古川貞二郎の発言 (行政監視委員会)
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○参考人(古川貞二郎君) 御紹介をいただきました古川貞二郎でございます。大変失礼でございますが、着席のまま御説明をさせていただきたいと思います。
まず、このような機会を賜りまして深く感謝いたします。
私どもに与えられたテーマは行政改革と制度改正、制度の問題、行政制度の問題ということでございますが、必ずしも御趣旨に沿うかどうか分かりませんけれども、私が感じているものを率直に申し上げたいと思います。時間は二十分以内ということでございますので、一応レジュメを用意いたしましたので、レジュメに沿って申し上げたいと思います。
御案内のとおり、中央省庁再編から十年以上が経過しております。改革の意義、目的につきましてはもう御案内のとおりでございますが、内閣機能の強化、それから大くくり再編による縦割り行政の弊害打破、それから透明性、効率性、簡素化というようなことが目的であったと思いますが、今日なおいろいろ課題が多いというふうに思っております。
私は、合算しまして約十五年にわたりまして、内閣参事官、それから首席内閣参事官、内閣官房副長官といたしまして総理官邸に勤務いたしております。特に、副長官といたしまして五代の内閣の下で八年七か月勤務いたしておりまして、その間に特に感じたものというものについて申し上げたいと思うんですが、それは行政組織ないしはシステム自体と人材、運用の三位一体の重要性でございます。
望ましい行政を展開するためには、行政組織自体が優れているということは当然といたしましても、それを担う人材そして運用いかんによっては相当程度この成果が左右される、まあ生きもすれば死にもするというふうな、そういう実態があろうかと思います。どんなに優れた組織であっても、それを担う人材に人を得ず、運用がよろしくないと、国民のために良い政というものは実現しないのではないかなということを実感しておるわけでございます。
まず、そういったことを前提といたしまして、行政組織についてでございますけれども、先般の再編は内閣官房の強化ということが一つであったわけでございます。一言で申し上げれば、国政の重責を担う総理大臣がいかにリーダーシップを発揮できるか、そのための体制づくりというものがこの内閣官房に関しては重要であろうと思うわけでございます。つまり、内閣官房は、総理の文字どおりの手足といたしまして、国政の総合戦略の拠点であるわけでございます。
先般の改革では企画立案権の明確化などが図られたわけでございますが、戦略性を持って機動的に動くということが望ましいことでございますので、内閣官房の在り方は、総理や官房長官のお考えとか、あるいは運営次第というような側面もあるということを申し上げたいと思います。
具体的な内閣官房の強化といたしましては、官房副長官補の政治任用化、それから総理補佐官の増員、これは三人から五人、それと、再編よりちょっと前でございましたが、少し早めに内閣危機管理監が設置されたわけでございます。
なお、官房副長官は、橋本内閣までは政治家、国会議員の方と行政出身の二人体制、それが小渕内閣から政治家の国会議員の方がお二人と行政出身一人という三人体制に変わっております。
さらに、重要なことでございますけれども、総合戦略の拠点としての内閣官房でございますが、これを補佐する知恵の場といたしまして内閣府が設置されたことでございます。具体的には、経済財政諮問会議とか総合科学技術会議というそういった、その他にもございますが、そういったものがいわゆる知恵の場として戦略拠点としての内閣官房を補佐すると、こういう仕組みであったというふうに思います。
課題といたしましては、主として運営の問題であろうかと思うわけでございますが、指揮命令と責任体制の明確化ということが一つあろうかと思います。東日本大震災などの対応、これは中におりませんのでひょっとして誤解があるかも分かりませんが、外で見ておりますと、この指揮命令と責任体制が不明確であるということが見受けられたわけでございます。何々本部とか参与とかの方がたくさん総理官邸に入られたやに承っておるわけでございますけれども、私の経験その他で考えますと、総理官邸、内閣官房というのは、総理、官房長官を中心に少数精鋭の体制、そして指揮命令系統と責任の関係がより明確であるというのが望ましいのではないかと思うわけでございます。
二番目は、危機管理体制の強化ということでございますけれども、一つは、危機管理体制の強化のために設置された危機管理監の姿が、東日本大震災の対応に当たりましてはほとんどその姿が見えなかったような感じがするわけでございます。私は、政治主導ということでございますが、危機管理監という専門のそういう職種につきましては、これを使いこなしたら、もっと使いこなしたらいいんではないかというふうに思うわけでございます。
なお、もう一つ問題は、危機管理体制に関しての問題は、国家の危機というのは、大きく、国防上の危機とそれから自然災害あるいは大事故、そういったものがあるわけでございますが、国防上の危機につきましては、現在の仕組みでは、内閣官房副長官補、安全保障担当が担当をしている、総理、官房長官の指揮下で担当しているわけでございます。
ただ、初期におきましては、不審船等々で見られますように、国防上の問題につながるものなのか、重大な事件、事故、重大な事故ということで終わるのかというようなことが不分明でございまして、国防かどうか、そういった不分明な点がございますので、内閣危機管理監と安全保障担当の副長官補の役割といいますか、その点については更に整理する必要があるものというふうに感じております。
次は、内閣情報体制でございますが、情報というものは、御案内のとおり、多元的に集めて一元的に管理することが鉄則でございます。的確、迅速性と、それからもう一つは、重大な情報問題でございますから守秘が必要でございます。私は、そういった点で、この内閣の情報体制というものは更に検討して工夫を凝らしていく必要があるのではないかというふうに考えております。
それから四番目は、内閣総理大臣補佐官と内閣補佐官ということでございますけれども、現在の仕組みは、内閣補佐官ではなくて内閣総理大臣補佐官ということでございます。これは非常に大きな違いがあるわけでございまして、内閣補佐官ということになりますと、各省大臣や内閣府の各大臣との権限を整理する必要があるということでございます。
そういうことで、行政改革におきましては、内閣総理大臣の補佐官、つまり総理大臣の目であり耳であり鼻であると、そういうようなことで、専門職、経済だとか外交とか防衛とか、そういった専門家ということを総理の言わば耳目として置くということが趣旨であったと思います。もちろん、政治家の方が、国会議員の方が補佐官になられることは一向に差し支えないわけでございますが、本来の趣旨は内閣補佐官ではなく内閣総理大臣補佐官としたところが一つの特色であったというふうに思います。
次は、内閣府の関係でございますが、内閣府につきましては、内閣官房を助けて内閣の重要政策に関して各省の施策の統一を図るための企画、調整を行う知恵の場としての位置付けでございます。それからもう一つは、賞勲行政、国民生活行政などの実施事務というのが内閣府の役割でございますけれども、率直に申し上げまして、内閣府の仕事が多様過ぎまして、府としての一体性に欠ける状態になっているということでございます。
それから、特命担当大臣が今現在八人、八つ特命担当があるというふうに伺っておりますが、大変安易と言ったら語弊がありますけれども、たくさん簡単に任命されている嫌いがありまして、内閣官房の特命担当と合わせると相当の数に上っているということでございますが、特命担当大臣を置く場合には、各省との関係など組織運営上の原則を明確にする必要があるのではないかと思っております。そうしませんと、特命ということで、対外的には、国民的には非常に重要政策が進んでいるかのように見えるわけですけれども、各省庁の権限との関係で、逆に責任の所在が不明確になってくるというような嫌いもございますので、そういった点が指摘されようかと思います。
それからもう一つは、再編の目玉であった経済財政諮問会議等の重要政策会議が活用されていない状況でございます。もちろん、経済財政諮問会議に代わって国家戦略会議が代替機能を果たすということであろうかと思いますけれども、十分果たしていないのではないかと。また、総合科学技術会議は、例えば今回の原発事故に活用されているかどうかいささか疑問ではなかろうかというふうに思います。
次、総務省でございますけれども、総務省は政府全体の組織定員の管理、人事行政、行政評価等々、ここに書いているような巨大官庁でございます。
内閣府との関係につきましては、内閣府に調整事務の全てを担当させ、また実施事務を担当する外局の多くを内閣府に設置するということとなりますと、内閣府の組織が膨大なものになって、総合調整機能に支障を来すおそれがある、こういうことから人事、組織管理、それから行政監察事務等については総務省に担わせるというふうなこととされたわけでございます。
ただ、課題といたしましては、これも率直に申し上げますと、自治省、それから郵政省、総務庁と、行政内容が異質過ぎる三省庁を統合したことは論理必然性に乏しいのではないかと。分野が違い過ぎて組織体としての統一が大変難しい状況になっておりますので、特に自治関係と郵政関係は非常に異質でありますので、こういった点については、時間が掛かるかも分かりませんが、しかるべき時期に見直すということも必要ではなかろうかというふうに考えております。
それから、行政の役割でございますけれども、政と官の役割分担で、これも本当、原理原則的なことを申し上げまして恐縮でございますけれども、右肩上がり経済の時代は、いわゆる毎年増える所得、果実をいかに適正に配分するかということが行政の中心的な役割であったと思うわけでございます。右肩上がり経済というものが終わってまいりまして、もう新たな国民のニーズということは出てまいるわけでございますから、それにこたえるためには法律の改正をする、あるいは制度改正するという、こういった力仕事が必要になってくるわけでございます。まさにこの力仕事というのは政治の仕事でございまして、政治主導というのはある意味でいうと今日当然であろうというふうに思います。
それでは、行政、公務員はどうなのかということでございますけれども、これは、行政は専門知識を活用して政治に対しまして選択肢を提示するということとともに、政治がある政策について方向を決めた、政治が決断した場合にはその政策を忠実に執行する、そういった役割が公務員にある、行政官にあろうというふうに思うわけでございまして、政と官は相互信頼に基づく役割分担に応じて両輪相まって行政を遂行していく、国家国民のために遂行すると、こういう役割ではなかろうかというふうに思います。
それから、次は四辺回路と、まああえてこういう新しい言葉を使っておりますけれども、私は、やはりいい政が行われていくためには、総理と各閣僚、それから官邸における総理、官房長官と事務担当の副長官等、それから各省における大臣等政務三役と次官、官房長、局長等事務方、それから官邸における事務担当副長官と各省次官、この四つの回路というものが相互信頼に基づきまして情報とそれから対処方針を共有するということは、いい政を行っていくためには絶対に必要なものだというふうに感じているわけでございます。それが必ずしも十分ではないというところは一つの問題かと思います。
それから、事務次官会議のことでございますけれども、これはもうつとに言われていることですが、改めて申し上げますと、事務次官会議の役割というのは大きくは三つございまして、一つは、法案が総理等の方針に違わないかどうかの確認行為でございます。例えば年金法の改正とか有事法制とかというような重要な法案が閣議で総理が初めて見るということはないわけでございまして、中身については十分総理が了解し決断されたものを法制局で法案の形にして、それが違わないかどうかを確認していたと。それは閣議という政府としては最終、最高の決定機関の前にそういったことが事務的にチェックをしていたということで、それが官僚が主導しているというふうな誤解がなされたかと思うんですが、その法案等の確認行為が一つ。
それからもう一つは、総理、官房長官の指示伝達のシステムであったわけでございます。伝言ゲームに見られるように、一人一人にものを話しますといろいろ違ったニュアンスでものが取られるわけでございますけれども、一堂に各省の事務方のトップが集まったところで、総理、官房長官の指示を官房副長官が伝達する、守らなければどうして守らないかということを釈明させるというような、そういう指示伝達のシステムであったわけでございます。
それからもう一つは、情報や対処方針の共有システム。といいますのは、次官会議が終わりますと、各省に戻りまして、次官は幹部を集めまして、そして次官会議では自分はこういうことを案件話したよと、それから各省では主な案件こういうのがあったよということを幹部に伝える。それから、幹部は、局長等は今度は翌日なりに各課長を、局内の課長を集めて次官からこういう話があったよというようなことで、そういうことを通じて各省庁の幹部が、自らの省務はもちろんのことでございますが、各省庁の動きを承知する仕掛けになっていたわけでございますが、これがなくなったことによって、情報や対処方針が新聞、テレビその他で見るような形になって、共有のシステムというものが壊れたということがございます。
それから、事務次官会議は、明治十九年以降、法律に根拠がない組織にもかかわらず、百二十三年も有効に機能してきたわけでございまして、これを民主党政権は、発足に当たりまして、事務次官会議が恐らくは官僚主導の象徴だとみなされたかと思うんですが、議論もされることなく、つまり法律の根拠がないわけでございますから、これを廃止しようと言えばすぐ廃止できる、そういう意味で廃止されてしまったと思います。
私は、事務次官会議は政と官をつなぐ役割を担うものでございまして、最も有効な政治主導の手段になり得るというふうに思います。名称は問わないけれども、是非何らかの形で復活、今も連絡会議は行われているようでございますが、復活する必要があるのではないか。その場合、今までは、本来官房長官が主宰者でございましたけれども、大変多忙ということで、その指示を受けて行政出身の副長官が司会進行役を務めていたわけでございますが、四、五十分でございますので、官房長官自らが名実共に主宰すると。そして、各省庁を政治主導という、がっちりとそれを、各省庁を掌握して政治を行うという、極めて有効な手段であろうと思います。
最後でございますけれども、昨今、公務員を取り巻く環境は大変厳しいものがございます。これは時代の要請であり、例えば給与を下げるとかそういったことはある意味で当然としても、厳しい中にあっても公務員が誇りと使命感というものを持って公務に専念できる環境づくりということを御配慮お願い申し上げたいと思います。
以上、簡単でございますけれども、御説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。