曽根泰教の発言 (政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会)

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○曽根参考人 ただいま御紹介いただきました慶應義塾大学の曽根でございます。
 私がきょう申し上げますことは、かなり一般論でございます。ただし、この一般論を御理解いただくと、その後の議論が円滑に進むというふうに理解しております。
 最初に申し上げたいことは、四点に関しまして、時間の制約がございますので簡潔に申し上げたいと思います。
 まず、公職選挙法に関しましてさまざまな解釈がございますが、公職選挙法の趣旨を、私といたしましては、政党及び候補者と有権者のコミュニケーションを円滑にするためのルールというふうに解釈いたします。定義を変えるということでございますが、今まである定義を拡張するということでもございます。
 というのは、今までどちらかといえば、べからず集、既に何度も御議論されてきたことですが、ある意味で、普通選挙法以来の規則が、建て増し、増築をしてきた老舗旅館のように非常に複雑な形になっていて理解しにくい。これは、議員立候補者の方からも国民からも言われていることでございます。それを、一言で言えば抜本的に変える必要が、時期としてはあるだろうというふうに思っております。
 そのときの原理は何かということを一言で申し上げると、フェアプレーだと。公平な競争、公平な手続ということでゲームを行うというふうに考えております。そういう意味でいえば、小学生、中学生にもわかるようなルール、それは、政治の世界のゲームもスポーツの世界と同じようにフェアプレーで行うんだ、そういう原理に立ち返れば、わかりやすいルールであることが必要になろうと思います。
 それで、まず第一に申し上げたいことは、現行法の一番のネックというのは、選挙運動期間という概念を設けて、それを政治活動の期間と区別し、選挙期間のみ適用する仕組みになっている、この区別を廃止することが必要であるということをまず申し上げたいと思います。
 これは、選挙運動の期間ということで、選挙活動と政治活動を区別するんですが、両者はいかなる理由で区別可能なのか。政治活動そのものが選挙活動、あるいは選挙活動そのものが政治活動、なかなか実態としては両者を区別することは難しいだろうと思います。
 そこで、この区別を廃止するということをまず最初に申し上げたいと思います。それによってかなりの法律が必要なくなるというふうに思います。
 そうすると、現在行われている選挙期間というものは一体何になるのかということになるわけですが、これは選挙公営の期間であるというふうに理解して、ほとんどの規則を政治活動ということで統合するということを考えております。
 このことと、先ほど申し上げました、政党、候補者と有権者とのコミュニケーションを円滑にするという、むしろ積極的にコミュニケーションを促進するということを政治活動、選挙活動の骨子とする考え方からいけば、現行法にある文書図画利用の制限、選挙期間中に配れるものが限られているとか、文書図画の配布というものの範囲あるいは枚数の限定というようなことが除かれるわけですね。これが自由化されるわけだし、あるいは、戸別訪問というものが禁止されていることが解禁される。あるいは、公開討論会というものもかなり制約を受けながら現在行われているわけですが、これも自由化される。
 さらに言えば、ここ何年か皆さん御議論されてきたネット選挙、インターネット、電子メール等の電子機器を利用した選挙活動あるいは政治活動というものを早期に解禁するという結論になるわけです。
 そういう意味で、まず第一点目として申し上げるのは、先ほどの選挙運動期間と政治活動の区別をなくすということと同時に、コミュニケーションを円滑にする手だてとして、今申し上げたようなことの自由化あるいは解禁ということを考えております。
 そのことは、実は政治資金規正法にも関係してくるわけです。
 政治資金に関しては詳しく申し上げませんけれども、原理原則でいえば、これまた手足を縛るような法律のつくりになっていると思いますが、私自身は、クリーンハンド、あるいは李下に冠を正さずという言い方もございますし、もっと別の表現をすれば、制度倫理的な意味でいえば利益相反の禁止、一般的な原則を理解すれば何が禁止されているかがわかるような、そういうつくりの方がよろしいと思います。
 さらに言えば、寄附、政治献金というものの寄附の文化を根絶やしにする必要はないというふうに思っております。
 具体的には、政治会計というものを創設して、そこに一元化する。現行法ですと、政治資金管理団体、政党支部あるいは政治団体というふうにそれぞれ分かれている資金が一元管理される方がよろしいというふうに思っております。
 そういう意味でいいますと、先ほどの区分をなくすということは、選挙運動費用というのを政治資金の方に組み込む、公職選挙法上の選挙運動費用を政治資金規正法に統合する、こういう理解でございます。
 それをどこに届け出るか、どこが管理するかというようなことは、選挙・政治資金委員会というようなもの、これは現実にはまだないわけですけれども、仮称として、こういうものを創設したらどうかというふうに考えております。
 四点目、選挙制度に関しましても、さまざまな選挙制度の試案あるいはアイデアが出ております。
 現在出ております三つの大きな争点というのは、一票の格差是正、定数削減、抜本的な選挙制度改革というものが出ておりまして、この三つを同時に解決することは可能なのかというのが、多分、きょう今日も議論されていることだろうと思います。
 最初の一票の格差是正問題というのは、これは憲法上の問題でありまして、次に行われる選挙が違憲であるかどうかということが一つの論点であります。憲法が想定するものと現実の政治の競争が一致しているかというと、全てがそうだとは思いませんが、最低限、憲法的な枠組みの中で競争が行われる必要があるというふうに理解しております。
 その中で、一人別枠方式というもの、言ってみれば、これはハンディキャップをつけて競争を行う。プロとアマが一緒にゴルフをやるときにはハンディキャップがあった方がいいわけですが、プロ同士の試合はハンディキャップは必要ないわけで、言ってみれば、政治家が競争するときにはプロ同士の試合であるわけです。ただし、特に地方、地域の格差、東京あるいは首都圏に比べてやや優遇措置をとらなければいけない、だからこそ一人別枠方式だという議論がございますが、これは憲法論のたてつけとしては少し難しい議論と思います。
 というのは、もし選挙で選出された国会あるいは国会議員が、地域格差、所得格差の是正を行うことができないのであるならば、ハンディキャップ説にも根拠があるんですが、現実には、政策的手当てとしてこの是正措置は過去もあるいは現在も行われている。例えば、人種、言語、宗教のような、きょうの少数があしたの多数になれない、こういうような現象があるとするならば、それは選挙制度で手当てをする必要があるでしょうけれども、この場合は、政策的な手当てというものは不可能ではないわけです。そういう意味で、ハンディキャップをあらかじめつくる必要はないという憲法的な解釈には根拠があると思います。
 そこで、定数削減が今論点になっておりますが、消費税の増税の前にやるべきことがあるだろう、しかし、定数削減の前にやるべきことがあるだろうということがもう一つ重要であります。
 それは、選挙制度の改革というのは、政治システムあるいは政治状況の競争関係を変更することであります。
 その場合の政治システムあるいは政治状況というのは何かというと、例えば政権交代が起きやすい、あるいは単独政権になるのか否かとか、二大勢力あるいは二大政党の競争か多党制なのか、代表概念で選挙制度を考える立場と、多様な意見の反映という考えで選挙制度を考える立場の違いがありますし、ここでは衆議院を議論しておりますが、参議院との関係を考えずに選挙制度の設計は無理と思います。このような政治的な状況を理解した上で制度変更、制度設計をすべきというふうに思います。
 そういう意味で申し上げれば、まだ、現在の衆議院の選挙制度というのは、制度設計の理念あるいは制度の意図というのはわかるわけでございます。それに比べて、参議院及び地方議会の選挙は意図がなかなか読み取れないところがございます。
 現在の衆議院の制度を変えるときにどういう原理が必要なのかといえば、これまた、先ほど申し上げましたように公平性の原則が必要になってくる。つまり、現状の変更に際しまして、特定の政党、特定の候補者が有利になったり不利になったりしないこと。
 ただし、これをもし貫きますと、現状維持、例えば現行制度並立制を、小選挙区制の方を何議席か減らし、比例代表のところも何議席か減らす、例えば一〇%ずつ両方削減するというような意見は、現行の変更においてはそれほど大幅な変更にならないわけですが、現状維持になりやすい。ありきたり、あるいはめり張りがきかないと言ってもいいかもしれません。
 そこで、もう少し考慮すべきというのは、現状における不都合な部分の修正であるとか、あるいは、先ほど言いましたように少数党を配慮する、ハンディキャップということをどこまで考慮するか、こういうようなことが必要になってくるだろうと思います。
 ただし、この制度のときにも、実は考慮すべきことというのはたくさんあります。つまり、財政的な理由の議論から選挙制度というのを設計していいものだろうか。つまり、定数削減というのは、専ら財政あるいはみずから身を削るということから議論が主張されておりますけれども、必要なのは、いかなる政治的な政党間の競争関係あるいは政治システムを想定するかであります。
 そういう点で、この設計の際に出てくる幾つかの案を考慮した際に、現状の手直しで済むのか、あるいは大幅な変更なのか、この二つの選択肢の中でとるべき道はどこかということ、これが最終的には選択されることだというふうに理解しております。
 そういう意味でいえば、最低限、一番目の一票の格差の是正は早急に行うべきである、しかる後に定数削減及び選挙制度改革を、つまり、短期で見る改革なのか、中長期で見る改革なのか、あるいは抜本改革をするべきなのか。先ほど申し上げました選挙運動期間とか政治活動の区別を廃止するというのは、これはもう抜本改正です。ただ、できない改正ではないと思います。
 そういう意味で、抜本的なものを今の時間軸の中で一歩一歩進めていく、こういうふうに考えるのが一番妥当な、あるいはわかりやすい改正方法ではないかというふうに思います。
 以上で、私の発言を終わりたいと思います。(拍手)

発言情報

speech_id: 118004577X00320120523_002

発言者: 曽根泰教

speaker_id: 12095

日付: 2012-05-23

院: 衆議院

会議名: 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会