竹田いさみの発言 (海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会)

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○竹田参考人 獨協大学の竹田いさみでございます。
 およそ十年前から、海賊問題に関して研究を重ねてまいりました。マラッカ海峡の海賊研究を手始めに、ソマリア沖の海賊に関心を広げ、ここ数年はイギリス海賊の世界史に取り組んでまいりました。
 このたびは、衆議院の海賊・テロ特別委員会に参考人として出席させていただく機会をちょうだいし、まことにありがとうございます。日本や世界の経済活動を脅かし、船長や船員の命を脅かす海賊問題に光を当て、本委員会を招集してくださった委員長初め理事の先生方に御礼を申し上げたいと思います。
 既に参考人として御登壇された関係者の御尽力によって、海賊の脅威に直面しつつも商船を運航されていることに、一人の国民として感謝を申し上げるとともに、深い敬意を表したいと思います。
 また、現場で汗を流して、二十四時間体制で護衛任務についておられる海上自衛隊員や海上保安官に感謝しつつ、日本の取り組みについて意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず第一に、ソマリア沖の海賊をめぐる国際情勢についてお話しさせていただきます。
 リビア、エジプト、シリア、また北アフリカ、中東情勢が不安定化するに伴い、欧米諸国の海軍は、地中海を重点警備するため、アデン湾から海軍艦艇を移動させております。その結果、ソマリア沖の海賊対策が手薄になるという状況が生まれました。
 加えて、ソマリア本土では、大干ばつによる食料危機が発生しており、日本を初め国際社会による食料支援が行われておりますが、食料の輸送船を護衛する必要がふえ、そのため、ソマリア沖の海賊対策を強化できないというジレンマに陥っています。
 その中で、日本の対応を見ますと、諸外国と異なる点があります。三・一一東日本大震災が発生し、また、東シナ海での領海警備の問題が起きましても、日本は、アデン湾での護衛作戦を縮小したり中止することもなく、安定的に継続しています。
 それでは、護衛の日本モデルについて触れさせていただきます。
 先ほど藤澤組合長の方から御指摘がございましたように、日本の海上自衛隊と海上保安庁が護衛するアデン湾では、海賊によるハイジャック事件が減少しています。アデン湾の東西九百キロから千百キロを、護衛艦二隻、哨戒ヘリコプターで護衛し、さらにP3C哨戒機二機で情報収集、さらに監視飛行をしています。護衛艦には約四百名の自衛隊員が乗り込んでおり、警察権を行使するために海上保安官八名が同乗しています。
 本年七月には、ジブチにP3Cの活動拠点が開設され、より安定的な哨戒飛行も可能となりました。
 私が日本モデルと呼ぶ護衛作戦は、海上自衛隊による高い護衛能力、綿密な計画と持続性、海上保安官による高度な法執行能力によって遂行されている護衛方式です。このため、日本の護衛船団が海賊から襲撃されたことは一度もありません。中国や韓国の護衛作戦では海賊からの襲撃があったことを考えますと、いかに日本モデルがすぐれているかが理解できるかと存じます。
 しかし一方で、ソマリア沖の海賊事件数は増加しているという、極めて皮肉にも事態の悪化があります。ソマリア沖の海賊は、アデン湾を避け、それ以外の海域での海賊行為に拍車をかけています。
 ソマリア沖の海賊の特色ですが、現象面でとらえれば、広域化と悪質化です。活動する海域は、アデン湾からソマリア沖の西インド洋、セーシェル海域、アラビア海へと拡大の一途をたどっております。また、洋上で商船が海賊から銃撃され、ハイジャックされた商船の船員が殺害の危険に直面する事態も発生しています。
 ソマリア沖の海賊は、自動小銃やロケットランチャーなどで武装し、漁船やダウ船を母船として利用し、海賊行為に加担しています。母船に積み込んだ二隻から三隻の小型ボートに乗り込み、洋上で商船を襲撃、ハイジャック、さらに、商船をソマリア本土沿岸に移動させ、船長や船員を人質にとり、高額な身の代金を要求するというのが一般的な手口です。
 最近では、ハイジャックされた商船を母船として悪用するなど、悪質化が目立つようになりました。海賊事件は、季節風が吹く時期は減少するのが一般的な傾向ですが、商船など大型船を母船に悪用すれば、季節風に左右されなくなる可能性も生まれ、海賊事件が今後さらに増加することも懸念されます。
 では、日本の取り組みを取り上げたいと思います。
 第一に、商船の護衛があります。これは先ほど触れましたように、海上自衛隊の護衛艦、それからP3C哨戒機、海上保安官らでの護衛作戦です。
 第二に、外務省が中心に行っている対ソマリア人道支援、治安向上に向けた支援があります。これは、国際機関と連携して、小型兵器の回収、大干ばつによる食料危機への支援、国境管理を強化するプログラムなどへの支援で、人道と治安が柱となっています。
 第三に、今後ますます重要になるのが、ソマリア沿岸国や周辺国への支援だと思います。具体的には、ジブチ、オマーン、イエメン、ケニア、ナイジェリア、セーシェルなどへの支援を強化、向上させ、ソマリア沖の海賊を域内で対処する仕組みを整備することだと思います。
 一言で表現すれば、法執行能力の育成、強化、向上で、キャパシティービルディングと呼ばれる支援枠組みです。人材を育てるプログラムですから、即効性は期待できませんが、中長期的には大きな成果が期待できます。海上保安庁がJICAと連携し、日本国内で実施している海上犯罪取り締まり研修などはその一例だと思います。
 また、中長期的には、沿岸国への巡視艇などの機材供与も視野に入ると思います。人材を育てても、巡視艇などの機材がなければ、海賊の制圧は期待できません。しかし、むやみに機材を供与すればよいのではなく、沿岸国の能力を総合的に向上させることが不可欠となります。そのために、沿岸国のキャパシティーやニーズに関する調査と情報収集が大切です。
 次に、民間財団の活動に触れさせていただきます。
 日本財団と海洋政策研究財団は、海洋の安全航行、安全保障に関して、長期的な視点から、持続的で総合的な支援活動を展開しています。専門家の人的交流、研修プログラムの実施、国際セミナーの開催、奨学金の提供、また海洋安全保障情報週報の発行など、世界的な視野で海賊対策を推し進めるためのインフラを整備されておられます。敬意を表したいと思います。
 しかし、ソマリア沖の海賊をめぐって、新たな課題も浮上してきています。それを触れたいと思います。
 例えば、国際的な法執行体制の整備、ソマリア本土での産業育成、海賊資金フローの遮断、民間武装警備員の乗船などがあります。ここでは、法執行体制の整備とソマリア本土での産業育成に絞って触れたいと思います。これは要望にもつながります。
 第一は、法執行体制の整備です。
 ソマリア沖の海賊を逮捕し、裁判手続を行い、有罪であれば収監する点に関して、現在、国際的な法執行体制の整備が求められています。いずれの国でも、特殊言語であるソマリア語の通訳の確保が難しく、裁判そのものをスムーズに進めることが難しいという現状があります。
 一つの解決策としては、ソマリア沖の海賊が活動するインド洋沿岸国で裁判を行い、ソマリア本土で収監することです。例えばセーシェルなどでは、海外から法律の専門家を招き、裁判を行い、有罪の判決が下った海賊をソマリランドやプントランドなどソマリア北部や北東部に移送し、刑に服させるという手法が考案されるようになりました。
 中央政府が存在しないソマリアですが、地方に複数の自治政府があり、こうした地方政府と連携することで特定の自治政府を立て直す機会にもなります。
 次に、産業育成です。
 ソマリア沖の海賊問題で、最終的な解決策は、海賊が発生するメカニズムを崩壊させることに尽きます。ソマリア本土で青少年が海賊組織にリクルートされ、海賊はふえ続けています。これらの仕組み、雇用を生み出すことによって、青少年が海賊組織にリクルートされない仕組みをつくることが肝要かと思います。
 それでは、最後に四つの要望を申し上げて、発言を終わりたいと思います。
 一、日本の護衛作戦を少なくとも現行レベルで継続していただきたい、二、ソマリア周辺国支援の強化、三、国際的な法執行の整備、そして第四にソマリア本土での産業育成への支援です。以上四点です。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 117703937X00320110823_010

発言者: 竹田いさみ

speaker_id: 6131

日付: 2011-08-23

院: 衆議院

会議名: 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会