汐見稔幸の発言 (少子高齢化・共生社会に関する調査会)
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○参考人(汐見稔幸君) 最初の御質問は、地域をもう必死になってつくらなきゃいけないということは、もちろん、子供が減って、家に入って、そして世代間のギャップが大きくなってますます不気味がるという、こういう悪循環をどこかで断たなきゃいけないという、そういう思いです。
そして、子供は未来の宝ですから、その子供たちが社会から余り歓迎されていないという思いをどこかで持つと、心の深いところに自分に対する信頼感だとかあるいは意欲だとかというものがそがれていくような育ち方をするという可能性があります。幾ら学校で頑張っても社会がそういう形で子供たちを本当に深くは迎え入れていないような社会というのをつくっていきますと、本当に人材を育成するという点でも大変な難点になっていくと思います。
ですから、子供が小さいときから地域の様々な世代と出会いながらそういう人たちに支えられて育っていくような社会に、必死になって現代風の工夫をしていかなければいけない。そのためには、高齢者が出てくるという、社会に出てくる、地域に出てくる社会をつくらなきゃいけない。
私は実は、日本は若者が今たくさん引きこもっているというのは知られているんですけれども、若者だけが引きこもっているんではなくて、みんなが引きこもっている社会だというふうに思っています。
これは、例えば私の知人が二十年ほどパリに暮らして数年前に戻ってきて、そして東京にいたときに、汐見さん、一体東京どうなったのというふうに最初に聞いた質問にかかわっています。
何がと言ったら、子育てしている人どこにいるのと。パリでは子育てしている人はみんな出てきて、そしてバギーを横に置いてお茶を飲みながらぺちゃくちゃぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃしゃべっていて、金曜日になるとどこかでホームパーティーをしてと。そうしなければ生きていけない、一人で子育てなんかできっこないんだからと。そういうことをやっていて、自分もやってきたんだけれども、東京はどこに子育てしている人がいるのというふうな、もう二十年でこんなに変わっちゃったのかしらというふうなことを言っていたのとかかわっています。
私たちが知らないうちに引きこもり社会になっているという気がします。それは、父親が遅くまで帰ってこないということとかなりかかわっているような気がいたします。
それからもう一つの質問、ちょっと時間が掛かって申し訳ございませんが、先進諸国、ヨーロッパ諸国の幼児教育充実策について、ちょっとこちらを映していただけませんでしょうか。ちょっと口で言っているうちに映ると思いますが。
実は、EUが統合された一九九三年辺りから、各国の制度が様々異なるのをどうならしていくかということでいろんな委員会がつくられました。それで、各分野で最も進んでいる国に足並みをそろえていくという合意があって始まったんですが、子育て支援策だとか保育政策については各国が違いました。
そこで、特にヨーロッパは先に少子化問題が起こっていたことに対する対応策を八〇年代から進めておりまして、九三年にEU保育ネットワークというものがつくられます。ここで三年ほど議論した後、一九九六年にOECD加盟国閣僚会議が、生涯学習の基盤を強化するためにECEC、幼児教育と保育へのアクセス及び質の改善を最優先課題とするということで各国ともが合意しました。つまり、幼児期から大学、大学院までの教育の中で最も力を入れなきゃいけないのは今幼児教育であるということを合意しました。
そして、その結果、二〇〇六年までの第一目標で九分野四十項目の目標を設定いたしました。その中には、各国の幼児教育予算を各国のGDP比で一%以上にするということも決まりました。それから、一人一人の先生の持ち数は、ゼロ歳が何人とか、三、四、五は一人で十五人以下にするということも共通の目標になりました。男性保育士は二〇%まで確保するということも目標になっています。それで、一斉に始めまして今、第二期の目標に入っています。
具体的には、これはなぜかといいますと、一つは男女共同参画社会をつくろうというのがありまして、これは特に北欧ですね。そうすると保育制度を充実しなきゃいけません。それから、少子化・家族対策。これはフランスなんかがやってきたんですが、これもやっぱり、家族支援というのは実際には子育て支援と、それからその育てた親支援ですね。
それからもう一つ、イギリスのように格差解消のために貧困地帯に充実した保育制度をつくっていく。そして、学校でちゃんと適用できるようにしていくと不審者は減っていくという、そういうことで、これも教育と保育に力を入れていました。
それから、これが大事だと思うんですが、実は今の義務教育制度というのは大体百年ぐらい前にできて、国の税金で国に必要な人材を育てていくということで、大体どこの国も六歳からやっていますね。それ以上の高等教育もあって、これはオプションなんですけれども、義務教育は大体十五歳まであります。これが二十世紀はうまく機能していました。ところが二十一世紀は、まあ二十世紀の最後にほころび始めたんです。
この二十世紀型の義務教育というのは、ゼロ歳から六歳までは、特に公費を特別に掛けないでも、まあ家庭と地域社会でそれなりの準備して育ってくれるということが前提だったわけです。もちろん、オプションとして幼稚園とか保育所があって、少しずつ増えてきましたけれども、これを国の義務でやるということはなかったんです。
ところが、実際には家庭で育てるといっても、核家族になってきました、女性が働きに出ました、地域で群れて遊んでたくましくなることもなくなってきました。その上、文明化が進んで何でも便利になりましたから、自分で工夫するということがほとんどなくなりましたよね。
だから、そういうことで子供が本当に育たなくなってきて、体も心も、そして頭も十分に準備ないまま、あるいは無理するために、家庭でわあわあ言ってがみがみやるために、心がおかしくなって小学校へ入ってくるという、そういう子供がどこの国も増えてきたんです。
それで、これはまずいということで、二十世紀型の義務教育システムを二十一世紀にバージョンアップする際に、やり方を変えなきゃいけない。そのゼロから六のところを社会の責任でもう少しきっちり育てていくというふうに切り替えなきゃいけない。それはどこか。幼稚園と保育園でちゃんとやってもらうということです。
ですから、そこに公費を投入するということで、これはほとんどの国が三歳、四歳からの幼稚園、保育園の教育をただにしました。これはすべて共通しているところ、クロスしているところは全部同じ理由で、これは全部幼児教育の充実なんです。だから、ヨーロッパの方は皆一斉にここに力を入れ始めたんです。日本ははっきり言って遅れました。
具体的には、多くの国で保育園を拡充して幼児教育の無償をと。例えばイタリア、ポルトガル、ベルギー、オランダ、デンマーク、フランス、イギリス、みんなただになっています、こういう国。
イタリアでもそうです。イタリアは、先ほど申しましたPISAの点数が非常に低いということで国会で問題になって、なぜ低いか、一クラスの人数が多過ぎる、何人か、二十五人もいるということになって、二十人クラスで担任二人ずつ付けるという法律が通っています。実際にそういうことをやっているかどうかは別ですが、イタリアは国が決めても自治体は余りやりませんからなんですが、それで予算を大幅に増やしているという、こういう問題があった。
これは御存じだと思いますが、二〇〇三年にOECDが発表したあれで、日本は幼児教育、今〇・三三%ですね、現在は〇・三二%です。イギリスがこの段階では三位ですけれども、現在、世界で教育予算のトップはイギリスです。というか、見るのも嫌になるぐらい、比較にならないぐらいになっています。
それで、これは税制が違うために単純に比較はできません。各国とも消費税二〇%、二二、三%という国の予算。それから、フランスがこれだけできているのは、保険機構というのがございまして、各企業からの拠出金が圧倒的に多いんです。そこが大体高齢者から幼児までのそういう福祉機能の財源を担っています。ですから、単純に比較できないんですが、ともかく抜本的な税制改革か何かをやっぱりやらないと私は無理だと思っていますけれども、ただ、現実的にはこれだけ遅れてしまっています。
以上です。