高田創の発言 (予算委員会公聴会)
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○高田公述人 みずほ総合研究所の高田でございます。本日はどうかよろしくお願いいたします。
私の方は、皆様方のお手元にこういう「日本経済と国債の課題」と書かせていただきましたレジュメを用意させていただいておりますので、こちらを使いまして、約二十分程度ということでお話をさせていただければと思う次第でございます。
私の場合は、民間のシンクタンクそれから実務の世界で国債の市場を四半世紀見てまいりましたので、そんな観点から、今回、足元の状況ということをお話し申し上げたいなと思う次第でございますが、特にマーケットの観点から、グローバルも含めて、国債がどう評価されているのかという点を中心にお話をさせていただこうかと思います。
まず、皆様方のお手元をおあけいただきますと、最初のページでございますが、十一のキーワードとさせていただいたことがございます。まあ、何を言っているんだというふうなお答えになろうかとは思いますけれども、ここにございます論点を中心といたしまして、きょうはお話をさせていただこうかと思っております。耳なれないこと、私なりの言葉もございますけれども、ある程度ここの場でお話を申し上げたいなと思う次第でございます。
それでは、最初の論点、二ページ目のところでございます。
実は、先週、四月の五日でございますが、日本の指標とされております十年国債、この金利が、世界の歴史始まって以来の低金利を記録いたしました。日本というよりは、世界の歴史、人類始まって以来というくらいでございます。
一時的ではございますが、〇・三一五という水準、これがこの二ページ目のところにある水準でございまして、人類の歴史を塗りかえたというくらい。もともと日本の金利、二〇〇三年に〇・四三という状況はございました。その後、スイスあたりで若干それを上回るといいますか、実際は下回る金利水準がございましたが、この水準が先週破られた。
足元、若干上がってはおりますが、それだけの未踏の状況になっているということでございます。
こういう状況の中、足元の財政状況でございますが、これはもう先生方の前で申し上げるほどのことではないのかもしれません。ただ、実態面ということで、若干のおさらいをさせていただくというところが三ページ目以降の状況でございます。
こちらの三ページ目のところにございますように、大規模な国債発行それからプライマリーバランスの赤字拡大というのが今日本の財政が抱える問題でございまして、その背景にございますのは、歳出の拡大、大規模な国債の発行の継続ということでございます。歳出の拡大が趨勢的に続く中で税収がなかなかふえていない、その結果といたしまして、プライマリーバランスの赤字というものも再び拡大するような状況になっているということでございます。
この問題の背景には、次の四ページ目のところにございますように、日本の歳出それから税収等の問題があるということでございまして、とりわけ歳出につきましては、社会保障の関係費それから国債費というものが大きく拡大をしているというのが実態でございます。また一方で、収入、税収というところにつきましては、税収が頭打ちになっている、歳入の半分程度しか賄っていない状況になっているといったところが、この四ページ目のところの資料が示すところでございます。
この結果と申しましょうか、日本の国債の残高でございますけれども、現在、累積的に七百五十兆円にまでなっているということでございまして、どうしても借金に大きく依存する財政構造ということになるわけでございます。この公債残高七百五十兆円の見込みというようなところ、また、今後も拡大というものが予想されているといったところが既に試算としてあらわれているということでございます。
今申し上げました点は、歳出それから税収構造の中にあるということでございますが、これをもう一段大きな、歴史的なと申しましょうか、広目に見たらどういう問題になっているのかということを、六ページ目以降で改めて議論させていただこうかと思います。
これだけの大きな、構造問題と言われる財政の問題、私は、ある面での一つの出発点は、九〇年代以降の大きなバブル崩壊といったところにあったのではないかと。この問題は、第二の敗戦とも言われる、資産デフレと言われるような、ここに国富というものがございますけれども、バブル崩壊後、土地だけで一千兆円、国富というものも、GDPでいう一年以上の部分が消失してしまっているという大きな転換が生じた。この九〇年代以降の構造問題と言われる点でございます。
この構造問題でございますが、七ページ目のところにございます、よくバランスシート調整と言われる議論がございます。
ややテクニカルな部分はございますけれども、バランスシート調整の本質は何かと申し上げますと、信用拡張期におきましては、こちらに企業、金融、非金融セクターとございますが、信用拡大におきまして、このバランスシートが両建てでどんどん大きくなってまいります。そこで、資産デフレと先ほど申し上げましたけれども、資産サイドは大きく縮小するというのがその前のページのところでございますが、負債は残ってしまうということでございます。ここに、資産と負債の大きなミスマッチが起きる。
実は、この問題が、大変大きな、この二十年間の構造問題、失われた十年とも言われるような状況を引き起こしたというふうに考えることができようかと思っておりまして、こうした論点が、最近、グローバルにもいろいろな国々で指摘される論点でございます。
この調整プロセスでございますが、大体、次の八ページ目のところにございます基本形をとるケースがグローバルでも多うございます。
この八ページ目のところに概念図がございます。調整の三原則というふうに書かせていただいておりますが、先ほど申しました、要は、資産が減少しても負債が残るということ、これは当然のことながら、負債が大きい、過剰債務という現象になるわけであります。こうした状況の肩がわりをする、負担の順序でございますが、まず金融セクター、そしてそれがだんだんと国に移しかえられていくプロセス、実はこれが、この十年、二十年のプロセスだったわけでございまして、日本の場合は、このプロセスはかなり進捗いたしました。ほぼ終わっていると言ってもいいのかもしれません。
しかしながら、三原則とございますが、そうした肩がわりした債務をどこかで償還する必要がある、これが成長戦略ということでございます。
そして、先行きの期待をよくする。
この三つであるわけでございますけれども、日本の場合は、この国債、過剰な債務というものを肩がわって大きくなってしまった国債、私はこれを身がわり地蔵というふうに申し上げておりますが、これが大変大きな状況になった。そのかわり、民間の債務は極めて軽くなった状態にあるという状況でございます。
そうしたプロセスをちょっと見ていただきたいのが、次の九ページ目、十ページ目というところになるわけでございます。
この九ページ、債務ということでございますが、民間の債務、実額で比較するわけにいきませんので、GDP対比でとらせていただいております。
日本の場合は、八〇年代、バブル期というところでどんどん大きくなり、この結果、九〇年にピークを迎え、先ほどのグラフにもございましたけれども、そこから、失われた十年、実際には二十年近くかけて、この絵で申しますと、大体二〇〇七年ぐらいのところで一つのめどがついているというグラフでございます。
ただ、実は、ちょうど二〇〇七年のときに、海外のバブルがはじけてしまった、アメリカ、ヨーロッパもそのくらいの時期にというところも示しているわけであります。
ただし、先ほど申しましたように、民間セクターは随分軽くなったという一端をお示ししたもの、これが次の十ページ目のところでございます。
これは、日米の上場企業で実質無借金の企業の比率をあらわしたものでございますが、日本は、足元で申し上げますと、約半数近く、四五%程度が実質無借金の状況にある。これはアメリカを上回るくらいでございますし、九〇年代の二割台からいたしますと、倍近いくらいまで、このくらいまで企業セクターは非常に軽くなっているという状況でございます。
こうしたものをちょっと時系列的に見たのが、次の十一ページのところでございます。
これは、先ほど、日本は九〇年から、アメリカ、ヨーロッパは二〇〇七年で大きなバブルの崩壊がと申しましたが、日本は九〇年、アメリカ、ヨーロッパは二〇〇七年を出発時点にして描いた、民間の債務と公的な債務を見たものでありますが、日本は一番細い線でございます。
日本のプロセスは、民間の債務がだんだん小さくなる中で、公的なところ、私は先ほど身がわり地蔵と申し上げましたが、そちらがどんどん大きくなり、ちょうど交差したのが二〇〇三年から四年にかけてという状況でございます。そして、アメリカ、ヨーロッパもやや似たようなプロセスを踏んでいるというところもおわかりいただけるのではないかと思います。
そうした中、十二ページ、先ほど御紹介した絵と全く同じでございますが、今の課題は何かということになりますと、先ほど申しましたように、肩がわりのプロセスは終わりました。民間は非常に軽くなりました。しかしながら、公的なところが非常に重くなってしまっている。これを、左側の成長戦略、そして先行きを改善するということの中で、どのようにしてこの身がわり地蔵を小さくしていくかという段階に入りつつあるというふうに考えることができようかと思います。
一番理想的には、生産性の向上、例えば新しい技術ができますとかということでございますが、通常の場合、過去の歴史を振り返ってまいりますと、外需、外の景気、しかも、それを自国通貨が下がる中で対応してきているケースが大半であった。そういう中で、今の課題ということであれば、外需と、先行き期待を改善する中でも、これまでの極端な円高を回避するというところが非常に大きな課題であるということがわかるのではないかと思います。
しかしながら、依然として残る問題は、日本がこれだけ大きな債務を抱えているという点でございますし、また、今申し上げました肩がわりというプロセスが終わったというのは、これは大変日本にとってはすばらしいことではあるわけでありますが、しかしながら、そうした状態の中で、国債市場の安定性を保てるのかというところも常に議論になっているわけであります。逆に、国債の暴落が起きるのではないかということも常にささやかれている。
その背景を考えますと、次の十三ページのところにございますように、実は、日本の債務残高、これは、時期にはよりますけれども、世界的に見ても最悪の状況にあるということが、ギリシャのほとんど隣にあるのではないか、場合によっては大きいのではないかと言われる。これが国債の問題。また、ここ数年間で見ますと、いわゆるヨーロッパの債務国、PIIGSなんて言われることがございますが、そうした国々よりも大きいではないかと言われることがございます。
しかしながら、ギリシャを含めてヨーロッパの債務国の国債市場が暴落したにもかかわらず、日本の金利が史上最低というのはどうしてなのかということを考えますと、次の十四ページのところにございますように、日本の場合は、経常収支は黒字であるというところ。実は、これまでの債務国と言われておりますのは、右側のところにございますように、いわゆる経常収支の赤字国であったというふうに考えることができるわけであります。
こうした状況をとりまして、私は、この十年間ぐらい使っております例えがございます。これが、次の十五ページのところにあります。
日本の構造というのは、日本の家としては借金がない。これは、経常収支が黒字であるということであります。しかしながら、日本の家の中で、お父さんがお母さんから借りていて、お母さんがさすがに不安になってきた、私は家から出ていきましょうかというのがキャピタルフライト、資本逃避ということになるわけでございます。
その中には、要は信頼というものが必要である。国債は、ある面では、時間を確保できる特権ではあるわけでありますが、どこかではと。家の中でも信頼関係というものが重要である。また一方で、そもそも、日本の家といっていられるためには、経常収支が黒字である必要というものが生じている。
そうなってまいりますと、次の十六ページ。
今後国債は暴落するのかというところは、そもそもが経常収支の黒字を保てるのか。また一方で、その中でも家の中での信頼関係を保つことができるのかということでいえば、私は、今、そうはいっても市場参加者がまだ信頼をしているのには、ここにあります暗黙の信認の三条件というものがあるのではないかと。
すなわち、どこかでは成長ができ、そうするところになれば租税高権を発揮できる、そしてその中の決断を下せるというふうなことを暗黙裏にまだ市場参加者は信頼をしている。逆に言えば、こうした信頼感というものが毀損すれば、日本の今の状況は維持できないというふうに考えることもできるわけであります。
そういうふうに考えてまいりますと、まとめれば、ここにあります成長と財政規律ということになろうかと思いますが、今いろいろ議論されているこうした問題は、全て国債の問題に通じるというふうに考えることもできるのではないかと思います。
そういう意味では、今の論点とすれば、十七ページのところに書かせていただいております、いわゆる成長それから財政、金融というようなもの、こういうものを、段階的な状況の中で、ここでは概念図を描かせていただいておりますけれども、いかに、単に財政金融政策だけではなく、成長につなげる、しかもそれを持続的にできるのかといった論点が非常に重要な局面になっているというふうに考えることもできましょう。
また、次の十八ページ目のところでございますが、これも先ほど御紹介申し上げたものでございます。
先ほど申しましたように、今、身がわり地蔵となった国債は大変な残高でございます。これをいかに安定的に出口のところまで持っていくことができるのかということを考えた場合には、財政規律を保ちながらも、外需というようなところ、そしてまた同時に、国債市場の安定化を図るための対応、これは金融政策というようなものとも一体化をしている。そういう意味でいえば、先週、国債への大きな関与というようなことも、こういう枠組みの中にあると考えることもできるのではないかと思います。
十九ページ目以降でございますが、日本は、この二十年間、大変な危機状況でございましたけれども、しかしながら、この十九ページ目のところで振り返らせていただければ、日本というものは危機対応をずっと繰り返してきた。ある面では、大きな危機対応の先進国というふうに考えることもできるのではないかと私は思います。
そういう中、二十ページ目のところでございますが、先ほどから国債の問題を申し上げておりますけれども、一方で、日本というものは、国債、金融の資金力という面も含めて、いろいろなものを持っている国なんではないか。ここには、適応、技術力、きずな、そして金融の資金力とございますが、これだけ大きな調達ができるというのも日本の大変な国力でございます。今、これだけの、十兆円規模で、しかも低金利で調達をできる国というのは、世界じゅう探しても、日本ぐらいかもしれません。
こうしたものを、いかに安定的に対応できるかということの重要性。二十一ページ目のところは、今申しました点の、技術という点を挙げておりますが、研究開発費、これまで非常に高い水準を保っておりました。
しかしながら、同時に、金融力ということで考えますと、二十二ページ目のところにありますように、日本の国債というものはグローバルな市場でも試されているわけであります。私は、こうした状況をソブリンワールドカップというふうに言うことがございますけれども、要は、欧州の国々は、その闘いの中ではなかなか難しかった。その中で生き残っているというのは、こうした市場の中での評価、ここでは格付それから市場評価ということで、CDSというデリバティブのところでの評価がございますけれども、こうしたところもやはり目配りをする必要があるだろうということでございます。
最後になりますけれども、二十三ページ、二十四ページ、若干のまとめをさせていただければと思います。
先ほどから申し上げておりますように、日本の国債の調達力は大変重要な国力でございます。まさに、先ほど申しましたソブリンワールドカップと言われるような、その中で生き残っているというのは、ある面では、経常収支、そしてその中での信頼、財政規律というようなことにあるわけでございます。
こうしたところをとりあえず日本は調整してきたわけでありますけれども、今後、その持続性といったところが試されているという、まさに政策というものが問われているということになるわけでございます。
また、最後のページでございますけれども、こうしたところに対応しながら、これまでの、脱失われた二十年、悲観というようなものを、いかに自分たち、日本は持っているものとして対応できる、まさに、今でしょというようなことが問われている局面ではないかということで、私のまとめとさせていただければと思います。
どうもありがとうございました。御指導のほどよろしくお願いいたします。(拍手)