大泉ひろこの発言 (本会議)
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○大泉ひろこ君 民主党の大泉ひろこです。
民主党・無所属クラブを代表して、内閣提出の国家公務員法等の一部を改正する法律案について賛成、自由民主党、みんなの党提出の二法案について反対の討論をいたします。(拍手)
明治時代、森林太郎という行政マンがいました。言うまでもなく、文豪森鴎外の実名です。医者としての最高位、軍医総監に上り詰めましたが、一時は北九州の小倉に左遷され、同期におくれること八年にしてその地位に就任しました。文章力は抜群、ドイツ語堪能の才能の人でありましたが、行政マンとしての評価は必ずしもそれと一致するものではありません。森林太郎は、白米を食べさせる条件で兵隊を募集したのだから、その政治的意図に沿い、兵隊に白米を食べさせることを主張しました。その結果、かっけをふやし、政策の失敗を犯したと伝えられています。
鴎外は、余は森林太郎として死すと遺言し、墓石に叙位叙勲も文豪としての名誉も刻むことを禁じました。行政マン森林太郎が教えたのは、行政マンは、名を残すことではなく、位階に必ずしも満足できなくても、政治の意図に従い、知性を駆使して国のために働く存在であるということであります。その一方で、失政の責めを負わないままだった。それは今日まで続く官僚制の課題だろうと思います。
今日、明治以来の官僚制が危機に瀕しました。九〇年代に始まる不況、財政難、戦後にできた制度の疲労に対し、行政マンは政治家とともに対応を誤ったとされています。高位高官の不祥事、明るみに出た天下りの実態は、公務員制度そのものの制度疲労が一般に知られるところとなりました。二〇〇八年、与野党合意のもと、国家公務員制度改革基本法が成立し、このプログラム法にのっとって公務員改革の具体化を図ることになりました。
今回の内閣提出法案は、この公務員改革の第一歩であります。第一歩に盛り込まれたのは、幹部人事の一元化と天下り完全禁止です。
まず、幹部人事は、内閣官房に内閣人事局を設け、幹部候補者名簿によって人事を行います。内閣での人事一元化は、各省の縦割り行政を排除し、任命権者と官僚の間にクッションを置いて、情実や恣意を極力回避します。すなわち、適格性審査で客観的に人物を評価し、合格した者のみが幹部候補者名簿に掲載され、内閣の協議のもと、任命権者が任命することになります。また、幹部候補者名簿には公募で選ばれた人材も登載し、公募人事を制度化します。
事務次官級、局長級、部長級を職制上同一段階とみなし、これらの職制をまたがって任命するのは、すべて転任とされます。これは、広く人材を集める弾力的な方法であります。
なお、事務次官のあり方については、附則において検討課題として取り上げ、政治主導の体制の中で最善の方法を見出していかねばならぬと考えます。
もう一つの、天下り完全禁止は、国民に期待された政策であります。
公務員を早期退職し、突出した条件で天下ることがセットされた一部の特権官僚の姿が公務員全体の印象を歪曲してきたことは遺憾であります。OBが自分の天下り先の予算獲得のために出身省に圧力をかけたことで、いわゆる無駄遣いも行われてきました。今まさに、その事実に対して、行政刷新会議、事業仕分けのメスが入っているところであります。
もとより、人生五十年時代の官僚システムのまま放置されてきたことも天下りを必要悪とした原因であり、政治の責任も大きい。天下り完全禁止は、公務員バッシングが目的であってはならず、政治家と公務員の役割分担を明確にし、政治家が方針を決め、公務員が専門性を持って制度の運営に当たる環境をつくることが目的であります。
したがって、今回設置される民間人材登用・再就職適正化センターは、今後、民間、国際機関、大学、自治体などの人事交流を主とし、公務員の職歴を豊かにして、専門性と現実感覚を十分に養う役割を負っていくことになります。人事交流は、従来とはけた違いの規模になることを期待します。
また、いかにしても起こり得る分限免職に限って、再就職の業務も行うことになります。その目的がそれぬよう、再就職等監視・適正化委員会は、いわゆる裏下りなど脱法的行為に対して厳正な対処をすると政府答弁を得ています。
今回の改正にあわせ、厳しい財政状況のもと、公務員人件費の二割カットが政府の公約となっています。民間で行われてきた人件費カットの知恵をかりて、新たな専門職の創設、地方出先機関の廃止、新規採用の抑制など、痛みを伴うが適切な処置を政府に期待します。
同時に、国民感情を考えたときに、既に天下りしているOBのうち、六十五歳以上の場合は勇退していただくこと、天下り指定ポストと目される連続三代以上ポストはいかなる手段においても継続されることがないよう、政府に図っていただきたいと思います。
なお、自由民主党、みんなの党提出の二法案につきましては、組織の改廃に伴い離職を余儀なくされる職員に対する再就職の規定が欠如していること、さらに、今後付与される労働基本権に先立って、人事院や総務省の機能移管が行われるため、その順序、整合性に欠くなど、問題をはらんでいます。責任ある与党の立場としては、いずれの法案にも賛成できません。
政治家は国民の意を酌み、公務員はその政治の意を酌み、国のために働く。最後は、余は国のための一介の働き者として死すと言えるような公務員制度として運営してほしいと思います。
そのためには、公務員改革は、第二歩、第三歩が用意されなければならない。特に、公務員に労働基本権を付与し、労使交渉のもとでその働き方を決めていく方針が出されている以上、その制度化の際には、給与、定員管理、級別定数の機能などを明確化し、公務員が定年まで働ける環境を整備することを望んで、討論を終わります。(拍手)