逢見直人の発言 (予算委員会公聴会)
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○逢見公述人 連合で副事務局長を務めております逢見です。よろしくお願いいたします。
本日は、このような発言の場を与えていただき、感謝申し上げます。
連合は、働く者の立場から、我が国の経済社会の閉塞状況を克服し、希望と安心の社会づくりに取り組んでおります。具体的には、景気・消費回復、雇用・生活防衛のための総合経済対策の効果的な実施、雇用の安定とセーフティーネットの整備拡充、安心して暮らせるための社会保障制度の確立の三本を政策課題として掲げております。
本日は、こうした考え方や問題認識を示し、予算委員会における審議の参考に供したいと思いますので、ぜひとも私どもの意見を反映していただくようにお願い申し上げます。
お手元に資料を配付しておりますので、これらを参照しながら発言をしたいと思います。
まず、底割れした日本社会という点でございます。
米国のサブプライムローンに端を発した世界同時金融危機とその影響による世界同時不況は、我が国の実体経済に大きな影響を及ぼしました。二〇〇二年から日本経済は戦後最長の景気拡大が続きましたが、今般の金融危機の影響は、当初は限定的と言われておりました。しかし、実際には、経済の落ち込みの大きさとスピードは主要先進国の中でも際立ったものがございます。
最近のGDP統計などを見ますと最悪期は脱しつつあるように思いますが、勤労者、国民は、雇用不安、所得不安、将来不安の中で、先行きの展望をなかなか見出せず、閉塞感に包まれております。これは、所得がふえない、あるいは仕事が見つからないといった現実、足元の問題もございますが、しかし、それだけではなくて、むしろ大きな問題は将来の安心が見通せないというところにあると思います。
自民党政権は、新自由主義による、効率と競争を最優先する政策を推し進めました。市場は万能であるという発想のもとで、社会は規律と制御を失いました。企業は、ステークホルダーの存在を無視して、株主利益中心、短期的利益最優先の経営を行い、モラルなき競争を繰り返した結果、公正や安心、安全といった我が国の社会の基盤を揺るがしました。社会に持続可能性をもたらさないこの新自由主義の発想に支配された経済は、暴走の末、リーマン・ショックに象徴される金融危機によって破綻しました。
この間、特に小泉政権のもとで、官から民へ、小さな政府、自己責任といったスローガンのもとに市場原理主義的な政策を推し進めてまいりましたが、その結果、雇用構造の変化、格差拡大、貧困層の増大など、我が国の経済社会に深刻な負の遺産を残したと言えると思います。
幾つかの事例を、統計的なデータをもってお示ししたいと思います。
まず、この十年余りで日本の雇用構造は大きく変わりました。
お手元の資料の図表一をごらんください。
一九九九年には正規労働者は三千六百八十八万人いたものが、二〇〇九年には三千三百八十六万人に減少しました。一方、パート、派遣社員等の非正規雇用は千二百二十五万人から千六百九十九万人に増加しました。およそ十年で、正規雇用が約三百万人減少し、非正規雇用が四百七十万人増加した結果、非正規雇用者は全雇用労働者の三分の一を占めるまでに至っております。
賃金は、十年前の水準、すなわち一九九八年から二〇〇八年の間に約八%も下落し、世帯所得は九八年から二〇〇七年までの間に約百万円減少しました。
図表二をごらんください。
年収二百万円以下の労働者が一千万人を超え、不安定雇用と低賃金のため、社会保険の適用もなく、生活保護基準以下で暮らすワーキングプアなども増大しております。
次のページに図表三を掲げてございますが、これは生活保護を受けている世帯数と人員の変化を見たものであります。二〇〇九年十一月時点で百二十九万世帯、人数にして百七十九万人と増加の一途をたどっており、十年前と比べて約一・八倍になっております。
政府は、昨年十月に、日本の相対的貧困率を初めて公式に発表し、二〇〇六年時点で一五・七%であることを明らかにしました。図表四に示したように、OECDは、二〇〇〇年代半ばのデータで、OECD加盟国中、日本の相対的貧困率は第四位であるということを明らかにしております。
資料には入れておりませんが、低所得者を中心に、国民健康保険料の未納が増大していることも深刻な問題であります。二〇〇八年度の保険料未納率は一割を超え、過去最高を上回る見通しとなっております。
これらのデータは、国民生活の実態を見る上で、大きな問題を投げかけていると言っていいと思います。
中間層の二極化、格差拡大や貧困問題、とりわけ若者、子育て中の女性、非正規労働者など、いわゆる社会的弱者にそのしわ寄せが行っております。家計の窮状ゆえに高校を中退するなどの報告も相次ぐなど、格差、貧困の問題が、次世代である子供たちにもその影響が及ぶとともに、出生率の低下、少子化に拍車をかけるなど、我が国社会の持続可能性をも脅かしております。
連合総研が二〇〇九年四月に首都圏、関西圏の勤労者を対象に実施したアンケート調査では、年収四百万円以下の世帯の約六割、また、非正規労働者がいる世帯の四六%が、将来の生活設計が立てられないと回答しております。
これまでの景気回復期においても、地域の中小企業、地場産業や農林水産業の衰退、人口流出、超高齢化など地域経済の疲弊も見られ、地域間の経済、財政力の格差が拡大しました。自民党政権は、こうした問題に対して、大企業が潤えばやがて中小企業、家計にも恩恵が及ぶというトリクルダウンの考え方をとってまいりました。しかし、結論から言えば、このトリクルダウン理論は機能せず、中小企業や家計には景気回復の恩恵は及ばなかったと言うべきであります。自民党政権下での新自由主義による政策のもとで、国民生活の安心、安全が崩壊し、日本の社会はまさに底割れの状況にあると言っても過言ではないと思います。
次に、厚みのある中間層を基盤とした社会構造の構築という点に触れたいと思います。
健全な市民社会は層の厚い中間層で成り立っております。この中間層が、雇用社会を支え、社会保障を支え、消費の主役でありました。もう一度日本を厚みのある中間層の国にしなければならないと思います。
そのためには、税、社会保障を通じた公正な所得再分配の強化、労働分配率の向上、教育の機会均等の保障、さらに、公正で透明な企業間取引などが不可欠であります。
図表五は、税、社会保険料による所得再分配の前と後を比較したものでございます。特にこの表の中で日本とスウェーデンに丸をつけて取り上げておりますが、日本とスウェーデンは、左側の市場所得、いわゆる所得再分配前の市場所得では大きな差はございません。しかし、所得再分配後の右端の数字でいきますと、大きな違いがあります。日本はこれまで所得再分配政策を軽視してきたことがこのような結果となってあらわれているのだと思います。
格差社会の是正、貧困問題の解決、尊厳ある労働の確立、社会的セーフティーネットの再構築、地方分権に向けた税財源の見直し、そして、ワーク・ライフ・バランス社会の実現に向けた抜本的な政策転換が求められております。
昨年九月に鳩山内閣が発足し、新しい政治の幕あけと同時に、新しい社会づくりがスタートしました。鳩山内閣への期待は、これまでの効率と競争最優先の格差社会から、公正と連帯を重んじる希望と安心の社会を構築することにあると思います。
鳩山内閣のこの間の経済政策を見ますと、公共事業依存の景気対策ではなく、また、企業への直接的な支援によるものでもなく、個人や家計部門を通じて景気対策をとろうとしております。また、新しい公共や社会的企業など、市場経済とは異なる分野の政策を取り込もうとしております。さらに、健康、環境、観光など、新産業育成による成長戦略によって新たな雇用機会をつくろうとしております。これらは連合が考える政策の方向とおおむね一致しているように思います。
次に、当面の政策課題について幾つか述べたいと思います。
今通常国会では、景気回復、デフレ脱却、雇用危機克服に向けた予算措置や、二〇一〇年度税制改正、労働者派遣法、雇用保険法の改正、政治主導を確立するための統治機構改革など、国民生活や日本経済にとって極めて重要な法案が審議されることになっております。その中から、特に重要と考える点について、私ども連合の問題認識を述べたいと思います。
まずは、景気回復、デフレ脱却に向けた二〇一〇年度予算の早期成立であります。国民生活にかかわりの深い子ども手当の創設、高校の実質無償化や緊急経済対策などが着実に実行されるよう、二〇一〇年度予算の早期成立、執行を求めたいと思います。
次に、雇用に関するセーフティーネットの強化であります。日本は就業者の八六%を雇用労働者で占める雇用社会であり、雇用の安定は、社会の安定、発展の不可欠な要素であります。政権交代後、政府が矢継ぎ早に雇用対策を打ち出していることは評価しております。特に、雇用調整助成金の支給要件緩和など、労使双方が求めてきた政策が平成二十一年度第二次補正予算などによって成立したことは歓迎したいと思います。
その上で、ここでは、第二のセーフティーネット、新卒対策及び最低賃金引き上げと中小企業支援について触れておきたいと思います。
第二のセーフティーネット、訓練・生活支援給付の点でございます。
雇用保険と生活保護の間を埋めるトランポリン型の第二のセーフティーネットは、労使が求めてきた施策であり、現状の緊急人材育成・就職支援基金制度との切れ目のない形で、早期かつ確実な施行をお願いしたいと思います。
雇用・能力開発機構を廃止してその機能を他の機構へ移管する際に当たりましては、職員のモチベーションを踏まえて行うべきであり、職員が今まで培ってきた知識、技能を生かすことが重要であると考えます。機構の見直しはその観点に立って考えるべきであります。
雇用・能力開発機構が行っている公的訓練は、セーフティーネットとしての訓練や物づくり分野の訓練の実施など、重要な職業訓練機能を担っております。職業能力開発は雇用のセーフティーネットの一つであり、国として、これまで以上に職業能力開発体制の充実と強化を図ることが必要ではないかと思います。その観点に立って、今後、制度の創設が予定されております求職者支援制度の根幹を担うことも踏まえまして、その受け皿としての機能が低下することのないよう、施策の充実を求めたいと思います。
新卒対策についてでありますが、ことしの一月二十六日に日本経団連と連合で、若年者の雇用安定に関する共同声明、お手元の資料Aというところでございますが、これを発表しました。ことし三月卒業予定者の内定率の水準は過去最悪のレベルであるなど、依然、課題が多くあります。第二のロストジェネレーションの抑止に向けた政労使の責任は大きいと思います。対策の着実な実行を求めたいと思います。
次に、最低賃金の引き上げと中小企業支援についてであります。
非正規労働者の増大やそれに伴う低所得者層の増大に対し、賃金の最低限を保障するセーフティーネットとしての最低賃金制度の役割はますます大きくなってきております。それは、最低賃金の影響を直接的に受ける多くの未組織労働者やパートタイム労働者が、労働条件決定にみずから関与することができないからであります。
地域別最低賃金は、二〇〇七年度に十四円、二〇〇八年度に十六円、二〇〇九年度は十円と、三年間で四十円の引き上げにつながりました。この地域別最低賃金の水準改善の流れをとめることなく、二〇一〇年度の地域別最低賃金の金額改定に当たっては、生活保護水準との乖離を速やかに解消した上で、より絶対水準を重視した審議を行う中で、生活できる最低賃金の実現を目指すことが極めて重要であると思います。
あわせて、最低賃金を引き上げる上で、中小企業、地場産業に対する政策的支援は不可欠であり、厚生労働行政に加えて、経済産業省、中小企業庁などの関係する省庁が一体となってその具体的な検討を早急に始めていただきたいと思います。
次に、社会保障改革と子供政策についてであります。
日本は、高齢化の率、速度とも世界に類を見ないレベルにあります。二〇五〇年には高齢化率が四〇%を超えることが見込まれております。一方、二〇〇五年から人口減少社会に突入しております。非正規雇用が三〇%を超えるなど、労働市場も大きく変化しております。
こうした社会の変化を見据えながら、私ども連合は、労働を中心とした福祉型社会を目指して取り組んでおります。就業が可能な世代は働くことを通じて経済的自立ができ、みんなで高齢化社会を支え、仕事と生活を両立しながら子育てが可能な社会をつくり上げたいと考えております。
社会保障は、人々の暮らしと安心、安全を支えるセーフティーネット機能であるとともに、社会経済の活力の基盤となります。福祉、介護、医療、子育て、年金、最低生活保障など、今後さらに進む高齢化や次世代育成のために、中長期的視野に立った社会保障政策とその戦略が必要であります。
一方、社会保障は、内需拡大につながる雇用創出分野であります。社会保障改革を国家戦略の柱と位置づけて、体系的かつ着実な社会保障改革と子供政策を推進していただきたいと思います。
安心して子供を生み育てることができるために、連合としては、資料にございますが、子育て基金というものを提案しております。資料Bでございます。次世代育成支援策をより効果的に進めていくために、現在、施策ごとに財源が異なる多様な財源を基金に一元化して、施策間の連携や多様なニーズへの対応、現金給付と現物給付の適切な組み合わせ、政策効果の向上など、切れ目のない体系的な仕組みが必要であると考えております。
最後に、持続的成長に向けた経済成長戦略の確立であります。
内需主導型経済成長の基盤は、雇用の安定と質の向上と生活不安の払拭にあります。G20ピッツバーグ・サミットで、「強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み」の中で、質の高い仕事を回復の中心に置くということをうたっております。すなわちディーセントワーク、人間らしい働きがいのある仕事の実現を中心に置くということであります。成長戦略を考える際には、雇用の量とあわせて、こうした雇用の質についても十分な配慮が必要であると思っております。
今国会は、生活の安定と不安解消を求める国民の期待に十分にこたえる必要があります。政府、そして与野党には、建設的な政策論争と国民の負託と信頼にこたえる国会運営を望みたいと思います。
以上で、私の発言を終わらせていただきます。(拍手)