田代和生の発言 (外務委員会)

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○田代参考人 おはようございます。田代です。
 本日、宗家文書について説明してくれという御依頼が急にございまして、十分間で説明するのはとても無理なんですけれども、表などを交えながら、簡単に御説明いたします。
 まず、宗家文書というのはどういうものかといいますと、江戸時代、対朝鮮外交、貿易を幕府から委託されました対馬藩宗家に伝わる記録文書類です。日本の古文書はもちろんのこと、朝鮮側の公文書もございまして、これは約一万点ほどございます。
 江戸時代の日朝関係といえば、十二回の朝鮮通信使来日で知られておりますけれども、通常の日朝外交というのは、朝鮮釜山の倭館という日本人居留地で行われておりました。そのあり方というのは、鎖国と言われる江戸時代の常識を覆すものでありまして、実態を知る手がかりはすべて宗家文書によるしかありません。宗家は実務外交をこなすために記録の保管、整備に力を入れたことから、その数量は膨大な量になります。
 お手元にお配りしました参考資料をごらんください。これから現在の宗家文庫、宗家文書の状況と韓国に伝わる保管本の状況について御説明いたします。
 表の左側の方にありますA、B、Cというのは、江戸時代に保管、記録がつくられた場所ということになります。上から対馬の国元、Bが倭館、そして江戸藩邸です。各地で記録、保管、活用が進められましたが、江戸時代が終わりまして、さまざまな事情によって、現在、七カ所に分散されております。
 右の方、上から三つ目のところに韓国国史編纂委員会というのがございます。ここに約二万八千点現存いたします。宗家文書が今現在どのぐらい存在するのかということにつきましては、対馬の保管本が不明なために、約十三万点という概数しかわかりませんけれども、韓国の保管本は二二%に相当いたします。この韓国本は、一九二六年、一九三八年の二回に分けて宗家から朝鮮総督府が購入したものです。総督府が買い上げて、文化事業の一環としてこれが伝わっております。一九八七年、果川というところに新庁舎ができまして、マイクロフィルム化でこれが公開されております。
 今回、図書協定がありましたことから、宗家文書の原本を取り戻せるかどうか、あるいは引き渡しが可能かということについていろいろと議論があると思いますけれども、私は研究者の立場から申し上げたいと思います。
 宗家文庫、特に韓国にあります宗家文庫は、日本にあるほかの本、朝鮮本とありようが異なってあります。これは、宗家文書の韓国へ渡った由来というのが、日本人の手によって朝鮮史を書きかえようという意図のもとで総督府が購入して置き去りになったものです。そういったことで、非常に事情が違っているということで、韓国側のこの資料に対する思い入れは非常に複雑なものがあると思います。
 そのころ、日本の資料で韓国の歴史を見ることなど、タブーで非公開になっておりました。私たち日本人研究者は、一九七〇年代ごろからこの資料の貴重性を説きまして、長い間かけて、目録化、そして公開化を進めていただきました。
 まず、この資料のことについて韓国側に何かを持ちかけるときは、日本人としてやるべきこと、大切にこれを保管管理していただいた韓国側に深い感謝と尊敬の念を抱くべきだと思っております。まずそこからスタートしていただかないと、再び非公開になる、これが研究者が最も恐れるところであります。
 研究者にとりまして、何をやっていただきたいか。恐らくは、原本の取り返し、引き渡しというのは非常に難しいんじゃないかと思います。しかしながら、せっかくこういう機会があるのですから、何か学術資料の情報交換という形で、この宗家記録を日本と韓国との共有資料にできないかということを考えていました。幸いにも、宗家文書はマイクロフィルム化が七〇%進んでおります。これを一括して日本に提供していただける、これが研究者にとりまして望外の喜びであります。現在、この宗家文書へのアクセスは大変困難な状況にあります。しかるべき機関でこのマイクロフィルムを保管管理していただきますと、最も研究者がこれを望むところでございます。
 日朝関係史の研究者は、かつての植民地時代の政策の負の遺産ともいうべきいろいろなものを抱えております。特にこの宗家文書は、韓国でいまだに十分に利用できない状態に置いてあります。この宗家文書、置き去りになっている日本の資料としては最大級のものです。しかし、その交渉の仕方を間違えますと、研究者は再びこの資料から遠ざけられてしまいます。
 どうぞ、この協定を契機に文化交流を一層促進し、そしてアクセスがもっとできるように、特にお願いしたいことは、マイクロフィルムなどの複製資料によって、これに研究者がアクセスできるような環境を整えていただきたいということにあります。
 以上です。(拍手)

発言情報

speech_id: 117703968X00920110427_002

発言者: 田代和生

speaker_id: 27729

日付: 2011-04-27

院: 衆議院

会議名: 外務委員会