堀勝洋の発言 (予算委員会公聴会)

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○堀公述人 ただいま御紹介いただきました堀でございます。よろしくお願いします。
 年金についてお話をしようと思っているんですが、年金は、社会保険料も含めてですけれども、五十兆円もの費用がかかわっております。それから、平成二十三年度の予算案で、年金制度の検討費というのも含まれております。それから、この予算委員会で年金問題についていろいろ御議論があったということで、私の専門が年金ということもありまして、年金について少し立ち入ったお話をしたいというふうに思います。
 レジュメを用意しておりますので、ごらんをいただきたいと思います。
 年金制度の問題、いろいろあるわけですけれども、二〇〇四年の年金改革で財政問題はほぼ解決したというふうに私はとらえております。ただ、基礎年金の国庫負担割合を二分の一にするための恒久財源というものが確保されていない、これが確保されなければ、二〇〇四年年金改革は完結しないのではないかというふうに思います。
 そのほか、無年金者とかあるいは低年金者といった問題がありますし、それから、一たん国会に法案が提出されましたけれども、被用者年金制度の一元化といった問題も残されているのではないかと思います。
 ただ、きょうは、こういった個別の問題に入るというよりは、年金改革について政府は検討されるようでありますので、年金制度全体について、少し研究してきた立場から意見を述べさせていただきたいと思います。
 レジュメでいいますと、第二の制度体系ということでございます。
 現在は、国民年金それから厚生年金と三つの共済年金というものが分立しております。私は、被用者年金、厚生年金と共済年金の制度統合というものが必要だと思います。これは、既に法案は提出されましたけれども、廃案となっております。
 なぜ必要かということです。
 共済年金と厚生年金の間には幾つかの格差があります。この格差は、官民格差の是正ということで何度か改正がなされてきています。ただ、給付について格差が若干残されておりますし、負担についての格差は残っているということであります。こういった給付と負担の格差を是正するというのが一つの目的です。
 それから二つ目は、年金制度を長期的に安定化するという目的であります。
 賦課方式の年金制度というのは、被保険者に対する年金受給者の割合によって財政が決まってくる。財政単位が小さいと、個別の制度は、かつての国鉄共済、JR共済のように破綻することもあり得るわけですね。年金制度についてはできる限り大きな財政単位にすることが望ましいということです。そういうねらいもあります。
 あと、国民の利便性の向上といったこともあります。
 私は、もう年金受給者でありまして、三つの制度を渡り歩きました。それぞれの制度に請求手続ということをする、住所が変わったら三つそれぞれに手続をする、そういった非常にややこしいことになっております。それから、業務処理も効率化できるのではないか。そういったことから、被用者年金制度を一元化すべきではないか、こう思います。
 民主党が提案されております被用者、サラリーマンと自営業者等の年金制度の統合あるいは一元化ということですが、これは本来望ましいというふうに思います。ただし、実現はかなりそのハードルが高いのではないかというふうに思います。これは技術的な点が絡みます。ただ、技術的な面だといって軽視すると、実行した際、いろいろな問題点が出てきて、やり直しということにもなりかねません。
 どういった点が問題になるかというと、一つは、所得概念が違うわけです。
 現在の厚生年金は、標準報酬という、これは総賃金に対して保険料を課して、それに基づいて年金額を計算しているわけですね。ところが、自営業者の所得をどう把握するか。収入だけで判断するのは、必要経費があってそれはだめだ。そうすると、自営業者については、収入から必要経費を控除する。そうすると、サラリーマンはどうするのか。サラリーマンは、税制では給料、賃金から給与所得控除をしたものが所得になっているんですが、果たしてそういった所得の違いを克服できるのか、そういう問題が一つあります。
 それから二つ目は、これはよく言われているんですが、自営業者等の所得の捕捉の問題です。
 大部分の事業者の方はまじめに申告しておられると思うんですが、そうでない方もかなりおられるというふうに聞いております。年金制度がそういった問題を克服できるならよいわけですけれども、所得を低く申告した人が年金制度で得をする、利益を得るということがないようにする仕組みが果たしてできるのかどうか、そういうことがあります。
 現在、社会保障番号あるいは納税者番号というのが検討されているようでありますが、あるいは消費税にインボイス方式を導入すればその問題は解決するかというと、必ずしもそうではないわけですね。というのは、自営業者の所得というのを大まかに言うと、収入から経費を控除したものが所得になるわけですね。経費はある程度インボイス方式なりで明確になると思いますけれども、売り上げについて果たしてインボイス方式を導入しても把握できるのか、そういった問題があります。
 三点目ですけれども、自営業者に対して厚生年金と同じような保険料率を課すと、これは相当な保険料負担になると思います。
 というのは、サラリーマンの場合には、会社、事業主が半分を負担してくれる。ところが、自営業者は、労働者分、あるいは事業主負担分を含めて二倍の保険料を払う。保険料率は一五%を超えますから、果たして負担の増加に対して自営業者の納得が得られるか、こういった問題があります。これらを詰めていく必要があるのではないかというふうに私は思っております。
 それから、レジュメの第三の保障方式というものです。
 保障方式としては、社会保険方式と社会扶助方式があります。社会扶助方式は税方式と言われておりますけれども、これは混乱を招くというふうに思います。というのは、社会保険方式と社会扶助方式の違いは財源が社会保険料か税金か、そういうふうにとられかねない。しかし、基礎年金は国庫負担率が二分の一もあるんですが、これは社会保険方式なんですね。そうすると、基礎年金というのは税方式なのか社会保険方式なのか。これは、税方式と名づけたために間違っているのではと思います。これは社会扶助方式と言うべきで、欧米諸国でも、ソーシャルインシュアランスとソーシャルアシスタンスというふうに言っております。
 その違い、社会保険方式と社会扶助方式の違いは、保険の技術、これはリスク分散の技術を用いるかどうか、それから、保険料を納めた見返りとして、対価として給付を得られるか、そういった点が違うというふうに私は考えております。
 民主党が提案されている案は、二〇〇四年から若干変わっているようで、どの時点の考えをとるかによって少し違うと思いますけれども、所得比例年金と最低保障年金という組み合わせだと思いますが、所得比例年金は社会保険方式、最低保障年金が、これが社会扶助方式かどうか、あるいは社会保険方式か。
 まず、財源は税金なんですが、考え方が変わった後の民主党案では、所得比例保険料を納めなければ最低保障年金も支給しないというふうに変わった。そうすると、保険料を納めなければ支給しないということですから、これは社会保険方式になる。要するに、社会保険としての給付に所得比例年金と最低保障年金がある、こういうふうにも位置づけることができるのかなというふうに思います。
 私は、保障方式としては社会保険方式が望ましいと思います。というのは、社会保険というのは、保険料を納めて老後に備える、あるいは将来の事故に備える、そういうもので、しかも、保険料を納めた者同士で助け合い、相互扶助を行う。それに対しての社会扶助方式というのは、国家が、六十五歳になったら一方的に給付をする。果たして、こういう自助と相互扶助の仕組みの社会保険と、国家が一方的に給付を行う社会扶助とどちらがいいのか、そういった観点から、私は社会保険方式の方が望ましいというふうに考えております。
 それから、社会保障は戦後ずっと拡大されてきたんですが、それは社会保険を中心にしてきたんですね。社会保険というのは、税とは別に保険料という独自財源があるんですね。この独自財源をもとに戦後の社会保障というのは発展してきた、そういうふうに思っているわけです。介護保険も、あれは税でやっていたら現在ほど伸びていたかどうかは疑わしい。介護保険が伸びたのは、保険方式でやった、そういうことからではないかというふうに考えております。
 次に、第四の財源というところに入ります。
 社会保険方式をとれば、財源の中核は保険料ということですけれども、社会保険に税財源が投入されることは幾らでもあります。
 それからもう一つ、社会保険の保険料というのは、年金に使う、介護に使う、あるいは医療に使うということがあるわけですから、何に使われるかわからない税よりも、引き上げについての国民の同意が得やすい、そういうふうに考えております。
 それから、財源という面でいえば、基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げるための恒久的な財源が必要だと思います。平成二十三年度予算では臨時的な財源が確保されたようで、これは評価したいと思いますけれども、恒久財源をどうしても確保する、そうしなければ二〇〇四年改革の前提が崩れる、財政が安定しない、そういうことになると思います。
 それから、その財源として何を持ってくるか、あるいは民主党が提案されている最低保障年金の財源をどうするかということですが、私は、消費税を含めて、税制の抜本改革によって確保すべきであるというふうに思っております。消費税を充てる、特に年金目的消費税を充てる、あるいは社会保障目的消費税を創設する、こういった議論がありますけれども、私は、それに対して疑問というか、問題があるというふうに思っております。
 その理由の一つは、社会保障あるいは年金というのはこれからどんどんふえていくわけですが、ふえていくに当たって、消費税を頻繁に上げていくことが本当にできるのかどうかということ。実は、二〇〇四年改革では、厚生年金の保険料、国民年金の保険料は毎年毎年引き上げるように法定化されました。消費税についてそれができるのか。できるとすれば、財源は確保できるということになろうと思います。
 それから、基礎年金の財源あるいは最低保障年金の財源を消費税で賄うといった場合には、厚生年金の事業主の保険料の負担が減る、その分はサラリーマン、被用者が負担増になる、こういうことが社会保障国民会議で試算されております。こういった問題をどう考えるかということ。
 それから、年金目的消費税、社会保障目的消費税というのは、なぜ目的税にするのかという議論が欠けているように思います。それでは財政再建の財源はどうするのか、あるいはほかの財源、防衛費とか教育費とか、そういう財源はどうするのか、果たして社会保障だけに消費税を充てるという政策が本当に望ましいのかどうか、こういう問題もあります。
 それから、どういう制度を組み立てるかによって違いがありますけれども、現在、三六・五%、これを臨時の財源で二分の一にするわけですが、三六・五%から一〇〇%の税財源を確保するといった場合には、消費税率で約五%弱、これを果たして確保できるのか、そういった問題があると思います。
 それから、第五の給付体系のところに入ります。
 配付した三枚目にこういう図があります。この図をごらんいただきたいんですが、一番上の1は基礎年金ですね。現在の基礎年金に所得比例年金を上乗せする。
 それから2は、私は準基礎年金と呼んでいるんですが、所得比例年金が高い方の年金、最低保障年金あるいは準基礎年金をカットする。民主党は、これは全額税財源ということにしております。最近は、最近というのか、新聞等ではこの定額分を上の方に乗っけた案が出ておりますけれども、その違いはどうなのか、私はよくわからない。
 三つ目の3ですけれども、私は、これが本来的な意味での最低保障年金ではないかと思います。これは、実はスウェーデンでとられている型なんですが、仮に最低保障年金の横線のところを七万円とすると、所得比例年金が七万円を下回るといった場合にその分を補てんする、本来的な意味の最低保障年金だと思います。
 民主党がどの案、2の案か3の案か、どちらかよくわからない面がありますけれども、3の案では、最低保障年金を超えるところは所得比例年金だけになって、基礎年金あるいは最低保障年金はない、それは問題であるので、多分、2の定額年金をその上に乗せた案ではないか、こういうふうに思います。
 私は、その財源を社会保険料と税にするかという問題はありますけれども、現在の基礎年金と所得比例年金の形が望ましいというふうに思っています。というのは、基礎年金で基礎的な生活を保障する、それから、二階の所得比例年金、厚生年金等で従前所得、従前の生活をある程度保障する、そういう形が望ましいというふうに思っております。
 2の案は、全額税でやる。これは保険料から税にかえるわけですが、その財源が確保できるか、そういった問題があるのではないかというふうに思います。

発言情報

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発言者: 堀勝洋

speaker_id: 20343

日付: 2011-02-22

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会