赤井伸郎の発言 (予算委員会公聴会)
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○公述人(赤井伸郎君) 赤井でございます。座らせていただきます。
私は、現在、大阪大学で主に財政学を研究しておりまして、今のお話はより現場でのお話ということだったんですが、私は、国全体で財政の在り方、主に地方財政、例えば最近でよく言われます地方分権、道州制とか、その辺りを経済学の立場からデータを分析するなどして研究をさせていただいております。
本日は、今後の予算作成に向けた制度設計ということで、その視点から幾つかの視点を紹介させていただければと思います。
一ページおめくりいただきまして、これは参考程度ということで、今年の予算というもののデータというか、財務省の資料を少し付けさせていただいておりますけれども、雇用はもちろんのこと、重要課題の推進枠としまして、特に重要な社会保険、地域の活性化、あと教育、あと産業政策と、こういうようなところを中心に現在の予算が、今年の予算案ができているということで、その辺りの支出をどのようにしていくのかというところの視点、さらには、次のページを見ていただきますと、もちろんもう皆さん御存じのように、我が国の財政事情はほかの国に比べますとやはり厳しいものがあって、当然ながら歳出を拡大して景気対策をするのは重要ですけれども、その一方で、将来世代にツケが回るというか、負担が行くという点も考慮しながら歳出の在り方というのを考えなければならないということでございます。
四ページのところで、簡単にこの予算を見て私が感じたことを述べさせていただくと、国民生活を守る対策として、当然ながら今お話しされた雇用対策重要だと思います。これは、短期的に今何とかしなければいけないと、そういうような政策であると思われますが、その一方で、多額の債務を抱える我が国において、限られた予算、どのように有効に使うのかと。特に、有効かどうかというのは難しいものもあると思うんですけれども、可能な限り事後的にでも効果検証するという視点も重要であろうと。高質と書いていますけれども、ワイズスペンディングといいますか、価値のあるような効果的な予算作成をする視点が重要で、特に一言で言いますと、その支出が長期的に効果を持続できるのかどうか。単に支出をして、それが終わってしまうともうまた元に戻ってしまうのでは意味がないと。雇用においては、人材育成につながる支出が望ましいと、そういう点ですね。
それをまとめますと、効果的な支出を促す私が特に興味を持っています行政制度、ガバナンス、そういうような制度の構築がどうあるべきなのか、そこのところに関してこれから三つほどの視点を簡単に述べさせていただければと思います。
まず、ガバナンスの視点の一にかかわるところですけれども、これも財務省の資料を二ページほど付けておりますけれども、歳出改革ですね、歳出を改革するというところで、推進という面でめり張りを付けたというのが今年の予算としてこういうような分野で書かれております。それぞれこの額自体が本当にそれが適正なものなのかというのはなかなか検証が難しいわけですけれども、当然、めり張りを付けるということはその何らかの効果を期待している。当然、めり張りを付けるという裏には、それによってそれを受け取る側が何らかのインセンティブといいますか、行動を起こすわけですけれども、その行動が将来につながる、何らかの行動への影響があるわけで、その行動というものがどういうものを持っているのか、そういう視点ですね、そういう視点を見るべきではないかというのがこの資料からも感じたことです。
どんどん行きますけれども、七ページのところにも徹底した無駄の削減ということで、本年度、無駄がこれほど削減されたというお話がありまして、無駄かどうかというところは難しいんですけれども、無駄とすれば、そこの部分はできるだけ効率化していくというのは重要だと思われます。
公益法人向け支出に関しても削減額、四〇%削減ということで、これは効果的であったとは思われますけれども、あえて見れば、その公益法人向け支出の中身がどうなのかとか、その支出によってどのように社会が変わるのか。当然ながら、無駄な支出であればそれは削ればよかったんですけれども、そういうところのデータの検証とか、今後さらに無駄の部分をいかに見出していくのか、その視点というのが重要なのではないかということで、八ページのところでございますが、特にガバナンスの視点で私が日ごろから思っているのが、検証による適正支出インセンティブの付与ということで、当然ながら、支出によって影響を受ける人はそれによって何らかの行動を起こすわけですけれども、それを当然期待して政府も支出を行うわけですけれども、事後的な検証がない場合には、いいかげんに使ってしまうというか、本来思った効果というのが見出せないと。限界はあると思うんですけれども、事後的に検証をするということですね。検証をするということがあれば、当然いいかげんな使い方をしていれば責任が生じてきますので、事後的な責任を通じて、事前にどのように歳出を執行するのか、どのように行動を変えるのか、そういう部分の適正化のインセンティブを付与することができると。それは究極的にガバナンスという形になると思うんですけれども、政府におけるそのガバナンス体制の強化ということもこの予算の中で今後重要になってくる視点ではないかと。
私が最近興味を持っている一つの分野に教育分野というのがあるんですけれども、教育分野は特に、お金のある時代は教育の理念というのが割と重要で、どういう教育をすればいいのかということで、余りお金の問題は気にせず支出されてきたと思うんですけれども、最近の限られた予算の中で教育分野にどのぐらいお金を割いていくのか、効果的な教育をしていくのかという部分に関してはデータの検証が必要なのではないかと。
特に、これまで余り教育分野に関してはデータ構築がなされてこなかったということで、その効果に関して余り検証されてきていないと。行政支出総点検会議というものでも、様々なモデル事業というのがなされているんですけれども、教育分野のモデル事業、費用対効果の観点からその価値があるのかどうかというところが特に議論になっておりまして、前年度に比べて三割ぐらいの削減があったと。削減をするということが目的であってはいけないと思うんですけれども、検証を促すという意味で、検証がきちっとできているものから重点的にお金を割り振っていくと、そういうような視点も重要なのではないかと。
特に教育分野、例えば海外で私が研究する場合でも、例えば海外だと、学校ごとにあらゆるデータがもうネットで見れるようになっていますし、どのような教育をしているのかというのがもうすべて情報公開されています。検証もかなり行われています。論文に関しましても、研究論文も様々な論文がそういうデータを用いて分析されています。
その一方で、教育分野に関しては、特に財政学的な分野とか、データを用いてお金に見合った効果が上がっているのかどうか、そういう分野に関しての研究というのは、教育財政の分野ともいいますけれども、ほとんどありません。それはデータがないということもありまして、そういう検証をするということと、さらに、検証をするという、事後的に検証されるということが分かっていれば、それでお金をどのように使ったかという責任が実際執行者にも掛かってきますので、事前の段階で適正な支出を行うというインセンティブが確保されると、そういうような流れがあるのではないかというふうに思います。
次に、ガバナンスの視点で、一つ目がデータと検証ということでしたが、視点の二つ目で、私が特に今までの研究の中で時代の流れで重要かと思っているのは、これも御議論たくさんあると思うんですけれども、官民の役割分担ですね。役割分担の明確化と執行ということで、民を活用するということが重要かと思うんですけれども、民間ばかりに任せていてはなかなかうまくいかないということも確かでして、当然ながら、民に任せる、完全な民間市場に関しては規制で市場を確保するということになると思われますが、民にここでいう任せるというのはエージェンシーという意味で、官が責任を持つ部分に関しても民の活力を有効に利用することができないであろうかと。
その辺りは、契約を含む官の能力向上が不可欠ということで、海外では様々な契約で物事が動いていますけれども、日本ではなかなか契約というものがなじんでいないという部分、民と民の間であれば契約というのはかなりなじんでいるんですが、なかなかそこがなじんでいないという部分。ただ、このグローバル社会においては、当然ながら外資も入ってきますし、外国企業と官、政府ですね、国、地方が連携して行うということもあり得るでしょうから、そういう意味では、グローバル社会における契約での流れというものを受けて、そういう能力向上というのが重要になってくるのではないかと。
海外で様々な事例があって、それを日本に適用しようということで、市場化テストとか、公営企業、公社、第三セクター、指定管理者、PFI、PPP、様々な言葉が出ておりますけれども、これの究極的な視点は、やはり民を官がどのように契約でインセンティブを与えながら活用していくのかと、そういう視点が重要なのではないかと。
例えば、指定管理者制度にしろPFIにしろ、もうそれはすべて成功するんだというようなイメージを持たれている方も多いと思うんですけれども、当然ながら将来リスクはありますので、そのリスクをいかにコントロールするのかというのが重要で、PFIでも失敗事例はあるんですけれども、そういうことから学ぶことも多いですし、一つ失敗してもほかで成功していれば全体としては望ましかったということも見れるわけですので、その手法の在り方、リスク管理を検討していくべきではないかと。
特に最近私が興味を持っていますのがインフラの分野なんですけれども、空港、あと特に道路ですね。道路は民営化というのがなされましたので、特に興味を持っているのが地方の道路公社、地方の有料道路ですね。あと、地下鉄、バス、あとは公共施設。公共施設に関しては指定管理者がかなり導入されていますけれども、ほかの面の例えば空港とかインフラ分野、あとは教育分野、そういう分野に関してこの視点をどのように活用していくのか、まさにこれが今後の予算設計の上で重要になってくるのではないかと。
単なる委託ではなくてインセンティブを持たせると。今でも委託はかなり行われているわけですね。道路にしろ、道路の管理というのは業者がやっているわけですけれども、そこにいかにインセンティブを与えて管理させていくのかと、そういうところを更に官がその能力を向上させてスキルを磨いていくということが重要なのではないかと。
十一ページのところは参考程度に、例えば国家は、参考程度の資料を出しておりますけれども、民間に任したときに国がどれぐらいの責任を負うべきなのかというところで、なかなか道理管理は難しいという議論もあるんですけれども、ここのところも、損害の原因についてその責任がある場合には請求できるというような議論もありますし、またPFI事業者の公物管理法上の位置付けという部分に関しても支障が生じることはないという見解もありますし、その辺りをこれから厳密に見ていくことによってより有効活用ができるのではないかと、そのように思われます。
最後、三番目の視点ですけれども、次は国と地方の役割分担というところに関しての視点でございます。
この資料、地方財政対策の概要という、これも皆さん御存じのとおりの資料でございます。
かなり地方財政というのはややこしいんですけれども、今年の予算のポイントとしては地方交付税を一兆円増額すると。これはそこの資料にもありますように、半分程度が雇用創出という部分が重要になっております。あとは事業を円滑化するという部分ですけれども、本来、今、地方の歳出というのはどんどん削られていく一方なんですけれども、その一方で一兆円ほどの額を確保して経済対策を行おうと、そういうような視点が今年の予算には織り込まれていると。
これを踏まえて私の視点なんですけれども、十四ページのところですが、国と地方の役割と責任ということで、今年の予算は交付税一兆円増額されました。この一兆円レベルが望ましいのかどうかというところはなかなか評価が難しいんですけれども、バランスとしては景気対策の効果と、やはりその一兆円というのは将来負担になりますので世代間の公平性という部分での視点からの評価が重要なのではないかと。
もう一つの視点としては、現在、地方財政、地方分権というふうに言われていますけれども、地方財政制度というのは国が地方を財源保障しているという状況にありますので、地方で当然ながら地方税が減って財源不足が見込まれる場合には国がある程度のレベルまで保障しなければならないというようなことで、今年も一般会計で交付税が増えるという状況になっているわけですけれども、その一方で、その交付税原資、国が地方に渡すために用意している財源ですね、それも当然景気とともに減少しているわけです。
そのような仕組みがあるわけですけれども、この仕組み自体がなかなか景気が良くなったり悪化した場合に不安定化する要素になっていると。つまり、地方の財源が安定化していないために少し景気が悪くなると大幅に交付税を増額させないと財源が保障できない、そういうようなことになっていると。つまり、景気後退による財源不足の拡大は交付税の原資とともに地方財源の不安定化というものが要因になっているのだと。
昨今、中期プログラムでも言われていますように、国、地方を通じた安定財源の確保と。当然ながら、地方に安定財源を確保していくということであれば地方税の充実ということになると思うんですが、その中身とともに、充実していくと、いわゆる東京問題と呼ばれますように都市部と地方部で格差が生まれてきます。それとともに格差是正の視点というものも重要になってきます。その格差是正を国がどのぐらい行うべきなのかという国の役割の明確化、つまり国の責任部分なのか、地方同士で財政調整するのか、よく言われている地方共有税も含めてその辺りの責任主体の問題、これが地方分権、さらに道州制とともに絡んでくるのではないかと。
この安定財源確保に関しましては、よく言われている消費税が安定しているのではないかというふうに、消費は法人税に比べると安定化していることは事実ですので、そういう視点がありますけれども、一方で、中期プログラムでも地方消費税の充実という一方で社会保障財源としての消費税の充実、そこのバランスをどのように見ていくのか、その辺り。ただ、リスクを吸収できるのは地方よりも国という意味では、地方により安定的な財源を与える方がいいのではないか。その安定財源を与えるということと財源保障部分を拡大するということはまた別で、安定財源を与えるというのは組替えですね、法人税に依存しているものを消費税に切り替えるという意味で、消費税分それだけ地方が増えるのがいいかどうかというのはまた別の問題なんですけれども、そういうような視点が重要になってくるのではないかと。
その続きですけれども、十五ページのところで、やはり国と地方の役割と責任ということで、最近、地方分権、道州制という議論がされていますけれども、そこのところが一番重要で、やはり効率性と地域間公平性のバランスですね。
やはり効果的なのは都市により多くの資金を配分して将来的な成長、競争力を強化するという部分になってくるかと思うんですが、そうすればやはり地域間で不公平が生まれてくる、そこのバランスをどのように取っていくのか。その公平性、不公平性というのが各分野で生まれてきた場合に、国民はどこまで不公平性というものを認めるのか。
道州制でも私も専門委員で入らせていただいて議論していますと、やはりその格差というものを国民がどこまで認めてくるのか。例えば都道府県レベルでの格差よりか道州制の方がまだ広いのでそれほど格差は起きないという議論もありますが、やはり格差は完全に国が何もしなければ格差が出てくるわけですので、そこの辺り、どこまで国民はその効率性を求めるのか、公平性を求めるのか、そのデータ把握というのがない限りなかなか議論が進まないと、そういう視点を持って将来設計していくべきではないかと。
その下には、ちょっと私が興味を持っている教育とインフラの話ですけれども、義務教育、中等教育、高等教育、最終責任はだれが持って財源はどのように持つのか。例えば義務教育ですと、三位一体改革の折に文部科学省から地方の一般財源という形に一部切り替わったわけですけれども、その責任は最終的にだれが持つのか、道州制になった場合に義務教育はだれが責任を持つのかというようなお話。
最近は高等教育ということで、例えば国立学校の来年また中期計画というのが始まるわけですけれども、国立学校において、全国に、国立大学というものが地方にもあるわけですけれども、その地方の国立大学をどのようにしていくのか、全国に国立大学を設置することがまた国の公平性という面で重要なのか、それが必要なのかとか、そういうような部分。
さらに、例えばインフラですと、全国に空港があるわけですけれども、地方が運営している空港もあれば国が運営している空港が地方にあったりします。それをどう考えるのか。港湾も、最近はスーパー中枢港湾ということで集中と選択でお金が今年も予算が組まれていますけれども、その一方で、全国に約千近くの地方港があります。港は地方にとっては欲しいわけですね。ところが、たくさんの港を造れば一つ当たりの貨物の量が減ってきますので、そういう意味では競争力が失われる、そのバランスをどのように取っていくのか、その視点が重要なのではないかというふうに思います。
以上、三点ほどの視点を以前ちょっとまとめた新聞記事がありますので、その辺りを三つほど最後の方に付けさせていただきました。
一つ目が、公営企業の改革、官と民の役割分担をどうするのか、そこはなかなかリスクの点とかいろいろな視点があると思うんですが、実際コストで見れば明らかに公営の方が高い、中にある表でそれを示しているんですが、給与とかその点の違いが大きい。
二つ目の記事は、根拠あいまいな是正規模というふうに書いていますけれども、格差是正ということで、昨年度から地方法人特別税というような形で、これは地方分権と逆行するんですが、一度国に集めて地方で公平的に配分するというような政策が取られていますけれども、その根拠、その格差をどのように見るのかというところをどのように考えるべきなのかというような御議論。
それから、最後が道州制ですね。道州制、なかなか国と地方をどのように分けるのか、権限を分けるのが難しいんですけれども、確かに都道府県レベルを州レベルまで広域化することによるコスト削減、これはもう事務ごとに違うんですけれども、コスト削減というものもできるのではないか。その辺り、データ分析がほとんどないので、ここではデータ分析をした結果をちょっと紹介させていただいているということでございます。
雑駁ではございましたが、以上で発表とさせていただきます。