小川紘一の発言 (予算委員会公聴会)
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○公述人(小川紘一君) 小川でございます。
それでは、今、榊原公述人は非常にマクロな経済の状況をお話しいたしましたけど、私の方は、もう少しミクロなといいますか、日本の製造業が置かれた現状についてお話し申し上げます。
御存じのとおり、製造業というのは日本のGDPの約六割ぐらいです、それから外貨の八割以上でしょうか、それから研究開発投資の約九割ぐらいを使う大変巨大な産業でございます。それが、何か知らないうちに負けてしまっている状況がいっぱい出てきましたので、そのことを、技術とか特許をいっぱい持っているはずなのに、何か知らぬうちに負けてしまっている、それはなぜなんだろうかと、こんな話をいたします。
まず最初、エレクトロニクス産業からそれが始まりました。御存じのとおり、パナソニックもソニーもサムソンに勝てないわけです。こういう状況というのは実は十から十五年前に起きたわけですけれども、それはなぜそうなったのかという話ですね。それから二番目は、実はその背後に、一九八〇年代にヨーロッパ、アメリカが産業構造を強制的に変えたんだと。今、榊原先生が小さな政府とおっしゃいましたけど、違うんです、小さな政府がそのころ強烈にあったんですね。それから三番目は、実はそれに呼応しましてアジア諸国が産業政策を変えていったと。この二つが実は影響して日本がなかなか勝てなくなっているという、こんな話をいたします。
じゃ、勝てなくなったのは、そのままじゃ駄目なわけでして、何をすればいいんだろうかということを若干お話し申し上げます。大変大きな資料になってしまいましたけど、実はいろんなデータでお見せしたいと思ったものですから、その方がいいだろうと思いまして、さっさっとやりますので、時間は二十分を守りたいと思います。
まず、二ページ目を御覧ください。黄色で書いた部分。この左側は、実は二十年から三十年ぐらい前の産業でございます。電機産業ですね。携帯電話。右側が現在の電機産業です。左側はいわゆるアナログとか、右側はオープンとかデジタルの世界でございます。例えば、一番上の携帯電話、年間にアナログ携帯電話は三千三百万台でした。ところが、デジタルになりますと一瞬にして十二億台の市場になっています。それから、VTRは最大でも五千万台でした。ところが、DVDは五億台です、年間に。銀塩カメラ、フィルム、これは七十年の時間を掛けまして三千七百万台の市場をつくりました。しかしながら、デジカメは一瞬にして一・三億台です。今日も何か新聞に載っていましたけど、デジカメでもうかりましたというのが新聞に載っていましたけれども。それから、携帯電話に入っているカメラモジュール、二〇〇七年の段階で七億台ですが、現在十億台を超えているそうですね。このように巨大な市場が実はデジタル化とか標準化というもので生まれるんです。
ところが、このとき日本が勝てるかというと、勝てていないと。アジア諸国が強烈に成長しているんですね。
次、お願いします。
ちょっと今言葉で申しましたけれども、実は今申し上げたような巨大な市場の中で、日本の特許というのは物すごくあるんです。それから、技術も強かったはずだと。ところが、なかなか勝てないんですね。だから、結局、研究開発投資が国際競争力に寄与していないと。ですから、科学技術立国とか知財立国という話がありますけれども、実はそれはなかなか競争力に結び付いていないということでございます。
具体的なデータを次にお示しします。
右側の図は、特に液晶の例なんですけれども、アメリカに登録された特許二万五千件あります。このうちの八五%以上が実は日本の特許です。ところが、韓国は一三%ぐらい、台湾は一、二%ですが、実は勝てないんですね。それから、DVDも、日本が基礎技術、研究開発、市場開拓から標準化までみんなやりました。しかし、勝てないんです。勝てない様子を次の五ページに書いています。
この図でお分かりのように、真ん中辺に書いていますけれども、DVDプレーヤーとか液晶パネルというのは、確かに初期のころは日本が圧倒的に投資をしましてプロダクトイノベーションを起こしましたので圧倒的にシェア高いんですが、何か知らぬけれども全く同じカーブ描いて負けてくるんです。今、環境エネルギーで重要なテクノロジーである太陽光発電、これも今は二〇%をもう切っています。半導体もすごいと思ったんですけれども、実は同じようにもっとすごいものがいっぱいありまして、実は、約十年か十五年前からこういうことが起きている。ということは、これ、特定の産業の問題ではないということですね。構造的な問題だということになります。
じゃ、ヨーロッパやアメリカはどうかといいますと、六ページ目ですが、一九八〇年代のアメリカも実は日本と同じような状況に置かれました。IBMなどは、あれだけの基礎研究を一生懸命やって膨大な開発投資をするんです。ところが十五万人の人を首にするんです。そうせざるを得ない状況に追い込まれたと。結局、伝統的な企業制度、フルセット統合型というんですか、こういうものが崩れていきまして、オープンだの分業化だの、こういうことが出てきました。
次、お願いします。
これはごちゃごちゃして大変恐縮ですが、上の方の左側に七〇と書いたのです。ここは石油危機がありまして、御存じだと思いますけれども、長期のインフレと大量失業が止まらないんです。どうしようもない状態にアメリカ、ヨーロッパが置かれたと。
それから二番目。戦後、アメリカは基礎研究に膨大な金をつぎ込みました。いっぱいテクノロジーイノベーションを起こしたんですね。ところが七〇年代、八〇年代になって気が付いてみたら、何か負けているじゃないか、勝っているのは日本とかドイツとかじゃないか、何かおかしいと言い始めまして、盛んにそこから貿易摩擦が起きるわけですけれども。
しかし、アメリカがやったことは、八〇年にレーガンが大統領になったときにいろんな政策をやりましたが、今日の私のお話で関係するのは八一年の独禁法の大幅緩和です。それから、八四年の国家共同研究法。これは、当時は独禁法が非常に厳しいものですから、複数の企業が一緒になって標準を作ったり技術開発すると、これは無条件に独禁法違反なんですね。何か当然の違法と言うんだそうです。ところが、日本は超LSI研究組合で半導体開発しました。それで日本が圧倒的に強くなったものですから、日本だけ独禁法違反じゃなくて何でアメリカが違反なんだと、当然こういうのが起きますね。そこで共同研究法ができて、合理の原則、要するに世のため人のためというんですか、はっきり言えば、アメリカの競争力の強化になるんだったらこれは独禁法違反じゃないと。ただし、プロセスと結果は全部オープンにしなさいと、こういうことなんです。
ですから、ここからいわゆる我々が言うようなオープンイノベーションとか国際標準等がアメリカで出てきます。それまではありませんでした。ただし、分業だのオープンって言ったって、例えば自動車産業だの鉄鋼産業ってオープンなかなかできませんので、それが一番やりやすいのが実はデジタルテクノロジーなんです。したがって、下の方の、黄色で書きましたけれども、デジタル型の産業から、実はすべて自前主義じゃなくて分業構造に全部分解していくんです。ここからIBMがおかしくなるんですね。
次、お願いします。
次はヨーロッパの例ですが、詳細は添付ありますけれども、ヨーロッパも八〇年から実はオープン型に全部切り替えています。現在のヨーロッパのイノベーション、フレームワークプログラムと言いますけれども、約一千億ユーロ、約十二兆円でしょうか、ひところ前でしたら十七、八兆円でしょうか、のお金を使うこういう巨大プロジェクトなんですけれども、これ二つ特徴がありまして、右上の方にありますけれども、イノベーションを起こすのは実はヨーロッパだけじゃなくて、ロシアも中国もインドも起こします。そういうようなイノベーションの成果をヨーロッパに取り込むための手段としてもういろんなインセンティブ制度を付けます。ですから、世界のイノベーションを全部呼び込むわけですね。
それからもう一つ、イノベーションの成果を世界に広げていく手段として、下の方にありますけれども、国際標準化が使われていると。こういう構造になって、その代表的な例が携帯電話。
次、お願いします。九ページ目。
携帯電話の例ですが、携帯電話というと、この一番左下の、我々、ハンドセット、携帯端末だけを言いますけれども、実はいっぱい我々の電波を受けてまとめてくれる基地局というのがございます。基地局を介して、交換機を介して、ゲートウエーという、東京なら東京に一つありまして、ここからニューヨークとかに飛ぶわけです。こういう構造になっていますが、実は彼らが標準、オープンと言ったのは左下の携帯電話の端末だけです。真ん中にあります基地局というところは全くオープンにしていないんです。ところが、この基地局がないと携帯電話のシステム機能しませんよね。ですから、左下のオープンにしたところは中国なんかいっぱい作れるわけです。ところが、基地局のところはヨーロッパだけがみんな握ると、こういう構造。完璧な分業構造です。
その成果がどうなったか。次に、十ページでお話しします。
これは、ヨーロッパではなくて中国市場のヨーロッパの基地局がどれぐらいのシェアを持っているかを示したものです。このブルーで書いたところですが、過去十年以上にわたって八〇から九〇%以上の圧倒的なシェアですね、中国市場でですよ。ところが、中国では携帯電話は何億台も作られるわけです。ですから、工場がいっぱいできて雇用がいっぱい生まれて経済成長するわけです。でも、そういうのが増えれば増えるほど、ヨーロッパの基地局を介してヨーロッパの人がハッピーになる仕組みになっていると。だから、お互いにウイン・ウインでございますね。こういう構造を、実は国際標準を作ってつくりましたということでございます。
次、お願いします。十一ページ目。
じゃ、アジアはどうなっているんだろうかということですが、このように分業型、つまりヨーロッパ、アメリカが分業構造に変わっていったときに、それに合わせた産業政策を取ります。例えば、真ん中に書いていますけど、サプライチェーンの特定セグメントとありますが、例えば半導体なら半導体の製造だけとか、組立てだけとか、こういうようなところに特化した優遇策、それから、研究開発、基礎研究はやらないと、実ビジネスです、市場で勝つためのフェーズでいろんな助成をするわけです。こういうことはテクノロジーがないと幾ら助成したって始まりません。ですから、テクノロジーが伝播しやすいもの、産業だけでこれらは有効になるわけですね。デジタルテクノロジーのいわゆるエレクトロニクス産業が最初にこういう状況に陥ったということです。
次、お願いします。
これは実は生々しいデータでございますが、これは半導体産業の例です。
左下の一九九七年からごく最近の二〇〇六年まで十年間にわたって日本の企業制度を基準にしたときに、韓国のサムソン電子が、例えば右上で、約三千五百億のフリーキャッシュフローでプラス、有利に働いていると。要するに、これだけ次のどんどんどんどん投資できるようなお金が出るわけです。台湾の場合には二千から二千五百億円ぐらい。ところが、同じ時期に、右下に日本を書いていますけど、上位五社のフリーキャッシュフローはマイナス二千億です。これじゃほとんど投資できませんね。したがって、半導体はテクノロジーに負けたのではない、こういう制度設計で負けてしまったんじゃないかと思えてしようがないということなんです。
次、お願いします。
次がDVDの記録メディアですけど、DVDも、これは基礎特許の九〇%以上を実は全部日本が持っているんですね。技術開発も市場も全部日本がやりました。しかし、これを見てお分かりのように、台湾が六三%、製造シェアですね、日本のシェアは、DVDのデの字も知らなかったと言ったら怒られますけれども、そのインドと全く同じなんですね。こういう状況が、実は半導体やこのDVDのメディアだけじゃなくて液晶、固体照明など、ありとあらゆるところで起きます。
それで、じゃ、それが韓国や台湾のGDPにどう影響しているかと。これはGDP、いろいろありますけど、製造業だけに取ったものです。十四ページ目。
これを見てお分かりのように、下の、下にちょっと年号が書いていませんね、済みません、消えています。要するに、九五、六年ごろから、いわゆる電機、電子機器というのがありますね、この産業分野だけが強烈に上がっています、GDPが。これが十年で五倍ぐらいの伸びです。ところが、技術が伝播しにくい一般機械とか精密機械というのはほとんど上がっていないってお分かりですね。つまり、デジタル化されたエレクトロニクス産業で実は韓国、台湾のGDPがわあっと上がっていったと。
次、お願いします。
これは台湾の例ですけれども、台湾も全く同じです。これも、下に年号ありますね。九五、六年ごろからばあっとGDPが上がるんです。これもやっぱり十年で五倍なんです。つまり、デジタル化していったときに国際分業が起きると。そうすると、ヨーロッパやアメリカと呼応する形で、共に一緒に経済成長するような仕組みが何かグローバルにでき上がってしまったと、こういう構造になります。
じゃ、日本の状況はどうかというと、十六ページ目ですが、日本の製造業だけです。横軸に研究開発投資、縦軸に営業利益を取りまして、二〇〇五年、六年、七年の三年間ですが、左下に工作機械、右上のずっと上の方に自動車産業があります。つまり、こういうものはお金をいっぱい使えば当然利益が上がると、これは当然でございます。ところが、右下にありますエレクトロニクス産業、これだけは幾らお金を使ってもさっぱりもうからないと、こういう構造なんです。これは、榊原先生さっきおっしゃったように、要するに製造拠点が海外へ行って、そして彼らが作ると圧倒的に安くなります。そうすると、それが日本に来たりあるいは海外で競争すると、もう絶対勝てないと、こういうことですね。
実はこういうことが、次にお話ししますが、次のページですが、一九九〇年代の中ごろから起きたと。つまり、我々これに気が付いたのはごく最近ですが、よく考えると十五年前から起きていたと。この図は、一九八〇年代からごく最近まで、三十年間にわたってエレクトロニクス産業とその他の産業の営業利益がどう変わったかを書いています。これは、円高があったり、あるいは何かいろんなものが高くなった安くなったといって景気が変わるわけですね。変わっても、いろんなすべての産業は九五年ごろまでは全く同じように変化しました。しかし、九〇年代の中ごろから、いわゆるエレクトロニクス産業だけが営業さっぱりもうからなくなった、それ以外は全然問題ないと、こういうことになります。
問題は、これが、じゃ、エレクトロニクス産業、ソニーやパナソニックだけで済むんなら全然いい、いいと言ったら怒られますけれども、いいですが、実はいろんな産業領域に広がっていると。実は同じことが、左上にありますが、四十年前の、八〇年ごろのカラーテレビでも実は起きていました。実はゆっくり起きていたんですね、アナログの時代には。ところが、九〇年代の中ごろって、今申し上げたように、いろいろデジタル化されると、何か製品が現れるとすぐこういうことが起きちゃうと。
ところが、ごく最近は、右下の方に書いていますが、デジタル化しなくたってどんどんどんどん分業化されると。例えば太陽光発電のパネルなんか日本のシェアは一〇%台になりました。それから、プリンターですらそうなりましたし、乗用車も、いろいろ議論あるところですが、電気自動車になったら間違いなくそうなるだろうと言われますね。それから、もう一つ、インフラ型の産業機械、環境・エネルギー、これも世界中で標準化、標準化と言っていますね。スマートグリッドなんて世界中に二百以上の標準化団体があるそうです。そういうことになりますと、間違いなく右側に行くんです。右側に行くと勝てないんですね、今までのように。こういう状況がどんどん広がってきているということで。
時間がないようでございます。ちょっと最後に。今度、新成長戦略でいろいろ研究開発投資をなさるんだと思いますけれども、日本の得意技というか、そういうものが生きる産業領域をやっぱり集中して強化しなきゃならないと。後でお話ししますが、デジカメとか自動車とか部品材料とか産業機械とかですね。
それから、二番目は、やっぱり我々が嫌だって言ったって、世界中がみんなオープン化とか分業化とかやりますので、やっぱりそういう分業化するんだという前提で、先手を取って国際標準を使ってアジアの成長を日本の成長にリンクさせるようなことをしなきゃいけない。ヨーロッパでこれやっていますので。アメリカもこれやっています。
それから、もう一つ、半導体の産業の例にありますように、製造段階で、研究開発体制ももちろん重要ですけれども、それが本当の競争力に寄与するには、製造段階で優遇措置をしないとこれは勝てないと。あるいは、もう工場が海外へ行けばそれはそれで結構なんですけれども、雇用が失われますのでね。
次のページにデジカメの例を書いています。これ、九六年からごく最近までの十五年ぐらいにわたって、要するにデジカメが強烈な成長をしていったという例、このデータですが、黄色で矢印いっぱいありますけれども、実はこのとき日本が主導して全部標準化をしたんですね。ここの辺からずっと市場が広がっていますけれども、実は大部分は海外市場です。つまり、デジカメはほとんど九〇%ぐらいが海外で売っているんですね。だけれども、日本が圧倒的に強いと。どれぐらい強いかが次のページにあります。
これ、右上の方が実はデジカメで、左下がDVDなんです。デジカメは市場ができてから十何年たちますけれども、日本が製造シェアで六割ぐらい、一眼レフは九五%以上です、圧倒的に日本が強いと。しかも、大部分は海外市場です。だから、これは日本の地方で作っても、つまり雇用がどんどん生まれていくわけです、勝てますので。
ところが、DVDの場合には、どんどんオープン化してみんな作れるようになりますので、中国でいっぱい作ります。日本で作ったら絶対負けますので。そうすると、中国で作ると、先ほど榊原先生おっしゃったように、日本に来る、そうするとデフレが起きると、こういうことになります。こういう状況に我々はいて、DVDのようなやつですと日本の雇用に寄与しないと、こういうことになります。
次のページですが、デジカメのような話は実は極めて少ない成功事例でございまして、成功したものを抽象化して言えば、製品が丸ごとすり合わせ型というか、ブラックボックスとか、こういうものでしたら日本の地方工場で製造してもグローバル市場で勝てると。つまり、研究開発投資が日本の雇用に寄与すると、こういうことになります。
ところが、環境・エネルギー分野で間違いなく国際分業が起きると、世界中に二百も三百も標準化団体がありますので。例えば、スマートグリッド、電気自動車、それから省エネ型のインバーターエアコンですら、もう日本で作るよりも中国で、会社の名前言っちゃいけないかもしれませんが。ですから、多くの工場が海外に行かないともうどうしようもないんですね。それはそれでいろんな議論がありますけど、現実的には日本の雇用に貢献するのは限定的であると、こういうことになります。
では、日本が強い強いと言われた蓄電池が実はこれは危ないというデータでして、この黄色で書いた蓄電池、今、右下の方にありますが、約五〇%ぐらいのシェアです。ごく数年、四、五年前までは日本だけしか作れなかった。日本にいっぱい工場があったんですね。今ほとんど駄目でして、これは五〇%、海外の工場も含めてですから、日本の工場は四〇%切っています。こういうものですらこういうことが起きるんです。
ちょっと、あと二、三分時間いただきまして、二十四ページですが、環境・エネルギー関連の産業で要するに重要施策でお金をいっぱいつぎ込むとすると、やっぱり日本の得意技が生きる産業領域を強化、例えばすり合わせブラックボックスと言われるようなやつとか、それから技術伝播が起きるとそういうことが非常に起きやすい問題ですから、政策的にODAを上手に使うとか、いろんなものを使って政策的にコントロールするということをやることが非常に重要じゃないかなと思います。
二番目は、アジアの成長を取り込む、どうやってやるんだろうという話ですけれども、実は携帯電話の例でありますように、ヨーロッパ諸国が見事に取り込んでいます。今日御紹介しませんけれども、パソコンに使われているインテルのプロセッサーがありますけど、あれも実はアジアと連携して初めてあのモデルができ上がるんです。ですから、アジアが活性化すればするほどインテルが利益がいっぱい転がり込むと、そういう構造になっています。そういうための標準化ビジネスモデルとか知財のマネジメントをやらないと駄目だと。これは企業側の問題でございます。
次、お願いします。
三番目は、先ほど半導体の例でありますけれども、やっぱり製造段階で強力な優遇策をやらないと国内に工場はとても持てないということです。経済特区でもつくらないとアジアとイコールフッティングにならないと。こういうことをあえてやる必要はなくて、そういうの任せりゃいいじゃないかという意見もございます。ただ、日本に工場を造って雇用を守るとするとやっぱりこういうことをやらざるを得ないと。
例えば蓄電池で、自動車用の電池でサムソンが、ドイツのボッシュ、世界最大の自動車部品メーカー、これと合弁会社をつくって、韓国の経済特区で電池の工場を造り始めました。これやると、必ず半導体と全く同じ構造ができますね。だから、日本で工場を造ったら、もしサムソン・ボッシュ連合が日本と同じテクノロジーの近いレベルになったら、日本は絶対かなわないということになります。また、これ繰り返されるということになります。
それから、四番目。優遇策ってお金掛かりますので、皆さんの合意が得られないとすれば、一番目というのはもう得意な領域を徹底して守るとか、二番目というのはアジアの成長を標準化ビジネスモデルとか知財を上手に使って上手にリンクするような仕掛けつくるとか、何かこういうこと、これは企業の問題ですけれども。
最後に黄色で書きましたけれども、実はこういうことをやっぱりやるには、我々なかなか気付かないわけでして、世界中のと書いたつもりなのに「に」となりましたが、日本に社会学者はいっぱいいますので、世界からもいっぱい呼んできて、一緒になって欧米とかアジア諸国の競争力とか産業政策をやっぱり調査分析しなきゃ駄目なんじゃないかと思います。というのは、一九八〇年代にアメリカ、ヨーロッパが相当ひどい目に遭って経済が大変になりましたね。あのときの産業政策、実は日本を調査分析することから始まっています。日本でなかなかそういうまとまったことをやっているところないものですから、もし可能ならやっていただきたいなと思います。
これで終わらせていただきます。