西沢和彦の発言 (社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会)

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○西沢公述人 日本総合研究所の西沢です。
 本日は、今この委員会に出されています年金二法案とこの委員会ではない一法案の計三法案と、あと、今後の課題について意見を述べさせていただきたいと思っております。委員長から忌憚のないということでしたので、忌憚なく申し上げさせていただきたいと思います。
 まず、(1)、お手元にA4縦の資料がありますが、低所得者への年金加算がございます。これについて、私は基本的に反対です。
 なぜかと申しますと、最低保障機能という目的自体は大いに賛同いたします。これは、今駒村さんからお話があったとおり、高齢者の貧困率というのが高まっていることは事実でありますし、生活保護へ流れ込んでいることも事実である。ただし、低所得者加算をすることによって、やはり公平性の低下と高齢期の勤労をディスカレッジ、ちょっといい日本語が見つからなかったんですが、することは看過できないと思います。
 例えば、一生懸命基礎年金を払って若干の厚生年金の上乗せがある人といったものが、もらえない可能性がある。高齢期に少しパートをして収入を得た、恐らくこれは税法上の給与所得だと思いますけれども、六十五万を上回った給与収入があった人はもらえなくなる可能性があるといったことを見過ごすべきでないと思うんですね。
 これは、国会や霞が関でお互い意見を闘わすというよりも、私がお勧めするのは、日本年金機構の年金事務所の窓口の方ですとか市町村の窓口の方、あるいは社労士の窓口の方に、果たしてこういった制度が説明がつくのかといったことを、現場で実際に年金受給者の方々と接する方に聞いてみるのが一番だと思います。
 そうしたときに、例えば、一生懸命働いて年金を払ってきた方が窓口に来て、私はもらえるんですかと聞かれたときに、窓口の方が、いや、これはあなたはもらえませんと言われたときに、ああ、政府に裏切られたという気持ちになると思うんですね。
 ですので、政治的にメンツをかけて低所得者加算の取り下げを議論するよりも、現場の方に聞くといった新しい情報を仕入れて判断をされるのが一番であるかと思います。
 二番目に、高所得者に対する年金額の調整でありますが、これも、現下の苦しい財政状況のもと、少しでも国の税収を、財政を潤そうという気持ちはよくわかりますが、年金の中でやるべきでないと思うんですね。これは、できれば公的年金等控除の見直しですとか、税制の枠組みの中で対処すべきであると思います。
 政府・与党の社会保障・税一体改革大綱の中には年金等控除についてかなり記述がありますが、下げるとも上げるとも言えないような曖昧な記述になっていますけれども、ここは、一旦、公的年金等控除を引き下げるという方向で、高所得の高齢者の方には負担を負っていただく方向で再度調整すべきであるかと思います。
 三つ目に、短時間労働者への厚生年金適用拡大。これは、まさに政策目的は妥当であると考えますが、やはり、標準報酬下限九万八千円を下げることによる国民年金との公平性の低下といったことも看過できないと思います。
 ただ、この法案にはいいところがありまして、今、厚生年金の適用基準というのは、かつての厚生省の年金局の課長から現場向けの手紙、内簡で処理されているんですね。ですから、労働時間の四分の三というのは法律でも何でもなくて、課長の手紙にすぎない。これを法律に明記するといったことは、ぜひやるべきであると思います。
 ただし、九万八千円を七万八千円に引き下げるのは私は反対であり、かつて、二〇〇七年に被用者年金一元化等法案が出されたときも、この九万八千円は維持されたんですね。レジュメの次のページに引用してありますけれども、当時、私は社会保障審議会年金部会の委員をさせていただいておりまして、年金局の課長に質問しました。当時の課長も、やはり不公平、不均衡はあるというふうにおっしゃっていましたが、昨今、これは厚生年金の中での所得再分配の強化なので問題ないといった旨の発言をされていますけれども、私は、説明が一貫していないと思っております。
 総じて、この最低保障機能の強化の法案というのは、政策目的は妥当であると思いますが、現行制度のもとでそれを実現しようとすることによって制度にゆがみが生じるといったことがあると思います。ですので、私は、現行制度のままでいいとは全く思いませんし、今政府が目指されている方向性といったことはわかりますが、それは、現行制度の修正で行うのではなくて、新しい制度をつくるというところに向けられるべきであると思っております。
 被用者年金一元化等法案でありますが、これは、一歩前進ではあっても、国民の目から見まして、完全に一点の曇りもない一元化であるというふうには見られないと思います。
 一つ目に、積立金の仕分け方法が合理的ではありません。今、単年度の一、二階部分の支出割合に共済も合わせると言っていますけれども、年金は百年間均衡して初めて年金財政になりますので、これも、二〇〇七年の当時はチェックが行われていましたけれども、百年間を通じてこの積立金を一、二階で共有財源にすれば間に合うのかといったチェックが国民の前に提示されるべきであると思います。
 単年度で四・二年分ですか、あればいいというものではなく、この法案というのは、一歩前進なんですけれども、この法案が仮に通ってしまうことによって、一、二階外に切り分けられて共済年金に残る積立金が既得権になってしまう可能性があるんですね。ですので、一、二階の切り分け財源をよくよく慎重にチェックすべきであると思います。
 共済組合の事務組織が存続するというのも、結論が性急過ぎるというふうに私は思っております。
 法案の説明では効率化の観点からと書いていますけれども、効率性の観点からいいますと、管理は日本年金機構に、積立金の運用はGPIFに移管するのが合理的であるわけであります。確かに、イニシャルコストはかかるかもしれませんけれども、その後のランニングコストもあわせて考えると、日本年金機構、GPIFに統合した方が効率的かもしれません。
 よって、存続と、GPIF、日本年金機構への統合との両者が比較検討された上で、ではやはり存続しようというならわかりますけれども、そういった検討がないまま、効率的であるから今のままにするというのも、なかなか納得できないところがあると思います。
 この法案では、結局、事務組織を残すことによりまして、厚生年金一号、二号、三号、四号というのが登場してしまうんですね。例えば、我々民間サラリーマンは一号、共済の方は二号、三号、四号となってくるわけです。
 例えば、国民の皆さんに、いや、一元化しました、今度、共済の方は二号になります、三号になります、四号になりますといった説明をしたときに、国民の多くが一元化しましたねと受けとめてくれるかということであります。何かおかしいことをしているんじゃないか、共済が既得権を存続しているだろうという温床になると思います。
 ですから、できるだけ制度をシンプルに、一元化するというのであれば、一号から二号、三号、四号などという区分けを持たずに、全て厚生年金の加入者として加入するというのがあるべきであるかと思います。
 この委員会には法案が付託されていないようでありますが、特例水準の解消というのはぜひやるべきであると思います。
 レジュメには書いていませんけれども、交付国債に関しては、私はどちらでもいいと思っています。赤字国債の交付国債でも。マネーが入ってくるわけではありませんので。
 ですので、そうして今国会に提出されている法案を見ますと、この委員会に付託されているものの中では、被用者年金の適用拡大に関しましては、九万八千円を下げるべきでなく、ただし適用基準は法律に明記すべきである。低所得者加算に関しては、ぜひ現場の方の声を聞きながら議論を進めていただきたいというふうに思います。
 今後の課題でありますが、年金制度の改革をする際に、大きく二つの課題があると思います。
 一つは、年金財政であります。
 これは非常にしんどい作業でありまして、二〇〇四年改正のときに、当時の自民党、公明党の皆さんが、国民の批判を浴びながら、負担を上げ給付を下げる非常にしんどい作業をされてこられた。これがまず第一の課題であり、さらに続けなければいけないと思います。
 ただ、少し気になりますのは、確かに、年金財政が破綻しているという表現は行き過ぎであるかと思いますけれども、決してこのまま安泰であるとも言えないわけであります。
 二〇〇九年の財政検証の経済前提については賛否両論があるところかと思いますが、私はやはり甘いと思っています。甘いと思っていますし、実際、二〇〇七年の当時、民主党の皆さんは甘いと強く批判されていたわけでありますが、昨今、野田首相を初めとして、いや、百年均衡していますというふうに、ころっと変えられるわけですね。
 ですので、私はそこに非常に強い不信感を持っているわけです。そのまま貫いてほしかったわけですね、二〇〇七年のを。できれば、そのとき財政検証をやり直して、その上で支給開始年齢引き上げなどの議論に進まなければおかしかったわけであります。
 ですので、年金不信というのは、確かにメディアや我々研究者の行き過ぎた発言などもあったと思って、それは反省しなければいけませんが、批判しながらその後も貫かないといった姿勢にも求められると思いますね。
 マクロ経済スライドが二〇〇四年に入ったわけでありますけれども、これは見直すべきです。デフレ下で機能していないものを機能するように。この委員会でも何度も出ていると思います。
 少し私のマクロ経済スライドに対する見方を申し上げますと、これは政治家の方が国民に給付抑制をなかなか言い出しにくい、国民もそれを受け入れるだけのまだ成熟度に達していない中で、厚生労働省年金局の官僚の方がこういった舞台装置を準備してくれたんですね、マクロ経済スライドですと。名前を聞いても何だかよくわかりませんね、でも実態は給付の水準の抑制なんですということであります。
 ですから、本当は、政治家の先生方の皆さんと国民の間の成熟度が高まって、これだけの負担をしなければ給付はできないな、これだけの給付のためには負担が必要だなということを理解されれば、こういった官僚の方に余計な仕事をしてもらわなくても済んだはずであります。そこまでさかのぼって、負担と給付の仕事を見直しすべきであると思います。
 一方で、五ページ目に書いてありますが、仮にマクロ経済スライドが適用されますと、駒村先生が言われたように、基礎年金が大幅に下がっていってしまいます。これは非常にゆゆしき事態でありまして、確かに給付は抑制しなければいけない、けれども基礎年金まで給付抑制してよかったのかという話はあるわけです。
 これは、根本に立ち返りますと、基礎年金が何のためにあるのかといった意義が不明確であることに一つ理由が求められると思います。これは八五年の年金改正の中で、基礎年金法という法律をつくるのではなくて、国民年金法の改正で基礎年金を導入しているといったこともその象徴かと思いますが、基礎年金は一体何のためにあるのかといったところから説き起こしていくことも必要であるかと思います。
 六ページ目以降に、今度は制度の抱える諸構造への課題でありますが、だんだんちょっと時間もなくなってまいりましたけれども、少しだけお話ししますと、私、先ほど申し上げましたとおり、現行の年金制度のままで、例えば第三号ですとか無年金、低年金あるいはパート適用拡大に対応できるとは考えていません。ですから、政府・与党が目指されている新年金制度の中でそれを解消しようという方向性は、非常に賛同するものがあります。
 ただ、それがスウェーデン型となると、ハードルが高いと思います。ですので、課題がある、新年金制度を目指そうというところまでは私は大いに賛同しますが、ソリューションがスウェーデン型でなくていいと思うんですね。
 ちょっと時間が参りましたので、これ以降のことについてもしあれば、質疑の中で申し上げたいと思います。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 西沢和彦

speaker_id: 4626

日付: 2012-06-12

院: 衆議院

会議名: 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会