横畑泰志の発言 (決算行政監視委員会)
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○横畑参考人 今御指名にあずかりました横畑でございます。よろしくお願いいたします。
本日は、このような機会を与えていただきました皆様に深くお礼申し上げます。
私は、一九九七年より尖閣諸島魚釣島の野生化ヤギ問題について関心を持ち、いろいろな研究活動を続けてきました。近年、この島々に関する関心が非常に高まり、このようなところで発言させていただくようになったというふうに承知をしております。
配付資料がお手元にございますことと思います。六枚つづりのものですが、その最初の三枚を用いまして発表いたしますので、見ながらお聞きください。「尖閣諸島魚釣島の自然の価値とその現状について」というタイトルでございますが、今申し上げました野生化ヤギの問題が最も大きなポイントになりますので、主にこのことについてお話しさせていただきます。
まず、魚釣島の自然の価値について申し上げます。
私はさまざまな生物を研究しておりますが、この島の特徴は、何といいましても固有種、すなわち世界じゅうどこを探してもこの島にしかいないという生物が多いことにございます。
この島は三・八平方キロメートル、東西にわたり三キロメートルという非常に小さな島でございますが、現在、十三種類の固有種と、植物におきまして二つの変種が知られております。ある資料におきましては十種類の固有種というふうに記したものもございますが、これは、表一の上から五番目のオキナワクロオオアリと、その二つ下の等脚類の二種類、これがまだ正確に学術的に新種として記載されていない、報告書などで報告されているだけの段階のものですから、それを除くと十種類ということになりますが、ここでは、いることは間違いないので、十三種類とさせていただいております。
このように、多数の固有種がいるだけではなく、文中にありますように、国内では魚釣島だけにしかいないものというふうになりますともっと、七つほどふえますし、それから、魚釣島が分布の北限である植物が四種、三変種ございます。これは、黒潮という大変暖かい海流の影響であるというふうに言われています。
また、ここは大変離れたところであり、渡航が難しいことから、昔から断片的な調査しか行われておらず、実際に本当にいる固有種はもっと数が多いと考えられています。
そして、特定の種を余り取り上げるつもりはないんですけれども、天然記念物に指定されたアホウドリがかつてはこの島でも多数繁殖しており、後にいなくなってしまうんですけれども、現在でも隣接する南小島等では繁殖しておりますので、今後、環境が安定してくれば、魚釣島でも再び繁殖が見られるようになることが期待されておるということでございます。
ちなみに、私の最も主たる研究の対象にしておりますのは小型哺乳類、わけてもモグラの仲間でございまして、この表の一番上に載っておりますセンカクモグラというのが、私がこの仕事を十何年やってきた一つの動機づけになっております。
次に、なぜこのように固有種が多いのかということについては、括弧二番目の地史的特異性というところに若干の答えがあります。
図の一番で二つの地図が載っております。(一)の更新世前期というのは、百五十万年前という大変古い時代ですけれども、このころには尖閣諸島は、この図でわかりますように、独立していたというふうにずっと考えられてきておりまして、多くの固有種はこの時期に隔離効果によってもたらされたものじゃないかというふうに歴史的には言われてきました。
また、括弧の二番、これは約二万年前ぐらいから始まる最終氷期、一番新しい氷河期ですけれども、氷河期ですから寒くなりまして、海の面は低くなります。そのときに、発達しておりました大陸棚との関係で、中国大陸と独立を失い、政治的じゃないですよ、生物地理学的に独立を失い、このようにつながり、多数の新しい種が入ってきたんだけれども、この最後の氷河期が終わって現在までの一万数千年の間に急速に種分化を遂げたものもあるのではないかと言われています。センカクモグラなどはこの部類に属するのではないかと私は考えております。
そのような、一万数千年というと長いようにお感じになると思いますけれども、生物地理学的には極めて短い時間でありまして、この間の種分化がこんなに起こるということは大変珍しいことでありますので、生物進化の実験場というふうに私はよく申し上げているところでございます。
また、ごく最近は、沖縄トラフが沈降した時代がもっと新しいのではないかという説も出ており、そうしますと、実は、もっともらしく言っておりますけれども、こういう説を根本的に考え直さなければならないという状況も現在では発生をしており、大変謎の深い、広い、多様な謎がある島であると言えます。
したがって、もしここの生物が皆絶滅してしまうということになると、その謎を解く手がかりが一切合財失われてしまうということで、大変影響の大きい島、人類にとって共通の財産、共通の宝とすべき島であると考えられるのであります。
では、二枚目をごらんください。
二枚目は、自然の現状でありますが、ほぼヤギの話です。
大変毒々しい赤い写真が二つありますけれども、これは、きょう都知事もおいでだと思いますけれども、東京都の中にある小笠原諸島、とりわけ媒島という、昔からヤギのいる島がこのようになっているということで、森林が消失し、ヤギの食べない灌木のみが残り、下の赤土がむき出しになり、地上のどれだけいたかわからない固有種は皆消え去ってしまった、多大な犠牲を払った悲しみの島であります。この赤土は海の中にも流出し、このように海が真っ赤に染まり、海底は赤い土で埋め尽くされ、海中の、ベントスといいますか、砂や泥の中に住んでいる生物も皆死滅してしまう。
このように、陸域、海域の生態系にヤギというものは致命的なダメージを与える、人によっては、史上最悪の生物であると言われることもあるようなところがあります。
幸いに、媒島は東京都の努力でヤギが取り除かれましたけれども、魚釣島も、現状を放置すれば、地質的に性質が違うので真っ赤っかにはならないんですけれども、このような生物の大半が絶滅してしまうようなことになりかねないということです。周辺漁場に与える影響も見過ごせないのではないかと思います。
魚釣島のヤギと申しますものは、一九七〇年代に日本の民間政治団体が、日本の領土を持っているということの一つのあかしとして、日本人の関与を示すために放したというふうに言われております。したがって、これを取り除くのは私たち日本国民の責任ではないかと考えます。
現在、この島は、ヤギは何頭いるかわかりません。わかりませんが、九一年の洋上からの視察によりまして、約三百頭のヤギが確認されております。そのときは、出てきたヤギだけを数えたので、また南斜面だけを数えたので、実際にはその何倍もいた可能性もありますし、その後、また長い年月がたっております。このヤギの影響は非常に激しいものと考えられ、私たちは人工衛星や航空写真を使った調査をしてきました。
図三をごらんください。
魚釣島はこのような形をしておりますが、この緑色のところは、木がまだ上に残っていて、地上の様子がわかりません。そして、この黄色のところは、もう木も草も生えていない裸地です。茶色のところは、もともと裸地であった海岸の岩場などであります。この黄色の部分と、一部の赤い部分もそうなんですが、両方合わせると一三・五九%。これの大半はヤギによってできた裸地と考えられますし、こうなってまいりますと、木が残っているものも、木の下はどうなのか。
これはリモートセンシングによってはわかりませんけれども、さっきのモグラも含め、多くの固有種はまさにその部分が大事なんですね。ここは上陸調査してやってみないと、見てみないと、できれば動物を捕まえたりして生息をきちんと確認しないと現状はつかめません。もしかしたら、幾つかの固有種は、最悪の場合、もう既にこの世から消えているのかもしれませんが、まだ十三全部滅びてはいないと思いますので、まだ、早く手を差し伸べれば、救えるものは救えるかと思います。
今の図三は二〇〇〇年の状況ですが、その真下に二〇〇六年の、これも人工衛星画像を加工したものですが、ちょうど空から見たように加工したものがあります。
南斜面にたくさんの薄茶色の裸地が見えます。この中には図三にないものもありまして、二〇〇〇年から二〇〇六年の間にも相当崖崩れが発生していることがわかります。最近、この魚釣島を空から報道したニュースなどを見ておりますと、この剥げた部分が一回りも二回りも大きくなっていますね。このままいくとどんどん裸地は進んでいきますし、リモートセンシングではわからない林床の様子も、どんどん荒れ果てていくのだと思います。
三枚目をごらんください。
これは、ヤギの対策について若干申し述べたものでございます。対策といっても、ヤギですからとればいいんですけれども、これは放したときの頭数がわずか雄雌二頭でありました。ということは、それほどわずかな個体数からでも数百頭に増加してしまう。近親交配などの影響を余り受けないと考えられますので、効果的に対策を施すには、やはり一匹も残さず取り除くというのが一番かつ唯一の方法ですね。そのためにはシステマチックな除去が必要ですので、まず現状をきちんと把握するための上陸調査が必要と考えられます。
リモートセンシングでは、モグラのこととかはよくわかりません。当たり前ですね、土の中に入っているんですから。それで、それには、そこの上から二行目にありますように、小型哺乳類、昆虫、甲殻類等々の専門家が入るということ、それからヤギの影響を評価できる植生学などの専門家が入るということ、それから土壌学などの物理的環境の専門家も必要ですし、ヤギを取り除くというのはそれ自体専門的なことですので、その専門家も必要でしょう。かなり大きな組織が必要だと思います。どういう形でこういうことが実現されるのかは皆さんの御議論をいただきたいと思います。
ヤギの除去につきましては世界各地で実例がありますが、特に画期的な成果を上げているものは東京都でございまして、小笠原諸島の、先ほどの媒島を含む七島嶼で完全にヤギを除去しております。これは九七年以降の、比較的近年のことであります。
この写真にありますように、ヤギがいっぱいいるところ、森がなくなっちゃって、幸か不幸か見通しがいいものですから、この図の五の上の写真にあるように柵を張りめぐらせて、そこに、白い三角の下のところにもやもやとしているのがヤギの何百頭の大群であります。これをこの写真の左側から大勢の勢子さんが追い込んで、この下の二つ並んだおりの中へ追い込むんですね。その結果が下の写真です。このようにしてヤギをとるわけであります。
銃器を持ち込めるとまた違うんですけれども、魚釣島のようなところに銃器をたくさん持ち込むというのはなかなか難しいのではないかと思いまして、このような柵をうまくコントロールに使って、ヤギを誘導していって一網打尽にするようなことは、魚釣島におきましても、森がまだ残っていますので容易ではないと思いますけれども、やればできると思います。
いずれにしましても、上陸調査とヤギの除去に向けて、皆さんの御議論をいただきたいと思っています。
以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)