会というタイトルで配っていただいていると思いますが、私、今日は具体的に一つ政策を実現していただきたいと思って、それをお願いしに参りました。一枚めくっていただいて二枚目のところを見ていただくと、いろいろ図がかいてあって文章が書いてあるものがあると思いますが、要は、今後の雇用不安の中で住宅にたどり着けないあるいは失う人たちが更に一層増えていくという中で、国が直接に会社寮や民間のアパートを借り上げていただきたいということをお願いしたいと思います。それを説明する中で、なぜそういうことが必要なのかなどについても時間の許す範囲で触れたいと思いますので、よろしくお願いします。
この図なんですけれども、一番左の下の方に会社寮というのがあって、この間、雇用不安が深刻化する中で多くの方が製造業を中心に失職している、それはもう皆さん御存じのとおりと思います。二月の雇用統計で十五万八千人ということですが、同じデータの中で、寮も追い出されて行く先もない、要するに居所がなくなってしまう人が三千八十五人だと、これは厚労省のデータで出ています。ところが、さらにその中には追っかけられない不明の二万人というのがおりますので、全体としてはもうちょっと増えるだろうということです。
他方、ホームレス数というのは毎年毎年減少していて、今年の調査では一万五千七百人ということになっていて、昨年一万六千人でしたから三百人ほど減っておるんですけれども、ですが、これ諸々の事情があって見えなくなっているだけだという面が強いということです。つまり、私、東京で活動していますが、新宿や渋谷や池袋のあの炊き出しはもう年末からずっと一・五倍ぐらいに増えていますので、全体の数は増えているんですね。ですが、この厚労省調査というのは昼間の目視調査なもので、昼間電車に乗っていたり図書館にいたり公民館にいたりする人はカウントされないという問題がありまして、それで見かけ上は減っているんですが、不可視化している面があります。
もちろん、製造業だけにもうとどまりません。製造業が落ち込んでいけば物流が直接の影響を受けますし、また様々な余波は建設等にも及んでいきますから、そういう意味では、やはり今まで住み込みなり寮にいて、それで出されちゃう人が増えるというのは、これはもうそのとおりのことだろうと思います。そうすると、路上に出るなりネットカフェで暮らすなり、サウナ、カプセルホテル、友人宅、知人宅、いろんな形がありますが、これはやはり広い意味では住所不定状態になってしまうということです。要するに、住民票を失う状態ですね。
そうすると、福祉事務所なりハローワークなり、二番を通じて公的なサービスにアクセスするわけですが、今現在、その三番の既設のシェルターとか雇用促進住宅というのはもういっぱいでして、例えば東京ですと、五百人分程度の施設があって、シェルター、緊急一時保護センターと言われるものですが、雇用促進住宅はもう八王子のバスで二十分ぐらいのところに数戸あるだけなので、東京の場合は雇用促進住宅はほとんどないに等しいんですが。あるいは生活保護法内の宿泊所などもあるんですけれども、そういうところは今はほとんどいっぱいで使えません。私たちが役所の方に付いて同行して相談に行くと、とにかく今はいっぱいでどこも紹介できるところはないから自分で探してきてねと言われてしまうのが実情です。
ただ、それもどんどんどんどん増えていっていますから、いつまでもこの状態が続いていくと、やはり、四番ですが、その具体的なアクセスの道が断たれることで自殺や犯罪や社会不安に至る可能性があって、これは本人にとってはもちろんですが、社会全体にとっても何もいいことがないわけです。
そこで、私たちこの間、新しくシェルターを建てるのはやはり住民の理解や様々なものがありますから時間が掛かる、そういう中で会社寮の空き室や民間アパートを地方自治体が何とかしてくれないかということで、国に対しても地方自治体に働きかけるように、あるいは地方自治体に対しても具体的に考えてくれということをお願いしてきました。
国の方も、二月の六日に政令市の会議などでその予算は一定付けるので本年度中、三月中に一定の住宅の確保に努められたいというようなことは口頭で指示していただいています。やはりその後一か月たって、三月末になりつつありますけれども、やはり自治体の方はなかなか動けないというのが実情のようで、難しいようです。
そこで、何とか国の方がある程度直接にそれを借り上げるということを考えてもらえないかというのが、私のその最後の七番ですね、趣旨なんですが、その吹き出しの中に、一、二、三、四、五と、また丸を付けたものを書いておきましたけど、結局この問題どういう問題かということなんですが、例えば求職活動にしても雇用保険にしても、この間行われた就職安定資金貸付けにしても、あるいは生活保護を申請した後に審査期間中どこにいるかというそういう居所の問題にしても、住民票、住居を失ってしまうとそういうものからこぼれ落ちてしまう、ごそっとこぼれ落ちてしまうんですね。
そういう意味で住民票というのは、上記のような雇用関係の諸施策だけじゃなくてもちろん選挙権の問題もあります、そういう諸権利のフックになっていて、住民票を失うとこのフックの下にぶら下がっている権利を全部一緒に失うというそういう関係になっていますので、ほぼ市民権を失いかねないような、そういう状態に行ってしまいます。
実際にある程度貯蓄があったり蓄えがあったりということであれば、例えば雇用保険受けるまで、今、会社都合であっても何だかんだで二か月ぐらいは掛かるわけですが、その二か月の生活資金みたいのがある人は、あるいはそこを援助してくれる、あるいは転がり込める実家がある、そういう人は何とかそこを不安定にならずにつなげられるわけですが、やっぱりそういう人ばっかりではないんですね。
就職安定資金貸付けなどは一般的にはつなぎ融資と言われていますが、そのつなぎ融資にたどり着くのも、これ書類そろえるのにやっぱり一月ぐらいはどうしても掛かります。そのつなぎのためのつなぎがどうしても要るんですね。そこが言ってみれば貧困対策だということになります。
先ほど自治体の話をしましたけれども、自治体は、この間いろいろお話を伺っていても、どうしても集中してしまうという懸念を持っているわけですね、うちが手を挙げたら集まってきちゃうと。だから、それはうちの住民でもない人にはサービスできないんだということですね。
それから、あとは、やはり自治体、住民サービスだということになりますから、例えば公営住宅は開放するけれども、うちの自治体に住んでから半年以上たっている人じゃないと駄目だとか一年以上たっている人じゃないと駄目だと、そういう要件が付いてしまいます。そうなると、雇用自体はもう流動化しているわけですね。二か月、三か月周期で人々は動いています。だけれども、自治体サービスを利用しようとするとがちっとそこで住民要件ではめられちゃうので、結局対応できないんですね。そういう意味で住宅確保には限界がある。
例えば東京都は、昨日職員の方と話しましたが、この年度末危機に向けて確保されている住宅、新たに確保した住宅は八十戸です。これは生活保護法外でですね。東京のこれだけの規模で八十戸というのはやはり間に合わないだろうと思うんですが、都にしてみたらそれが精いっぱいなんですね。
そういう中で、例えば三番に書いた名古屋市は、元会社寮を、これは会社寮もどんどん会社の福利厚生が縮小する中で、人が入らなくて困っているわけですね。会社寮として活用されることを当て込んで建てた大家さんとかは実際にいるわけです。だけれども、そこには人が入らないと、これは困っているんですね。それで、名古屋市がこの間五か所二百八十人分を確保して、会社寮をですね、会社寮の賃料が月額九万五千円なので、それに生活保護の相談に来た人をあっせんして、そこの宿所で対応しているということで、この間ずっとそれを回してきています。これ、一つのモデルだと思うんですね。二か月でアパートに転宅するということをやっていて。これは名古屋の職員の方に聞くと、会社寮の方から言ってきているんですね。つまり、自分たちも困っていますから、じゃ名古屋市が面倒見てくれるんだったら使ってくれというふうに会社寮の方から言ってくるということです。そういうことを考えると、会社寮の側にも今空き室多いですから、ニーズはある。
一時期、私、それで、じゃこの名古屋のようなモデルを全国的に広げられないかというふうに思っていたんですが、先ほど二番目で言ったような事情でなかなか動く自治体は多くないんですね。ですので、四番目なんですが、例えばこういう考え方などはできないかということなんですけれども、今、国は、会社寮を出さなければ、失職しちゃったんだけれども寮から追い出さないという会社に対しては、その賃料相当額を補助するということをやっています。これは、厚労省が会社に電話掛けて、うちのサービス使えるから使ってくれないかということを言ってやっているわけですね。その結果、大体実績ベースで三千六百件程度の人たちが追い出されずにそこで居続けられている。その間に雇用保険を受給するなりそういうことをして次のステップを築いていくということをやっているということです。
例えば、これにより強いインセンティブを与えることで国が直接確保する、そういうことはできないかということです。今自分のところで雇っていた人を出さないでいるなら賃料相当額。じゃ、そうじゃない、自分のところで雇っていたわけでもない人だけれども受け入れたらその一・五倍なり二倍のインセンティブを与えますよというふうに言えば、大家さんは大家さんで入居者がなくて困っていますので、そこを何とかつなげられないかということです。
五番目としては、その間、箱はできた、じゃ当座の生活費や行動費としてはどうしたらいいかということですが、生活保護の申請した人には五万円、あるいは他施策手続中の人には十万円などの形で社会福祉協議会の緊急小口貸付けなどを特例適用できないかということです。
これは、例えば厚生労働省の方がおっしゃっていますが、生活保護の申請受け付けても、審査には二週間なり一月掛かるんですね。今現在、皆さんお金のあるうちは自分で何とかしようと思って就職活動されていますから、その間に見付からないとお金がなくなっちゃうので、お金のない状態の人が多いわけです。そうすると、申請したはいいけれども、二週間から一月の間はお金が入ってこないんですね、審査期間中だということで。その間の住居も、これは国の責任ではないというふうに厚労省の方おっしゃっているので、要するに自分で見付けてきてねということになっているんですが、だけれども、そういうお金がなくて、申請はしたはいいけれどもお金ももらっていなくて食う物もない所持金もないという人に、じゃアパートを貸してくれる大家さんいるかというと、やっぱりそれは普通難しいと思うんですね。だとすると、そこを何らかの形で手当てする、そういうつなぎのものがどうしても必要になるということになって、生活保護の申請の方なんかは開始決定がなされればそこから五万円引いて渡せばいいだけですから取りっぱぐれることはないということで、そういうような仕組みを何らかの形でつくってもらえないかというのが、私が今日一番にお願いしたいところです。
これは、もうちょっと大きく言うと、やはり今回様々な雇用対策が打たれています。これだけ大変な状況ですから当然だと思うんですが、そういう中に貧困対策というのを加えて含めていただきたいということです。なかなか通常は、大企業、中小企業、あるいは雇用保険受けられる人、そういう人のサービスが充実していって、どうしても雇用保険までたどり着かない人とか、あるいは就職安定資金までたどり着かない人、そういう人の問題ってなかなか見えてこないんですね。ですが、私たちのような活動をしていると、そこばっかりが見えてきます。そこが結構効いていないんだなと、ここにたどり着かないで漏れちゃう人がいっぱいいるんだなっていうのが分かるんですね。
なので、それは是非とも、お金は私のいいかげんな試算ですが、そんなにすごい何か一千億も二千億も要らないです。その全体のパッケージの中にちょっと加えてもらえればそれで相当助かる人たちがいて、これはもう具体的に命の問題なので、政策効果は高いと思います。そういう中で、全体として様々な人が今大変になっている中で、一番底の方の人も含めて国はちゃんと見て支えていくんですよという温かい政治のメッセージを是非出していただきたい。
時間は余りないんですね。四番のように既存の政策の延長線上でやってくれないかと言っているのは、要するに、新たにまた一からつくり直すと時間が掛かるだろうということです。なので、本当は三月末の、大量に切られますから、この年度末に間に合わせてもらいたかったんですが、今から年度末というのも難しいかもしれませんけれども、できるだけ四月、五月の早い時期にある程度国として全体で、例えば五千戸確保したから安心して相談に来てくれというようなメッセージを出していただきたい。それはやっぱり将来不安みたいなところが深刻化している中ではとても大きなメッセージ力を持つんだと思うんですね。
なので、私、こういうことを年末年始に派遣村やってからずうっと考えたり情報を集めたりしてきたんですけれども、少なくともちょっと今の段階ではもうこれ以外やりようがないんじゃないか。自治体やれと、自治体やらないといかぬぞと幾ら言っても、やっぱり自治体としては、ある程度中核的な大都市圏は、やっぱりうちだったら、昨日東京都の方も言ってましたけれども、東京都がじゃ二千用意するといったら二千埋まっちゃうんだ、三千用意するといったら三千埋まっちゃうんだ、切りがないんだと。こういうのはやっぱり自治体がいろいろ横並びでやらないと無理なんだというわけですね。だけれども、じゃその自治体の足並みがきれいにそろうかといったらやっぱりそろいませんので、そうしたら国が、例えば人口比率でこれぐらいの数を政令市ごとに割り当てて、それぐらいは国の責任で確保するというふうにやっていただけると自治体も助かります。あっせんできる、紹介できる住居がないことは自治体も今悩みの大きな種の一つ。それはもう間違いないんですね。そういうことを是非考えていただきたいということです。
かなり話が具体的なところで終わっちゃいましたが、三ページ以降は、なぜそういうふうにたどり着かないで貧困状態に陥っちゃう人が増えてきているのかということについての私の見解等を書いてあります。三ページがその全体、私、滑り台社会ということを言っていますけれども、この四角でバッテン付けているところですね。止まる人はいいわけです、止まる人はそしてたくさんいます。ですが、止まらない人が増えていっちゃっている、それも事実で、だからこそ、ワーキングプアとか貧困とかという言葉が最近言われるようになった。それはだれにとってもいいことではないわけですよね。
ですから、そこは何とか、いろいろ御意見あるのは承知しています、本人がもうちょっと努力すれば何とかなるはずだろうというのも、御意見あるのは承知しているんですが、実際には何ともならないんですね。なので、そこはそのまま放置すると、結局、さっき言ったような自殺や犯罪や、そういう社会不安にしか結び付きませんから、何とかそこを温かく見ていただきたい。
四ページは派遣労働の現実の実態について書いていて、なかなかこれ、お金ためられるような働き方じゃないんですと。特に去年の秋口から待機期間が長くなってきていますので、待機の間はお金支払われませんから、どうしても貯蓄がない状態に寮にいる間からなっちゃっているということですね。
五ページは産経新聞の記者さんの記事ですけれども、実際に取材に出てみたら、雇用保険を受けている人の取材しようと思って出てみたら、雇用保険まで行き着かないのが現実だった、そういう人ばっかりだったということを書いていて、それはもう我々が見ている実態そのままだなということで挙げておきました。
それから六ページは、緊急小口貸付け、先ほど言ったつなぎのつなぎですね。これは制度としてはあるので、じゃ、今の制度を活用すればいいじゃないかという方もおられるんですが、実際はこれ、線を引いておきましたけれども、東京二十三区のある社協では年間の相談件数のうち貸付けに至ったのは一%ですので、これは要件が厳し過ぎて今のままでは使えません。なので、要件緩和をしていただかないと、実際にはそこからもうみんなが漏れていってしまうということになります。
七ページは、それに至っての、じゃ、それをどうしていくかということの私のイメージですが、右側の方に書いたぎざぎざの線は、つまり滑り台に階段をつくっていただきたいということです。階段であれば人が、普通の人が普通に上っていくことができます。滑り台を逆からその気になれば駆け上れるだろうといっても、実際上れる人はおるでしょうが、それはやっぱり少数なんですね。普通の人が普通にステップを上っていけるようにしていただければと。
もう一つは、右側がこれは全体として貧困状態に陥っちゃった人たちの救貧対策だとしたら、やっぱり左側が防貧になって、こっちが本丸です。だから、中長期的には、この左側の滑り台に階段をつくっていただいて、だれでもどこかでは引っかかる、そこで貧困まで落ち込まない安心できる社会というのをつくっていただければと思っています。
そういう中で、やはり私は、最終的には、これは中長期的な課題になりますが、やっぱり日本の中でワーキングプアとか貧困とか言われていますが、あるいは子供の貧困問題も深刻ですけれども、どれだけの人たちがそういう状態で暮らしているのか。
そういう中で、じゃ、それを例えば日本の政府は十年掛けて三分の一まで減らすんだとか半分に減らすんだとか、これは今、国連でやっていますが、貧困を二〇一五年までに半減させるという、ああいう目標、ああいうのを目標として立てて、そのために政策はこういうふうにやったら、こういうふうにやったら、雇用はこうする、教育はこうする、住宅はこうする、そういうような大きなビジョンを出していただけると、今、中間層も相当生活きつくなってきている中で、これだったら自分たちも落ちずにやっていける、あるいは落ちても復活できるという安心感が与えられるのではないかと。それを国のリーダーシップで中長期的には是非お願いしたい。
繰り返しになりますが、短期的には、今回の様々な政策パッケージ、雇用対策のパッケージの中に是非こういう形での住宅提供、住宅確保を入れていただきたいということを最後にもう一度お願いして、終わります。
ありがとうございました。