遠藤乙彦の発言 (科学技術・イノベーション推進特別委員会)

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○遠藤(乙)委員 細野大臣に質問させていただきます。
 大臣は大変重大な任務を引き受けられまして、冷温停止作業、そしてまた福島の人々の不安を取り除く作業、大変重大な任務を引き受けられ日夜奮闘されておられることは、私たちも高く評価をしているところでございます。また、世界じゅうがかたずをのんで福島原発の行方に注目をしております。ぜひ、今後ともさらに精励をいただきますよう、心から期待をしたいと思っております。
 そこで、実は私ども、私自身も今議運にも所属をしておりまして、先般、議運としてチェルノブイリ等に調査に行ってまいりました。本来であれば議運は、議会制度調査とか議会交流といった一般的なテーマなんですけれども、今回はチェルノブイリ事故等調査団ということで、議運としてそういった非常に特殊なテーマで行ってきたわけでございます。
 そもそも、先般の臨時国会におきまして、国会に事故調査委員会を設置するという大変画期的なことが決まりまして、その関連で、これは議運が中心となってやってきたものですから、また、今後とも議運が両院合同協議会の形で参画をするものですから、ぜひとも、こういった事故の現場を知る必要があるということで行ってきたわけでございまして、チェルノブイリあるいはまたIAEA等に行ってまいりました。
 この委員会でも、河井委員とか吉井委員も参加をされまして、超党派で十三人の方が行かれまして、大変有益な、またある意味では非常に衝撃を受けた出張であったということでありまして、その所感も含めながら質問をしていきたいと思っております。
 多くの方がほとんど同じような印象を受けまして、私なりにまとめますと三点。
 一つは、チェルノブイリの事故というものが日本で受けとめられているよりはるかに広範に、またかつ深刻な被害が生じておりまして、今も続いているということを改めて認識いたしまして、国際機関等の発表している報告等とは大きくかけ離れている、改めて再調査が必要ではないかということを全委員が痛感したわけであります。これが一点。
 それから第二点に、原発事故の問題。原子力安全といいますと、どうしても原発の構造の安全性、どうしたら事故を起こさないかという面に非常に目が行ってしまいますが、実は、ある意味ではそれ以上に重大なテーマが低線量の放射線が及ぼす健康被害、住民をそういったことからどう防護するか、これが極めて重大なテーマであるということを改めて認識いたしました。現に、数百万の人々がチェルノブイリ関連ではいまだに影響を受けているわけでありまして、そういった問題、これは福島にとっても大変重大なテーマだということを認識いたしました。
 第三に、今までも内外の英知を結集してということをおっしゃっていますが、実態的にはまだ日本国内の枠組みでしかありませんで、場合によってはIAEAも若干動いておりますが、やはりチェルノブイリの経験、これは極めて重要であって、ぜひともこの教訓を最大限に活用する必要があるというのが第三のポイントでございます。
 チェルノブイリの場合には、大変重大な事故、広範に及びまして、避難の問題、除染の問題、あるいは廃棄物処理の問題、参考になるものとならないものとありますけれども、大部分は極めて重大な参考資料として、ぜひともチェルノブイリのケースを我が国としても十分に学習し、また参考にしなきゃならないということを感じた次第でございます。
 私ども、キエフにまず参りましてすぐに、立入禁止になっております三十キロ圏内に許可を得て入りまして、いわゆる石棺のところまで行ってまいりました。第四号炉、コンクリートと鉄で固めたわけでございますが、また、今それの再建が問題になっておりますけれども、三百メートルぐらい近くまで行きまして、六・八マイクロシーベルトという非常に高い放射線を受けながら、短時間ですので防護服は着ていきませんでした。余りいい気持ちはしなかったんですけれども、そこへ行ったり、あるいはプリピャチという、四万数千人の原発の作業員の人たちが主に住んでいた町、今完全に森の中の廃墟になっておりまして、そこを訪問したりいたしました。
 また、キエフにはチェルノブイリの博物館が、これは非常によく資料がまとまっておりまして、特にその中で、当時の映像が残っておりまして、原発の中で、いわゆる作業員の人たちが防護服を着てシャベルを持って、飛散した核燃料を集めて回っている、生物ロボットというふうに言われておりましたけれども、大変ショッキングな映像も残っておった次第でございます。
 さらにまた、さまざまな政府関係者、あるいは被災者の方々とも直接懇談をさせていただきまして、百聞は一見にしかず、改めて、原発事故の厳しさというものを非常に身にしみて帰ってきた次第でございます。
 また、数字としてちょっと引用いたしますと、ウクライナの非常事態省の立入禁止区域庁の長官という方、いわば避難地域の最高責任者の行政の方がおられます。ホローシャさんという方ですけれども、この方ともお会いをしていろいろお話を聞きました。そしてその中で、今においても、チェルノブイリ事故によって障害者がおられまして、ウクライナだけで十一万人の方がチェルノブイリ事故による障害者として認定を受け、今、年金を受け、医療支援を受け、住宅支援等を受けている、後遺症に非常に悩んでおるということを直接その人の口から聞きました。
 また、ロシアで同じような立場の人が四万人、ベラルーシで一万人、合計十六万人の方たちがチェルノブイリ事故の障害者として認定をされていて、後遺症に悩んでいるということを聞いたわけです。
 こういった数字は、今まで日本では知られていなかったかと思いますけれども、大変これは大きな一つの数字ではないかと思っております。
 また、さらにショッキングだったのは、チェルノブイリ博物館で入手しました「チェルノブイリの長い影」という小冊子がありまして、これは特にウクライナの国内の医療関係者たちがさまざまな調査を行って、臨床的な調査、さまざまな例、それを二〇〇六年時点でまとめたものでございまして、それによりますと、要するに、もう大変な形で放射線被害が広がっているという実態が浮き彫りになっておりまして、単にがんだけではなくて、例えば免疫系にダメージを与えることによってさまざまな感染症を誘発している、あるいはまた心臓系の欠陥、その他さまざまな、特に妊娠中の女性に対するさまざまな被害ということが浮き彫りになっております。
 特に、非汚染地域と汚染地域の間で明確な顕著な数字の統計的な差があるということでありまして、必ずしもすべてが放射線の影響と言い切るわけにはいかないでしょうが、明らかに放射線の影響とまず疑ってみるべき根拠が出ておりまして、非常にそういった意味で衝撃を受けた次第です。
 また、その中の一つに、当時その事故処理に動員されたリクビダートル、要するに事故処理作業員とでもいいましょうか、特に二十代から三十代の元気な消防士、あるいは兵士、兵隊さんたちが約六十万人動員をされております。その人たちが、急性の放射線障害で死んだのは三十人ぐらいだったんですけれども、その後続々と亡くなっておられまして、二〇一〇年の段階で、六十万人の作業員の人たちの死亡率が二一・七%と推計をされております。ということは、十二万人強の人が二十五年後までに亡くなっておられるということです。
 この数字は、ほかのウクライナの非汚染地域のその他の勤労世代、エージグループの死亡率の二・七倍であるということでありまして、それから単純に逆算をしますと、本来であれば、二十五年たって今大体四十代、五十代の人たちのはずなんですが、本来の死亡率だったら四万人程度であるのに、それが十二万人だということは、単純に言えば八万人ぐらいが何らかの形で、直接、間接に放射線の被害で寿命が縮まっているということでありまして、これは大変実はショッキングな結果でありました。
 こんなことで、先ほどの総括的な印象を持ったわけでありまして、ぜひとも、こういったチェルノブイリの例を十分に参考にした上で、これからの福島への対応、あるいはそれ以外の地域も含めてやっていく必要があるかと思っております。
 そこで、私の質問に入りますが、やはり、低線量の放射線からどう住民を守るか、そういう視点が極めて重要だと思っております。特にウクライナの場合、旧ソ連の一番知的な中核でありました。旧ソ連の場合には、御承知のように核実験をたくさんやっておりまして、そういった放射線の生体への影響ということが最も実は知見が蓄積をされております。また、実際にもチェルノブイリで被害があったわけで、しかも、ウクライナの場合、非常に学術水準が高くて、非常にそういった強い印象を受けたわけであります。
 そういった人たちの検討結果として、ウクライナの場合、立入禁止の基準あるいは恒久的な移住の対象地域、五ミリシーベルト以上を強制移住、退去の基準にしております。それから、五ミリシーベルト以下一ミリシーベルトまでを、とりあえずは住んでいいけれどもやはり避難した方がいい、もし避難する場合、避難したい人については国が支援する、そういうカテゴリーのランクが設けられております。さらに、一ミリシーベルト以下については、必要に応じて健康監視という形でカテゴリーが設けられております。
 一九九一年二月のウクライナ議会の法律によってこれが制定されて、被災地、被災した人たちへの対処する法律ということで、こういった基準のもとにさまざまな避難措置、あるいは除染の問題とかいろいろなことが体系的に定められております。
 また、ロシアあるいはベラルーシについても同じ基準で適用をされているところでございます。
 そこで、日本の場合、まだこういった恒久的な明確な基準が決まっていない。とりあえずは一ミリシーベルトにまで下げるよう努力をする、二十ミリシーベルトまでは許容できると。一ミリシーベルトまで下げるように努力をするという暫定的な基準は出ておりますけれども、やはりもう少し明確にきちっと、住民の放射線防護という視点から基準を決めるべきではないかというふうに私たちは感じております。
 ちなみに、同じくウクライナの科学アカデミーの会員で放射線防護の専門家の方とも会いまして、話を聞きました。日本政府は、暫定的に二十ミリシーベルトまでは許容し得る、できるだけ下げるように努力はするが、とりあえず二十ミリシーベルトまでは許容し得る、学校も含めてということで、どう思うかと聞きましたら、口をあんぐりあけまして、とんでもない数字だ、これはもう信じがたい、私の孫だったら絶対にそんな学校は行かせない、非常に強い口調でそういうふうに話をされました。
 そのことも非常に印象に残った次第でして、確かに、現場の方々の思い、ふるさとを失った人たちの思い、あるいは生活の基本を失った思いは筆舌に尽くしがたいものがあるかもしれませんが、他方、科学的な基準から見て、放射線からどう防護していくかという点も非常に大事でありますので、この点の恒久的な基準をきちっと早急に決めることが、やはり本当の意味で国民の皆様に安心をもたらす道ではないかと私は考えるわけでございます。
 そういった意味で、この五ミリシーベルト、それから一ミリシーベルト、こういった基準についてどう考えられるか。また、日本としてどのような基準を今後設定していくと考えておられるか。これにつきまして、大臣のお答えをいただければと思います。

発言情報

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発言者: 遠藤乙彦

speaker_id: 22256

日付: 2011-10-25

院: 衆議院

会議名: 科学技術・イノベーション推進特別委員会