佐藤康博の発言 (郵政改革に関する特別委員会)

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○佐藤参考人 おはようございます。全国銀行協会会長を務めております、みずほフィナンシャルグループ社長の佐藤でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、私ども民間金融機関、金融界に意見を述べる機会を設けていただきまして、まことにありがとうございます。
 それでは、郵政民営化法改正案につきまして、全国銀行協会の意見を述べさせていただきたいと思います。
 私ども民間金融界は、これまでも、郵政改革が利用者や社会経済にとってよりよい形で実現するよう、国会も含め、さまざまな場所で意見を申し上げさせていただいたところでございます。
 昨年十二月にも、全国銀行協会、全国地方銀行協会、信託協会、第二地方銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、JAバンク、JFマリンバンクで構成する郵政改革を考える民間金融機関の会が、郵政改革の実現に向けて一致団結して取り組むことを決議し、共同声明を出しました。その内容は、郵便貯金事業の縮小によりまして、将来的な国民負担の懸念を払拭し、民間市場への資金還流を通じて、我が国経済の発展を図るため、適正な規模への縮小、民間金融機関との公正な競争条件の確保、そして郵政三事業間の適切なリスク遮断といった要望事項を盛り込んだものでございます。
 翻ってみますに、郵便貯金事業は、一八七五年にイギリスを範として産業振興の資金調達などを目的とした国営事業として創業され、民間金融機関の発展が十分でなかった時期において、国民に簡易で確実な少額貯蓄手段を提供してまいったわけでございます。さらに、こうして集めた資金を財政投融資制度を通じて社会資本の整備や企業などへの資金供給に活用するなどの役割を果たしてまいりました。
 しかしながら、戦後から高度成長期を経て、郵便貯金の預け入れ限度額は、一九七二年には百万円から百五十万円に、以降三百万円、五百万円、七百万円、そして一九九一年には現在の一千万円まで引き上げられております。
 このように、郵便貯金は、預け入れ限度額の引き上げを繰り返してきた結果、一九七〇年には十兆円未満であった郵便貯金残高は、一九八五年には百兆円、一九九五年には二百兆円、一九九九年には二百五十兆円をそれぞれ突破いたしました。その後、残高は減少に転じましたが、二〇一〇年の約百七十五兆円は、個人預貯金の約二三%を占め、メガバンク平均残高の約四倍の水準となっているなど、簡易で確実な少額貯蓄手段を提供するという制度本来の目的を大きく逸脱して肥大化をしております。
 諸外国と比べましても、郵便貯金が大手の銀行よりも多額の預金残高を有するといった状況にある国はどこにもございません。例えば、イギリスでは、イギリス最大の民間銀行であります香港上海バンク、HSBCの預金残高約九十九兆円に対しまして郵便貯金残高は約十二兆円、フランスでは、BNPパリバ銀行の預金残高約六十三兆円に対しまして郵便貯金残高は約十六兆円など、諸外国に例を見ない規模を有しております。アメリカでは、御承知のように、既に一九六六年に郵便貯金は廃止されており、ドイツでは郵便貯金銀行の民営化がほぼ完了するステージまで来ております。
 一方、日本経済が成熟し、市場を通じた資金配分の重要性が高まったことから、二〇〇一年四月には財政投融資改革が実施に移されました。その原資でございました郵便貯金についても資金運用部への全額預託義務が廃止され、財政投融資の原資を集めるという民間金融機関にはない郵便貯金事業の特別な役割課題は終了したものと認識しております。
 こうした背景を踏まえまして、二〇〇七年十月に郵政民営化が行われましたが、その本来の目的は、国際的に類を見ない規模に肥大化した郵便貯金事業を段階的に縮小し、将来的な国民負担発生の懸念を減らすとともに、民間金融市場への資金環流を通じて、国民経済の健全な発展を促すことであるというふうに認識しております。
 したがいまして、一定の政府関与を残したままで郵便貯金事業の規模、業務範囲の拡大を指向する郵政改革関連法案にかわり、本国会で郵政民営化法改正が議論していただくようになったことは、本来の改革の目的にかなったものであると考えております。今般御審議される改正法案では、日本郵政グループ金融二社の株式は、「その全部を処分することを目指し、」「できる限り早期に、処分する」ことが規定され、金融二社を最終的に完全民営化するという改革の方向性は維持されたものというふうに理解しておるところでございます。このような規定を踏まえまして、日本郵政グループにより、金融二社を早期に完全民営化するための具体的かつ真摯な取り組みが示されるものと期待しております。
 次に、改正法案を御審議いただくに当たり、よりよい形での郵政改革の実現という観点で、二点お願いを申し述べさせていただきます。
 第一点は、新規業務規制の問題でございます。今般の改正法案の中で、新規業務規制に関しまして、金融二社株式の二分の一以上処分後は届け出制へ移行するとされている点につきまして、私ども民間金融機関にとって極めて問題が大きいと考えております。
 本来、ゆうちょ銀行の新規業務規制は、経済、社会の情勢及び民営化の進捗など全体状況を踏まえた上で、そのあり方が判断されるべきでございます。このため、政府関与がなくなる完全民営化までの間、ゆうちょ銀行の新規業務規制には、中立公正な第三者機関である郵政民営化委員会による適正かつ厳格な事前の調査審議を含む認可制が基本として維持されるべきと従来より申し上げてまいりました。
 今回、一定の政府関与が残されたままで届け出制に移行すると、他の民間金融機関との適正な競争関係が担保されず、ゆうちょ銀行の業務範囲拡大が民業の圧迫につながるのではないかということが懸念されます。したがいまして、ゆうちょ銀行に政府関与が残る間につきましては、業務範囲の拡大に対しまして、他の金融機関との間の適正な競争関係にぜひ御配慮いただきたいと考えております。
 具体的に申し上げますと、新規業務規制につきましては、公正な競争条件を確保するために、ほかの金融機関に対する影響がないことや、その際にどのような措置がなされたかを届け出書上に盛り込むなどが必要になるのではないかというふうに考えておるところでございます。
 また、ゆうちょ銀行が完全民営化するまでの間は、郵政民営化委員会が非常に重要な役割を担うことになるのが明確でございまして、同委員会が第三者機関としてしっかりと機能するよう、十分な御配慮をお願いしたいというふうに思います。
 二番目の点でございますが、預け入れ限度額の問題でございます。預け入れ限度額に関しましては、暗黙の政府保証を背景とするゆうちょ銀行の規模再拡大が、理念として郵政民営化の本来の目的に逆行するばかりではなくて、民間金融市場秩序の混乱を通じて、他の民間金融機関に影響することが懸念されます。このため、民主、自民、公明の三党による御協議にて、政府関与が残る期間は、その限度額を当面は引き上げないとされたものと認識しておりますけれども、今般の御審議の中で改めて明確にしていただきたいと考えてございます。
 本日は、貴重なお時間を頂戴しましたので、民間金融機関を代表してるる申し上げましたが、改正法案の御審議に際しましては、私が申し上げましたこうした点についてぜひ十分御配慮いただいた上で、ゆうちょ銀行に政府関与が残る間、適正な競争条件が確保されないままで、ほかの民間金融機関の業務を圧迫することのないよう、適切な制度設計を図っていただくことを重ねて心からお願い申し上げます。
 今回の改正法案の提出に際しまして、冒頭に申し上げました昨年十二月の共同声明の趣旨にのっとって、各業態とも声明を出しているところでございます。
 最後になりますが、ゆうちょ銀行が郵政民営化の所期の目的に沿って完全民営化されることによりまして、私どもと同じ民間金融機関の立場で、よりよい形で競い合い、お互いが切磋琢磨していくことにより、お客様に対する金融サービスのさらなる向上や我が国金融市場の健全な発展に大いにつながると考えてございます。
 簡単ではございますが、以上で私からの意見表明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 118005258X00320120410_002

発言者: 佐藤康博

speaker_id: 9080

日付: 2012-04-10

院: 衆議院

会議名: 郵政改革に関する特別委員会