村岡富美雄の発言 (社会保障と税の一体改革に関する特別委員会)

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○村岡参考人 おはようございます。経団連で経済政策委員会の企画部会長を務めております村岡でございます。
 本日は、私どもの考え方、経済界の考え方を述べさせていただく機会を頂戴しまして、まことにありがとうございます。
 初めに、我が国経済が置かれております状況について手短に申し上げた後に、成長戦略とそれから財政再建を同時に進めていくための方策について、経済界としての考え方を述べさせていただきたいと存じます。
 御高承のとおり、我が国の経済は、本格的な人口減少社会、とりわけ生産年齢人口の急激な減少を迎える中、グローバル化に対応するためのTPP交渉への参加を初めとする経済連携協定は遅々として進んでおらず、二十年にも及ぶデフレからの脱却や、あるいは震災後の電力の安定供給確保、さらには財政の健全化に向けた道筋も展望できておりません。
 経済界は、こうした状況が今後とも放置されるということになれば、国内の産業空洞化が進行し、既に相当落ち込んでおります世界における日本の存在感あるいは国際競争力がますます低下して、日本経済そのものが沈没しかねないという強い危機感を持っております。
 このような問題意識から、経団連は、先月五月十五日、成長戦略の実行と財政再建の断行を求める提言を公表いたしました。これまで経団連が訴えてきました成長促進型の施策の総動員と財政再建への取り組み強化を同時に行うよう、政府や与野党の皆様方に働きかけているところでございます。
 お手元の資料の一枚目をごらんください。
 1の問題意識、これは先ほど申し上げたとおりでございます。
 次に、その下の2、成長戦略の実行と財政再建の断行に向けた具体策でございますけれども、左の(1)にございますとおり、成長戦略につきましては、まずは何よりも早期の実行が必要であるというふうに考えております。
 政府の新成長戦略が取りまとめられましたのは、今から二年前、二〇一〇年の六月でございますけれども、そこで掲げられた施策は、経済界が求める成長戦略の方向性と軌を一にしております。しかし、先般のレビュー結果にもあるとおり、その実現状況は必ずしもはかばかしくございません。
 政府が目標として掲げる実質二%、名目三%を上回る経済成長、この実現は、これまでの政策遂行のおくれから、極めて困難な情勢となっております。新成長戦略で掲げた施策は全てパッケージとして実現していかなければ、こうした目標は達成できないと思っております。
 そこで、具体化が進んでいない施策につきましては危機感を持って速やかに実行に移していただきたいと存じますけれども、デフレからの脱却と持続的な経済成長を図る上で、二の早期実現が求められる施策としてお示しする次の五つの施策については、特に効果的であると考えられますので、優先的に実現をしていただきたいと思います。
 中には、制度的な制約から早期実現が困難と見られる施策も含まれておりますけれども、政策予見性が向上し、将来への展望がはっきりと見通せれば、企業は足元でも、国内への設備投資や雇用機会の創出など積極的な行動のうねりを起こしていくというふうに考えられます。したがいまして、政策の実行を前もってコミットし、中長期的な道筋を明確にしておくことが政策運営上極めて重要となります。
 まず一点目は、震災からの早期復旧復興であります。
 東日本大震災からの早期復興は、企業による創意工夫の発揮と、それから迅速な行動が欠かせません。震災復興に向けた取り組みを経済成長の起爆剤として位置づけ、復興特区を活用し、前例にとらわれない思い切った税、財政、金融、規制、行政上の措置を迅速に講じていくことが重要となります。また、将来的には、復興特区で生まれた成功事例を国内外の他地域、産業にも展開していくことで、東北の復興を日本全体の成長に結びつけ、国際社会における存在感を高めることも可能となります。
 二点目は、事業環境のイコールフッティングの実現であります。
 国内産業の空洞化を回避するとともに、海外からの対内直接投資を呼び込む観点から、まずは、歴史的な円高や、依然として高水準にあります法人実効税率、経済連携協定締結のおくれ、電力供給不足といった企業の自由な活動を妨げる要因、私ども、いわゆる六重苦と呼んでいますけれども、これらを着実に解消していかなければなりません。中でも、法人税や社会保険料を含む企業の公的負担を軽減することで、立地競争力の強化を図ることが不可欠であります。米国、英国において、法人実効税率のさらなる引き下げが現実の課題となっていることにも留意をすべきであります。
 二〇一二年度の税制改正によりまして、我が国の法人実効税率は恒久的に五%引き下げられ、同時に、三年間の復興特別法人税が加算されておりますが、その終了を待つことなく、さらなる減税への道筋をつけていくべきであると考えます。特に、地方法人特別税につきましては、税制の抜本改革までの間の暫定措置であり、消費税率の引き上げとあわせて速やかに廃止をしていただきたいと存じます。
 三点目は、イノベーションの促進であります。
 イノベーションは、生産性のさらなる向上や潜在的な需要の喚起など、新たな成長の源泉を生み出します。イノベーションの創出、加速には、企業の潜在能力が最大限発揮されることが前提となりますけれども、そのためには、我が国経済社会のあり方を、イノベーション創出に親和性の高い体質に変えていかなければなりません。
 まずは、第四期科学技術基本計画で掲げられました政府研究開発投資対GDP比一%、総額二十五兆円、この目標の着実な実現や、研究開発促進税制の拡充、イノベーション創出を担う人材の育成など、イノベーション促進策の実行が不可欠であります。
 四点目は、規制改革を通じた国内需要の発掘であります。
 規制改革を通じて国内の新たな需要を発掘し、需給ギャップを解消していくためには、とりわけ農業、医療、都市・まちづくり、この三分野におきまして大胆な改革を進めていく必要がございます。
 まず、農業分野では、競争力強化、成長産業化を図るため、農業生産法人の構成員要件など農地保有規制の緩和や、農地の集積、有効活用に向けた税制、財政、金融面での支援が求められます。
 医療分野では、医療関連産業の生産性向上と競争力強化に向け、遠隔診療要件の緩和や、特区における株式会社の診療領域の拡大、現在政府でも検討されておりますけれども、ドラッグラグ、デバイスラグの解消などが欠かせません。
 都市・まちづくり分野では、例えば、区分所有建物に係る管理組合総会の決議要件の緩和や借地借家法の正当事由の見直しにより、老朽化した建築物の建てかえ、大規模修繕、再開発や、木造密集地域等における耐震化、不燃化に向けた合意形成を促すことが考えられます。
 五点目は、海外需要の取り込みであります。
 アジア新興国へのパッケージ型インフラ輸出や、二〇二〇年のFTAAP構築を視野に入れましたTPP交渉への早期参加、観光振興への取り組みなどを通じまして海外需要を積極的に取り込むことで、国内の需給ギャップを解消していくべきと考えております。
 経団連は、これらの成長戦略の施策をパッケージとして総動員するとともに、右にお示しをしています(2)の財政再建を着実に実行することにより、経済と財政との間に好循環が生まれると考えております。
 財政再建に向けた取り組みとしまして、第一に、消費税を中心とした安定財源の確保と、医療、介護、子育て、年金といった社会保障各分野におきます給付の効率化、重点化を含む1)の社会保障と税の一体改革が急務であります。
 資料の二ページ目をごらんください。経団連が五月二十四日に公表しました提言、「社会保障・税一体改革の着実な推進を求める」の全文をお示ししております。
 本文の一にございますとおり、消費税法等改正法案は、一体改革を歳入面から担保するものであり、我が国財政に対する国際的な信認を維持するためにも、まずは今国会の会期中に確実に成立させることが不可欠であります。
 ただし、同法案では、さきに述べました法人実効税率のほかにも、積み残しの課題が多数ございます。住宅の取得に係る負担軽減措置、燃焼関係諸税とのタックス・オン・タックスの排除、車体課税の簡素化、負担軽減、印紙税の負担軽減等につきまして、早期に成案を得て、確実に実施をしていただきたいというふうに考えております。
 なお、消費税につきましては、少なくとも今回の改革においては単一税率を維持していただきたいと存じます。
 次に、社会保障制度改革につきまして、その下の二にお示ししておりますように、現行の政府案は、給付の効率化、重点化あるいは財源の見直しが不十分な内容にとどまっております。今後も国民的な検討を深め、社会保障の自助、共助、公助、このバランスを見直し、成長や雇用創出と両立する持続可能な制度へと抜本改革を行うべきであります。
 また一ページ目にお戻りをいただきたいと思います。給付の効率化、重点化の具体策として、例えば、医療・介護分野における給付費の自然増を経済成長率以下に抑制することや、子育て分野では、児童手当の支給対象、金額を見直すことが求められます。さらには、年金分野では、デフレ下でのマクロ経済スライドの発動も重要であります。
 また、現在、中期財政フレームに基づき、基礎的財政収支対象経費に対して約七十一兆円の歳出キャップが設定されておりますが、それだけでは、抜本的かつめり張りのある歳出抑制を図る上で不十分と言わざるを得ません。そこで、2)の新たな歳出プログラムとしまして、一定期間の歳出キャップを社会保障、公共投資、人件費など主要な費目ごとに設け、抑制を働かせる仕組みを導入すべきであります。
 最後に、以上で示した政策を一つのパッケージとして断行する改革推進ケースにつきまして、経団連のマクロ経済モデルを用い、将来試算を行いました。資料の三枚目をごらんいただきたいと思います。
 経済成長率につきましては、二〇二〇年度以降、実質二%、名目三%程度で推移をし、公債等残高の対名目GDP比は二〇二〇年代半ばに二五〇%程度で頭打ちとなります。さらには、産業空洞化が抑制されるということで、雇用者数は、成長戦略や財政再建を全く行わない現状放置ケースに比べまして、二〇二〇年度に約百万人増、二〇二五年度には約百五十万人増となります。
 こうしたことからも、成長戦略の実行と同時に、年金を初めとする社会保障制度や財政に対する国民の将来不安をスピード感を持って払拭するということが極めて重要であると存じます。
 私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 村岡富美雄

speaker_id: 24511

日付: 2012-06-08

院: 衆議院

会議名: 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会