菅家功の発言 (社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会)
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○菅家公述人 連合で副事務局長を務めております菅家です。このたびは、貴重な発言の機会を与えていただいたことに感謝申し上げます。
私たち働く現役世代は、保険料拠出者であると同時に、将来の年金の受給者でもあります。
本日は、働く仲間を代表いたしまして、今回の一体改革の中で示されている年金制度改革につきまして意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
まず、年金制度改革の必要性について述べたいというふうに思います。
昨年は、日本の皆年金の五十周年でした。日本の公的年金は、高齢化の進展に伴い社会保障給付費の五割の五十三兆円に上り、国民生活と日本経済に占める役割は極めて大きなものになっております。
また、ミクロベースで見ましても、六割の高齢者世帯が年金収入だけで生活しているなど、年金制度は、今や国民の老後生活を支える基盤として必要不可欠な存在となっております。
一方で、足元の経済情勢の不透明さや、年金記録問題などの制度上の諸問題などと相まって、年金制度に対する不信感が増大していることも指摘できます。
二〇一〇年度における国民年金保険料の納付率は、過去最低の五九・三%と五年連続で低下しております。特に、若年層の納付率の低さは深刻で、二十歳代は五割を割っております。
若年層の納付率の低迷は、高齢期における低年金者や無年金者の大量発生を意味し、旧社会保険庁の調査では、将来、百十八万人の無年金者が発生するというふうに推計されております。こうした現状で、本当に国民皆年金を達成しているということを言えるのでしょうか。
また、九〇年代の雇用労働分野の規制緩和と長期にわたる景気の低迷で、非正規労働者は今や全労働者の四割近くに達するなど、ワーキングプアの増大、格差拡大が進んでいます。
しかしながら、社会保険は基本的に非正規労働者の存在を念頭に置いた制度となっていなかったため、非正規の短時間労働者は厚生年金と健康保険に入ることができず、全額自腹で保険料を払わざるを得ないということになっており、結果、平成二十年の国民年金の被保険者に占める労働者の割合は約四割に達しているわけであります。
このように、非正規労働者は、正規労働者との間に、賃金、労働条件で大きな格差がある上に、社会保険でも大きな格差があるのです。これを放置すれば、現役そして老後にまで格差が続く、まさに格差の固定化とも言える社会問題を惹起することは必定です。
年金制度に対する国民の信頼を取り戻すためには、年金制度を働き方や雇用形態に中立、公平なものにすると同時に、生活に必要な給付が確保されるようその機能を強化することが必要です。そして、こうした公平で機能強化された年金制度が将来にわたって持続可能とするため、不断の改革を行っていくことが重要であるというふうに考えます。
政府・与党の年金制度改革法案の評価について述べたいというふうに思います。
今申し上げました観点でいえば、今回の社会保障・税一体改革で実現を目指す年金制度改革には、年金制度の公平性確保と機能強化、そして持続可能性を確保するための改革項目が盛り込まれており、確実に実現すべきであるというふうに考えます。
私は、安心と信頼の国民皆年金を維持するために、今回の改革は確実に実現すべきだというふうに思います。
政府そして与野党は、政治の責任で、国民の老後生活の重要な基盤である年金を政争の具とすることなく、法案を確実に成立させていただくことをまず要望させていただきます。
こうした視点に立ちまして、本日は、年金機能強化法案と被用者年金一元化法案について、基本的に賛成の立場から意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
まず、短時間労働者への社会保険適用拡大についてであります。
先ほども申し上げましたとおり、現在の社会保険制度は、週労働時間三十時間未満の労働者には適用しなくていいとされておりますが、こうした働き方によって受けられる社会保障が異なり給付と負担の両面に格差があるということは、働く立場からすると全く納得ができません。
雇用が不安定な者が、年金や医療保険といった社会保険が正規労働者より不十分というのは、余りに理不尽ではないでしょうか。リスクの高い人を排除せずに社会連帯でカバーするという社会保険の理念に立ち戻り、社会保険の適用対象者を拡大すべきです。
労働時間で社会保険の適用対象を限定することで、社会保障制度が非正規労働者をつくり出しているということも言えます。また、専業主婦の短時間労働者を多く雇用する業種の事業主負担をその他の業種が負担しているということにつながりかねないことから、いびつな所得の移転が行われているというふうにも言えます。こうした点からも、社会保険の適用範囲は早急に見直すべきだというふうに考えます。
私どもは、雇用保険の適用対象となっている週二十時間以上の労働者は、原則全て社会保険の適用対象とすべきというふうに考えております。
今回の法改正におきまして、短時間労働者独自の要件といたしまして、賃金、勤務時間、企業規模要件が設けられたことにつきましては、こうした観点からは極めて残念であります。勤務時間につきましては、通常の労働者と臨時雇用者、そして短時間労働者、それぞれに異なる要件が定められることになり、トリプルスタンダードによって事業所で混乱が予想されます。また、企業規模につきましては五百一人以上という、中小企業の要件とも異なる新たな基準が設けられ、企業間の競争条件にも影響が出ることが懸念されます。
しかしながら、今回の適用拡大は、日本の社会保険制度の長年の課題であった適用範囲の見直しに風穴をあける第一歩になるものであり、確実に成立をさせていただく必要があるというふうに受けとめております。
また、法施行後三年以内に短時間労働者に対する適用範囲をさらに拡大するための法制上の措置を講ずるとの附則の規定を確実に実行し、全ての雇用労働者の社会保険適用に向け、さらなる改革を断行していただくことを強く求めたいというふうに思います。
次に、基礎年金国庫負担二分の一の恒久化について意見を述べさせていただきます。
年金制度の持続可能性を確保するためには、今回の年金機能強化法案に盛り込まれました基礎年金国庫負担二分の一の恒久化を絶対に達成すべきというふうに考えます。
基礎年金国庫負担は、二〇〇〇年の年金法改正で〇四年までに二分の一に引き上げると附則に明記されながら実行されず、二〇〇四年の年金法改正で、改めて〇九年度までに二分の一に引き上げ、それに必要な安定財源を確保する税制改革を行うことが附則に明記されました。しかしながら、税制改革は実施されず、何とかこの間やりくりして臨時財源を確保してきたというのが実態だったのではないでしょうか。
もはや、臨時財源で毎年財源を捻出することは困難であることは明らかであります。国庫負担二分の一の確保は、年金制度を安定的に維持する上で不可欠であり、直ちに安定的な財政基盤を確立しなければならないというふうに考えます。
二〇〇四年改正の長期安定スキームは、国庫負担の引き上げが前提となっております。その意味でも、基礎年金国庫負担二分の一の恒久化と、その財源確保のための税制抜本改革を着実になし遂げていただきたいということを強く要望させていただきます。
また、二〇一二年度の基礎年金財源確保のための国民年金法改正法案は、二月十日に国会に提出されたまま審議が進んでおりません。この法案もあわせて成立させていただくようお願いいたしたいというふうに思います。
次に、最低保障機能の強化について意見を述べさせていただきたいと思います。
今回の改革内容には、低所得者加算や高所得者の年金減額といった内容が盛り込まれております。この点について、こうした事柄を社会保険の制度内で行うべきではないという議論があることは承知しております。
しかし、冒頭に述べましたように、現役世代に低賃金である人が高齢期も低年金になるという格差の固定化、再生産が今や社会問題化しているのであります。
こうした低年金問題を完全に年金制度の枠外に置き去りにすることはよいのでしょうか。むしろ、高齢者に対する防貧の役割を高める観点から、年金制度の所得再分配機能を強化することは望ましい方向だというふうに考えます。
もちろん、基礎年金財源の半分は保険料でありますので、保険料拠出者の納得性と、保険料納付意欲を阻害しない方法で行うことが必要であります。
今回の加算方法は、免除期間に応じた加算と定額加算をあわせた方法となっておりまして、防貧機能と保険料納付意欲への配慮、そして保険料拠出者の納得性のバランスを考慮した方法であるというふうに評価できると考えております。
次に、被用者年金の一元化について述べたいというふうに思います。
被用者年金の一元化につきましては、省庁間での協議のみで今回の法案がまとめられた点は極めて残念でありますけれども、年金制度の公平性確保のための第一歩として確実に実現する必要があるというふうに考えます。
雇用の流動化や働き方の多様化が高まっている今、ライフスタイルや職業選択に影響を与えない公平な社会保障制度を構築すべきであり、職業によって所得保障の内容や保険料率が異なる現行の被用者保険制度は適当ではないというふうに思います。
国民の年金不信を払拭するためにも、公平性を高めることは重要であり、ぜひとも今回の一体改革の中で被用者年金の一元化を実現していただきたいというふうに考えます。
この法案では、約四十五兆円ある共済年金の積立金につきまして、厚生年金の積立金の水準に見合った額、四・二年分の支出にたえ得る分を共通財源として仕分け、残りは制度が廃止となる職域部分の財源に充てるとされております。しかし、各共済年金と厚生年金は制度の成熟度が異なっております。
共済年金の積立金は、一元化する前の保険者ごとに不公平感がなく、同一の給付水準の厚生年金給付が将来にわたって安定的に行われるよう仕分けなければなりません。その意味におきまして、この積立金のあり方につきましても検証が必要だろうというふうに考えているところでございます。
最後になりますけれども、本日、幾つかの課題について指摘をさせていただきましたが、今回の改革だけで年金制度の公平性と機能強化、そして持続可能性確保が完全に達成できるわけではありません。
しかしながら、真の国民皆年金制度実現に向けた第一歩として、今回の年金改革法案を含む一体改革関連法案を成立させていただき、さらなる改革を行っていただきたいというふうに思います。
加えまして、年金制度は、ほかの社会保障制度、そして非正規雇用対策などの雇用政策と密接に関連するものでありますので、年金制度のあり方を考える際には、これらの関連政策と足並みをそろえて、一体的に見直しを進めていくことが肝要でございます。そうした社会保障制度の側における一体改革の視点に立った改革論議とその具体化が前進するよう最後に要望させていただき、私の発言を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)